ガラル地方のむしジムリーダーなんだけど余命一年でわろえない 作:一般むしポケ好き
ジジジ……と夏でも無いくせにやたらと騒がしいむしポケモン達の鳴き声。
合間から指す日に顔を晒され薄ぼんやりと眠気まなこのまま目が覚める。
相変わらずアホみたいにうるさいがもう慣れたもの。
どちらかと言うと既に12時を指している時計とそれを咎めるようなクヌの目の方が煩わしい。
「フォレ」
「あい…おはざす……」
「ブォ!」
「うす……すんませんちゃんと起きます……」
昨日のファイナルトーナメントでは一回戦でポプラおばあちゃんにのされて格と歴の差を見せつけられていた。
フェアリータイプきやい。なんでむしタイプに強いんだ。
それに未だに『あんた……まだまだピンクが足りてないねぇ』という言葉が謎すぎて頭に残っている。そんな目で見ないでくれ。
のそのそと私がジムリーダーをしている『クレージム』の裏手にある小屋から出ると、学校帰りなのか元気にクソガキ共が走っているのが向こうに見える。
ありゃーまた森に行くかな、しばらくしたら見に行くかぁ。
ルリナさん曰くまるでメスのヘラクロスみたいと言われる寝癖を直しながらジムに入ると、既にリーグから送られてきた事務員のセリさんがPCと笑顔でずももも…とにらめっこしていた。どういう感情なんそれ。
「セリさん、おはです」
「はいこんにちは。もうお昼ですよ」
「うぐ…クヌにも叱られたんで勘弁してくださいよ」
「クヌちゃん貴方にはとっても甘いからそんなに怒られてないでしょう?大人の私が代わりに叱ってあげます」
「げー…」
「今日もお仕事がありますので頑張りましょうね。まずはお顔、洗ってきてください」
「はーい」
マイナーのジムリーダーと言っても一応リーグ所属のジムリーダー。
まだ書類仕事は年齢的にもそこまで任されていないが、それでも仕事は幾つかある。
例えばだけれど、ガラル地方で行われている子供向けのポケモン捕獲講座やトレーナー養成機関での臨時講師。
他にもワイルドエリア内に生息するポケモン達に異変が起きていないかの調査や調査隊の護衛、突発的なダイマックスへの対処とかも一応仕事の内だ。
ちなみにメジャージムリーダーはダイマックス以外の仕事は割と免除されてたり。忙しーからねー。
でもカブさんとかヤローさんとかは結構来てくれたりする。子供に人気な人らは羨ましいねえ。
「セリさん、もうお昼食べた?私なんか作ろっか?」
「大丈夫ですよ〜、先程頂いたので。はいここに座ってくださいねジムリーダー」
「遅延作戦しっぱーい大人しく座りまーす」
「はい、ではこちらがクレータウン周囲のワイルドエリアへの調査承認、調査隊の護衛に関する書類です。サインお願いしますね」
「はーい」
ニコニコ笑顔のセリさんは何を言っても何をしても常に笑顔で怒った時すら笑顔なので逆に怖い。
けど多分この人ド天然。たまに私のサインする書類に買い物メモを間違えて混ぜ込んでたり、黒焦げになったポフィンの前で笑顔のまま眉を顰めて戸惑っていた時とかあったし。
というか何だこの書類、また調査するんだ?
この辺のワイルドエリアは別に面白いものも特段無いし、変な場所とかもないんだけどな。
…よく見たらこの書類の人他の地方の人か、なら面白いものなーんもない場所だけどぜひ見て行ってもらいましょうかね。
「あら…モナルちゃんまた髪傷んでますよ、ほらここ枝毛」
「げ、あー…昨日砂埃凄かったしなあ」
「キバナさん張り切っていましたねぇ」
「……あー…そっすねぇ……」
「相変わらずあの人のこと苦手なんですね」
「いや、苦手というか、なんというかその……以前ご迷惑をおかけしたので…」
「あらぁ」
昨日は勝ち上がったキバナさんがダンデさんとの対戦で初手からすなあらしを起こし、砂に隠れながら戦うというテクニカルな戦い方をしていたがあと一歩通じずダイマックス対決で押し切られてしまっていた。
やっぱあのリザードン強いよなぁ。
以前一度だけ対戦した時に私お得意の『ねばねば岩まみれもうお前いわタイプ使いの間違いだろ戦法』を行うも華麗に破壊され尽くした。
キョダイゴクエンによって煤になったクヌを泣きながらピカピカに磨き直した時のことは未だに覚えている。
ぽんぽんと判子を押していき、またいつも通りの毎日が始まるなぁと思っているとまたも書類の中に珍しい物が混ざっていて目に付く。
「……セリさん?このスポンサー様との会談予定表という書類は一体……?」
「あら、ちゃんと書類読んでて偉いですよ」
「あ、ども……いやそうじゃなくて、その……もしかしてスポンサー…切られちゃいます……?」
「さあ〜それは先方からの話を聞かないことには分かりませんねえ。どうしましょうかね、切られちゃったら」
「どうしますかねー」
なんだかふわふわした雰囲気だが派手にやばい内容の書類が紛れ込んでいたではありませんか。
ジムリーダーにはそれぞれ企業がスポンサーにつき支援をしてくれるのだが、私がモンボを買うにもキズぐすりを買うにもそのお金は全てスポンサー様からの協力あってこそだ。
スポンサー様はその対価に企業の宣伝とか諸々を求めてくるのだが、基本的にそういうのはメジャーの人の方が圧倒的に多い。
見てよダンデさんとか、あの人のマントスポンサー塗れだよ。
ちなみに私は衣食住基本的に全部スポンサー様から頂いているもので過ごしているので、切られたらその時点で朝晩飯抜きの一日一食、黄金月1万円生活が始まってしまう。
……まー、ぶっちゃけそろそろあるかもなーとは思ってたけど。
そりゃこんな負けまくってる人の支援とかしたくないよねぇ…
「それで…えーっと、なになに…『平素より大変お世話になっております。このたび、今後のスケジュールや案件についての打ち合わせをさせて頂きたく存じます。つきましては、下記日程……ん?」
「どうかしましたか?」
「これいつ送られて来ましたか?」
「今朝ですね」
「これ日程が今日の……ていうか後5分後位なんですけど、なんかの間違いですかね」
「あらぁ」
「間違っていませんわね、わたくしこの時間に指定しましたもの」
「え、じゃあすぐ準備しないとじゃないですか。私ちょっとスクールの制服取ってきます」
「そのままでも構いませんわよ?昔のハルジオみたいでとっても可愛いもの」
「なら私はお茶請けの準備を……あら?」
「ん?」
なんか今変じゃなかった?
そう思い事務所のソファを見ると、誰かが座っている。
色黒ながらも可愛らしいつぶらな瞳をしたその御方は、ポプラさんが思わず「ピンク!ピンク!まっピンク!素晴らしいさね!」とでも叫びそうな程にピンクなTheお嬢様という感じ。
その服を着こなせるのはあなたでしか無理でしょうよ、と言いたくなるほどピンクの服と巻き髪を見事に両立させているそのお嬢様は、
ちなみに私のミノムッチな心臓は既に2回ほどひっくり返った。
「うひゃあう!?」
「まあ、どうしてそんなに驚いているのかしら?わたくし予定通りに参りましたのに」
「あらぁ、申し訳ありませんユカリ様、お出迎えも出来ずに」
「あっばばば!す、すみません、すみませんこんな格好で、あの、えっと、」
「気にしていませんわ、モナル様の昨日の試合を観て直ぐにこちらに来たんですもの。びっくりしたかしら?」
昨日の試合、という言葉にピシっと私が凍り付いているとくすくすと笑いながら髪をふさあっとしている。
寝起きな上、いつも着ているお気に入りのパーカーをどうにかできないかと裾を握り締めながら冷や汗を流していると、ユカリ様は何も言わずにこちらをじっと見てくる。
何がしたいんすか、いや、まあ、昨日の言い訳を聞きたいんでしょうけど。
でも言い訳とか無用ってタイプだった気がするしこの人。
ヤバいどうしよ。
「…その、昨日は、不甲斐ない試合を見せてしまい申し訳ありませんでした……」
「まあ!そんなに卑下しなくても頑張っていたと思いますわ!それにお相手のポプラ様は大変フェアリータイプに造詣が深く『魔術師』の名に相応しいお方でしたもの、是非ポプラ様にもご教授頂きたいですわ!」
「ああ、いや、はい…すみません……」
今更ながら、目の前にいるこのお方。
ユカリ様こそがむしタイプジムのスポンサーに着いてくださっている『ロンドフローラル』の社長だ。
父親の子会社らしいがそれでも私のスポンサーが出来るくらいには余裕のある会社らしく何故か私が就任した時から着いてくれている。
関係ない話だが、現在私のポケスタはこの企業のRTといいね、もしくは宣伝しか行っておらず一度業者と間違えられBANされた事がある。いいだろ化粧品と香水ばっかりRTしてても。
……とまあ、現実逃避はここまでにして。
気まぐれな方だし遂にスポンサー契約を切られてしまう時が来てしまったのかもしれない。
そうなったら私どうやって生きていくかなー、ローズさん辺りに仕事貰えないかな。
まあ私の事はぶっちゃけまだいい、問題はジム契約以外にもクレータウンではむしタイプが多く集まるからか不思議な花が森の奥に咲いており、それがとてもいい匂いなのだ。そのためそれらを香水とかに加工するために栽培して売買契約を行っている。
……もし私のせいでそっちまでダメになったら顔向けできないどころじゃ済まない…!
「あの……やっぱり契約終了……ですか?」
「あら」
「いや…まあそうなるかなとは思ってたし……ここ最近の成績とか見てると妥当かな…と……あの、でもあの、クレータウンへの、その、スポンサーはまだ続けて頂けると嬉しいと言いますか、えっと、ここらで収穫できる花もまだあるし、その………もし、というか、別に手を抜いてるとかな訳じゃないですけど、もし私が頑張ったらクレータウンとまだ取引してくれるとかなら………あの…………頑張るので……ごめんなさい…………」
「どうしてそんなに謝るのかしら?わたくしはまだ何も言ってないのに!」
「えっと…………違うんですか?」
そういうとユカリ様はこちらに近づき頬を撫でてくる。なんでえ。
ぐっとそのまま背もたれごと後ろに倒れそうなほど押され目を見つめられる。
眼を、勘弁して、この人目がキマってる。
逸らそうとする度きゅっと頬を押され無理やり目を合わされるので逃げることもできず暫くしていると、ユカリ様ははぁ…と不満そうな顔で離れていった。なんなんだよもー。
「うーん……やっぱり気の所為だったのかしら、最初はハルジオの次位にぴぴーん!ときましたのに」
「はあ……」
「でもその目は嫌いじゃありませんわ、綺麗な山吹色」
「…………あざます」
「その眼に免じて契約はまだ続けてあげますわ!でもあんまり不甲斐ない戦いは見せないで欲しいの、わたくし、じゃないと飽きちゃうかもしれませんもの」
「…………スミマセン…」
「ああ、後この街との契約については心配しないで欲しいわ。ちゃんと町長と契約書で結ばれた関係ですもの、こちらから一方的に解約するなんてことはないですわ」
「!ありがとうございます!」
ああ良かった。とりあえずなら一安心だ。
もし私が不甲斐なくてもジムリーダーが変わるだけで済みそうでほっとしてしまう。
…それはそうと、会社が挙げて推しているトレーナーとしてはもうちょっと頑張らないとなぁと思わざるを得ないけども。クレータウンにケチが付くことになる……今更か。
その後、ユカリ様はリーグに向かう為に去っていった。
というか本命の約束はそっちで、私の方がついでだったようだ。なんでもダンデさんに指導をお願いする為にローズさんとお話し合いに来たのだとか。やる気あるなー。
嵐が去った後のような疲労感に椅子に深く座り崩れ落ちていると、セリさんがお茶を入れてくれる。
ふーふーと冷やしながら飲んでいると、いつの間にかボールから出ていたクヌがまた何か言いたげな目でじっとこちらを見つめてきて、気まずくなってしまう。
わかってるよ、わかってる。
もっと頑張んなきゃダメだってね。
わかってるよ………………
はぁ………………
モナル ▶ ガラル地方ジムリーダー むしタイプ使い クレータウン在住
カナリィの成り損ないのような存在。14歳 身長アイリスよりちょっと高い 体重オニオン君よりちょっと重い
好きなもの モモンのみ、むしタイプ(特にフォレトス)、クレータウン
嫌いなもの 自分の髪、ドラゴンタイプ、
クヌ ▶ モナルの相棒。最近体重増加を少し気にしているらしい。
好きなもの モモンのみ、モナル、バトル、他の手持ちの子たち
嫌いなもの 自分の色、ドラゴンタイプ、うじうじしてる時のモナル