ガラル地方のむしジムリーダーなんだけど余命一年でわろえない   作:一般むしポケ好き

4 / 19
二話

──────────

 

──────

 

──

 

からだが、うごかな、い

さむい

 

とりやろう、くそが、あの、ぼけなす

あのかぜ、あやつれたのか

 

 

「………………ク、ヌ…………だい、じょ、ぶ…だよ」

「…………………………」

 

 

ズタボロになったポシェットから震える手でかいふくのくすりを取り出し、クヌに与える。

体力も傷も治る薬だが、やはり気力というか、生命力とでも言うのだろうか。

あの鳥が奪ってくるそれらが戻る気配は無さそうだった。

もう、いつもの様に声をあげないクヌを見て涙が溢れ出てくる。

ああ、死ぬんだ。

 

 

私達は、完敗した。

 

 

暫くは、ひたすらに避け続けていたものの、吹き荒れる風に体力が酷く奪われていき目が霞んで来た頃だった。

時折、鳥は私を無視してどこかへ飛び去ろうとするも、クヌの技で無理やり引き留め、万が一にでも街にだけは行かせないようにしていた。

というかこいつ、明らかに人が居る場所がわかってるっぽかった。街の方だよそっちは。

 

しかし、永遠にも思えるその戦いは呆気ない最後で閉められた。

突如、鳥野郎が構えをとったかと思うと周辺を吹き荒れていた黒い風がそいつの翼の中心部に集まり始めたのだ。

嫌な予感がして、クヌをボールに戻そうとしたけれど、クヌに押し倒され庇われる形でその技を喰らってしまったのだ。

普段見るような、ぼうふうとは比べ物にならない命を蝕む風が目の前で爆発した。

 

結果として、私は今脚も手も変な方向に曲がり頭から血が出ているのか視界も赤く染ってきている。

指先を動かそうとするだけで全身に酷い痛みが走り口から情けない悲鳴が溢れてくる。

 

それでも、多分、直撃していたら即死だったたから、クヌには感謝しかない。

 

 

「…………ぅぅぅ……!………ぅぅうぅ!………くそ………!くそ、うご、いて……よ……!」

 

 

役に立たない私なんかを庇って死んだなら、私はそれに答えなきゃ行けない。

 

だから、まだ諦めるわけにはいかず街の方に向かおうにも、身体が全く動かない。

1人でも向かわないと。

這いつくばってでも行かないと、皆が、まだあの町には───

 

 

PrrrrPrrrrr

 

 

「………………でん、わ………ロト、さ」

「ロト、読み上げますロト。『避難は完了しました。ダンデ以下ジムリーダー2名が到着し対象との交戦を開始。救助に向かうので場所を知らせて欲しい』との事です。位置情報は既に送信しているロト」

「……………………ちゃん、ぴおん…………なら、まち、も……だい…………じょ───」

「警告、睡眠は危険ロト、目を覚ましてください」

「────────」

「目を、目を覚ましてロト。モナル、目を──」

 

 

そっか

 

 

よかっ  た

 無駄死 に  じゃ なく   て

 

  ク ヌ 私も  一緒      に

 

 

 

 

 

 

 

 

====

 

 

 

 

 

 

 

「……………………?」

 

 

あれ、生きてる。

 

生きてる…よね?手もある、脚もある。触っても触感ある……生きてるな?

いやさっきまでめっちゃ死ぬ感じの雰囲気だったのに生きてんのかーい。

 

あっれー私ふつーにもう無理だと思ってたんだけど、案外大丈夫なもんなんだねー?

私は諦めてたけどクヌは大丈夫かな、まあ私よりはしぶといか、がんじょうだしね。私が大丈夫なら大丈夫だよね?

とは言ってもあの暴風の中で無傷ってことはないからポケモンセンターに居るのかな。会いたいな。

会えるよね

 

……………

………………ていうかここは病院……だよね?

でも確かクレータウンの病院ってもっと木製の地味な感じだった気がするんだけど、白い綺麗な天井だなここは。

いわゆる知らない天井ってやつじゃないか。

 

 

「…………あ゛ー、ゲホ、ぅ……な、これ、」

 

 

喋ろうと思ったら、声が出ない。

めちゃくちゃガラガラで寝起きの喉のイガイガを数百倍にしたみたいな不快感が口から広がる。

みず、水飲みたい。

……あれ、まだ身体動けなくてワロなんだけど。

マジか、こりゃしばらくベッド生活かな。リハビリとかある感じの奴だなーこれは。

 

えっと、こういう時どうすんだっけな…アレだ、ナースコールって奴。

なんか指に着いてるっぽいしこれ……だよね?押して良いんだよね?大丈夫かな……?

お、押すぞ〜?押すからな〜?せー…………ん?

 

 

「………………え」

「………………ぉ、ぁ、る、ゲホッ、り…な、さ」

「モナルっ!?起きたの!?いつ!?いえ待って、あっ、えっ、い、医者!呼ばないと!モナルっま、まって!すぐ皆呼ぶから!」

「…………ま、って……あ………………みず…………」

 

 

この後連れてこられた医者に飲ませて貰った。水うま。

 

 

===

 

 

「単刀直入に言います。モナルさん、貴方は4年間眠っていました。」

「は?????」

「もうひとつ、目覚めはしたものの、恐らく何かしらの不調が今後も起きうると我々は考えています」

「????????」

 

 

どうやら私は高校デビュー失敗どころか留年という結果に終わってしまったらしい。

そうか、うん。とりあえず田舎に帰ろう(?)4年間あったんだから多分新しい住民票も居るでしょ(?)お礼参りしなきゃ(??)

ほらみてご覧、一等星に輝くアルセウス座がパルデアじゃあ常識なんですよ(???)

 

 

「オギャ、オギャギャ」

「モナルさん…我々としてもお伝えするのは心苦しいのですが、事実ですので……」

「おぎゃーーーっ!クヌ!クヌーーーっ!助けてーーっ!わかんないわかんない!わかんないよーっ!」

「お連れのフォレトスの事ですね、彼もつい先程貴方が目を覚ましたタイミングで目を覚ましたそうです。」

 

 

その声を聞いて、ふざけていた私はようやくピタリと動きが止まる。

 

 

「ほんとっ!?本当だよね!?本当に!!!?!」

「はい、ですので落ち着いて下さい。今ポケモンセンターから連れてこられているそうです。」

「…………あぁ、なんだ…………よかった……クヌが無事なら…いいや、よかった……本当に良かった……そっか…………………私だけ、生き残らずにすんだ」

 

 

いきなり過ぎて、頭が混乱していたし、そもそも私自身が死んだと思っていたから諦めてたけど、クヌが生きていてくれて本当に嬉しくて、また泣いてしまう。

最後に私が見たクヌは何も言わず、いつもの不満気な目も開かないままな生気を感じない傷まみれな姿だった。

 

漠然と死んだんだなと感じていた。

 

私だけ生き残るくらいなら一緒に死んだ方がいいと思っていたくらいだ。

だからどっちも無事で本当によかった、考えうる限り最高の結果じゃんね。

 

 

「えぐ、ごめ、なさ、とまんな」

「いえ、時間もかけずに色々とお伝えして申し訳ありません。しかし今後恐らく多くの人が来るので先にお伝えしておきたかったのです。」

「ひっく、はい、あざます、ぐす」

「はい……あの、それでですね」

「ひぐ、はい」

「まだ他にお伝えしなくては行けないことがあってですね……」

「はい、ズビッ」

「一言で申しますとローズ委員長が退任され、ダンデ様が敗北し新チャンピオンが産まれ、現在新委員長を務めておりますので、恐らくすぐに此方に来ると思われます。」

「??????????????????????」

 

 

流石に許容量を超えていた。

 

 

 

「…それと、もうひとつお話があります」

「もう勘弁して……」

 

 

 

===

 

 

 

私トレーナーのモナル!

こっちはまだ寝ぼけてる相棒のクヌ!

 

そして目の前にいるのが土下座している元(?)チャンピオンのダンデさんだ。やめて。

 

 

「本当に!本当に済まなかった!」

「ええなんでぇ!な、なんでダンデさんが謝るんですか、むしろこっちがお礼を言いたいのに……」

「それでも!あの場でオレだけでもキミの方に向かっていれば4年も眠らずに済んだかもしれない…!」

「え、いや街優先して下さいよそれは…」

 

 

どうやらあの時、私が戦っている現場に直接向かわずに先に街の方へと救援部隊は行ったらしい。

しかし、実際は私とクヌの二人で思ったよりあのトリカス野郎を削れていたことに加えて、ペンさんとシズさんがちゃんと言った通りにセリさんに情報を伝え街のみんなを逃がしていたのだとか。

さすがウチの子達、優秀〜早く皆にも会いたいな。

 

その為ダンデさんは真っ直ぐ私の方に来ていれば助けられたのではないか……と後悔しているのだそうだ。

そりゃ結果論だとそうなるけども。

 

 

「あの……ダンデさん、本当に頭上げてくれると嬉しいです」

「……わかった」

「ダンデさんとしては、まあ、私も守れてたら良かったと思うんですけど…私としては街を優先してくれて嬉しいです。街守る為に戦ったのにそっちが守れてなかったら立ち直れない所でしたよ」

「しかし!君は……」

「いいんですよ別に。元々死ぬ気でやってたんだし生きてるだけ儲けもんスよ」

 

 

そう言い切ると、ダンデさんはぎゅっと目を瞑り初めて見る表情になる。なんかこう色々と言葉を飲み込んでいる様子だった。

まー私だって無謀にも伝説のポケモンに突っ込んで行って無傷とは思ってなかったし。

そもそも本当に死ぬかと思ったし、クヌだけでも生きて欲しいけど……正直それは怖いし、一緒に死ぬならまーいっかな位の感覚だ。

 

 

「………………そうか、わかった。ならオレはもう謝らない。代わりにキミには最大限の感謝を伝えたい、キミはあの時あのポケモンの前に立ち塞がってくれた…おかげでクレータウンだけでなくガラル地方を救ったんだぜ。キミもまたガラルの英雄だ。本当に、ありがとう。」

「……あー……あー、えー、ソウスカ、ハイ…………………………あ!そういえば新チャンピオンってなんの事ですか!?ダンデさん負けたんですか!?あのダンデさんが!?無敵のダンデが!?そういえばローズ委員長は!?というかクレータウンのジムリーダーって今どうなってます!?私もしかして無職ッスか!?今って誰がメジャーリーグ行ってますう!!?!」

 

 

とりあえず面倒くさくなったのでがーーーっとマシンガントークで誤魔化してみる。

正直、まあ褒められたりするの慣れてないし照れくさいし、真剣な顔で大人に褒められるとどうすればいいのか分からない。

多分真っ赤になってる耳を誤魔化すように色々と質問するとダンデさんは苦笑しながら答えてくれた。

私めっちゃ失礼な質問してるのによく答えてくれたなー。

 

 

なんでもガラル地方は私が寝てる間にまた滅びかけていたらしい。もしかしてここやばい地方なのかな。

ローズ委員長……元委員長か。ローズさんがなんでも伝説のポケモンを利用してなんかすごいエネルギーをバーンとやってドーンってやってボーンって感じだったらしい。

それを止めた人が新チャンピオンとダンデさんの弟さんなんだとか。

ダンデさんを超えるトレーナーが産まれたとか怖い。多分この世のバグみたいな強さしてるでしょその子。

しかも私と同い歳!?

 

………………あっ、同い歳……じゃないのか、私もう17歳…………か。

もう14……じゃないのか……

……………………くっ……ま、まあ?まだピチピチ可愛い花の高校生ですけどね?

別にいいけどね?

 

ジムリーダーの件だが、これは少し複雑な事になっているらしい。

なんでも元々マイナーな事もあって別に代わってても問題ないやろという認識だったのだが、クレータウンの皆がジムリーダーを変える気は無いと言ったらしく未だに私のままだったんだとか。変なの。

しかし、それはローズ委員長との間に作られた契約だったのでダンデさんはまだそれを契約し直してないのだとさ。

なんで?

 

 

「ああ、その事なんだけどな…キミが目覚めないんじゃないかとか、そういう理由では無かったんだ。むしろ、目が覚めた時のことを考えて受けなかった。」

「はあ、目覚めた時ですか?」

「…はっきり聞くが……キミはまだバトル出来るか?」

「あーーーー………………なるほど」

 

 

つまりは、今私がもうバトルできない状態にも関わらず無理やりジムリーダーを続けさせるような契約を受けたくなかったんだろう。

これはどっちかって言うと、トレーナーとしてのダンデさんの意見だろうな。そっちの事もよくわかってる。

 

さて、問題は私が戦えるかどうか。

 

ふむ……まず肉体。

現在全身の筋肉が全て落ち切ってまともに立つことすら難しい。そんでもって、多分だけど左眼が全く見えてない気がする。さっきからずっと掠れてるんだよなーこれ。

 

そんでメンタル。

…………まあ、ぶっちゃけ怖いよね。怖かったよあの鳥……

特にぼうふうとかは目の前でされたら普通にきついものがある。

もし、クヌがまたぼうふうとか、そういう技を喰らってしまったら、わたし、わたしをかばって

 

 

「───うぶ、」

「!すまない!嫌なことを思い出させた!」

「う、いえ、気にしないでください……この寝坊助がトレーナーの言うこと聞かないのが悪いんですから」

「…………ふぉ」

「んーヨシヨシ、まだお眠だなー後でいっぱいお説教しながら磨いてやるからなー」

「…キミを咄嗟に庇ったんだってな、良い相棒だ」

「……相棒が良くても、トレーナーがこれじゃダメダメですよ」

 

 

そう言いながら、私はダンデさんに向かって首を振る。

もう、私は多分トレーナーとしては戦いそうにないのだと。

それを見たダンデさんは悲しそうな笑顔で頷いてくれた。

 

 

「……分かった、無理強いはしない。でももし戦いたくなったらいつでも言ってくれ、オレがジムチャレンジの推薦状を渡すさ。それに後任が決まるまでの間、キミにはもう少しジムリーダーとしていて欲しいという…まあ、なんだ大人のジジョウって奴もある」

「ああ、それもいいですね。後任が決まったら……気ままに旅でもしてみようかな…………この身体が先か……」

「そうだな、まずはリハビリだ。でも先に他の人たちの相手をしてくれると嬉しい……特にルリナなんてさっきからずっとそこで睨んできていて実は気まずいんだぜ」

「私が最初に見つけたのに…!」

「あんな人でしたっけ」

「4年ぶりなんだ、許してやってくれよ」

 

 

そういうとダンデさんは赤いマント……ではなく、新しく身につけている赤い服をキュッとしてから去っていった。

新委員長になったばかりで忙しいんだろうな。

前は怖くて近寄り難い雰囲気が何処か漂っていた。

本人は気のいいお兄さんなんだけどさ、私みたいなふわふわした理由でトレーナーやってる奴と比べると真剣に生きているというか……その真剣さがこっちにも伝わってきていつも責められているように勝手に感じて苦手意識をもっていた。ただの被害妄想だね。

 

でも今は……やりたい事とやるべき事を両立させている大人というか、今なら正面から目を見てもあんまり怖くない。

身が竦むようなあの圧はバトルの場だから出ていたのか、それとも立場がそうさせていただけなのか。

私には分からないけど、今は素直に頼ってみようかなという気持ちだ。

まーこれから多分散々ご迷惑かけるけどさ。入院費とかもしかしてリーグが負担してくれてたりする?

 

その後、うるうると男が見たら1秒かからずイチコロな顔で心配そうに抱きついてくるルリナさんにぎゅっと4年ぶりにされるのだった。

 

まだまだお見舞いが続くようで、暫くは忙しそうだねーこりゃ。

 

 

 

 

 

 

それにしても……

まーそう上手い話はないよなぁ。

 

私残り一年しか生きられないかぁ

 






ストック全然ないんでこっからは各日くらいで投稿します…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。