リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う!   作:紅乃 晴@小説アカ

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第11話 ギリギリまで踏ん張って頑張って(1)

 

 

 

いつか。

 

姉と同じように、ハウンドアーマーのパイロットとして戦う。

 

それを夢見ていた私にとって、今の状況はあまりにも鮮烈で、そして致命的だった。

 

退避する調査委員会の面々を案内し、離陸準備を進めていた輸送機は、突如として現れた特A型V.L.Tが放った位相収束砲によって、その空間ごと削り取られたように消し飛んだ。

 

その直後、ダン・ムラクモ中尉率いるハウンドアーマー隊との戦闘が始まった。

 

至るところで銃声と轟音が響き、格闘戦を繰り広げるハウンドアーマーが、ビルの壁面を蹴って加速し、空へ跳ぶ。

 

「きゃっ……」

 

壁を叩く凄まじい衝撃音に、思わず身体が跳ねた。

 

幸い、基地内部の建造物は耐震性も耐衝撃性も高い。ハウンドアーマーが一度二度蹴った程度で倒壊することはない。

 

それでも、その音は人の本能を抉るには充分すぎた。

 

私が案内した調査委員会の面々は、輸送機ごと消えた。尊大で、偉そうで、好きになれない人たちだった。

 

けれど、あの真っ白な位相収束砲で、虫ケラのように消えていい命なんかじゃなかった。

 

あの光は、理不尽で、圧倒的で、ただ一方的に命を奪ってゆく。

 

ムラクモ中尉が特A型を引き付けてくれたおかげで、私たち地上スタッフの大半は助かって、堅牢な倉庫まで逃げ込むことができた。

 

「ぅ……うぅ……っ」

 

けれど、戦闘音は止まらない。

 

腹の底を揺らすような振動。外で何か巨大なもの同士がぶつかり合っている気配。

 

目と鼻の先にある本物の戦場を前に、私の身体は震えることしかできなかった。

 

「レイラ!」

 

倉庫の奥から、カエデさんが駆けてきた。

 

入口は危険だと、放心しているスタッフたちを促しながら、私の肩を押して奥へと連れていく。

 

倉庫の奥へ進んだ先には、昼間と変わらず、ボルガーが鎮座していた。

 

「カエデさん……わた……私……」

 

「喋らなくていいわ」

 

そう言って、カエデさんは私の肩を優しく叩いた。

 

「レイラには酷だったわね。私は何度か見たことがあるけど……やっぱり本物の戦場は危険よ。引き込まれそうになるのも分かる。けど今は、とにかく冷静になりなさい。それだけ考えればいい」

 

力強く、それでいて静かな声だった。

 

私は弱々しく頷くことしかできなかった。

 

特A型を見て感じたのは、絶対に勝てないという確信だった。

 

あれは兵器なんかじゃない。

 

人智を超えた何か。

圧倒的な絶対者。

見ただけで絶望を植え付けてくる存在。

 

あんなものと……姉や、父や、前線の人たちは戦っているのか。

 

逃げる最中に見た、特A型と交戦するハウンドアーマー。

 

中でも漆黒の機体の動きは、私がシミュレーターで動かしていたものとは別物だった。

 

当たれば消滅する収束砲を紙一重で躱し、死の懐へと飛び込み、MMX(多機動格闘処刑刃)を叩き込む。

 

狂気じみていて。

 

それなのに、美しかった。

 

戦場という一瞬の世界を舞うようなあの姿は……私が夢見ていた“パイロット”という存在を、残酷なまでに突きつけてきた。

 

無理だ。

 

私には、あんな操縦はできない。

 

今の私は、倉庫の隅で、外から響く轟音と、激戦に震える建物に怯え、自分の身体を抱き締めることしかできない。

 

そんな私が、よく前線に出たいなんて言えたものだ。

 

あれほどの技量がなければ、最前線では生き残れない。

 

特A型V.L.Tを前にして、一日ともたず死ぬ。

 

だから父も、姉も、教官も。私をこの安全なレンネル基地に送り込んだのだろう。

 

戦える者たちから見れば、私は戦えないパイロットだ。

 

こうして後方の基地で、戦いとは関係ない仕事をして、幸せに生きていればいい。

 

戦いは他の誰かに任せていればいい。

 

……そう言われている気がした。

 

「…………ふざけるな」

 

気づけば、自分の頬を両手で叩いていた。

 

乾いた音が広い倉庫の中に反響する。

 

何を安心している。

何を怯えている。

何を納得しかけている。

 

ふざけるな。

 

私の覚悟は、こんなものだったのか。

 

気まぐれで夢を語ったのか。

 

お花畑みたいな覚悟で、ハウンドアーマーのパイロットになりたいと言ったのか。

 

安全な家も。

 

友人も。

 

引き止めてくれる人たちも振り切って。

 

私は、自分で決めて軍に入ったんだ。

 

姉のような立派な軍人に。

 

父のように誰かを守れる人間に。

 

そうなりたいと、そう誓ってここに来たんだ。

 

「……後方だから安心して置いておける?冗談じゃない……」

 

守られるだけで終わるなんて、そんなのは嫌だ。

 

私は、お荷物なんかじゃない。

 

ただ倉庫整理だけをして、戦場から目を逸らして生きるために軍人になったわけじゃない。

 

特A型が怖い。

 

死ぬほど怖い。

 

足がすくんで、身体が震えて、息だって上手くできない。

 

それでも。

 

それでも私は、戦える人間になりたい。

 

誰かに守られるだけじゃなく、誰かを守れる側に立ちたい。

 

「私も……私だって……!」

 

震える声を、無理やり喉から押し出す。

 

「父や、姉みたいに……誰かのために戦いたいんだ……!」

 

そう吐き出した瞬間、少しだけ、呼吸が戻った。

 

震えていた手を、私はゆっくりと開く。

 

指先はまだ震えている。

 

けれど、さっきまでみたいに、自分を抱き締めているだけの手ではなかった。

 

【……でしたら、私が貴女の力になりましょう】

 

声が届いたのは、その時だった。

 

「……え?」

 

震えが収まらない身体のまま、私は周囲を見渡す。

 

「だ、誰……? 誰が、私に……」

 

【時間がありません、レイラ・ストーム。貴女の力が必要なのです】

 

次の瞬間、凄まじい爆発が施設を揺らした。

 

遠くから聞こえるスタッフの悲鳴。崩れる資材。転がる備品。

 

私はバランスを崩し、そのまま床へと叩きつけられる。視界の端で、ひとつの部品がカラカラと音を立てて転がっていった。

 

その行き先を、反射的に目で追う。

 

そこに、いた。

 

巨大な影。

 

鎮座する鋼の巨人。

 

その中央で、オレンジ色の眼光が、こちらを見下ろしていた。

 

【私の名はエーテリアス】

 

静かで、それでいて確信に満ちた声。

 

【貴女なら……操れます。このボルガーを】

 

ボルガー(Unknown01)

 

先のA型との戦闘後、カエデさんが解析と調整を試みたが、まったく反応を示さなかった。

 

それが今、特A型の襲撃という危機に呼応するように、目覚めている。

 

大きな機械の手が、私の眼前に迫る。

 

息を呑む。

 

脳裏に、過去がフラッシュバックする。

 

ナノマシン不適合。操縦不能。ハウンドアーマーを歩かせることすら満足にできなかった。

 

そんな醜態を叱責する教官。訓練結果を見た同情の視線、そして父の言葉。

 

「お前には軍人は向いていない。縁談を受けて家に尽くせ」

 

母の声もそれに連なる。

 

「無理に危険なことをしなくてもいいのよ。貴女には貴女の生き方があるのだか」

 

そして、私を見つめていた姉の視線。

 

何も言わず、ただ無関心に通り過ぎていった背中。

 

(……だから、どうした)

 

他の同期は、全員がナノマシンに適合した。新型のハウンドアーマーであるレイジングブルの操作訓練を受けているのを、私はガラス越しに見つめていた。

 

私だけが、その資格から落ちた。

 

最後の希望として縋っていたハウンドアーマーへの登場資格を剥奪され、有無も言えずに後方へ送られた。

 

(……だから、どうした)

 

何もできない。

向いていない。

戦えない。

 

そう、散々言われてきた。

 

(……だからっ……!)

 

胸の奥で、何かが弾けた。

 

(それがっ……どうしたッ!!)

 

視界が、開ける。私は、差し伸べられたボルガーの手に飛び乗り、導かれるままに、そのままコクピットへと滑り込む。

 

「なっ……レイラ!?」

 

倉庫の奥から、驚愕の声が響いた。

 

「ボルガーが……なんで、今……!?」

 

カエデさんの声だった。

 

けれど、もう振り返らない。

 

コクピットを見渡す。コンソールの配置も、インターフェースも、モニターも、すべてが未知。

 

それでも、不思議と、恐怖はなかった。

 

「私が必要なら……」

 

スロットルに手をかける。

震えは、もう止まっている。

 

「やってやる……やってみせる!」

 

【サポートは私が行います、レイラ・ストーム】

 

静かに、寄り添うような声。

 

【……このままでは、彼が危ないのです】

 

彼……脳裏に浮かぶのは、あの漆黒の機体。

 

死の間合いで舞っていた、あのパイロット。

 

(……助ける。私が、あの人を!)

 

その一念だけが、残った。

 

【だから。共に、救いましょう】

 

「……うん!」

 

スロットルを握りしめ、フットペダルを踏み込む。

 

次の瞬間、轟音が響き渡り、オレンジ色のカメラアイが、閃光のように輝いた。倉庫の空気が震え、衝撃波が周囲を吹き飛ばす。

 

そして、ボルガーは天井を突き破り……空へと跳び上がった。

 

 

 

 

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!

 

特A型の装甲が硬すぎてキレ散らかしそう。

 

MMX(多機動格闘処刑刃)はガルダリア・エンジンを瞬間的に高出力にしてエネルギー刃を形成し、それで殴りつけるという浪漫武器。与えられるダメージは折り紙付きだ。

 

しかしナノマシンがナイナイ人間ですので、ガルダリア・エンジンの出力が足りていません。

 

つまるところ、絶大な威力を誇るMMXが出力不足のためカスダメしか出ないということである。

 

あぁああ!!辛すぎて死んでしまいます。

 

特A型は派手にのけぞったけど……ダメージ通った手応えが全くないんだよなぁ!!

 

しかも、特A型の装甲は他の敵よりも強力。

 

A型と比較すれば、その装甲値はなんと2倍。

 

装甲値2倍!2倍ですよ!奥さん!

 

おい運営!お前正気か!?

 

MMXのダメージは確実にあるはずだが……単純に装甲は貫くために2回、同じ場所にぶち込まなきゃならない。

 

しかも鬼のように迫る位相収束砲を避けながら。

 

はぁああ、まぁじインフィニティだわあ。

 

やってられるかい、こんなもん。

 

リンとフレッドの援護に加え、偶然巻き込まれた三機の訓練用レイジングブルと、あーー……あれはエンフィールドかな?うん。そんな愉快な仲間たちの援護を受けてこの体たらくである。

 

はーまじ自分つっかえ。

 

特A型とは一度タイマン張ったことあるけど、あの時は自分は大破間際まで追い込まれて、なんとか撤退させたくらいだったからなぁ。

 

こりゃ勝てるかわからん。

 

しかも仲間の半分が訓練機。

 

制式採用のレイジングブルなら、生存の希望が0.1%くらい上がるけど、訓練機が仲間は絶望しかない。

 

てゆーか、誰だよ、調査委員会の護衛に訓練機を付けたアホは。あ、地球軍の上層部の人たちか。

 

俺を問答無用で銃殺刑に処そうとしていたわけだけど、自分たちが死んでたらザマァないぜ。

 

それに第一こんな時期に訓練機……。

 

ん?

 

あれ?待てよ?

 

この時期って……メインストーリーが展開される前で……主人公たちはまだ「リトルウイング隊」に入っていない時間軸で……。

 

《すまない!君たちはどこの所属の訓練機だ!?》

 

おっと、俺が特A型の注意を逸らしているうちにフレッドが聞いてくれたぞ!

 

ありがたいけど!

 

こっちの!援護も!よろしく頼むぜ!

 

「あっぶねぇ!!」

 

MMXを叩き込んだ直後に反撃のエネルギー斬撃が飛んできて、機体をぐるりと宙返りさせて紙一重でそれを躱わす。

 

「さすが隊長!未来予知でもしているような回避です!戦いが終わったら占い師でもやりましょう!」

 

「軽口言えるようになったリンもかなり逞しくなったよね!本当!」

 

そんな言葉を交わしながらも、リンもカベットライフルとショットランチャーを巧みに使って特A型の注意を逸らしてくれている。

 

けど、二機のレイブンアームズでどうにかなる相手じゃねえんだわ!!

 

「我々は56訓練師団の訓練生小隊です」

 

指揮官機であろうエンフィールドがそう答える。

 

56訓練師団ね!

 

ほほう、なるほど。で……教官機に乗るのはデルベルト・ロッジ教官と。ふむふむそうかそうか。

 

 

 

 

 

???????????

 

 

 

 

 

それって、ボルトボックスの主人公たちがいる訓練師団の代……つまり、ゲーム主人公やないかいっ!!!?

 

 

 

 

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