ガラル地方のむしジムリーダーなんだけど余命一年でわろえない   作:一般むしポケ好き

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九話

 

「セリさん、どうかなこれ似合う?」

「似合ってますよ〜!モナルちゃんパーカー以外も似合うから着たらいいのに」

「や、それはちょっと…よし動けるね。うん、ばっちり。この前はごめんね」

「ほんと、心配したんですから…色々言いたいことはありますけど応援してますからね〜!」

「へへ、ありがと」

 

 

あれから1週間ほどして、とりあえずクヌ達は自主トレ、私は動けないのでひたすら映像を見ながらノートにバトルのやり方を考えていたらユカリ様からスーツの改良版が届いた。

お礼の電話をして着てみるとこれが凄い、前よりは鈍いもののしっかり動ける身体になったのだ。

 

しかし全部が全部元通りとは行かず、このスーツを稼働させて動ける時間が限られているということだ。

そりゃ無理やり身体動かしてるんだし貧弱な体力が持たないよね。マックスアップ飲んどかないと。

 

衣装もスーツに合わせて少し変更。

前はユニフォームだけ着てたけど、折角なのでその上からパーカーを羽織ってみると割といい感じ。

……ちょっとキバナさんと被ってるかな?まあデザイン全然違うしいっか。

 

兎にも角にも、私はジムチャレンジに向かう準備を終えたのだ。

 

 

「準備OK、じゃ行ってくるねセリさん」

「……ちょっとした事でもいいので、何かあったら直ぐに言ってくださいね?」

「うん、勿論頼らせてもらうね。そっちもクレータウンに何かあったら直ぐに言ってよね、飛んで帰ってくるから」

「うふふ、そうですね。モナルちゃんの帰ってくる場所はちゃんと残しておきますから」

「ありがと!じゃあ!」

 

 

セリさんはジムチャレンジに向かう事を伝えたら少し悲しそうにしてはいたものの、ちゃんと帰ってくると伝えた事。

死ぬ時までには街に戻ってると伝えると複雑ながらも応援してると言ってくれた。

まーね、私だって死ぬ寸前までバトルしてるつもりは無いですからね。それでチャンピオンになれるなら別だけど。

流石に死ぬ時はこの街がいいかな。

セリさんにジムの事を任せるのは申し訳ないけど、どうせ動いてないジムだから気にしなくてもいいとの事。

街のみんなにも挨拶を適当にして早速やる気満々のペンさんの背に乗り、私は目標に向けて走り出したのだった。

 

 

「……さてと、とりあえず、まずはブラッシータウンに向かわなきゃかな」

「ドラ!」

「おーちょっと遠いから休みつつ行こーな」

「ドララ!」

 

 

準備は終わったと言ったが、いきなりジムに殴り込みという訳ではない。というか多分無理。

強くなった皆と足並み揃えておきたいし、そもそも私は1番大事なものを無くしたままになっている。

 

そう、それは"ねがいぼし"である。

私のバンドは以前の戦いの時に行方不明らしく、今私は持っていないのだ。

それを貰う為にもブラッシータウンでマグノリア博士に新しく貰わなくてはいけない。

最初はタクシーで行こうかとも思ったが運動がてらワイルドエリアで勘を取り戻しつつ進むことにした。

 

とは言っても流石にこの辺の野生ポケモンにやられるほど鈍っちゃいないので余裕ではあった。

うんうん、スーツもいい感じだね。

 

体感だが、このスーツで全力で動けるのは30分って所かな。少しづつ時間は伸びるだろうけど今はこれが限界だ。

バトルの時間は場合によって増減するけれど、30分は少し短い。

……ま、これも私の乗り越える壁のひとつってやつですよ。

 

 

「クヌ!がんせきふうじ!」

「フォレ!」

「よしナイス!」

 

 

襲ってきたガーディをシバきつつようやくミロカロこの畔に辿り着く。

向こうの方を見てみるとエンジンシティが目に入り、チラホラ他のジムチャレンジャーも目に付き始める。相変わらずでっかい街。

昼頃に街を出たけれど、空は既に赤くなり始めているので今日はもう少し進んでから泊まりたい所だけど……

……私、今キャンプできるかな?大丈夫かな?

万が一の為にロトさんに緊急連絡先を5個くらい追加してもらったので大丈夫だとは思うが私が持つか心配だ。

 

そううんうんと悩んでいるとまたも野生ポケモンが襲いかかってくる。なんか今日めっちゃ襲われるな。

後ろから笑顔のまま突撃してくるヌイコグマに適当に技を打とうと思いふと思いつく。

そういえばリーさんまだどんな感じか確かめてなかったな。

 

 

「リーさん、いきなりだけどお願いしてもいい?」

「…………リ」

「ん、おっけー今日のカレーは甘いのにしようね」

「…リリ」

 

 

戦う代わりに本日のカレーの味を決められてしまったが、まあ経費経費。

甘いカレーを想像したのかふよふよと翔び上がりヌイコグマを迎え撃つ態勢をとる。

 

 

「リーさん、ようせいのかぜ!」

「リリッ」

 

 

ふわっと桃色の風がヌイコグマを包む様に襲いかかりダメージを与えている。

……半分削れたか削れてないかって感じ?

抜群でワンパンじゃない所を見るにリーさんの実力はレベルで表現するなら20前後って所かな。もうすぐ進化する感じだけどうちのパーティーだとまだ戦力とは呼べない。

 

 

「リーさん抱き着き避けて返しにもう1発!」

「リリ……リ?」

「あっちがそっちじゃな…」

「ヌイっ」

「リーっ!?」

「あーっ……」

 

 

そして指示がまだ上手く伝わってないなこれは。

避けるように指示するもリーさんは私の方を1度見て方向を確認してから避けようとしていた。

そんな悠長なことをしていたら当然攻撃されてしまい、今のでほぼひんしだ。

半泣きのままようせいのかぜでトドメを刺すものの、リーさんはフラフラと泣きそうな顔のまま帰ってくる。

 

 

「…………り」

「うーん、ごめんね。他の子と同じ感覚でやっちゃったな……明日からはメラさんと合同訓練しながら指示した時の動き方を覚えよっか」

「リリっ」

 

 

全身から『もう戦いたく無いです』と言いたげな雰囲気だったけれど、メラさんと一緒に教えると言うと機嫌が良くなったのか素直にボールへと帰っていく。

 

ふう、と一息ついてから今日は一旦ここで泊まろうと思いキャンプ道具を広げながら考える。

そうだなー…とりあえずあの映像からしてチャンピオンの手持ちのレベルは皆60代って所。

家で最高レベルはクヌがレベル60後半位、ペンさんとシズさんが50後半、メラさんが40前半って感じ。

うーん偏りが酷いなこれは。しばらくの間はリーさんとメラさん中心で頑張ってもらうとするか。

 

えっちらおっちらとスーツに感謝しながらテントを建てていると、何となく懐かしい気持ちが湧いてくる。

そういえば、初めて冒険してた時もこうやってクヌと二人でキャンプしたなあ。

チラっとみんなを見てみるとクヌはのんびりと木陰で米を炊く準備をして、シズさんは水を出したり薪を集めたりしてくれている。

ペンさんは……寝てる。まあ今日走りっぱなしで疲れたよね。

 

皆手馴れた様子で準備している所をみると最初の頃の慌ただしさも少し物懐かしい。

ペンさんが来たばっかりの頃は勝手につまみ食いとかされたせいで食糧全然足んなくなって夜にビビりながら3人できのみ集めしたりしたっけなー。

シズさん来てからは雑すぎるご飯にキレられたりしたし。

 

 

「メラさん、リーさんに好きなトッピング選ばせたげといて」

「メラ!」

 

 

子供みたいにリーダーにしたがえ!とでも言いたげなメラさんはリーさんと鞄の中を漁っている。自由だなぁ。

というか皆やたらと張り切ってる、何でだろ、別にいつも通りのカレー…………あ、そっか、そういえばこの子達にとっては4年ぶりのカレーか。

パチパチと弾ける薪の音に火の匂いを感じ、旅の匂いの様な不思議な感傷に私も浸ってしまう。

ポンっとスパイスの入った缶を開け、少し気合を入れて作ることにした。

 

私の作るカレーはダイオウドウ級なビミョーな出来だが喜んでくれてるなら嬉しいってものだ。

好きなカレーのトッピングはそれぞれあるけれど、私はマメだくさんカレーが好き。味濃いもの食べてる時にコリコリした食感があると楽しいんだよね。

そう思っていると空気を読んでくれたのか、メラさんがマメ缶を渡してくる。ありがとなー。

ちなみにクヌはカレーよりサンドイッチの方が好きだったりする。気持ちは分かる。

 

 

「シズ!」

「お、お湯沸いた?ありがと、こっちやっとくからシズさんクヌと場所替わったげて、あのままだとお米より先にお焦げ付いちゃうから」

「フォレ……」

「火の番なんて1番苦手でしょ…」

 

 

ジリジリと火炙りされていたクヌを追っ払いつつ、刻んだ野菜を鍋に入れていく。

ちなみにむしタイプの子達は口が小さい子が多いので全体的に細めに刻んでいる。

リーさんなんかは吸う位だし後で更に潰してあげた方がいいかな?いやでもごろっとしてた方が美味しいしな…

いやブレンダーかけたカレーも割と捨てがたいしな…

 

悩みつつ煮込んでいくと4年ぶりながら割といい感じにできてきてる。

ただ腕がキツいのでスーツを使わなくてはいけない貧弱体質に悲しさすら覚えるよちくしょう、今日はそんなに寒くないけど寝る時は暖かくしとかないと風邪ひくかなこれは。

 

パチパチと薪の燃える音が響き、薄暗くなった空の下で火を眺め、ぼうっと無心で鍋をかき混ぜていく。

こうしてぼんやりしてるとぼんやり頭の中でバトルのシミュレーションとか、構成が浮かんできている事に気が付き、前よりは大分ポジティブな考えが浮かぶようになったなと変な安心感を覚える。

うじうじしてるよりこっちのがいいよね。

完成まではもう少し、こうしてぼーっと…………ぼーっと…………ん?

 

 

「……なんか、雨降りそうじゃない?」

「メララ!」

「あ、やっぱりか。うわー参ったなこりゃ」

 

 

むしのしらせで感知したのかメラさんがのっそのっそとこちらに来て空を指さす。

なーんか時間にしちゃ暗いなとは思ってたけど雨降るんかい。

今すぐという訳では無い様なのでカレー出来たら直ぐにテントに引っ込むとするかな。

 

ワイルドエリアは天気が結構変わりやすい場所なのだが、雨が降るだけならまだしも雷雨になる時もあるから困る。

初日なのについてないなーなんて思いつつ、皆用のテントを用意しておくように指示を出しておく。

屋根しかないタイプのやつだけど大型のポケモンを持ってる人なら手にしておきたい便利アイテム。

 

出来上がったカレーの鍋を手にしつつ急いでテントに向かうと、直ぐに雨が降り始める。

しかもかなりの強さでこれは雷も降ってくる感じかな。

 

まああとは寝るだけで気にしても仕方ないのでカレーを食べ始めるとしますか。

寝て元気になったペンさんとか待ちきれない様子で大盛りのカレーを前にソワソワしているし。

 

 

「んじゃ、いただきまー」

「ドラぁ!」

 

 

久々に食べるマイカレーは……うん、まあまあ。ふつーって感じ。やっぱ、豆カレーが1番好きだな私。

皆は心なしかがっついているし、初めて食べるリーさんも体格相応に少ないながらも食べてくれてる。

これなら成功って言っても文句なしかな。

 

カレーを食べつつ、しれっとおかわりしてるペンさんを横目に明日の予定を考え始めておくことにする。

ねがいぼしは……多分手に入るはず。

その人のねがいの強さによって手に入るとか入らないとか言われてるけど、前の私でも手にできてたし今の私なら大丈夫でしょ。

そのねがいぼしを持ってマグノリア博士のとこに行って…あれ、マグノリア博士って今も研究所にいるのかな?

確かダンデさんの知り合いが研究所にいた気がするし、もしかしたら代替わりしてるかもな。あの人もちょくちょく会ってたけど話したことないんだよなー

 

とにかくその人に会って加工して貰ってから、一旦皆の技とかを改めて考えて──

 

 

なんて事を考えていると、湖の傍で誰かが走っている姿が見える。

雨のせいで影しか見えないがかなり焦っている様子で、手で顔を庇いながらキョロキョロと街の方を目指しているではないか。

 

 

「シズさん!」

「シズ!」

「おーい!そこの人ー!こっちテントあるよー!おー…げほっゲホッ、ごっほ、おっきい声でないな……ごほん、おーい!」

 

 

もしかしたら新人のジムチャレンジャーかもと思い、その人に向かって呼びかけてみる。

ま、ほぼ引退しかけとはいえジムリーダーとして危ない状態の人を放っておくなんてできないしね。

私の貧弱な肺からでる声では届かないかもと思ったのでシズさんを向かわせると、気がついてくれたらしくその影は向きを変えこちらへと向かい始めた。

 

折角だからカレー温め直してあげるか。カレー好きだといいけど。

そう思い向かってきた人を見ると、ようやくその姿がはっきりとしてくる。

私と変わらない位の年齢の少女、多分歳下だろうなと思いつつテントへと招き入れる。

 

 

「うわびしょびしょだ…あ、ありがとうございます!いきなり降られちゃってテント貼る暇無くって…!」

「いーよいーよ、困った時は助け合いってね。はいこれタオル」

「すみません…!キミもありがとうね、オニシズクモちゃん」

「シズ」

 

 

茶色の髪に、丸い目のその子は濡れてしまったカーディガンを脱ぎつつシズさんの頭を撫でている。

おお、この子凄いな。あのシズさんが頭を撫でられても嫌な顔してない。

まじめだし素直なシズさんだけれど、割とプライド高めな所もあるので妙ちくりんなトレーナー相手だと割と辛辣な対応をするのに大人しいままだ、きっといい子なんだろう。

後、個人的にむしタイプの子でも嫌がらず撫でてくれるところがポイント高め。割と嫌がる人多いんだよね。

 

……というか、この子なんか見た事ある気が…うーん気のせいかな?4年前にあってたりするかな?

 

 

「今カレーあっため直してるけど食べる?温まるよ」

「良いんですか!私カレー大好きで……とと、すみません、ちょっと興奮しちゃって。有難く頂きます…!」

「味はあんまり期待しないでねー」

「そんな、カレーに貴賎なしですよ」

 

 

いや、いい子だけどちょっと変な子かもしれない。

カレーに貴賎なしってなんだ初めて聞いたぞ、ガラルじゃカレーはデフォとも言えるくらいメジャーな料理だけどもさ。

カレーを手渡すと嬉しそうに受け取るが、突然ハッとした顔をして腰にかけているボールに目をやる。

ああ、手持ちの子いるよねそりゃ。

 

 

「その子もカレー食べるでしょ?いーよ遠慮とかしないで出しちゃって」

「すみません…!この子もカレー好きで…ほら出ておいで」

 

 

そういうと、出てきたのはリザード。

まだまだ育ち盛りって感じだが、見た目以上に鍛えられている感じがする。

もしかして結構強いトレーナーなのかな?ダンデさんに憧れてヒトカゲ使い始めたって感じかなー。

 

 

「ぎゃう!」

「甘口だけど大丈夫かな?」

「大丈夫です!この子何でも食べちゃうので…ほら、お礼言って」

「ぎゃあう!」

「おーヨシヨシ…うちの子達にひのこしないでね?」

「ぎゃっ!」

 

 

言われなくともしないわ!とでも言いたげなリザードにどことなくメラさんと同じ雰囲気を感じつつカレーをあげると2人ともパクパクと美味しそうに食べてくれている。

人にカレー作ったことあんまり無いから少し不安はあったが一安心だ。

 

 

「今日私達ここに泊まって行くけど君もそうしたら?この屋根張りっぱなしにしとくからさ」

「そうさせてもらいます…」

 

 

誰だろうとこういうつもりではあったけど、今更この子が子供だった事にほっとする。

流石に知らん大人と2人はちょっと怖いし。皆が守ってはくれるだろうけど私今何されても抵抗できない……いや、この子相手でも多分無理だったわ。貧弱〜。

 

そうして、成り行きながらも旅の初日は二人でお泊まりから始まることになるのであった。

 

 

まさか、この出会いが旅の目的地にまで続いているとは露も思わずに。

 

 

「……あ、そういえば私モナルっていいまーす。君の名前も教えて貰ってもいい?君のままだとあれだし」

「え…?……あ、いやそうですよね!はい!すみません自己紹介してませんでした!

 

 ユウリって言います!よろしくお願いします!」

 

 

そう言って笑う彼女の瞳は、雨の中、何故か私よりもずっと遠くの「何か」を見据えているような、不思議な強さを秘めていた。

 

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