ガラル地方のむしジムリーダーなんだけど余命一年でわろえない   作:一般むしポケ好き

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八話

 

「結論から述べさせてもらいますと、以前にもお伝えした通りモナルさんの体は今、常に衰弱状態にあるとおもってください。4年間植物状態だった事で全身の機能を低下させている上に、未知の現象…とでも言いましょうか、恐らく貴方が対峙したポケモンによって機能不全を起こしている臓器が幾つかあります…………特に、肺」

「……成程です、えっと、それはつまり」

「…………医者としましては、バトルを勧めることは、出来ません」

「…ですよねー」

 

 

バトル中に倒れてしまい病院へと連れてこられた私は、あれから数時間後にようやく目が覚めた。

原因は突然の激しい運動と雨による体温低下によって熱が出ていたらしい。

肺かあ、そういえばあの黒い風に当たると嫌な予感はしてたけれど、吸い込んでただろうし必然的に肺が1番弱ってるか。

兎も角、今の私はコイキングよりか弱い情けない生命体のようだ。

 

……それにしても、この位で動けなくなるとか

…………マジか、うわーマジか、そっか

……………………こんなんもう、

…………

 

………………やめやめ、考えたってしょうがない。

止められてもなんでも私はチャンピオンになるって決めたんだから。

こんな事くらいでへこたれてどうすんのさ。どうせ死ぬなら一花咲かせようって話なのに、その前で諦めるとか出来るわけないよね。

まだ、解決策はある、はず。きっと。

 

何が良くなかった?

あめふらし戦法は、もう多分使わない方がいい。私の残り少ない体力を減らすだけになる。

じゃあもっと交代を減らす?いや、私の得意分野は交代して有利を取るサイクル戦なんだから、そこを捨てる訳にはいかない。

ならもっと声を張り上げないように、落ち着いてやる、とか。

そんなんで意味あるのかな。

 

……くそ、また思考がダメな方に行ってる。

 

 

「……どうしても、やりたいんです。どうにか出来ないですか」

「それは…」

「お願いします。最期までやりたい事なんです。後のことも全部要らないんです。一年持たなくたっていいから、やらせてくれませんか」

「………………」

 

 

甘く見てたな、これは。

覚悟とか、そんなんじゃ足りない。私にある全てをかけて、一年の寿命すらも投げ打たなきゃ出来ないことだって気がつくべきだった。

 

お医者さんは、なんとも言わずただ首を振り私に明確に拒絶を表していた。

そりゃね、死ぬ助けをしろなんて言われて医者になる様な人が賛同するわけ無いよね。

 

今まで目を逸らしていた壁が目の前に幾つも現れ、逃げ道は等に無くなっている。

前に進むにも後ろに戻ろうにも何処へも行けない、暗い何も見えない夜の街の様な八方塞がりな未来に目を向けると、こんなにも怖いなんて思わなかったな。

 

上等じゃん、全部ぶち破ってやるっての。

 

 

 

***

 

 

 

「いきなりすみません、私バトルやる事にしました。で、不躾で申し訳ないんですけどこのインパクションスーツっていうの、身体補助だけじゃなくて内臓のサポートっていうのは出来ますか?」

『あら、あらあらあら!少し待ってください!今私喜んでいるので!』

「えっ…あ、ありがとうございます?」

『良かったですわ!わたくしもうモナル様のバトルが見れないかと思うと寂しくて…最近新しくお気に入りの人が出来たのでそっちに浮気するところでしたわ』

「う、浮気…?」

 

 

方法を考えたけど、いちばんはこれだろう。

という訳でユカリ様が私にくれた『イクスパンションスーツva-2』についてお聞きすることにした。

改めてお話を聞かせてもらうと、このスーツは元々知り合いの知り合いが作った物らしく私のような身体の弱い人の補助の為に研究させて欲しいと頼み込んで作らせてもらったのだとか。

性能は元のものよりだいぶ落ちているようで、超人的な力が出せるようにするのではなく、あくまで身体補助に重きを置いている。

 

…………今更だけどなんでこれピッタリなんだ?私の身体知り尽くされてたりする?

む、胸とかちっちゃいけどスーツ着ると強調されるみたいで恥ずかしいなこれ…こんなのだけ着た日には軽く痴女扱いされるんじゃ…下とかただの下着じゃん…上からユニフォーム着とくかな、スパッツっぽくて少しはマシでしょ。

 

 

『今そちらに資料をお送りしましたわ。其方のスーツはまだ機能を減らして作った試作品のような物なので付け足そうと思えば出来ないことはないかと思います…いえ!できますわ!わたくしがお願いしますもの!』

「えっこれそんなにすごい物………や、えっと、すみません、有難く使わさせて頂きます」

『…あら、何時もなら返そうとするかと思いましたのに』

「……ちょっと、ワガママになろうかなって思う事があって。やりたい事のためなら遠慮とかしないようにと思ってます」

 

 

この人相手にそういった事を言うのは少し腰が引けたが、怖がらないようにぎゅっと顔を引き締めながらそう伝える。

もしかしたら怒られるかもと思ったが、ホロキャスターを見るとユカリ様はまんまるなお目目をニッコリ笑顔にして( ᐢ▽ᐢ )見たことが無いくらいに喜んでいるではないか。良かった、怒られはしなさ………はっ違う違う!怒られようとも私は止まらない!

 

 

『まあまあまあ!モナル様ったら何時の間にそんなにぴぴーん!とした人に御成になったのかしら!わたくしの見えない所でそんな風になるなんて、ズルいですわ!やっぱり連れ帰ってハルジオの部下にした方が良かったかしら…』

「いや、それはちょっと…」

『2人が並んだら丁度いいと思ったのに…まあいいですわ、それで、やりたい事ってなんですの?』

「……ちょっと、チャンピオンになってこようと思いまして」

 

 

案の定、少し驚いた顔をした後、ぴかーんとした笑顔で手を合わせて手を振る彼女に、何故か嬉しくなってしまう。

やっぱ、否定されるのも分かってるし理解もしてるけど、応援されてるほうが期待されているようで思わずニヤニヤしちゃいそうだ。

というかちょっとしてる、こんな時だけすぐに動くなよ私の表情筋。

 

 

『素晴らしい夢ですわ!モナル様ったらちゃんと自分を見る事が出来たのですね、心配していたのですから!』

「…その、ユカリ様のお言葉のお陰で、なりたい自分が見えました。本当にありがとうございます」

『うふふ、お礼はチャンピオンになった後受け取りますわ』

「……た、楽しみに、しててくださいね。マント姿の私」

『勿論ですわ!』

 

 

その後、またお礼を言ったりした後通話を切った。

本人は話したそうだったけれど、お忙しいらしい。

そりゃ社長さんなんだから仕方ないよね。

 

とりあえず、これで肉体については問題ない。

いや、多分あのスーツをずっと使ってたら何かしら弊害が出るかもしれないけど前のバトルの様にはならないはずだ。

1つ目の壁はこれでよし。

覚悟を決めた私は前みたいに遠慮なんかしないからな。どーせ一年後には死ぬ身だ、誰からどう思われようと出来ることは何でもやってやる。

 

 

それなら次は2つ目の壁。

これは、今の環境についてだ。

 

バトルというのはそれぞれお互いのタイプや得意が絡まり、そこにトレーナーの指示や癖、戦法によって様々変わるもの。

けれど、一応の流行というか『この戦い方が強い!』の様な流行り廃りも一応は存在している。

ジムリーダー達はそれぞれ戦い方を確立しているので簡単には変わらないが、流行を抑えた上でその対策やいい所を取り入れたりと変化は起きるものだ。

 

特に今はかなり変わっているはず。

ダンデさんは豪快に見えて細かな指示出しが得意…というか、観察眼とアドリブ能力がイカれていた。

こちらが何がしようとする度にそれを即座に看破して後出しジャンケンで有効打を打ってくる経験に裏付けされたテクニカルとパワーの合わさったスタイル。

このスタイルはガラルでは大流行りでアドリブゴリ押しの下位互換のチャレンジャーは多く現れたものだ。

 

でも、そのダンデさんが負けた事で今は新しいチャンピオンの戦法が流行っているはず。

という訳で私はセリさんに頼み新チャンピオンとダンデさんが戦った時の映像を見せてもらった。

 

自室で部屋の電気を全部消し、布団でクヌに寄りかかりながらテレビをつける。

相手の映像をひたすら見続け、脳内シミュレーションを繰り返す私がずっとやっていた対策方法。

 

ビデオをつけると画面越しにも伝わる程に熱狂したスタジアムに感慨を覚えるが、試合が始まり数分後、すぐにそんな余裕は無くなってしまった。

 

 

「…………はは、なにこれ?」

 

 

ダンデさんはいつも通り……いや、何時も以上だと思う程に本気で戦っている。

というか、私はここまでダンデさんが本気で戦っている姿を見た事がない。

対策をした上でアドリブによって攻略するという、攻略者泣かせな対策もクソも無い戦い方に対して、新チャンピオンのバトルを見て思わず絶句してしまう。

 

アドリブすらも、予見して動いている。

 

全てを読み切っているわけでは無いのだろうが、明らかに自分が行った行動に対する対策を対策するところまで考えた上で動いている。

ビデオ内ではチャンピオンのエースバーンが放った火球に対して、ダンデさんがギルガルドをシールドモードにする事を予想していたのか技を放った直後のエースバーンを迷いなく別のポケモンへ交代している。

シールドで火球を受け止め煙が辺りに広がるも、その煙を突き破るようにキテルグマが飛び出し、ラリアットを叩き込んで吹き飛ばしている。

 

なんだこれ、バケモンか?

 

18年間誰も攻略出来なかったあのダンデさんの戦いに読み勝っている。

疑いようも無いほどに天才っぷりを見せつけてくれた、私と変わらぬ年齢(4年前の)であろう少女は楽しげな笑みを浮かべながら指示を出す。

もうこれは、嫉妬とかそんな次元に居ない。

私が1週間かけて練った対策を彼女ならその場で考えつくだろうなって直感できるくらいだ。

 

 

「……フォレ」

「クヌ、すっごいね」

 

 

そっか、これが今の新チャンピオンか。

私が勝てる所なんて何処にもないんじゃないかってくらい、完璧な読みと勘と鍛えられたポケモン達だ。

如何に私が強かろうと、1年程度では足りない物が多すぎると分からせられるビデオだった。

 

多分、前の私ならもう心が折れて、なんならジムリーダー引退する位はしてたかも。

そう、思ってしまうのに。

 

エースバーンにダイマックスを使いボールを投げる彼女を見ながら、何故か私は笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






いつもいつも本当に誤字修正ありがとうございます…

個人的に一番のやらかし
×あめふらし → 〇あまごい
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