リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う!   作:紅乃 晴@小説アカ

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第10話 変態の戦い

 

 

 

 

「特A型!?馬鹿な!いきなり現れたぞ!?」

 

銀色の体に走る赤いライン。胸部と両肩に備わる三門の収束砲。

 

そして圧倒的な威圧感を前に、ある者は悲鳴をあげ、ある者は我先にと輸送機に駆け込み、ある者は平静を保とうと怒声を上げていた。

 

「特A型だ!ハウンドアーマー隊は迎撃!!」

 

教官の声で三人は我にかえり、すぐに自分のレイジングブルに乗り込む。

 

F.C.S(ファイアコントロールシステム)をオンラインにし、ガルダリア・エンジンの起動、武装の確認、安全装置の解除。

 

その何もかもが遅すぎる。

 

起動プロセスを行っている間に、レンネル基地を見下ろしていた特A型V.L.Tは、位相収束砲にエネルギーの充填を始め……一閃が穿たれた。

 

直撃を受けたのは要人や退避しようとしていた訓練生たちが乗っていた輸送機だった。

 

「えっ……」

 

オープンで開いていた通信回線から誰かの声が溢れる。

 

位相収束砲に穿たれた輸送機は、まるで当たった箇所の空間がゴッソリと削り取られたように無惨な姿へと変貌していた。

 

直撃したのはキャビンから客室の箇所であり……搭乗者は全員死亡していた。

 

「そんな……アンジー!フランシー!!」

 

「やめろ、カイ!もう無理だ……彼らは……死んだ……!」

 

「でも……そんなのって……そんなのって、ないよ!」

 

あまりにも呆気なく、あまりにも理不尽な命の奪われ方だった。

 

V.L.Tの位相収束砲はビームではなく物理現象にも当てはまらない。

 

直撃すれば分子レベルで分解され……跡形もなく消え去る。

 

そんな死に方……人間の死に方ではない。

 

目の前の理不尽に、自分達ならもしかして……という淡い希望は打ち砕かれた。

 

無理だ。

 

その場にいる誰もが、絶対的な強者である特A型に勝てるビジョンが見えなくなった。

 

自分達も輸送機と同じように、無残な末路を辿るのだと……。

 

「諦めるな!!」

 

絶望的な空気が重くのしかかる中で響き渡る声。

 

同時に背後からスラスターの燐光を迸らせる〝漆黒〟のハウンドアーマーが、テルリードたちの頭上を飛び越えて飛翔し、真っ直ぐに特A型に向かっていった。

 

「隊長!!タイミングは合わせます!!」

 

テルリード達が呆気に取られる中、左のビルの壁面を蹴って現れたのは、スカイブルーに塗装されたハウンドアーマー、HA-10 レイブンアームズ。

 

頭上を飛び越えた機体も同じくレイブンアームズであるが、その機体の細かな箇所には修正点や、カスタムが施されていた。

 

レイブンアームズは、第二世代型の前期型にあたる機体。

 

デルベルトが乗る軽量、空戦能力を向上させたHA-11 エンフィールドよりも前に開発された機体で、脚部の堅牢さと機体剛性の高さが売り、背部に備わるハードポイントは第二世代型の中で最も積載耐荷重が強く、大型ロケットランチャーや、ショットランチャー、高高度爆撃用ミサイルなど幅広い武装を搭載することが可能となっている。

 

そのため、前線での使い勝手が非常に良く、遊撃機として運用されるエンフィールドと、対地、対空、対装甲騎兵と幅広く対応するレイブンアームズの相性は最高の組み合わせであった。

 

そして、レイブンアームズで特筆するべき箇所は、近接戦闘能力の高さにあった。

 

三門の収束砲の射線が、先陣を切って突撃する漆黒のレイブンアームズを捉える。

 

まずい、とテルリードは直感した。三門の収束砲の斉射を喰らえば、真正面から懐に入ろうとする漆黒の機体はひとたまりもない。

 

しかし、テルリードが声を上げる間も無く、特A型の砲口にエネルギーが集約されていき……突然、特A型の頭部に当たる箇所が爆ぜた。

 

「チッ、やはり硬いな。徹甲弾程度ではびくともしない」

 

「フレッド、腕は落ちてないようだな!」

 

「ミラクルイーグルスの面目躍如……と、言ったところですかね、隊長」

 

通信が繋がる。

 

デルベルトが視線を向けると、管制塔があるレンネル基地の1番大きな建物の上に陣取る一機のハウンドアーマーの姿があった。

 

「嘘だろ」

 

デルベルトはつぶやく。

 

機体名、HA-12 アーマライト。

 

視認性を下げるため灰色に塗装されたその機体は……ミラクルイーグルスの一人、伝説の狙撃手と呼ばれたフレデリック・スミス少佐が乗るハウンドアーマーであった。

 

彼は着飾った少佐制服の上着を脱ぎ、ネクタイを緩める。

 

「やれやれ、デスクワークばかりのせいで腕が鈍ったかな」

 

フレデリック自身、すでにパイロットを引退した身であるが、それは組織上の話だ。ハウンドアーマーの操縦訓練は毎日欠かさず行ってきたし、その腕は一切衰えていない。

 

デルベルトが驚愕したのは管制塔から特A型までかなり離れているというのに、重迫撃砲……しかも徹甲弾を、空中に突如として現れた浮遊する特A型の頭部に寸分の狂いもなく直撃させたことだ。

 

重迫撃砲は曲射弾道兵器。

常識的に考えて長距離の狙撃には向かない。

 

よくて群れで襲ってくるC型を一掃する際に用いられる範囲武器というイメージが強いのだが……。

 

(あの距離で……しかも曲射弾道で直撃させるのか!?)

 

デルベルトの驚愕をよそに、特A型の位相収束砲が逸れる。

 

その一閃は、漆黒のレイブンアームズの脇を掠めるが、衝撃に一切動じることなく、その機体は特A型へ肉薄する。

 

近づいてくる漆黒のレイブンアームズに、特A型V.L.Tは再び3門ある収束砲を向けた。

 

「あ、あぶな……」

 

テルリードの言葉を引き裂くように、特A型は収束砲を放つ。

 

しかし、漆黒の機体の動きは、冷静そのものだった。

 

「見えやすい火の粉は振り払うぅーー!!」

 

素早く横へスライド。収束砲を回避し、次いで急上昇、フットペダルを踏み締め、機体を上へとあげる。下部から閃光。収束砲の迎撃!

 

「はぁ………ぐっ!」

 

フレキシブルウイングを可変させ、機体は横軸へロールするという3次元的な動きを繰り出す。天地、前後が容易く逆さまになるが、自分がどこにいて、どこに攻撃が来るのかは把握し続ける。

 

「すごい……!」

 

テルリードやカイ、カレン、そしてデルベルトも、その立体的な機動戦に口を開けて驚く。

 

通常、ハウンドアーマーの動きは、平面移動、上昇下降、旋回に限定されているのに、そのセオリーを無視した機動戦を、漆黒のレイブンアームズは行っている。

 

「さすが」

 

「相変わらず無茶苦茶な人だな、隊長は」

 

ビルを蹴って加速したスカイブルーのレイブンアームズも、特A型に肉薄する漆黒の機体の動きに合わせて援護射撃を行う。それに合わせて、フレデリックが駆るアーマライトも前線に出てライフルで、漆黒のレイブンアームズの動きをアシストする。

 

その動き、その連携を見ただけで、彼らの操縦スキルは、デルベルトやテルリード達のはるか先を行くものだと理解させられた。

 

「捉えた!うぉおりやぁあああああ!!」

 

収束砲を掻い潜り、2機の援護を受ける漆黒の機体、レイブンアームズに乗るパイロット、ダン・ムラクモ。

 

彼はそのまま特A型の懐に潜り込み、右手に装備されたMMX(多機動格闘処刑刃)を特A型のボディに叩きつけ、トリガーを引いた。

 

ゼロ距離で仕掛ければ特A型に展開されている流体エネルギー膜も意味を成さない。

 

シールドを裏返すB.I(ブロウクン・インパクト)を許す間も与えず、衝撃音と共に装甲に損傷を受ける特A型。

 

そしてMMXを放った反動で距離をとったダンの駆るレイブンアームズは、ブーストを吹かしながら、テルリードたちの前へと降り立った。

 

 

 

 

「やっぱりリンにはその色が似合うな」

 

何気ない会話だったのかもしれないけれど、私はその言葉を強く覚えている。

 

それ以来、私のパーソナルカラーは、彼が褒めてくれたスカイブルーになった。

 

隊長と同じ、私の愛機となったレイブンアームズも、スカイブルーに塗装されている。

 

私の名は、藺 泰伦(リン・ターレン)

 

ユーラシア連合軍所属のパイロットであり、ハイパーゲートからV.L.Tが出現し、ユーラシア大陸を侵略した頃、私は北米大陸で行われたハイパーゲートの記念式典に護衛として参加していた。

 

その結果、幸運にもV.L.Tの破壊行為から逃れた人物でもある。

 

けれど、ユーラシアに住んでいた両親や兄弟、親族ともども、V.L.T侵攻の際に亡くなってしまった。

 

所属していたユーラシア基地も瓦解したため、1人きりとなった私はV.L.Tへの復讐心を胸に、発足されたばかりの地球軍に志願した。

 

当時の私を突き動かしていたのは、V.L.Tへの復讐心と怒りだけだった。

 

過酷な訓練と、侵略するV.L.Tへの抵抗のためなら何でもやった。

 

ユーラシアへの危険な偵察任務、V.L.Tの脅威に対する威力偵察、そして敵との戦闘データの回収。

 

死と隣り合わせの中で、私は必死にV.L.Tへ抵抗してきた。

 

そして、人類が生み出した機動兵器、ハウンドアーマー。

 

第一世代後期型、アメリゴ・チェイ社と地球軍が共同で開発したHA-09 リゴッティⅡが配備された時は、「これでV.L.Tに勝てる」と確信できたくらいだ。

 

廃人化現象が起こるリスクはあったものの、そのリスクを上回る兵器としての機動性、攻撃力、殲滅力は破格だった。

 

私はハウンドアーマーに乗り、前線に出た。

 

これまでの既存兵器では太刀打ちできなかったV.L.Tに抵抗する術を得た私は、戦いに身を投じて……そして……。

 

「いやだぁ!!死にたくない!!」

 

「助けて!いや! いやぁああ!!」

 

その確信が、あっけなく崩れ去ることを知った。

 

アメリカ大陸北部、ニューファンドランド。

 

そこで遭遇したV.L.Tの部隊に包囲された私たちは、人類の反撃の狼煙と思っていたハウンドアーマーの四肢を、装甲を、コクピットを守る防壁を、C型に食い破られようとしていた。

 

すでに僚機はズタズタに引き裂かれていて、コクピットだった場所は血と臓物でぐちゃぐちゃになっているのが見えた。

 

私の機体も、もう制御が効かない。

 

足を食いちぎられ、武器を失い、ヘルメット越しにコクピットカバーがガリガリと音を立てて破られていく。

 

その音が、頭の奥に直接響いてくる。

 

私には何もできなかった。

 

怖くて、狂いそうで、目の前にある明確な死に震えることしかできなかった。

 

「いやだ……怖いよ……助けて……妈妈(お母さん)……!」

 

恐怖で身がすくんで、もういない家族に助けを求めた私は、そのまま引き裂かれて終わる――はずだった。

 

そんな最悪な結末を、彼は救ってくれた。

 

《救援に来たダン・ムラクモ中尉だ。……よく堪えた。あとは任せろ》

 

装甲を削るような音が、消える。

 

私は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになったヘルメットを脱いだ。

 

C型によって削られ、外が見えるほどになった装甲の隙間。

 

そこから見えたのは、漆黒に塗装されたハウンドアーマーだった。

 

それが、悲惨な死を迎えるはずだった私の運命を、大きく変えた。

 

無様に泣き顔を晒していた私は、次に起こった出来事を理解するのにしばらく時間を要した。

 

漆黒のハウンドアーマー。

 

当時、まだ正式配備前の試作機であった、HA-10 レイブンアームズ。

 

レイブンアームズ社が手掛けたその機体は、堅牢で機体剛性が高い分、後に地を這う機体とも言われていた。

 

当時の私が乗っていたリゴッティⅡは空戦に重きを置いた機体であり、その空戦能力は当時でもリゴッティⅡの方が上と言えるほどだった。

 

C型の大群を躱すには、それなりの機動力が必要。

 

鈍重なレイブンアームズで、包囲するほどの数であるC型を相手取るのは、どう見ても不利だったはずだ。

 

だが、そのレイブンアームズの動きは、リンや、それを目撃したパイロットたちの常識を打ち砕く。

 

腰部のガルダリア・エンジンを唸らせ、フレキシブルウイングを巧みに操り、ホバー機動でC型の左側に回り込むと、そのまま飛翔。

 

左に移動していた慣性に従うまま流れ、その先にあったビルの残骸の壁面を〝蹴った〟のだ。

 

ハウンドアーマーの移動軸は、三次元座標に沿って行われる。イメージで言えば、平行移動、上昇下降、旋回といった具合だ。

これはV.L.Tも同じ座標軸で動く存在であったことや、この動きの方がハウンドアーマーの動きに慣れやすいという側面もあったのだろう。

 

だから、基本的に戦闘はこの三つの動きを基軸に行われる。

 

操縦課程でも、戦闘機動や障害物を避けるなどの基本操縦は履修する。

 

だが……障害物を文字通り〝蹴って〟移動するなど……考えたこともなかった。

 

ビルを蹴り、物理的な加速を得た機体は、空戦に優れたエンフィールドの空戦力に匹敵する動きを発揮しているように見えた。

 

いえ……それどころか、彼は三次元座標軸の移動に加え、回転方向の動きも取り入れたのだ。

 

蹴った反動で機体を横軸に回転させ、天地を逆転。

 

C型の頭上を押さえたレイブンアームズは、そのままロックした高高度ミサイルを地面めがけて射出したのだ。

 

通常なら上空……真上に向かって放たれるミサイルは、そのまま真下の地面に向かい、ひしめいていたC型の大群へと襲いかかった。

 

十五発に及ぶミサイルの斉射。

 

吐き出し終え、空中で姿勢を整えると、手頃なビルの屋上に着地。

 

すぐさま旋回して機体の姿勢を安定させると、背部に備わるショットランチャーを展開し、ミサイルを受けたC型の群れに容赦なく撃ち込んでゆく。

 

それでかなりの数が撃破されたが……生き残ったC型がビルをよじ登り、近接戦を挑む。

 

だが、それは奴らにとって悪手。

 

レイブンアームズの左腕に備わるMMX(多機動格闘処刑刃)は、射程が極短距離であるというデメリットを除けば、人類が開発した近接武器で最強の座に位置する。

 

やりようによっては特A型の装甲をも貫く威力を発揮する武装に、C型程度が耐えられるわけがなかった。

 

真正面から飛びかかった一体目が縦に引き裂かれると、出力を最大距離設定に絞り、横薙ぎの一閃を放つ。

 

ガルダリア・エンジンから生成され、細く、薄く伸ばされたエネルギー刃は、数の暴力で反撃しようとしたC型を数体まとめて粉微塵にする。

 

ビルの屋上という限られたスペースから出ることなく。

 

驚異的な重心の運び。

 

旋回。

 

ホバーによる戦闘機動を組み合わせた動き。

 

その機体は、押し入るC型を次々とスクラップへ変えていった。

 

敗北を悟ったのか、知恵が回るのか。

 

私の近くにいたC型が、動けない私の機体を人質にしようと動き始めた。

 

その瞬間、凄まじい轟音と共に残骸が投擲され、飛びかかろうとしていたC型に直撃。

 

同胞の足に穿たれたソレは、しばらく足を痙攣させたのち、糸が切れたように沈黙する。

 

《生存者。怪我人はいるか? すぐに救援隊がくる。急いで撤退するぞ》

 

残ったC型の足を放り捨て、ビルの壁面に手を添え、外壁をバラバラと崩しながら降りてきた漆黒のレイブンアームズ。

 

何でもないことのようにそう言うパイロット……ダン・ムラクモ。

 

かのミラクルイーグルスを指揮した……伝説のパイロット。

 

その圧倒的な力と対面した私は……心を奪われたのだった。

 

 

「隊長。やはり私の勘は当たっていたようですね」

 

無線機越しに、胸を張って得意げに言うのは、先日まで俺が率いていた小隊の副隊長を務めていたリンだ。

 

ちなみに階級は大尉。

 

俺より階級が上なのに、なぜ副隊長なんてものをしているのか。

 

……ゲームシナリオ上、彼女は名もなきパイロットで登場し、その最期は凄惨なものであった。

 

ハウンドアーマー小隊に所属していた彼女は、哨戒中にC型V.L.Tの大群に襲われてしまう。

 

小隊の大多数が犠牲となり、彼女の搭乗していた機体も大きな損傷を受け、コクピットをぐしゃぐしゃにされた。

 

奇跡的に生還はしたものの、C型により刻み付けられたダメージは深刻で、下腹部に負った傷の影響から半身不随になった上に、襲われる仲間の絶叫によって重度のPTSDを患い、発狂するという結末を迎えた。

 

そのシーンは本当に僅かにしか触れられないが、低難易度でC型との戦いで爽快に無双するボルトボックスのプレイヤーにとっては、戦場の怖さとV.L.Tの脅威を体感させ、さらにトラウマを植え付けることに一役買う場面でもあった。

 

プレイヤーたちにトラウマを植え付けて退場するキャラだったのだが、俺が助けてしまってから運命が変わったというべきか……何かにつけて俺にまとわりついてきて、部下にしてくださいとついて回ってくることに。

 

もともと、ノルマンディー反抗作戦後にイーグルス隊で幾つかミッションをこなし、メンバーがパイロットを引退してから一匹狼で前線でドンパチやってきたのだが、上役になったアルやフレッドたちに「いい加減部下を持ってください」と嘆願されたこともあって、リンは俺の部下として配属される運びとなった。

 

そこから、俺が助けたパイロットたちが志願する形で俺とリンの小隊に加わり始め、気がついたらそれなりの規模になっていたのだ。

 

「しかし、まぁよく俺の機体を持ってくる許可が降りたもんだ」

 

「ターレン大尉からの具申で輸送機に積み込むことになったんですよ。隊長の部隊であの機体を乗りこなせるパイロットはいませんからね」

 

そんなぼやきに答えたのはリンではなく、少佐の階級を示す堅苦しい制服の上着を脱ぎ、輸送機で持ってきていたハウンドアーマーの発進準備を進めるフレッドであった。

 

あの、だから乗りこなせそうなリンに俺の機体使ってねって渡したわけなんだが……。

 

「漆黒のレイブンアームズは隊長の専用機ですから」

 

私はスカイブルーでいいので、と笑顔で言うリンは、さっさとバイタルスーツのヘルメットを被ってしまった。

 

全く、困った副隊長だ。

 

というか、俺より階級が上なんだから、なぜ部下につくのか……。

 

フレッドやアルたちもそうだけど、どいつもこいつも俺より階級が上なんだぞ。

 

うだつの上がらない万年中尉の俺にどうしろってんだ。

 

さて……特A型に意識を戻そう。

 

特A型は、制圧している基地ごとにご当地武装を持つV.L.T最強の機体だが……その真髄は近接戦闘がやたらめったら強いという点にある。

 

流体エネルギー膜を貫くために肉薄しなければならない。

 

しかし、B.I(ブロウクン・インパクト)を受ければ一撃であの世にいくことができるし、中距離じゃエネルギー斬撃が飛んでくるわ、位相収束砲が飛んでくるわ……近づいても遠くにいてもヤバい相手なのだ。

 

攻略法は単純。

 

位相収束砲やエネルギー斬撃、相手の攻撃をとにかく躱して距離を保ち、予備動作に入った瞬間に接近。

 

3本の収束砲は直射なのでパターンを覚えて、とにかく避けて懐に入り込んでダメージを重ねる戦法。

 

B.I(ブロウクン・インパクト)のタイミングは、懐に入るギリギリまで見極める必要があるので、ダメージを叩き込む役割は俺になる。

 

よって、援護及び撹乱はリンとフレッドの役目。

 

死なないように距離を保ちながらやるしかない。

 

リンは一度、特A型との大立ち回りに巻き込んでしまったことがあって実戦経験があるが、フレッドは特A型は初めてだ。

 

その割には緊張全然してないんですけど……それが少佐の貫禄というやつなのだろうか。

 

ゲームでは、難易度ハーデスト相当ならナノマシン補助によって収束砲を避けるのが楽になるので、攻撃力が飛び抜けているMMX(多機動格闘処刑刃)やパイルバンカーがあれば何とか倒せる良心設計。

 

しかし、インフィニティモードでは笑えるくらいガラリと話が変わる。

 

まず、攻撃が通らない。

 

ガルダリア・エンジンが安定しないのでMMXが流体エネルギー膜を貫通する割合が運ゲーと化す。

 

じゃあどうするか?

 

ゲーム上、変態たちは死んで覚えるで解決する。

 

三つの収束砲の射角を覚えた上で、最低限の動作で掻い潜り懐に飛び込むのだ。

 

つまり位相収束砲の隙間を潜るということになる。

 

無茶苦茶な戦法な上にワンミスで収束砲に溶かされるので、慣れないうちは死にまくるが、「理論上可能」であれば可能にしてしまうのがインフィニティランカーなのである。

 

まず、特A型の反応が海上沖で確認された段階で、レンネル基地の司令官が調査委員会の面々に俺をボルガーに乗せて出せと怒鳴りつけたわけだが、調査委員会はこれを拒否。

 

V.L.Tの技術であるボルガーに再び乗せれば叛逆される危険があるとの一点張りであった。

 

だが、相手は特A型。

 

何もしなければ死ぬ未来しか待っていない。

 

そこでフレッドが「ボルガーがダメなら普通のハウンドアーマーに乗せれば問題ないだろう」と提案すると、調査委員会の面々は渋々といった様子でOKと答えた。

 

これはフレッドの権力様々と言えよう。

 

まぁ、ボソッと「特A型と戦うなんて自殺行為」とか、「我々は逃げて、奴がここで死んでくれた方が手間が省ける」とか聞こえたが……こちらは黙って死ぬつもりはないので聞こえないフリをした。

 

……ってどうしたの、リン。怖い顔して。

 

まぁ、現在進行形でエーテリアスから、考え直せとか、早くボルガーに乗れとか言ってきてるけど、俺は軍属であり、ボルガー搭乗が認められないというなら仕方がないのだ。

 

無理を通してボルガーに向かう最中に背中から撃たれるなんてごめん被る。

 

それに俺は……正直に言えば、ボルガーより普段から乗っているレイブンアームズの方が安心感も段違いなのですよ。

 

そんなわけで、フレッドたちが乗ってきた輸送機からハウンドアーマーを下ろし、俺たちは特A型に戦いを挑むことになった。

 

じゃあ我々は退避するので、と輸送機に向かった調査委員会の方々は……残念ながら訓練生たちと共に輸送機ごと収束砲に削られてしまったわけだ。

 

とにもかくにも、生き残るには目の前の特A型をなんとかするしかあるまい。

 

名も知らぬ訓練生たちよ!

 

とりあえず邪魔にならないように援護をよろしく頼む!

 

特A型の相手は……俺たちがするっ!

 

 

 

 

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