ガラル地方のむしジムリーダーなんだけど余命一年でわろえない   作:一般むしポケ好き

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五話

 

私は、落ちこぼれだ。

 

みんなにできることが出来ない。

みんなが当然の様にできることが私には出来ない。

そう理解したのは物心着いてからほんの少し経った時だった。

 

「お前はどうしてこんな事ができないんだ」

 

そんなん、私が知りたいよ

 

 

 

===

 

 

 

「この辺はあんま変わってないね」

「フォレ」

「森もあんなにぐちゃぐちゃだったのにすっかり元通りに…いや、ちょっと倒木が多いかな?」

 

 

あれから、街の人に挨拶周りをして、また皆にお礼を言われたり、溜まっていた書類やらなんなり色々としていたら3日も経っていた。

ガキンチョ共は顔を合わせる度に話しかけてくれてお菓子とか渡してきたりしやがった。子供扱いすんな。

街のおばちゃん達とかは泣きながら抱きついてきたり、何時も通っていたカレー屋さんとかは私の好きな味とか覚えてくれてて、町長さんには好きだったきのみをもらっちゃった。

 

しかしまあ、楽しくはあったし嬉しくはあったのだけれど久々に何も無い今日、何となく人と話したい気分ではなかったので森の方に来た。

 

破壊痕は草やツタに覆われ薄くなってはいるものの、幾らか目につく。しかし、ふてぶてしいポケモン達はそこをねぐらにしたり、倒れた木に木の実を隠したりと今日も元気に過ごしているようだ。

 

 

「ドララ!」

「おーペンさんここの主になったの?ビークインはどうしたのさ」

「ドラ…」

「あの後代替わりしたのか……まー仕方ないか」

 

 

私の手持ちとは言えど、4年も外で生活してた子達はそれぞれ半分野生のような生活をしていたらしい。

ペンさんとシズさん、それにメラさんはあれ以来何があっても解決できるようにと鍛え直していたらしく、ここで闘っていたらそれを見た他のポケモンが主の様に扱いだしたんだとか。

何とも、親孝行もの達だねえ。

 

 

「ごめんね、皆頑張ってくれたのに、私がこんなんで」

「ドラ…」

「シズ……」

「皆には言っておくけど、私とクヌ来年の今頃には死んじゃってるから、皆の事他のトレーナーさんに預けようと思ってるんだ…ごめんね、本当に」

 

 

そう言うとショックを受けたのかぽろぽろと図体に見合わない涙を流し始め、鳴き始めてしまう。

流石に心苦しいけれど、これまでずっと共にしてきた相棒たちだからこそ、信用できる人に預けたいと考えていた。

……ペンさんは主になったらしいし、セリさんにボール渡してここでクレータウンの守り神でもしてもらった方がいいかな?

シズさんは……ルリナさん、とか?迷惑かな?グソクムシャとタイプ被るし困っちゃうか。

 

"自分をキチンと見てあげてくださいな"

 

……………………うるさいな

…………メラさんは、カブさんとか……かな。

……マルヤクデと被っちゃうか。困るよね。きっと。

皆嫌な顔しないかな、いや、まあ、しないと思うけどさ。

この子達は新しい場所でも他の子達と仲良くできるかな

シズさんは、けっこう、わがままだし

メラさんはいじっぱりなくせに泣き虫だし

ペンさんはセリさんにちゃんと甘えられるかな、あまえんぼの癖に、かっこつけるし

 

でも、わたさないと

ちゃんと、しんらい、できるひとに

 

だから、そんなめでわたしをみないで

 

 

「……ひぐ、っ、あ、ぅ……むり、むりだよ、ごめんね、ごめんなさい、やだよね、ぐず、やだよ、わたしだって」

 

 

大粒の涙を流す子達に私も我慢ができなくなってしまう。

おちゃらけてようと思ってたのに、ずっと、なあなあにしてたのに。

 

ユカリ様に言われたあの言葉は、思っていたよりも私に深く突き刺さっていた。

投げやりなのも、見て見ぬふりしていたのも、全部纏めて目の前に突きつけられてしまった。

自分に言い聞かせる為、過去の経験を当てはめて逃げ続けていた事だけでなく、現状に嘘をついている自分自身すらもさらけ出してしまう。

 

嫌だ、やだ、みんなともっと居たい。

 

街のみんなもこの子達とも、まだ全然話せてない。全然足りないよ、1年なんて。

 

 

「えぐ、やだな、なんで、なんで今更起きちゃうのさ、いちねん、とか、ふざけんな、」

「ドラ………」

「やだよ、わたし、以外のトレーナーとか、やだ、わたしのだもん、みんな、わたしが、ともだちになったのに」

 

 

クヌと一緒に旅を初めてから、色んな地方を回ってきた。

向かう先でお腹を空かせていたフシデにモモンのみをあげたら懐かれて、初めてクヌ以外に懐かれたから嬉しくてお願いしたらボールに入ってくれたペンペン。

水場で困ってた時にどうしてもなみのりを使える子が欲しくて、三日三晩探し回って、ようやく見つけてからさらに三日三晩頼み込んで、断られて凹んだりして、たまたま襲われていた所を助けてやっと仲間になってくれたシズク。

前任のジムリーダーから託されて、喧嘩とかもしたけどようやく仲良くなれたメラさん。

 

 

「やだぁ……やだ、やだ……やだよ…………なんで……」

 

 

クヌと一緒なら良いなんて、そんなの言い訳でしか無かった。

本当ならクヌだけでも生きて欲しいし、できることなら私も生きていたい。

まだ14年間しか生きていないのに、ちょっと挫折したけど、まだ頑張れたかもしれないのに、もう時間が無くなっちゃった。

溢れてくる涙を止めることもできずペンさん達に助けを求めるように縋り付いてしまう。

きっと同じくらい嫌なはずなのに、苦しいはずなのにどうしようもできなくて嗚咽だけが零れていく。

 

やる気を出そう出そうと、言い訳ばかり重ねていた無駄な時間は、今ではどんなに欲しがっても手に入らない。

 

後悔したく無いのにあそこで正義感なんて出さなければ、とか、ダンデさんにもっと早く来てよ、とか黒い考えもグズグズと浮かんでは消えていく。

でももうどうする事もできない事実を前に、私は皆と抱き合いながらただただ、泣く事しかできない惨めな存在だ。

 

暗い木陰で泣き声だけが響き続けていた。

 

 

 

===

 

 

泣き疲れて、涙も枯れて、ぼうっと4年前と変わらない私の秘密基地で4年前よりも小さく骨ばった自分の手を見つめていた。

帰ろうにも動く元気もなく、ただただ蹲るように車椅子に身体を預ける。

まあ、泣き腫らした顔を見られたくないから、どっちにしろ暫くは帰れないし丁度いいかもしれないけど。

 

泣くことを辞めると、今度は頭の中でぐちゃぐちゃな思考がなみのりのように押し寄せてきて、自分の事をまた戒めてくる。

ああ、そういえばセリさんはどうするんだろ。

私が居なくなったら次のジムリーダーの補佐役になるのかな。

やだな、なんかやだ。セリさんは私の補佐役だもん。

私こんなに嫉妬深かったっけ。

私がいなくなった後のみんなを想像したら胸がじくじくと傷んでくるのはなんでなんだろう。

治ったはずの全身の傷がピリピリとしてきて、身体が熱いのに脳みそが冷えていく嫌な感覚。

 

私何してるんだろ。

 

1年しか時間が無いって散々泣いた癖にたった今無駄な時間を過ごしてる。

でも何をすればいいんだろ、わかんない。

 

何ができるんだろう。私。

 

そうして、また答えの無い問題に頭を痛めているとふと相も変わらずふてぶてしい顔をしたクヌが目に入る。

クヌは怖くないのだろうか、嫌じゃないのだろうか。

あと1年で死ぬんだよ?死んじゃうんだよ?

もうお話できなくなるかもしれないし、みんなとも会えなくなるんだよ?

私、まだクヌとやりたい事いっぱいあるのに、悲しくないの?

 

そう考えていると、クヌと目が合い何を考えたのだろうかくるりと背を向けそこにある大きな傷を見せてくる。

あれは、私を庇った時に出来た傷だ。

 

……クヌは私のせいだって言いたいの?

…………そうかな、そうかも。

………………私も、そう考えるかもな。

 

………………私のせいで、クヌも

 

 

「…………はは、バカみたい…………ぐえっ!?」

 

 

今までにないくらい嫌な気分になり、また俯いているとそんな考えを読んだのか、怒った表情になったクヌが私の脚にたいあたりをしてくる。

何すんだこいつ、私今凄い泣きたいんだけど。

一言文句を言ってやろうとクヌを見たら、また背中をまた見せてきていた。

 

でも、さっきより少しだけ近くで良く見える。

クヌが見せたいのは、この傷じゃなくて、そのすぐ側にある小さな傷の方だった。

 

 

……これは、私が鍛えようと無茶な事ばかりしていて、山の中で野生のポケモンに襲われた時に庇ってくれた時の傷。

今だったらなんて事ない、縄張りに私が入ったせいだと言えるくらい馬鹿な話だ。

その時は一晩中クヌに泣いて謝って磨いていたのだが、随分と誇らしげにしていた記憶がある。

 

"護ることが出来た"

 

とでも、言いたげな顔だった。

 

 

「フォレ」

 

………………

…………

……そっか、クヌは護ることが出来るんだね。

あの時も命懸けで守ってくれたし、それだけじゃなくて私の生きてきた14年の間、私は昔からずっと守られ続けてる。

じっとクヌの顔を見ていると、言いたいことが何となくわかってくる。

 

"お前は何が出来るんだ?"

 

と。

……私、は…………

 

クヌは自分に刻まれたその傷達を過去にあった自身の経験として身につけてきていた。

私はどうなんだろう、と過去にあったことをつらつらと頭に浮かべる。

嫌なことだけでなく、楽しかったこと、出来たこと、経験してきたことを。

私がレベルアップしてきた道のりを少しづつ思い出していく。

 

自分を卑下する為でも比べて嫌な気分を慰めるためでもなく、純粋な経験だけを思い出していく。

そうすると、少しだけ自慢できる事が浮かんできた。

 

そういえば…バトル、は、ちょっとはできる方……かな

……わたし、弱くは無いよね

だから、ジムリーダーやってるんだし

落ちこぼれだったけど、頑張ってここまできたんだから。

 

私にもできることがようやく頭に浮かび、少しだけ救われた様な感覚になる。

何も出来ないんじゃなくて思いつかなかっただけなんだなーと、単純な脳みそが少しだけ上向きな考え方をできるようになってくる。

そうなると、今度は疑問が湧いてくるではないか。

 

…………バトル、頑張って来たよね、わたし。

何がしたくて頑張ってきたんだっけ。

 

なにが、したくて………………

なにが…………

 

 

「あ」

 

 

パッと顔を上げみんなを見つめる。

そうだ、旅に出たのも、ジムリーダーになったのも、その為だったじゃないか。

ジムリーダーになった時に満足して、挫折して諦めてたけど、よく考えたらそうじゃないか。

 

最初はクヌのすごい所を

それからみんなのすごい所を

 

私みたいなうじうじしてる、森の隅にいるような奴でも、落ちこぼれでも、むしタイプだって、やれるんだってところを見せつけてやるためにジムリーダーになったんじゃないか。

 

 

「そう、だった」

 

 

皆の記憶に焼き付いて、こんなに凄いやつが居るんだぞって見返してやる為に私は旅に出たんだ。

ここまで、来たんじゃないか。

 

 

「フォ」

「…そうだったね、ごめん、クヌ、すっかり忘れてた。私まだまだ目標達成できてなかった。諦めてた。見ないフリしてた……そりゃ、怒るはずだ」

「フォレ」

 

 

あの日、キョダイゴクエンに焼かれた日に棄てたプライドが足元に戻ってきている。

拾おう、ちゃんと拾って大切にしてあげよう。

このちっぽけなプライドの為に私はここまで来たんだから。

 

傷を誇らしく思うクヌの様に、私も自分の傷に恥じない生き方をしたい。

もう嘘はつかない、自分に素直に生きていく。

残った1年は私に与えられた最後のチャンスなんだと、ようやく気がつくことができた。

 

 

「…………よし、皆!帰ってダンデさんに連絡するぞー」

「シズ…?」

「ドラ?」

「忘れさせないよ…私は!私達は凄いんだって皆に教えてやる!クヌも、ペンさんも、シズさんも、メラさんも皆…私っていう凄いトレーナーのポケモンだったんだって、私が死んだ後も!絶対忘れさせない!!」

 

 

私に残せる物はきっと少ない。

何も無いままこの子達の中で思い出になりたくない。

 

だから、私はガラル地方……ううん世界中にこの仲間達を覚えさせてやる。

 

 

…………そしたら、きっと、この子達も私が死んだ後寂しくないから。

世界中のみんなが『トレーナー"モナル"の』と呼んでくれるはずだ。

 

 

 

「皆、私チャンピオンになるよ!」

 

 

 

 

───こうして、ようやく私の人生は動き出したのだった。

 

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