ガラル地方のむしジムリーダーなんだけど余命一年でわろえない 作:一般むしポケ好き
エキシビション 〇
(゜д゜)
メジャーリーグに上がる為の条件はなにか。
そもそもマイナージムリーダー達は別に誰も彼も弱いという訳では無い。というか結構強い、危ない仕事とか任せられるくらいには。
ただ、それ以上にその座に居続けているメジャージムリーダー達が規格外なのだ。
例えば今期はマイナー落ちしているが岩ジムのマクワさんなんかは、普通にメジャーリーグに行ったり来たりしているし。
確か最近だとかくとうジムに新しいジムリーダーが来てて……えっと、サイトウさんだったかな?その人もかなり強くてすぐにでもメジャーリーグに行くんじゃないかって噂だ。
閑話休題、メジャーリーグに上がる為の条件はひとつ『エキシビションマッチにおいて8位以内に入ること』
総当たり戦での戦いでその時の勝った負けたのポイントで計算し、最終的に8位以上に入れた人だけがメジャーリーガーとして認められるのだ。
これがーまーキツいことキツいこと。
ポプラおばあちゃんとかキバナさんとかカブさんとかetc…とにかく安定して強すぎる人達が多すぎる。無理だよあれ、ポプラさんに至ってはいつからいるのさ。
私は毎回18人中12~15位を彷徨いているという情けない感じだ。
「つまりねーメラさん。私は万年2桁人間なんですよ」
「メララ」
「しかもね、ファイナルトーナメント出場って言っても毎回タイプ相性良いところだけゴリ押ししてるだけでさー格上相手には手も足も出てないんだよねー」
「メラ」
「そもそもやる気がないんだろって?まーそりゃそーだけどさー」
ここはクレータウンに隣接しているワイルドエリア「カレドニのもり」
ここはむしポケモンの天国で、森なら何処にでもいるピカチュウとかモルペコを除けばむしタイプばっかり生息する不思議な森だ。
その中でも誰にも見つからない秘密基地のような場所が森の奥にひっそりと存在している。少しだけ木が捌けていて木漏れ日と呼ぶに相応しい穏やかな場所。
私はなにか悩むとここに来ることにしている。これじゃあのクソガキ共を笑えないね。
切り株の上で寝転がり、お腹に乗せたメラさん(体重28kg)の白い毛を撫で付けながら辺りのアゲハントやガーメイルの羽音を聞いていると相変わらず眠たくなってくる。
ちなみにクヌは木陰で居眠り中だ。
「…………やる気…なー」
やる気、やる気が無いとポケモンにも見抜かれるくらい…いやポケモンだからかな?とにかく見てわかるくらいには私はダメ人間らしい。
まあ、原因も理由もわかってる。
解決する方法は今の所何もないけれど。
正直私がジムリーダーになった時に、私のやりたい事は半分無くなってしまっていて、その後に色々あって完全に無くなってしまったのだ。
要するに燃え尽きてしまった。なーんもやる気でん。
そんな状態で戦おうにも勝つ気が無いんだからそりゃやる気もある訳がない。
こうぼーっとしていると頭の中でホホホと笑うユカリ様とかポプラおばあちゃんとかが浮かんでぐるぐると頭の中が無駄にピンクにされて気が狂いそうになってくる。
いかんなーこりゃ、今日はもう帰るか。
「ガキンチョ共に帰れって言わないと………………ん?」
切り株から立ち上がりクヌを呼ぼうとすると、森の奥から何かが聞こえてくる。
なに?なんの音だ?…………
「!ペンさん!あっちまで走って!」
「ドラアアアアアッ」
「クヌ!メラさん!ボール戻って!」
森の奥から聞こえてくるのは……衝突音!それに強い風の音!何かしら危険なのは間違いない!
手持ちで最速のペンドラーのペンペンさんを呼び出し急いで飛び乗り音のする方向へ向かわせる。
万が一を考えてかいふくのくすりを手にしながら向かうと、案の定何かが争った後が見えてくる。
近くに倒れ伏すポケモン達に薬を投げつけながら周りを見るとかなり威力のある技でもぶつけたのか、まるで枯れているような奇妙な倒れた木々が見える……ああ最悪!これほっといたら火事になるやつ!
「ああもう!シズさんごめん消火お願い!」
「しずずっ」
唯一の水タイプであるオニシズクモのシズさんにそこを任せる。
この辺みずタイプのポケモン居ないからマジで大惨事になりかねないよもう!そもそも誰がこんな真似してるんだ…!?
見た目だけならでんきが走った後っぽい……けどデンチュラじゃない。じゃあクワガノン?いやちょっと違う気がする。そもそもでんきというより……ねっぷう…か?表面だけ焦げてる感じは。
でも、なんかねっぷうで燃やされる前に薪に変えられてるみたいな……
なんて考えつつ異常な木に沿って進むと、かなり大きな木にも拘わらず倒れへし折られ荒れ果てた状態になっていく。
流石にポケモン達は逃げ出しているようで、まだ残っているのは慌てて木の実を頬張ったモルペコくらいだ。そんなんいいから早く逃げなさいよ!
なんて、余計なことを考えているとドォンッ!と激しい音が前方から響く。
普段ポケモンバトルで振動に慣れているはずの私も驚く程でペンさんも思わず足を止めてしまう。
そして、続くように鳴き声……いや、咆哮と呼ぶ方が正しいのであろう生き物の声が響き渡る。
こんな声をだせるポケモン、私は知らない。
その事実に気がついた私の背筋に冷や汗が伝う。
ジムリーダーとして働く中で地方全体を周り、ガラル地方のポケモンは殆ど知ってると言える自負がある私が、知らないポケモンがそこにいる。
「…ロトさん、セリさんに住民の避難の申請」
『かしこまりましたロト』
「ペンさん。今あの街には戦える人は居ない、だから護衛お願い。途中でシズさんと合流して、街に向かう変なポケモンがいたら止めて」
「ドっ……ドラ………」
「いいから、私は大丈夫、なんかあったら逃げるし……クヌも居るから」
「……ドラ!」
「ん、頼んだ……もし避難終わったら、ペンさん達は街に侵入する敵を止めて。…それから余裕あったら他のジムリーダーと合流してね」
何時になく真剣な目をしたペンさんはぷにぷにの大きな身体をかそくさせながら街まで走っていく。
そんな可愛いペンさんを見れば、いつもなら微笑ましく思い和やかになるのに、どうにも鳴り止まずにばくんばくんと嫌な音を立てる心臓を抑える。
間違いなく異常事態、少なくとも普通のポケモンじゃない。
最低でも準伝説……悪ければ伝説のポケモンだ。
おとぎ話にあるみたいに会話が出来ればいいけど、この様子じゃ厳しそうだし。さらに最悪の場合それと争っている何かも危険な可能性がある。
現に今も気がなぎ倒されるような音と激しい風の音が聞こえてくるのだから。
参ったねーこれは。
修羅場真っ只中だと判断しロトムにリーグへの救援要請を頼んでおく。
私一人じゃ手に負えない可能性の方が大きい。
「クヌ、ヤバくなったら逃げていいからね」
「ブォ」
「いいって言ってんのに……まあいっか…よし、行くよ」
「ブォレッ」
残りの手持ちポケモンはクヌとメラさんだけ。
メラさんは……悪いけどまだ鍛えてる途中だから戦えないだろう。
こんな事になるならもっと手持ち増やしとけば良かったな。
……私が大丈夫な内にペンさんが戦える人と一緒に連れてきてくれるといいなあ。
なんて思いながら覚悟を決めクヌと一緒に一際開けた場所に飛び出る。
密集林なのにこの広さになるまで暴れるとか一体誰がこんなことしてやがるんだ。
そう思い前を見ると、カビゴン並にデカイ影がヌッと私達を覆ってくる。
すわこれは死んだかと思い上を見上げると、そいつはこちらではなく反対側を睨みつけていた。
こ、いつは……
「く、黒い……バンバドロ?」
「バクロォーッス!!!!」
「ぐっ……うるっさ……!」
黒い鬣をたなびかせたその馬は蹄を蹴り上げ、たたらを踏みながら対面の相手を睨みつけている。
マジで知らないポケモンだよちくしょう…!間違いなく伝説のポケモン!しかも私がどうこうできるそれじゃない!
そして、反対側もまた黒い何かが蠢いている。
赤黒く胎動する
その風が吹き荒れる度に、周囲の木は生命力を食い尽くされたのかのように枯れ果て落ち葉と化していく。
こいつは……
「……知らない!もーなんでこんなド田舎で暴れてんだコイツらあ!」
知ってる訳がなかった。私はただのトレーナーで研究者でも歴史家でも無いんだ。
とにかくクソでけえ黒い馬と黒い鳥……鳥?が暴れている。
まあ正直洒落になってないんだけどね、特に鳥の方。
風が吹く度に周りの木が枯れていく…だけならまだいい、けどさっ
「危ないっ!」
「キュウ……」
ひんしになったポケモンがいつもより苦しそうにしてるのはヤバいでしょ!
案の定、風が肌に当たる度に、気の所為かと思っていた疲労感が増してくる。
ユカリ様に頂いた化粧水で毎日ピカピカにしてるはずの肌が風に当たる度カサカサになっていく、乙女の大敵だ。
はは…この風多分当たり続けてたら死ぬ気がするな。マジで洒落ならん。
目を回しているアブリーを片手にとにかく周りのポケモンに被害がこれ以上起きないことに私は注力する事にした。
というかあんなバケモン同士の戦いに私が混ざれるかっての!
とにかく、注意はこっちに向けちゃダメ、私はあくまで周りに被害を出さないだけに留める!
「イガレッカアアアアア!!!!」
「バクロォーッス!!!!」
「クヌ!あっちの方にねばねばネットとがんせきふうじ!あとステロ!コイツらこれ以上ここから動かないようにする!」
「ブォレ!」
誠勝手ながら、このバケモン共の戦いのリングを作るべくがんせきふうじで出来た大きな岩を周囲に配置し、その間にねばねばネットやまきびし、どくびしをばら撒きまくり、空中にはステルスロックを撒いておく。
これで少なくとも暴れ散らかす度に移動して、森を破壊され尽くすなんて事は無くなるはず。
その中でどっちかやられるまで好き勝手やってくれ!
しかし、凄まじい暴風がクヌの作ったリングを吹き飛ばしそうな程に吹き荒れ、黒い風が身体を通り抜けていく度に力が抜けていく。
周囲などまるで意に介さないと言わんばかりに暴れる2匹から目を逸らそうにも、黒い風がそれを許してくれない。
流石にこれ以上はまずいと思い、抵抗するクヌとひんしのアブリーをボールに無理やり詰め、私も一応木陰に隠れる。
明らかに身体に良くないものをこれ以上ポケモン達に触れさせたくない。
「……ぅ…ぐ……やば……眠くなってきた……」
恐らく建てた岩であろうものの破壊音や飛び散ってくるステロから必死に身を隠しているも、風という形の無いもののは防ぎ切ることができない。
地面が揺れる度に口から悲鳴とも寝ぼけ声ともつかぬ声が勝手に出てしまい、周囲の様子も窺えない程だ。
どうにも眠く、頭が回らなくなってくる。
ヤバい、寝るのは不味い、こんな状況で───
「───え」
そうなれば当然、待っているのは危険だけだった。
突然今までとは比べ物にならない浮遊感に襲われ身体が浮き上がる。
──違う、これ、吹き飛ばされてる。
バゴンッと聞いた事のない音が聞こえ、バケモンの片割れが私の隠れていた木をなぎ倒しながら飛んできたと気がついたのは、それから暫くしてからだった。
枝にでも引っ掻かれたのかジクジクと痛む頬に、背中に嫌な痛みが走り上手く呼吸ができなくなる。ただでさえ働いていなかった頭は痛みで更に混乱してしまう。
しかし、長年の勘からか一つだけわかったことがあった。
「───っが、ゲホ……!ばか…!出るなって言ったでしょ!」
「ブォオオオオオッ」
クヌがボールから勝手に飛び出し私のことを庇ってくれたということだ。
普通に考えて、背もたれにしていた木が吹き飛んだらこんなもんじゃ済んでないよね。そりゃ。
明らかに怒っている雰囲気を全身から醸し出すクヌに庇われつつどうするべきか考える。
視界の端には私を吹き飛ばした暫定犯人である倒れ伏した馬が目に入る。
タイプ的に、多分……ゴーストだったんだろうか?鳥の方が撃っているあくのはどうらしき技は耐えきれなかったのだろう。
とりあえず、もう一度ステロとがんせきふうじを貼り直して……
そう考えていた時、突如でんじはでも食らったように全身が怖ばり動けなくなる。
先程までの冷や汗とは段違いの勢い、心臓から直接肌に血液が出ているのではと錯覚する程に汗が吹き出てくる。
震える頭を無理やり上へと動かすと、黒い鳥が轟々と黒い羽根を広げ血のように赤い顔で此方を見下ろしていた。
しまった。
私達の存在が、認識されてしまった。
「はっ……はっ……ぐ…………っ……!クヌ!ジャイロボォル!!!!」
「ブオオオオオオオオッ!!!」
締め付けられるような喉を無理やり開き、覚悟を決める。
私は、絶対にコイツらをこれ以上進ませない。
ここからクレータウンまで2、3km程しか離れていない。こいつの飛行速度は知らないが遅いって事は無いだろうし、何もしなければ一瞬で街まで着いてもおかしくない。
クソガキ共も腹立つし、セリさんも怒ったら怖いけどさ、街にだけは行かせる訳にはいかない。
こいつだけはここで死んでも止めなきゃダメだ。
私と14年間鍛え上げたおかげか、伝説のポケモンと言えどクヌのジャイロボールはそれなりに効いたらしく鳥野郎は嫌そうな顔をし始める。
馬との継戦ダメージもあるのだろう、悪いけれどここは良いとこ取りさせて貰うね!
「グオオオオオオオオオオアアアアアアッッ!!!!!」
「クヌ!まもる!」
「フォ!」
いつもなら鉄壁のクヌのまもるが、今日ばかりはジリジリと押され危うく吹き飛ばされかける。
ただでさえ常に風が吹いているのに、こんな息するみたいにぼうふうなんて起こされたらたまったものじゃない。
という、か……!こいつの攻撃が激しすぎてやり返せない!
枯れたとはいえ、まだ太い幹のある木に隠れつつクヌをボールから出したりしまったりを繰り返しつつヘイトコントロールをしながら鳥野郎の攻撃を凌いでいく。
私はどうするべきだ?
このまま押し切るには火力が足りないし、逆に留めようにも特殊技ばかりのこいつとはまともに撃ち合いたくない。
クヌはがんじょうだけれど万能ではないのだ。
───仕方ない、このまま逃げ続けて注意を引こう。
たまに隙があれば殴りかかって、後はひたすら回避に徹する。
「はん!私だってジムリーダー!多少は動ける所を見せてやるっての!」
風が全身を覆い続ける。
動き続けているのに冷えきってくる身体を無視して、私達はそいつに向かっていった。