妖怪奇譚   作:生涯中二病

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参考文献
『日本妖怪大事典』水木 しげる, 村上 健司2005/7/16



納戸に潜むモノ

納戸と言えば、どんな物を想像するだろうか?

建築基準法によれば、窓が無い等、採光が足りなかったり、換気性が不十分だったり、住むのには適さないとされる部屋を指す。

昨今では、サービスルーム、ユーティリティスペース、フリールーム、マルチルーム、多目的ルーム等と呼ぶこともあるようだ。

しかし、ただ納戸と言った場合は、どこか暗く黴臭い、乱雑に物が置かれた場所を想起させないだろうか?

今回はそんな納戸にまつわる、あるお話をしよう。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

ある一軒の家があった。

どこにでもあるような、ありふれた日本家屋だ。

家族構成はいわゆる核家族、夫婦と、そしてまだ幼い息子である。

その息子は物覚えが良く、特に手間の掛からない子供であった。

人好きの良い性格で、少々大人しいが、利発で勉強も運動も良く出来た。

学校ではいつも一番で、両親にとっては自慢の子であった。

そんな息子なのだが、両親には一つ不満があった。

少し前に亡くなった姑に、よく懐いていたせいだろうか、迷信深いのがどうも気に障るのだ。

 

思えば姑は、事あるごとに言っていた。

 

「この子を納戸に近付けちゃならねえ」

 

この家の納戸には、良くないモノがいるのだという。

ソレは大人に悪さをすることはないが、子供は別だと。

今風の家と違い、少々古い日本家屋のこと。

窓も無く、土壁が使われた納戸は、どこか陰気で黴臭く、不気味な印象があるのは確かだ。

子供が怖がるのも仕方がないのかもしれない。

だが息子の態度は、異常な程だった。

納戸を開けるだけで怖がり、大慌てで別の部屋に逃げ込んでしまう。

無理に連れて行こうとすると、凄い声で泣き喚く程だ。

なまじ出来が良い息子だっただけに、両親は心配になった。

 

こんな迷信を信じていては、将来の為にならないのではないか?

 

だからある日、やってしまったのだ。

姑がしてはならないと、いつも口煩く言っていた事を。

それは煩わしい姑に対する反抗だったのか。

それとも息子が親である自分達以上に、姑に懐いていた腹癒せであったのか。

 

だけどそれは・・・・・・決してやってはいけないことだったのに。

 

そう、嫌がり泣き叫ぶ息子を、無理矢理に納戸へ入れて閉じ込めたのだ。

こんなものはただの迷信なのだと。

ここはただの納戸でしかない。

子供に悪さをする良くないモノなど、いるはずがないと。

可哀想だけど、こうすれば利発な息子は気付くはずだと思い込んだ。

怖いモノなど何もいないと。

 

「あけて、あけてよおとうさん、おかあさん!!」

 

狂った様に納戸の戸を叩く息子に、胸を締め付けられる思いで、両親は戸を押さえ続けた。

これが終われば、きっと分かってくれる。

これが息子の為なのだと信じて。

 

納戸の中は、窓も無く一個の電球があるだけ。

物置として乱雑に物が置かれた納戸の中は、電球が点いていても、沢山の物が影を生み出し、一層薄暗く感じさせる。

戸を叩く衝撃で、吊られた電球がゆらりゆらりと揺れれば、影もゆらりゆらりと動く。

 

納戸の中は異界であった。

 

ゆらりゆらりと、影が伸びる。

ふらりふらりと、手のように。

ひたりひたりと、黴の臭いが。

ぴたりぴたりと、頬に当たる。

くびりくびりと、巻き付いた。

 

「ホーー」

「たすけておばあちゃん!!」

 

直後に響いたのは、家が震える程の絶叫だった。

あまりの事に、両親も思わず戸を開けて。

開けて見れば、そこに息子の姿はどこにもなかった。

それっきり、終ぞその子は見つかることはなかった。

 




ということで、ちょっとホラーチックに納戸婆を書いてみました。
納戸婆はちょっと謎の多いやつですが、今回は子供を神隠しにするタイプを。
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