ガラル地方のむしジムリーダーなんだけど余命一年でわろえない   作:一般むしポケ好き

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遅れてしまい誠にごめんなさい(精一杯の社会人アピール)



十一話

 

昨日とうってかわり、青空広がる雨上がりの原っぱは普段と違う匂いがして私はとても好きだ。

 

いや、それだけじゃなくて多分この人が居るから少し違うのかな、とも感じる。

チラリと何件も通知の溜まったロトムフォンを見てため息をつきながら、テントを片付け始めているモナルを見ながらそう思う。

 

 

「おはよー、いつつ……朝ごはんサンドイッチ作るつもりだけど大丈夫?」

「いいんですか!ぜひ頂きます!」

「いーよいーよ、材料は結構あるしすぐ街に着くし……あと敬語、歳上とかほんと気にしないで……」

「あっ…えへへ、ごめんつい」

 

 

モナルというその子は私にとって興味と、憧れと、ほんの少しの恨みの籠った人だった。

 

私はつい半年前、チャンピオンとしてこの地方の表舞台に立った。

チャンピオンだけでなく、英雄としても。

 

今も鞄の中のボールで眠り続けているムゲンダイナを私はホップと協力して倒し、そして捕まえはした。

そのせいか、お陰か、私は英雄と呼ばれガラルを救った人として尊敬の目で見られることが多くなったのだ。

 

 

「はい、これこのハムすっごい美味しいから食べてみて」

「やった!いただきまーす!」

「いただきまーす」

 

 

私はカレーもポケモン勝負も好き。

好きなことだけやっている。

好きなことだけやっていたら、気がついたら責任が背にのしかかり始めていた。

 

チャンピオンとして戦い毎日を忙しく過ごしていると、正直、疲れることが多くなっていた。

今も実は、私は仕事から逃げて街まで帰ってきてしまったのだ。

もしかしたら今もマリィとか、ビートが私の事探し回ってるかもしれないし、ダンデさんにも迷惑をかけている真っ最中だ。

 

だって、だって皆私の事を凄い人として見てくるんだもん。

私がちょっとしたバトルの話とかをしようとしても、周りの人は何かすごいことを言うぞ、と期待を込めた目で見てくるし、カレーの話を冗談交じりにし始めたら商品化!とか新しい案!とか話が大きくなってくる。

そんなの、疲れちゃうよ。

 

 

「はむ、んむ……んーおいし。クヌも食べてるかー?」

「フォレ!」

「おー食べろ食べろー」

 

 

ダンデさんに話を聞いていた時、モナルの事を聞いた。

私より先に英雄と呼ばれて、今もなお眠り続けている英雄の先輩が居ると。

私は、私は教えて欲しかった。

こういう時にどうすればいいのかって、どうやって乗り越えたのかって心構えとか聞きたかった。

なのに本人は寝てるんだからそういう訳にもいかないし、どうすればいいのかむしろ教える側になってしまっていた。

 

昨日モナルが顔を赤らめながら嫌がっていた渾名も半分嫌がらせのつもりで言ったつもりだった。

私より先に英雄って呼ばれてたくせにっていう。

 

全部ただの八つ当たりだ。

 

 

「どう?悪くないでしょ」

「うん、すっごく美味しい!…キャンプした時は必ずサンドイッチ食べる地方もあるって聞いたことあるけど、確かにこれはハマっちゃうかも!」

「あー……パルデアかな?いいよねぇキャンプサンドイッチ」

 

 

どうやら彼女はゴーストタイプだったようで私のやつあたりは全部効果がなかったみたい。

流石にあの真面目そうなロトムさんに私の事聞いたのかもと思っていたのに、今も呑気にポケモン達を撫でている姿を見たらそんな事はないようで、恨んでいたこっちがバカみたいに思えてきてしまって今ではすっかり力が抜けてしまった。

 

チャンピオンなんて呼ばれて、英雄と呼ばれてカッコつけていたのに『そんなの関係ないね』とでも言いたげな態度を前にしちゃうと、仕方がない。

 

 

「食べたらすぐ出発でいい?ちょっと急ぎだけど」

「うん!食器とか片付けちゃうね!」

「食べるのはやっ」

 

 

あんな態度のモナルを前にして、今ここに残ったのはただのユウリだけだった。

ならもう、後は興味ばかりが出てきてしまう。

そのスーツなんなのーとか、フォレトスさんの事もっと知りたいなーとか、眼帯痛くないのかな、とか。

 

本当に、久しぶりにチャンピオンユウリでは無く、『ユウリ』自身が友達になりたいと思う人が出来たのだった。

 

 

…………それはそうと、私の事全然知らないのもちょっとだけ悔しいからチャンピオンなのは教えてあーげない。

 

もうちょっとだけただのユウリでいたいしね。

 

気がついた時のモナルの顔を想像して少し笑いながら私も出発の準備を進めるのだった。

 

 

 

===

 

 

 

妙に機嫌の良いユウリに道案内して貰いながらペンさんに揺られて数時間。

何時もなら走ってもらうところだけど、今はユウリも乗せているので歩いてもらいようやく街へと着いたのだった。

 

 

「ごめんね!私も乗せてもらっちゃって…」

「いーのいーの、ペンさん力持ちだし、ねー」

「ドラ!」

「後できのみあげるね!」

「ドラっ!」

 

 

ブラッシータウンに到着し、見回すとクレータウンより発展した様子の街に都会来たなぁと変な感慨を覚える。

実は私はこの街に来たことが1度しかなく、ガラル地方に来た時にねがいぼしを貰った以来だ。

レンガ造りに自然の交ざった街並みを歩くと自分がおのぼりさんのようでちょっと恥ずかしい……というか、事実おのぼりさんか。

わ、私変な格好じゃないよね。このパーカー別に普通だよね…うん。大丈夫なはず。

………こうして見るとユウリ結構お洒落な格好してるな…私もなんか着た方がいいかな…いやいや、気にしない気にしない。自意識自意識。

 

よく考えたら私地元もクソみたいな集落だし、こっちでも田舎だしで都会に縁のない人生なんだなー。

エンジンシティとかシュートシティとかもうデカすぎて違う世界の話だよね。

エキシビションマッチとかで行く度に怖くて震えてるよ。

 

 

「いやー久々に来たなぁ!やっぱ田舎は気持ちいいね!自然が沢山!」

「うん都会はほんと……ん?」

「え?」

「……い、田舎だ、ね?」

「えっと……そうだ、ね?」

 

 

今なにか二人の間で致命的な歪みができた気がしたけれど気にしないようにしよう。

気にしない気にしない。ここは田舎、田舎なんだ。

田舎…………なんだ………………そうなんだ……

 

 

「と、とりあえず早速研究所行こっか!」

「そ、そうだね、うん、アハハ……ハハ……」

 

 

若干気まずい空気が流れつつもユウリに連れられ研究所へと向かう。

ユウリは慣れた様子で街の店を紹介してくれながら、歩みを進めている。

あのきのみ屋さんは新鮮でオススメとか、あそこの服屋は変なTシャツばっかり売ってるとか、ニコニコ笑顔で話しているとクレータウンのクソガキ共をちょっと思い出して私もつられて笑顔になってしまう。

わかる、街の好きな所話すのって楽しいよね。

 

なんて話しつつ歩いていると、研究所の屋根が見えてきてそろそろ着くかなーなんて考えていたら、何故か視線を感じる。

私何かしたっけな?と思いつつキョロキョロと見回すと、浅黒い肌のどこか見覚えのある少年がこちらを見ているではないか。

な、なんだ、私なんか変か?……もしかして見ただけでわかるくらい田舎者か?

 

 

「それでね!こっちが───」

「ユウリ!やっぱりここに来てたのか!探してたんだぞ!」

「げっ!ほ、ホップ…ごめん、今行こうとしてたんだ…」

「心配したぞ、昨日も連絡出ないしマリィ達からも探してくれってメールが来るし…とにかく無事なら良かったけどな!」

 

 

その少年は突如こちらに走り出したかと思うと、ユウリに抱き着くような勢いで話しかけるではないか。

う、うおお距離が近い、というか、この溢れる陽のパワー!まずいっ私の許容量を超えている!カブさん並の根明だなこの子!

 

 

「あ!ごめんな、いきなり話しかけて!オレはホップ!ユウリの幼馴染なんだぜ」

「アッえっと、あの、モナルです…」

「モナルって言うのか!いい名前だな!……悪い!ちょっとユウリに用があるからちょっとにーちゃんに貸してくれないか?直ぐに終わるからさ」

「ホップ!その人歳上!」

「げっ!?す、すみません!」

「イイノ……ゴメンネ……」

 

 

へ、へ、まあ一旦お互いひんしで引き分けってところかな。

きあいのタスキがなかったらやられていたところだった。

推定いい子であろうその子は、ユウリの知り合いらしく何やら急ぎの用もあるようだ。

というか……

 

 

「ユウリ、もしかして無断でワイルドエリア行ってたの!?」

「えっ…あーその…はい……」

「ダメだよ、危ない場所なんだからちゃんと誰かに行ってからじゃないと。監視員の人も居るけど全部を見切れる訳じゃないんだし」

「…ん?ユウリなら別に平気だと「ああっホップの顔にミネズミがっ!」いでえっ!」

「えっ何いきなり…」

 

 

何故かユウリがホップの顔を突然ぶっ叩き、向こうへと引きずり何か話しているようだった。

そのまま二人でどこかに行く予定でもあったのか分からないが、一旦私の用事を済ませることにしてくれたらしい。やさしいなぁ。

それと、ユウリも何やら色々あるっぽいが大丈夫らしい、現に今も何やらコソコソと二人で話している。

……な、何話してるんだろ。私の悪口とかじゃないよね?

 

「なんで叩くんだよ…痛かったぞ!」

「ごめん!咄嗟で…あのね、私がチャンピオンって事内緒にしといて、あの人私の事知らないの」

「えっユウリの事知らない人何て居るのか?…とりあえず、わかったぞ!」

「ソニアさんにも言っといてね?」

 

ひ、被害妄想被害妄想、ああいう根明の人は陰口なんか叩かないってカブさんで学んだんだ。

2人に言われるがままに進んだ先でようやく研究所に到着し、一息つく。

ここはどうやらあまり変わってないようで前に見た通りのままだ。

 

 

「ここが研究所だぞ!今博士呼んでくるから待っててくれよな!」

「おじゃましま──」

「イヌヌワンッ!!!」

「どわあっ!」

 

 

研究所に入るやそうそう、突然目の前が真っ暗になりすわ全滅したかと思いきやなにやら顔にもふもふとした触感が伝わってくる。

こ、これはまさか…と思いつつそれを引き剥がすと全身からおバカっぽさを醸し出しているワンパチがそこに居た。

 

 

「イヌヌワッ!」

「あっ、久しぶりだねーワンパチちゃんキミも元気みたいで良かった」

「お…おお……」

「?どうしたのモナル?」

「わ、私初めてむしタイプ以外の子から触られてる……!」

「えっ…」

 

 

今更ながら、私はむしタイプ以外と本当に致命的なまでに相性が悪い。

以前クレータウンの森にはピカチュウなども居ると言ったが、毎日顔を合わせているにも関わらずあの子たちは私の顔を見るなり苦い味のきのみを食べたような微妙な顔をしてそそくさと逃げ出す程で、生まれつきこうだからすっかり諦めていたのだ。

は、初めてむしタイプ以外のもふもふに触れてる……!

うわー…わーっ……!かわいい!メラさんももふもふだけど犬特有のもふもふだ……!

なんでこんなアホそうな顔してるんだろ…かわいい……ペンさんも同じタイプだけど最近はキリッとしようとしてて可愛いって言うと怒るし…わー…

ベロ何で出しっぱなし何だろ……かわいい……

 

そう一人でモフモフと遊びユウリが生暖かい目でこちらを見て、若干機嫌悪そうなクヌがいる中、ホップが誰かを連れてこちらへやってきた。

 

 

「やっほ、その人がお客さん?」

「あっソニアさん!お邪魔してます!」

「かわ……もふもふ………あっ、す、すみません、お邪魔してます」

「気にしないで、初めましてわたしはソニ……ア………」

「……あ、ダンデさんとよく話してた…」

「モ、モナルさん!?モナルさんよね!?なんでこんなところに居るの!?」

 

 

白衣を着た彼女に肩をグワングワンと揺らされながらまたこのパターンか!と思いつつ、微妙な笑顔で受け止めておく。

こりゃ私知られてる人にはとことん知られてると思った方がいいなー、今後はそのつもりで動かないと。

 

 

「お、お久しぶりです…でいいんですかね、ちょっと博士に用があって来ちゃいました」

「もしかしておばあさまに?今は私が博士だから出来ることならこっちでやっちゃえるよ」

「ソニア、モナルの事知ってるのか?」

「そりゃ勿論!当時最年少の天才ジムリーダーって言われてた期待の新人……まあ新人だったのよ!あと4年前の……」

「えっジムリーダーなのか!?」

「あはは…一応やらせてもらってました…」

 

 

新人と言うには4年ほど燻っていた天才(笑)の私は似た様なやり取りを繰り返し、改めて私の自己紹介をすることにしておいた。

やはりホップも私の、その、恥ずかしい渾名は知っていたらしく驚いていた様子で改めて謝られた。気にしてないから……

 

というか、ソニアさんは私のことを結構知っていたらしい。

というのも、当時私がジムリーダーに就任し初めてのトーナメントでの事。

まだイケイケだった私は何とか最終戦でダンデさんと戦ったのだけれど、その、今思い出しても顔を塞ぎたくなるほど恥ずかしい事なのだが、色々とカッコつけてたり余裕がなかったりでダンデさん相手に冷たい態度を取っていたのだ。

それで、ソニアさんは歳下の女の子相手にどう接すればいいか分からないと相談を受けたらしく、その繋がりで私の事を知っていたのだとか。

ソニアさんもびっくりしたでしょうね、トゲトゲしていた人との付き合い方を聞いて、いざ会ってみたらそいつがやる気無しの陰キャになってて。

 

 

「ダンデくんがあんな顔してるの久々に見たから面白かったわよ!『キバナともルリナとも違う感じで…オレは嫌われるようなことしたんだろうか』ってね!」

「ぁぁ…その節は本当にご迷惑をおかけしまして…」

「いいじゃない別に!彼、マイペースな所あるし万人受けって訳にもいかないでしょ」

「ムッ、アニキは皆から好かれるチャンピ……カッコイイ人だぞ!」

「みんながみんなって訳では無いでしょ……あ、そういえばユウリ、ダンデくんキミの事探しに行ってそのまま迷子になってるらしいわよ」

「え゛っっっ」

「後で探しに行ってあげなさいよね…まあここにいたらそのうち来るかもだけど」

 

 

今なんかとんでもないこと聞こえた気がするな。

ガラルの危機なんじゃ…………いやまあ、いつも通りか。

世話焼きなのか、お姉さん気質なのか彼女は私の事を気遣ってくれ椅子に座らせたり飲み物を出してくれたりと、至れり尽くせりな対応を受けてしまった。

そんなにしなくてもいいと言うも、眼帯といい顔色といいこっちの気が休まらないからそうさせて、と言われてしまっては仕方がない。

うーん、確かにあんまり気にしてなかったけどこの眼帯ちょっと圧あるよね。後でオシャレなやつとか探してみようかな。

 

 

「──さて、では改めまして。ようこそソニア博士に何か用かしら?」

 







今気がついたんですけど前話の小声演出、ミスってますね。
電話対応もろくに出来なきゃ特殊文字も使えねぇ…!所詮お前は敗北者じゃけぇ……!
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