ガラル地方のむしジムリーダーなんだけど余命一年でわろえない   作:一般むしポケ好き

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四話

 

「いやー!帰ってきたなあ体感2週間ぶり!久々!」

「フォレ」

 

 

車を降りて深呼吸すると、いつもと変わらないはずなのに何処と無く久々な気がするクレータウンの空気。

田舎特有の森の匂いがしてくるような若干の青臭さもあるけれどこれが一番慣れた空気だ。

相変わらずボロい標識がお出迎えしてくれて……してくれ………ん

んん……え?なにこれ?なんか知らん建物めっちゃ建ってない?

 

 

「…せ、セリさん!なんか変なのが色々できてる!このクソド田舎にデリバードポーチ出来てる!?」

「あら、あれは2年くらい前に建てられたんです、この辺の若い子たちは皆あそこに集まってて」

「うっそ!なんで私が起きてる時に作ってくれないのさ!やったー!便利!」

「私も愛用してますよ〜…やっぱり、手軽なのって大事ですよねぇ」

「そうそう!いやっほーい!これで雑貨買いにいく為だけにワイルドエリア抜けなくて済む!」

 

 

前はコンビニとかそういうのが全然ないせいで毎回他の街まで行かなくては行けなかった。

あれがまー面倒くさくて、ついでに街の人から頼まれた物も買いに行ったりしてお使いしていたものだ。

クソガキ共なんか調子乗って私にお菓子買ってきてー!とか言ってきやがってさー?

アンタらのお母さんに怒られるのは私だってのにまーもう生意気ったらありゃしない。

そうそう、丁度目の前のこの人に似てる感じのクソガキで私より背が低い癖に私をチビだのなんだの言ってきやがって挙句にゃでかいきんのたま呼ばわり。

バカにしてさ…………なんか目の前の人めっちゃ私の事見てくんだけど。なんだ?というか誰?新しい住民?

 

 

「…………え」

「ん?あれ……えっと、もしかしてクレータウンの住民ですか?初めまして、モナルって言います。以前…以前?住んでて久々に戻ってきたというか……」

「キンタマのねーちゃん……?」

「そうそう、そんなあだ名で呼ばれてて……っておい、なんだとコノヤロウ」

「う、嘘だろ?俺の事覚えてないのかよ!?俺だよ!」

「は?何?オレオレ詐欺?」

「ほら!森で秘密基地作ってた!」

「……………………は?」

 

 

世迷言を抜かす少年の顔を見上げると何処と無く誰かに似ている気がする。

というか本人だった。

 

あの時のクソガキはすっかり学生に進化していたのだ。

 

 

「はああああ!?嘘だ!だってハナタレの泣き虫のガキンチョが、わた、わた、私より背が高くなってる!?嘘だ!」

「う、嘘じゃねえって!今俺もう14だぜ?つーかみっつしか変わらないだろ!……そりゃ背も伸びるし声も変わってっけど俺なのは間違いないって!ほらこいつ覚えてるだろ?俺の相棒キャタピー!……今はバタフリーだけど」

「う、うそだろ……4年…………4年………………?よ、4年ってこんなに変わってるものなのか……?」

「モナルちゃんしっかり!」

 

 

信じたくないが確かにこのバタフリーは当時から連れていたキャタピーに違いない。ワタシ、むしポケモン、ミワケトクイネ…

そしてあまりの異常事態にフリーズしていると、デリバードポーチから女の子が出て来たが不思議そうな顔でこちらを見ている。

 

……い、いや!今度こそ新しい住民に違いない!

だって地元に女の子とかあんまりいなかったしこんな子は私知らな……

 

 

「きんた……………フォレトスのお姉さん……!」

「いまきんたまって言いかけなかった?」

「言ってないです、乙女として断じてそんな事言ってないです」

「私は乙女じゃねえと申すかコノヤロウ…………で、えっと…ごめん誰だっ……け?」

「い、いっつもこいつと秘密基地に居たじゃないですか…」

「嘘でしょ!?女の子だったの!?」

「それもうこの馬鹿とやりました」

「うるせえっ……!あれは一生の不覚だっ……!」

 

 

う……嘘だろ……私が寝てる間にそんな面白そうなイベントがあったのかよ……!

見たかった……!その瞬間を是非とも見たかった……!

 

……いや違うわ、それどころじゃないわ。

4年……そうか、今もう14歳だから実質私と同い年なのか…

えーマジか、時渡りのポケモンとかってこんな気持ちなんかな。

…………う、ちょっとキツくなってきた。

ダンデさんとかカブさんはあんまり変わってなかったし、ルリナさんに至っては変化髪型くらいで全然なかったし実感湧いてなかったけど、そっか、私思ったより取り残されてるのか。

背も2人ともすっかりおっきくなってるし、昔みたいに頭叩くのも一苦労かな、これは。

 

 

「……あー、そっかそうだよね。2人とも随分大きくなっちゃってさー生意気だぜー?」

「……そりゃ、あの日姉ちゃんのお陰で俺らは逃げられたからだろ」

「そうです!あの日……いきなり放送で避難するように言われて、それで帰ってきたら……森はぐちゃぐちゃで、秘密基地も全部壊れてて…………それで、お姉さんは……」

「あー秘密基地やっぱダメだった?そんな気はしてたんだよね。いやーそっちまでは手が回らなかったな、ゴメンね」

 

 

なんて、冗談交じりに謝ると2人揃って少し怒ったような、悲しそうな顔で掴み掛ってくる。

 

 

「ふざけんな!あんなん別に作り直せば良いだけだろ!」

「おわっ!?」

「私達、ずっと心配してたんですよ!?冗談でもそんなことで謝らないでくださいよ……お姉さんは1人しか居ないんですから……」

「……まだ言ってなかったっけ、本当にありがとう、姉ちゃん、街のために…戦ってくれて」

「ありがとうございます」

「おあ……」

 

 

あー…ほんと最近こんなのばっかりだ…

褒められたり、お礼を言われる方が嬉しいとは思ってたけど、こう面と向かって言われると照れくさくて全身がむず痒くなってくる。

それも、昔のワルガキ時代を知ってる子から言われると尚更だ。

 

 

「あー……うん、まあ、ごめ……えー……気にし…………うーん…………えっと…その…………あぅ」

「……ははっ変わってないな姉ちゃん、褒められると照れて黙っちまうとこ」

「揶揄わない!……でも、ちょっと安心した。見た目は…まだ痛々しいけど中身は前のままじゃん、別人になってたらどうしようって二人でよく話してたんだ」

「う、うるせー…別にそんな人は簡単に変わんないっての」

「そうか?……そうだな、こいつだって話し方はちょっとお淑やかになったけど中身は相変わらず…」

「馬鹿!」

「いっでえ!」

 

 

……取り残されてたと思ったけど、変わらない物もあるんだな。多分、きっと。

馬鹿な会話に思わず笑っていると、揶揄われて不機嫌そうにジロリとこっちを見てくる。

確かに変わってないみたいだ。

 

 

「んじゃ、またジムまで遊びに行くよ。まだ帰ってきたばっかで忙しいだろ?」

「うん、すみませんセリさん引き止めちゃって」

「いえいえ〜2人も元気になったみたいで私も嬉しいですよ〜」

「まあな!……じゃーな!きんたまのねーちゃん!」

「ばっ…………じゃ、じゃあね!き……んたまのねーちゃん!」

「あぁん!?前蹴り飛ばすって言ったよねクソガキども!」

「おう!待ってるぜ!じゃあな!」

「ご、ごめんなさい!じゃあ!」

 

 

ほんと、変わってないみたいだ。

 

 

***

 

 

「おぉ…ここも変わってないねセリさん」

「ええ、変える予定も無かったし…それにモナルちゃんが帰ってきた時に困らない様にって思ったの」

「あら嬉しい」

 

 

街中は結構変わってたけれどジムは本当に変わってなかった。

前からある外装の剥がれ具合もちょっとヒビの入ったコンクリの床も切れかけの照明も……いやそこは変えよう?

 

 

「やー私の部屋もこの感じだとあんま変わってない感じですかね?」

「あっちは私はたまに掃除しに行くくらいで…」

「え゛」

「普段はペンさんやシズさん達があそこで過ごしていましたよ〜」

「……ま、住処にしてくれてたならいっか。みんなも居てくれてありがとね」

 

 

セリさんに部屋の中を見られたのはちょっと恥ずかしいが、見られて困るものは……まあそんなに無いはずだ。

セリさんは常識ある大人だからね、多分無闇に漁ったりしてないはず……多分、きっと。おっちょこちょいで変なところ倒して見ちゃったとかはありそう。

 

見慣れた田舎あるあるな全面白い壁と少し黄ばんだシーリングライトを過ぎると、こちらも見慣れた事務室だ。

私専用の机とセリさんの机、それにお客様用の机にユカリ様が座ってるソファと街のおばあちゃんとかが持って来てくれたお手製の布の飾り物、緑髪のメイドさんに休憩室を遮る謎のジャラジャラした暖簾………………ん?

 

 

「お久しぶりですわ!モナル様!」

「のわああああっ!2回目ですね?!」

「あら、ユカリ様お伝えしてくれてたら何かご用意いたしましたのに」

「まあ!わたくしとしてはモナル様を連れてきてくれただけでも充分ですわ」

「お、お久しぶり?です。ユカリ様、4年ぶり……なんですよね?」

「ええ、本当にお久しぶりですね」

 

 

この人!この人本当に心臓に悪い!

なんで毎回登場演出が集中線ついてそうな感じなんだ!

 

ユカリ様は前よりもムチム…お綺麗になられて髪のロールも2つくらい増えている。どうやら絶好調の模様。

後たまに見かけてたメイドさんも今日は居るらしい。

…………ちなみに、私は一身上の都合でこの人がちょっと苦手。

 

 

「その、ご迷惑をおかけして…」

「わたくし、もし今回の事を迷惑に思うような女だと思われているなら心外ですわ!」

「ああぁ…えっと……いやでも…」

「よいしょっと…モナル様、こちらを見て?」

「うひゃい」

「コホン……一人のジムリーダーとして、またトレーナーとして、強者として、役目を万全に果たされたことに同じく立場ある者として尊敬の念と最大限の感謝を送らせて頂きますわ……ハルジオ!」

「はい」

「ああユカリ様も頭下げないで……」

 

 

ここ最近会う人みんなに頭を下げられてる系女子高生の私に、メイドさんが手に持っていた何かを手渡してくる。

多分困惑と恥ずかしさで変な顔になっている私は誤魔化すように、その箱を手に持つとやたらと重い感じが、というか、あれ待ってやばい、おも、重い。

 

 

「あら、ごめんなさい。そうでしたわねハルジオ開けて差し上げて」

「失礼します」

「ああああお手数お掛けして………なんだこれ」

「其方はカロスでも選りすぐりの身体を補助してくれる装置ですわ」

「うえっ!?こ、これ相当高いんじゃ…」

「受け取る価値がある人だとわたくしが判断していますもの」

「うぇひ……その、ありがとうございます……」

 

 

有難いことに身体に取り付けたら動きを補強してくれる謎のスーツを下さった。

流石カロス、発展してるなぁ。

 

 

「それでですね!他にもお話がありますの!」

「はあ…あ、もしかしてジムリーダーとか、スポンサーの件……ですか?」

「ええ、もう色々と町長さんやダンテ様達とお話させて頂いたのですけれど、本人ともお話しておきたくて」

「あー…その事なんですけど、私引退します」

「………………え?」

「えっと、もう、ちょっとバトルとかは……厳しいかなって」

 

 

そう言うとユカリ様はかなしばりでもかけられたように固まってしまった。

まあ、うん、賛成はされないだろうなと予想してたけどね。

気まずい沈黙が流れ、後ろのメイドさんが「こいつユカリ様のお願いを断りやがった!」と言い出しそうな顔から目を逸らし、時計の秒針の音に逃げ出す。

カチコチと音が響き、5分か10分か、永遠にも感じる時間が流れようやく動き出したユカリ様は眉をひそめ考える様に話し出した。

 

 

「……モナル様は、もうバトルはできませんの?」

「ん……まあ、ちょっと厳しい、かもです。」

「それは…トレーナー自体も辞めてしまうという事ですの?」

「そうなりますね」

「………………そうでしたの、あら、まあ、そうでしたのね」

「すみません、4年もご迷惑おかけした上で」

「いえ……そう、残念ですわ、本当に」

 

 

多分普段だったら「そんなの認めませんわ!」とでも言っていたのだろうか。

後ろに立つメイドさんも少し驚いた表情をしているしね。でもユカリ様ちょっとワガママな感じはあるけど一応物事自体は考えてくれる人だから、わかってくれるとは思っていた。

こんな自分の身体を盾に押し通してしまった事に罪悪感を覚えるけれど、いずれ言わなくちゃいけないことではあったし。

4年も待たせてしまった街のみんなにも申し訳ないけれど、私はもうダメだ。

 

 

「……申し訳ありません、本日の所は一度帰らせて貰いますわ」

「いえ、こっちこそすみません」

「いいえ、モナル様が目を覚ましただけでもわたくし嬉しいんですもの、少し焦り過ぎていましたわ」

「……その、次のジムリーダーはきっと凄い人なので、私と違ってちゃんとメジャーを目指すやる気溢れる凄い人だと思います。少なくとも、私なんかよりはちゃんとした人だと…思います。だから……もしお眼鏡に叶ったらその人のスポンサーになってあげてくれたら嬉しいです」

 

 

そうふと思った事を伝えると、くりんとした丸い目をしているユカリ様が見たことの無い悲しそうな険しい目で私のことを見てきた。

 

 

「……わたくし、その言い方は嫌いですわ。自分ばかり卑下なさって、上ばかり作り上げる考え方……もう少し自身の事をキチンと見てあげてくださいな」

「え、あ、はい」

「それでは失礼致します…ハルジオ行きますわよ」

 

 

最後に何故かお叱り言葉を受けてしまったものの、ユカリ様はジムから去っていった。

何時もなら自信満々な立ち姿なのに、心做しか落ち込んだように見える背中を眺めながらさっきの言葉を思い返す。

 

自分を、キチンと見る。

 

まるで、負け続けで弱くて、何にもできなくて、落ちこぼれの私に期待してたみたいな言い方じゃないか。

そんな訳ない、私ははみ出しものでなんにもできなくて、いつも…………

 

 

「………………セリさん」

「どうかしましたか?」

「…………私、わかんないや、だって、だって……」

「モナルちゃん……?」

「………………そんなわけ、ないもん……」

 

 

 

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