リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う! 作:紅乃 晴@小説アカ
デルベルト・ロッジ大尉。
ボルトボックスの主人公であるテルリード・サーキスや、カイ・ローベルト、カレン・シュバイドという、後にトップエースとなる彼らを率いる指揮官として登場する彼は、多くのユーザーにとって忘れられない存在だった。
最初はただ厳しい指揮官で、連携ミスや、操縦ミスをするパイロットたちを叱咤する存在だが、物語が進むにつれて情に熱く、人としてまっすぐな気質で、そして部下や仲間を大切にする人間らしさが光る。
しかし、そんな彼にも暗い過去があった。
訓練生たちの教官に赴任する前、彼は北米大陸の前線にいたパイロットだった。
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入隊試験においてナノマシン適正はなかったものの、ノルマンディー反抗作戦後に志願し、第一世代後期のハウンドアーマーの操縦経験、そして空間認識能力と適切な判断能力から、第二世代前期のハウンドアーマーが配備される部隊に配属されることになった。
その頃の北米大陸は、ノルマンディー反抗作戦後に残存していたV.L.T勢力の撃滅を掲げており、ヨーロッパ方面から切り離されても、なおも北米大陸で破壊活動を行うV.L.Tに対応する作戦が主だって行われていた。
俺自身、C型V.L.Tや、B型V.L.Tを他メンバーと共に撃滅し、戦闘という目まぐるしく状況が変わる中、的確な状況判断と仲間との連携で堅実に撃破することができた。
その結果、膠着状態であったニューブランズウィックにある戦線を押し上げ、さらに北部側のニューファンドランドのV.L.Tも「あるハウンドアーマー小隊」によって殲滅されたことから、北米大陸のV.L.Tをサンピエール島にまで後退させることに成功した。
自惚れではあるが、その頃は総司令部からも勲章を授与されるほどに、俺や仲間たちは活躍していて、その指揮能力から、新たに新設された「アイランズ小隊」の小隊長にも任命されていた。
そんな俺の人生が変わったのは、ある任務だった。
サンピエール島に追い詰めたV.L.T撃滅のため上陸作戦が予定され、俺たちアイランズ小隊は、橋頭堡として設定されたロッキー・ハーバーまでの偵察任務に出た。
そのときに軍から支給された機体は、機動性に優れたHA-11 エンフィールド。
空戦能力と機動性が高いこの機体だが、さらに偵察のため視認性を下げるべく熱源隠蔽、迷彩処理が施されたものだった。
普段、アイランズ小隊は、前衛にレイブンアームズ、後衛にエンフィールドという運用をしていたのだが、今回は偵察任務。
もし発見された場合でも空戦能力と機動力が高く、素早く離脱できることから、エンフィールドが配置されることになった。
レイブンアームズを使用していたメンバーも慣熟訓練を問題なく終えていたため、連携についても支障はなかった。
同時に、俺も含めた小隊の全員がこう思っていた。
いつもと変わらない、手慣れた偵察任務だと。
その慣れに感覚が鈍った結果……目の前で悪夢が起こった。
セント・アンソニーからサンピエール島に上陸した俺たちは、そのまま南下。
ロッキー・ハーバーまでに点在するV.L.Tの集結地点を偵察し、直ちに司令部へ敵の情報を伝えたが……敵は俺たちが使用した長距離レーザー通信機の周波数を逆探知し、通信を行った俺たちの進路を予測し、奇襲を仕掛けてきたのだ。
敵の集結地点から50キロ以上も離れた箇所からの偵察。
そしてエンフィールドに迷彩が施されていたこと。
そして今回はあくまで偵察任務だと、本格的な戦闘を想定していない……勝利する側にあった油断。
その状況下で起こった奇襲は、まさに致命的だった。
襲撃してきたのは、蜘蛛型のC型が50体と、B型が3体。
偵察という任務に専念するため、軽武装のエンフィールドを採用したことが祟った。
すぐに離脱を試みたが、数にものを言わせたC型に取り囲まれた上に、飛べばB型が即座に撃ち落としてくる高所に布陣されてしまったことから、退路を絶たれていた。
隊の人間は次々とコクピットを食い破られ、C型の蜘蛛の脚のようなアームに弄ばれ……死んでいった。
眼前で体を引きちぎられた戦友もいた。
その瞬間、俺の中でこれまで積み上げてきたパイロットとしての尊厳、指揮官としての自信、プライド……その全てが崩壊した。
「あぁ……あぁああ……!」
助けを呼ぶ仲間の声。届かない手。引き裂かれて途絶える悲鳴。それを目にしながらも、俺はそんな間抜けた声を出すことしかできなかった。
無惨にも小隊の仲間が殺され、その光景を最後まで目に焼き付けろと言わんばかりに見せつけられ、最後の一人となった俺の前に、B型V.L.Tが来る。
B型に備わる位相収束砲にエネルギーが充填されていく。
それをただ見ていることしかできなかった。
あぁ、そうだ。
生き残れるはずがない。
あいつらと同じように。
ここで死ぬんだ。
そう、覚悟をした時だった。
《おおぉおおりゃあああぁぁあーー!!》
漆黒のハウンドアーマーが、今まさに収束砲を放とうとしていたB型の発射口目掛けて左腕を突き出し、そのまま
発射口を貫いた腕を引き抜くと火を噴いてB型V.L.Tが倒れる。
その炎が真っ暗だった森林地帯を照らす。
轟々と燃え盛る残骸を背に、振り返る漆黒の影。
赤いセンサーライトは、まるで俺を射抜いているように見えて、それがレイブンアームズであると認識するまで、呆気に取られてしまっていた。
すると、漆黒のレイブンアームズはすぐに躍動する。
群がろうとしていたC型を卓越した操縦技術で躱し、右腕に装備した大口径のガトリング砲で薙ぎ払ってゆく。
近づけばMMXで貫き、離れればガトリング砲が火を吹く。その圧倒的な力で、漆黒のレイブンアームズはC型やB型を蹂躙していった。
《……負傷した味方機を確認した。支援機は彼の保護を》
あらかた片付け終えたそれは、俺の仲間であった無残な残骸を目にする。
しばらく沈黙してから無骨な機械音を響かせると、何もできずにいた俺の前に膝を下ろし、その機体の肩に手を置いた。
《よく生き延びた。仲間の仇は、俺に任せろ》
それだけ簡潔に言い、膝をついていたレイブンアームズは立ち上がる。
《報告通り、敵の集結地点が点在していて、サンピエール島奪還の障害になる。残存兵力を掃討するぞ。リン、ついて来い》
《了解です、隊長》
機体を翻し、スラスターを迸らせて進んでゆく機体。
そのすぐあと、スカイブルーのレイブンアームズが俺の頭上を飛び越え、漆黒の機体の後へと続いた。
2機が向かうその先は……俺たちが偵察したV.L.Tの集結地点であった。
無謀だ。
無茶だ。
50キロ先には、奇襲を仕掛けてきたV.L.Tの手勢とは比べ物にならない数の敵がいる。そこにはA型V.L.Tも拠点要塞として存在している。
勝ち目なんてない。死にに行くようなものだ。
しかし……その声が出ない。
喉は仲間達の無残な死に様を見て、すっかり潰れてしまっていた。
それでも、たった2機であの戦力を有する場所に向かった相手を……自分の窮地を救ってくれた相手を……。
「俺は……俺は……!」
生き残った安堵。死の恐怖が遠ざかった安堵に、安心してるんじゃねーよ!
自分の代わりに、この死地に飛び込んできた味方を見て呆気に取られてるんじゃねーよ!
死んだ……死んだ仲間のためにも、俺は行かなきゃならないんだ!
震える手で操縦桿を握り、ガタガタと音を鳴らす恐怖を噛み殺し、あちこちのパーツを欠損した状態の機体を起き上がらせて、先に向かった恩人の痕跡を辿った。
そして、森林地帯を抜けた先にある開けた場所にたどり着いた俺は、信じられない光景を見た。
そこには夥しい数の敵が集結していたはず。
その残骸があちこちに散らばっていた。
C型もB型も、その全てが的確に急所を破壊され、あたりに散らばっている。
「なんだよ……これ……」
目を凝らせば、鬱蒼とした森林の奥でスカイブルーの機体が動き回っているのが見えた。
その動きも、自分のそれとはかけ離れた速さだ。
鬱蒼とした木々の合間を、まるでステップを踏むかのような軽やかさで潜り抜け敵を翻弄し、装備するアサルトショットガンで追いつけないC型を尽く粉砕していく。
辿ってきた道に動ける敵は存在しない。
そこには静寂と、目に見えるような死が充満していた。
ふと、VRモニターの先で何かが貫かれるような音が響く。
暗視モードに自動的に切り替わった光景。
そこにあったのは、俺がこれまで見てきた全ての〝強者〟という概念を根こそぎ変えてしまうようなものだった。
MMXを使い、周囲の防御壁であるC型を失ったA型V.L.Tの胴体を貫く……。
ガトリング砲を備えていたはずの片腕を失った漆黒のレイブンアームズ。
それは紛れもなく、自分を救った機体だった。
拠点制圧を目的としたA型は、ほかと比べ物にならない強さを有する敵だ。
それを、あの機体は、俺が到着するまでの僅かな時間で殺しきった。
貫いた場所から溢れる液体が、まるで返り血のように刃を突き立てた漆黒のレイブンアームズを濡らしている。
音を立てて崩れ落ちる拠点用途の巨体。
その残骸を見下ろし、相手が完全に途絶えたのを確認した漆黒のレイブンアームズは、MMXの先端から生成されるエネルギー刃を消失させた。
それからすぐに救援部隊が到着した。
V.L.Tの勢力を制圧したおかげで、バラバラと音を立てて輸送ヘリが何機もこの場に飛んでくる。
そのうちの一機がサーチライトで辺りを照らしていて。
その眩いライトの中、V.L.Tの返り血を浴びた漆黒のレイブンアームズが静かに佇んでいた。
その後、救護ヘリに回収された俺は、断片的に残された仲間の遺体と共に所属する基地へと帰還。
心身の負担を考慮した上官の判断で、戦線の後方にあるハワイ諸島、カイルア・コア基地にある訓練施設で、訓練教官としての任に赴くことになった。
そして、基地に戻ってから、俺は上官から自分を救ったあの漆黒のレイブンアームズに乗っていたパイロットの話を聞いた。
ダン・ムラクモ。
ノルマンディー反抗作戦で、後に「ミラクルイーグルス」と呼ばれる5人のパイロットで編成された小隊を指揮。
北米では、北部側のニューファンドランドのV.L.T勢力をほぼ1人で鏖殺したと言われている。
圧倒的な強者として君臨する……地球軍で唯一、単騎でA型V.L.Tを殺し切る……凄腕のパイロット。
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「ダン……ムラクモ……中尉?」
特A型に一撃を叩き込み、そして目の前に降り立った漆黒のレイブンアームズ。
片腕はMMXで、他の武装は異なっているが、その色と動き……見間違えることのない、あの日見た機体そのものだった。
そもそもの話だ。
特A型や、B型が放つ位相収束砲を掻い潜るという事をしている時点で、頭のネジが吹き飛んでいる所業としか思えない。
収束砲はビームなどの物理現象ではない。
かすめれば分子レベルで分解され、装甲や防御材も為す術もなく削り取られる。
そんな攻撃を紙一重で躱し、特A型に一撃を加えることが出来るパイロットなど、一人しか心当たりがない。
ダン・ムラクモ中尉。
最前線では生きる伝説とも言われた地球軍最強のパイロット。
つい最近、司令部の意向で後方支援基地に左遷されたと聞いたが……まさか、この基地にいるとは考えてもいなかった。
俺は、彼との直接的な面識は無い。
だが、こちらは一度命を救われている身だ。
言いたいことも、感謝したいことも山のようにある。
声を発しようとした瞬間。
「ぼさっとするな!特A型は手強い!とにかく動き回ってその手に持った銃を撃ちまくれ!!」
ダンの真横に着地する機体。
HA-12 アーマライトに乗るフレデリック・スミス少佐の怒号のような指示によって、一気に現実に引き戻される。
そうだ、今は目の前に特A型がいる。
自分が遭遇したことのない……とんでもなく危険で、想像を絶する敵。
恩人がいると言っても、油断をしていい相手でも、ましてや自分を見失ってもいい相手じゃない。
そうすれば、また繰り返すことになる。
仲間を全員失ったあの日の夜と同じことを……!!
「各機!聞いたな!とにかく動き回れ!特A型を牽制する!射撃開始!」
突然現れたダンの機体に、自分が面倒を見ている訓練生たちも困惑している様子だったが、その迷いを吹き飛ばすように、俺はトリガーを引き、マシンガンを撃ち放つ。
呼応するようにテルリードを始めとした訓練生たちも、レイジングブルを駆り、高速で地面を滑るように動き回って特A型に弾丸を撃ち込んでいく。
その動きはナノマシンの恩恵もあってか、訓練生とは思えないほど軽快だ。
こちらの攻撃は、特A型の有する流体エネルギー膜に阻まれるが、そんなことはどうでもいい。
自分達の役目は相手の注意を散漫にすること。
そして、アレを倒すのは自分達ではないのだ。
「チェェストォオオオーっ!!」
位相収束砲を掻い潜り、再びムラクモ中尉の操る漆黒のレイブンアームズが、MMXを叩き込む。
エネルギー膜を突破し、装甲までたどり着いた一撃は特A型をのけぞらせる。
距離をとり、破壊された建物の壁を蹴って軌道を変える漆黒のレイブンアームズが、炎の中に着地する。
その姿こそ、俺が畏怖し、憧れ、情景となったそのものだった。
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あえて、もう一度言おう。
俺はボルトボックスの箱推しである。
特に、メインストーリーに欠かせない主人公たち……リトルウイング隊はめちゃくちゃ推せる。
デルベルトは主人公含む訓練生たちの教育を担当しており、さらに正式配属となってから所属する「リトルウイング隊」の隊長として活躍することになる。
ストーリー序盤は、彼が以前に指揮を執っていた「アイランズ隊」が全滅した時のトラウマに苦しめられながらも、主人公たちのため指揮官として気丈であり続け、そして危機に陥ったメンバーを自らの手で救ったことにより、アイランズ隊で負ったトラウマを克服する。
ナノマシン非適合という凡人でありながら、主人公たちに最善の教導を行い、メインストーリーの難所であるロサンゼルス基地奪還作戦では、A型V.L.T3体を撃破するという演出が、とても胸を躍らせ、熱くさせた。
だが残念ながらデルベルトは、どのルートでも結末が決まっていた。
彼は……特A型との戦いで戦死するのだ。
ある時はテルリードを庇いエネルギー刃で体を貫かれて。
ある時は裏切ったカイの策略によって背後から刺されて。
ある時は特A型との戦いで時間を稼ぐために自爆特攻をして。
あらゆるルートで、彼は死ぬ運命にある。
その度にデルベルトは、最後の瞬間までテルリードやカイ、カレン……主人公たちを案じ、導き続けた。
彼が愛用したエンフィールドが墓標のように佇む中、主人公たちが敬礼をして彼の死を悼むシーンは、ファンの中でも涙腺崩壊シーンとして有名だったりする。
俺自身、ボルトボックスを初プレイしたときにはデルベルトの死に涙し、彼が生き残っていたら……という二次創作ものを読み漁って心の傷を癒したものだ。
主人公であるテルリード、幼馴染のカイ、ツンデレなヒロインであるカレン。
様々なキャラクターが魅力的ではあるが、兵士として、歳上として、隊長としての信念を貫き、死に向かい合ったデルベルトというキャラクターも、ボルトボックスのストーリーを際立たせている。
そして、そんな彼らが、俺の目の前にいる。
というか、この特A型というボス級の敵に立ち向かう戦場に巻き込まれた訓練機が、主人公一行だったのだ。
「オラァああ!!特A型!!こっち向けやァアアーー!!」
思わず変な声をあげた。
ボルトボックスのファンだからこそ、メインストーリーの主要キャラが目の前にいることでテンションが上がっているのも確かではあるが……それ以上に今の状況がヤバい。ヤバすぎる。
これ勝てんかもしれん、なんて言ってられん。
彼らはまだ訓練生。
メインストーリーのチュートリアルであるC型襲撃ミッションすらクリアしていない存在なのだ。
さて、そんな育成以前の状態である彼らが北米大陸から戦う予定の特A型と遭遇したらどうなるか?
無論、死にます。
例えるならキャラクリしてる間に魔王が殴り込んでくるレベル。
せめて主人公の性格が攻撃型か、防衛型か、支援型かという、初期タイプの設定くらいまで待ってもらえませんかね!?
それでも結果は変わらないけどさっ!!
やばいやばいやばいやばい。
ヤバヤバのヤバで変な汗がドバドバ出てる。
特A型はマジでやばい。
位相収束砲3門が別々の向きに閃光を放つ。
フレッドやリンは上手く躱しているが、デルベルトやテルリードたちの不慣れ感が半端じゃない。
というか、フレッドとリンが特A型に難なく対応できてるのも頭おかしいけども……!!
とりあえず特A型が周囲に気を散らしてる隙に、収束砲をすり抜けてMMXを叩き込んで大きく仰け反らせる。
よし!これでちょっとは時間稼ぎになったな!
息を整えて状況を整理しよう。
えーと、最初は「あらら、見ず知らずの訓練機が巻き込まれてらー。とりあえず前に出たら死ぬから後ろで援護してもろて」って思ってたけど、その訓練機が落ちたらメインストーリーの主要人物が全滅するからな!
下手打てば勇者系ゲームで勇者不在で魔王倒す……みたいな話になるぞこれは。
とにかく……俺の優先順位は、主人公一行を死なせないよう立ち回らせつつ、特A型があっちに向かないようタゲを取って、収束砲とエネルギー刃を躱して、懐に潜り込んでMMXを叩き込んで殺し切るということになる。
うーんこの。
鬼畜すぎて笑えてくる。
特A型は更なる猛攻で、チョロチョロと接近した間合いをうろつく俺を撃破しようとしている。
ちなみに特A型も俺の近接攻撃のパターンに勘づき始めたのか……行動パターンを細かに変化させてやがる。
間合いに飛び込もうとしたらエネルギー刃を下から上に振り上げてくるし、ゼロ距離でもお構いなしに収束砲を撃ってくるし……なんやお前、ゲームではそんなモーションなかっただろうが!?
しかも、収束砲の発射サイクルも上がってるし、
あーくそ、追尾ミサイルクソうざ……がぁっ!!
振り切るこっちの身にもなれ!!ビル蹴って加速して距離空いたからライフルで撃ち落としたけど、状況は全然改善されてない!クソですわ!!
こりゃあ誰かを守りながらとか……全くもって余裕がない!!
タゲは上手く取ってるけど、位相収束砲の流れ弾が当たるか、
というわけで、今俺は特A型の近距離に陣取って収束砲とエネルギー刃の乱舞を捌きつつ、MMXを叩き込むタイミングを窺っているのだ。
「全機!ムラクモ中尉のレイブンアームズを援護!隙を作りさえできれば、中尉がやってくれる!!」
フレッドのやつ、少佐権限で指示出してるなぁ?
いいぞぉ、もっとやって。
「隊長の援護は私がやる!もっと早く動いて……もっと、もっと!!」
あとリンも上手く立ち回っている。
移動時に、俺を真似てビルの外壁を踏んづけてるので、ボロボロだったビルがさらにボロボロになりつつあるけど……まぁいいか。
デルベルトの方も、主人公たちも動き回りながら援護をしているわけだが……流体エネルギー膜が機体表面を覆っているため、遠距離系の攻撃が全て無力化される仕様。
MMXでダメージが通るのは、流体エネルギー膜を貫いて叩きつけているからです。
しかし、彼らの攻撃は無意味ではない。つまり……。
「ほぉら!もう一発受け取っとけぇえ!!」
俺が攻撃と撃破の要ってことだ!
ほんの少しでも注意が逸れてくれたら突撃できる。
横合いから殴りつけるように叩き込んだMMXで特A型はダメージ……を受けてねぇ!?受けてねぇ了解!?
なんやこいつ、めちゃくちゃ硬いぞ……!?
同じ箇所に二発目叩き込んでるのに装甲に傷ひとつ入ってない。
仰反るーとかのダメージモーションしてるくせに。ええい、こいつの装甲値どうなってるんだ。
とりあえず、周りのみんなも動き回りながら射撃してくれてるので、一人で立ち向かうよりは隙が生まれて戦いやすいような気が……って。
あっ!おま……やめろや!!タゲを完全に移行するのはアカン!!
まっ、待って!!止まれ!おまえ!!
ばか、デルベルトの機体にロックするな!!!!
こいつ、レイジングブルを無視して、それを指揮してるデルベルトに狙いをつけたな!?
タゲをこちらに向けさせるために、再度MMXを叩き込もうと距離を詰めるが……隠し腕に備わるエネルギー刃の斬撃に距離を取らざるを得ない。
この野郎……俺の攻撃パターンを学習してやがる!?
「デルベルト教官!逃げてください!」
特A型が明らかにデルベルトを狙っているのを察したのか、テルリードの通信が飛ぶ。でも、エンフィールドの機動力じゃ逃げきれない。
「逃げる……?俺は一度、あの場所から逃げた」
そして意味深な声でそう返すデルベルト。
彼が言った逃げたというのは……「アイランズ小隊」の出来事なのだろう。
仲間を救うこともできず、目の前で殺されたこと、そして自分だけが生き残ったことが彼の心に深い傷を与えている。
だから彼は、どんな状況でも。
リトルウイング隊のメンバーを見捨てずに戦い続けたのだ。
「俺はもう、逃げない!俺を救ってくれた……恩人に報いるためにも!俺は……逃げるわけにはいかないんだぁああぁあぁあ!!」
マシンガンを捨て、MMXを構えたデルベルトのエンフィールドが、特A型めがけて果敢に突撃してゆく。
そして迎え討とうとする特A型……いや、逆に誘い込んでいる。あのモーション……ダメだっ!!
MMXを構えて肉薄しようとしたデルベルトのエンフィールドの目の前に、漆黒のレイブンアームズが横から割り込んだ。
「ムラクモ中尉!?」
「離れろ!デルベルト!こいつ、わざと誘い込んで……」
その瞬間。
眼前にいる特A型が纏っていた流体エネルギー膜が裏返り……