ガラル地方のむしジムリーダーなんだけど余命一年でわろえない   作:一般むしポケ好き

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すみません予約投稿ミスってました


六話

 

チャンピオンとして、相応しき道を辿れて来たかふと不安になる時が時折ある。

威風堂々と言われ、そのマントに相応しい男だと呼ばれてはいたが後悔に耐えない事はなかった。

この前もそうだ、たった1人悪事に最も近かった筈のオレはそこから離れようとするばかりで気が付かず、庇ったこと自体は後悔していないが結果的に解決に動いた先でもまた弟とオレを討ち果たした新チャンピオンという2人の若者に頼ってしまった。

 

実力に対し自負も矜恃も誇りもある。

だが、そのお陰で道を強引に進めてしまっただけの迷子の様な気に時折なるのは何故なのだろうか。

 

…………もしかして、普段迷子になってもそんなに気にならないのはこのせいか?

いや、流石に冗談だが…

 

 

「……ん、電話か」

 

 

ロトムに着信相手を見せてもらうとそこにはつい最近起きた、オレの事を苦手に思っているであろう少女の名前が書いてあった。

後悔している事と言えば、この電話相手もそのひとつだ。

 

彼女は多分…恐らく、だがオレの事が苦手だ。

まあ、流石に控え室で目が合う度に苦々しい顔をして目を逸らされて居たのだから鈍感と言われているオレでも嫌でも理解できただけなのだが。

 

それにしても苦手な理由は何なんだろうか、まさか初対面の時に詰め寄りすぎたのが悪かったのだろうか。

しかし、オレとしては他地方から来て最年少でジムリーダーに就任。

その上ジムリーダーになった歳にリーグを優勝しオレと闘うことになるという期待の新星だったのだから、話しかけるのも仕方がないんじゃないか?

それに、確かにあの時の彼女にトゲトゲしさはあったものの会話自体は普通に終わったはずだ…

普段のキバナの方が幾分かオレに噛み付いて来るしな。

 

 

「……おっと、いけない、ロトム繋いでくれ」

『……いきなりは不味かったかな……ん?……あ、えっと、その、お疲れ様ですダンデさん。モナルです。すみませんお忙しいところ』

「いや、気にしないでくれよ。別にオレも四六時中机に齧り付きってわけじゃ無いぜ、それで、突然どうしたんだ?」

 

 

電話に出ると画面越しに相変わらず顔色の悪い少女が目に入る。

本人は気にしていないようだったが、その青白い顔を見る度に心臓に冷たい水でもかけられたような気にさせられる。

眼帯も相まって何処からどう見ても重病人にしか見えない…というか、実際そうなのだが本人が「もう動ける」と言い張るのでこちらとしても指摘しにくい。

薄緑色の髪と黄色の目はどちらも色彩が薄いせいもあってか、夜に見かけたら幽霊と間違えられてしまうんじゃ………これは、少しシャレにならないか。

 

 

『…あの、ちょっと、その、お願いがあります』

「!キミがオレにお願いなんて珍しいな!なんでも言ってくれよ、出来る範囲ならやらせてもらう」

 

 

本人の様子からしてお願いしづらい事なのだろう。

だがオレとしては頼ってくれたこともだが、それ以上に彼女に何か返せる機会が与えられたことが嬉しかった。

 

 

あの日、キバナ達と合流し向かった森で、オレたちはその様子に絶句してしまった程だった。

 

以前来た時には美しい木々が、森全土を覆っており少し湿気ってはいるものの涼しくて過ごしやすいポケモン達が好きそうな穏やかな場所として認識していた。

オレの事を何かと避けようとしていた彼女も街とこの場所を案内する時だけは顔に笑みを浮かべていたほどだったしな。

…………まあ、その5分後にはオレを見失って苦々しい顔をしていたそうだが。

 

しかし、そんな森が荒れ果て木は倒れ、そこらに倒れたポケモンが何匹も居るというひと目でわかる異常事態。

そして以前対戦した時に彼女の手持ちにいたペンドラーとオニシズクモが街の住民を守っている姿を見た時、オレは自分の失策を悟った。

今、恐らく彼女は手持ちひとりで敵と垣間見えている、と。

焦ったオレはリザードンに乗って飛び出し急いで向かおうと思ったが、迷ってしまっては困ると気が付きキバナに呼びかけようとしたその時だ。

 

森の上空に、黒い影が浮かんでいる。

 

初めて見るポケモンだったが、今なら分かる。

あれはムゲンダイナと同じ類のポケモンであり、決して人が安易に手を出していいポケモンでは無いと。

ムゲンダイナは名の通り無限のエネルギーを持つ非常に強力なポケモンだった。

……あの時のオレは、捕獲に失敗した時の油断を突かれてしまったな。

 

これは覚悟を決めなくては、と、リザードンに指示を出そうとしたその時、オレやキバナ達を一瞥したその黒い繭のようなポケモンは遥か上空へと飛んで行き、どこかへ去ってしまった。

 

 

そう、オレ達はあの時何もしていないのだ。

 

 

勿論、知性があり疲弊した状態でオレ達を相手取るのは不味いと思い逃げたのかもしれないから、行った価値はあった。

だが、実際はその場に来ただけで何かしたわけでは無い。

だからこそ、最も荒れた場所に降り立った時呼吸をしていないキミを見つけた時には、何も出来なかった後悔が深くオレに突き刺さった。

 

もしかしたら、罪滅ぼしのつもりなのだろうか。この少女に何か出来ることを探し罪悪感を少しでも減らそうとしているのではないか?

…………これは良くない思考だぜ、オレ。

できることからやっていくべきなのだから、まずは画面越しの彼女に向き合わなければ。

深呼吸を続ける彼女はようやく意を決したのか、まるで初めて対戦した時のような表情でオレを見てくる。

 

 

『……スゥ-…フー………よし…!あの、ダンデさん私に…ジムチャレンジの、推薦状をくれませんか』

「……何だって?」

『前に、その、もう戦えないと言った傍から申し訳ないんですが……やりたい事があるんです。は、反対したいかもしれないですけど、本気なんです!お願いします!』

「…いや、すまない、少し驚いただけでそんなつもりはない。そんな事でいいなら、オレは構わないぜ」

『!本当ですか!ありがとうございます!』

 

 

まるで想像だにしていなかった言葉に、思わず動揺してしまった。

ジムチャレンジ、彼女が?

もう、闘えないと本気で言っていたのに?

立ち直ったのか?こんなに短時間で?

いや、というよりやりたい事っていうのは──

 

疑問は幾らでも湧いて出てくる。

しかし、何時になく生気のある顔で安心したのか綻んでいる彼女を見て、オレはようやく安心してしまった。

 

目が覚めて以来、何処か全てに対して達観のような表情を浮かべ、諦観に囚われていたと思っていたが、今は目が違う。

 

ああ、この目はオレの知っている目だ。

 

13年前、オレが鏡に見ていた目。

12年間、ジムリーダー達が、チャレンジャー達がしていた目。

1年前、弟とその友達がしていたあの目。

 

今まで彼女に籠っていなかった熱い火のついた眼差しだ。

 

 

 

『あ、後、その、もう一個お願いがあって…』

「……ん?何だ?」

『あの………もし、もしですよ?私がチャンピオンになったら……………わ、私とバトルしてくれませんか…………?やっぱりその、私としては無敵のダンデを倒さないとダメと言いますか、なんて言うか〜……えー……』

 

 

そう、闘争心が見え隠れしているのに遠慮がちに呟く彼女に思わず笑いそうになってしまう。

そうか、そこまで夢見てくれているのか。

オレは、まだキミの中ではチャンピオンのままなんだな。

4年という長い月日に、英雄はその過去を打ち倒すことでけりをつけようとしている訳だ。

 

……当然、ならオレは応えなくてはいけない。

オレがチャンピオンとしてやり残した最後の仕事がここにある。

 

 

「くっ……ハッハッハッハッ!!」

『ぐ……な…何がおかしいんスか…』

「くっ…フフ…いや、ハハ…すまない…一つだけ、言っておきたいんだがいいか?」

『なんスか……』

「新チャンピオンは、驚くくらいに強いぜ?何せ無敵のダンデを倒した位だ」

『う……!わ、分かってますよ、無謀なんてのは!………と、というか自分で言わなくても…!いや私から言ったか……』

 

 

笑い過ぎでしょ…と何やら呟いている彼女を見て、また一つ。

ガラルに新たな風が吹き込んだのだと確信することができた。

 

 

 

===

 

 

 

「……あ、あんなに笑わなくたっていいじゃんね」

「フォフォ」

「今笑ったでしょ!」

 

 

クヌをポカポカと叩きながら不安そうな顔をしたセリさんに手を振る。

とりあえず第一関門は突破だ。

 

あれから、ジムに帰ると私を見るなり驚いた顔をしたセリさんにまた抱きしめてもらいなでなでを頂き事情を説明した。

寿命の事はまだ誰にも言わないようにお医者さんにお願いしていたので、セリさんは酷く驚いた様子で泣いてしまい私もまたつられて泣いてしまった。

最近泣いてばっかりだな、私。

 

とにかく、時間も体力もないけれどジムチャレンジに行けるように許可は貰うことができたので、ユカリ様から頂いた機械で無理やり体を動かしつつバトルの特訓を再開することにするのだった。

 

それにしても、私は今一応ジムリーダーという立場になるのだけれど、ジムチャレンジなんてしてもいいのかな?

と思っていたのだが、現在むしジムはランキング外という特殊な立ち位置に加えて、私も引退状態だった事から特例として認めて貰えた。

じゃないとチャンピオンと戦えるのがジムリーダー同士で戦うエキシビションマッチの時期まで待たなくては行けなくなってしまうので、私の寿命が持たない。

 

という訳で、ジムチャレンジに向かうわけなのですけれども。

 

 

「……ジムチャレンジ中のリーダー達って確かジムチャレンジャー相手には手加減したポケモン使ってたよね。私の場合流石にズルじゃない?これ」

「その事でしたら先程ダンデ様からご連絡がありましたよ〜モナルちゃんは一応ジムリーダーですからね。他の人と同じ条件という訳には行かないのでバトルは全力で行うようにジムリーダー達に伝達したとか」

「うひぇ〜……まっ、チャンピオンになるんならそれくらいは乗り越えないとか」

「やる気満々ですね〜!」

「…うん、えへ、いいでしょ」

「とっても素敵ですよ〜」

 

 

やる気に満ちた私に呼応するようにクヌ達もギャイギャイと後ろの方でドヤ顔しながら決めポーズを取ったりしている。アホなのかな、この子達。

 

 

さて、現状の確認と目的は出来た。

なら次は問題の確認とそれの解決方法を考えなくては行けない。

 

問題その1

私が多分、というか絶対、指示が遅れる。

脳みそは別に傷んじゃいないけれど、それでも4年という時間は思っていたよりも重くのしかかってきて、考えついてから指示を出すまでのタイムラグが非常に大きくなっている。

……まあ、これは、まあ何とかしよう。解決方法は一つだけ思いついている。

 

しかし、それ以上に肉体の方が問題で、片目になってしまったのが大きくここで響いてきた。

 

 

「……モナルちゃん、ここ見えますか?」

「あー……やっぱちょっと厳しいですね」

「そう、よね…」

「あーあー暗いの辞めてくださーい」

 

 

片目になったことでスタジアム全域がよく見えなくなってしまったのだ。

後あんまり動いてなかったから気が付かなかったけれど、若干バランスが悪い立ち姿になっているのだとか。

今だとじしんなんて打たれた日には余波でこっちまですっ転んでしまう。

 

まあ最悪車椅子で戦えばいいし、そこはそんなに心配してないけれどスタジアムが見えにくいのはかなり不味いな。

私が以前行っていた戦法は、ステルスロックやがんせきふうじ、ねばねばネットにまきびしどくびしを撒きまくって、隠れてひたすら嫌がらせに徹する。

そして痺れを切らして突っ込んできた所にカウンターの要領で技を当てるという陰湿な戦法なのだが、これが自分でもポケモンも見失う可能性のある戦い方なのだ。

 

つまり、片目の私でも見えるような位置では相手からも、それも一流のトレーナー相手だとすぐに見つかってしまい意味がないだろう。

これは根本から戦い方を変えなきゃかな。

 

 

「……ペンさん、シズさんメラさんはどんな修行してたの?」

「ドラ!」

「シズ!」

「おお、アクロバティック」

 

 

2人に聞いてみると、2人はより早く動ける様に鍛えて、加えてシズさんは耐久力をペンさんは攻撃力を鍛えていたらしい。

んー…てことは防御面はクヌに任せて2人は敵陣での行動力を高めた感じかな。悪くないね。

 

 

「メラさんは…」

「メラ」

「まずはレベルアップからか」

 

 

メラさんは私の先代むしジムリーダーから譲り受けた子なのだが、先代の相棒であるウルガモスの子供なのだ。

つまりはお互い2代目という立ち位置なのだが、私もこの子も進化しないままなのでビミョーな関係である。

それにパーティー内で1人だけ未進化という事もあり少しばかり不貞腐れている感じも前はあったのだが……

 

 

「なんか機嫌いいね、どしたのこの子」

「あっ!そうそうモナルちゃん、その事なんだけど…このボール、覚えてるかしら」

「え、何これ」

 

 

なんか、やたら機嫌がいいと言うか、自信が着いたというかクヌに似たふてぶてしさを持ち始めている様子のメラさんの話を聞いてみれば、セリさんから謎のネットボールを渡された。

やたらと傷ついていてボロボロの年季の入ったボール。

見覚えはない…けど、多分これは……

 

 

「私の、だよね?多分」

「はいその通りなんですけど…モナルちゃん、このボール使ったの覚えてますか?」

「え?私誰か捕まえたっけ?」

「そうなんですよ、私最初この子のこと気が付かなくて、3日くらいボールに入れっぱなしにしちゃって慰めるの大変だったんですよ〜」

「えーっ!?そんな事ある!?」

 

 

ボールはポケモンを入れたら大きさが変わる不思議仕様なのでそんな事ないと思うけど…

私が捕まえたポケモンでセリさんが知らない子なんて居ないはずだし……えー?誰だ?

私が………………ん?私が捕まえた?

 

 

「あっ!も、もしかして……そのボール森の中に置きっぱなしになってたんじゃ……!」

「そうそう、ほらおいで〜」

「メラ!」

 

 

ふと記憶に蘇るのは4年前のあの戦いの時。

そういえば、私慌ててて瀕死になった子をの中で逃げ遅れた子をボールに詰めていた気がする。それも無理やり。

 

そう、確かあの子は──

 

 

「……リリ」

「アブリーのリーさんです。」

 

 

めっちゃ不貞腐れた顔をしながらメラさんの背後に隠れるアブリーと対面し、トレーナーとしてまあまあな大罪を犯していた事に思わず頭を抱えるのであった。

 

 

 

 

 

 

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