リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う!   作:紅乃 晴@小説アカ

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第13話 ピンチの時こそチャンスが来る

 

 

 

状況は最悪だ。

 

愛機であるHA-12 アーマライトの中で、私……いや、俺、フレデリック・スミスは、目の前で起こった出来事に歯を食いしばるほかなかった。

 

「……嘘だろ」

 

目の前で隊長が撃破された。

 

特A型の流体エネルギー膜の絶対的な防御力を裏返した攻撃、B.I(ブロウクン・インパクト)の一撃を受けて、肉薄していたデルベルト機と、そこに割り込む形で飛び込んだ隊長のレイブンアームズが吹き飛ばされたのだ。

 

「隊長ッ……!」

 

撃墜された隊長を目撃したリンが悲鳴を上げたと同時、すぐさま彼女はダンの方へと飛んでいってしまい、結果、囮役が俺一人になってしまった。

 

そのことに関しては、軍人としては欠点であるものの、リンには文句を言うつもりはない。

 

今の彼女にとって隊長は精神的支柱だ。

 

隊長の絶対的な生存能力と、類稀なる操縦技術があったからこそ、リンは隊長の生死を気にせずに信頼し、自分の役目と技術に集中することができた結果、純粋なパイロットとして育つことができた。

 

そんな彼女が精神的支柱を失い、狼狽えるのは必然と言える。

 

彼女の姿を見ていると、まるで昔の自分を見ているような気分になった。

 

「……俺も、あんな顔してたか」

 

ノルマンディー反攻作戦。

 

今思い出しても濃厚な死の気配があったその戦場で、俺や隊の仲間たちは、隊長の見せた圧倒的と言える技量と度胸に引っ張られて、その死地で生き残ったのだから。

 

内心、俺自身も動揺していた。

 

「くそ……落ち着け」

 

吹き飛ばされた一瞬しか判別できなかったが……ダンのレイブンアームズの受けたダメージは深刻だ。

 

特A型による不可視の物理攻撃。

 

隊長から特A型の特徴や、その対処方法については一通り聞いてはいたが、なるほど。コイツは危険すぎる。

 

「冗談きついぜ……」

 

物理現象を捻じ曲げるような防御力を攻撃に転じてくるとは……恐ろしい敵だ。

 

「おおっと。まずいまずい」

 

飛来する位相収束砲が機体右側をかすめ、地面を削り取る。収束砲が穿った跡を示す丸い穴があちこちにあり、路面状況は最悪だ。

 

「このデカブツめ。ちょっとは手加減しろよ……!」

 

俺の乗るHA-12 アーマライトは、隊長やリンが乗るレイブンアームズとは違い、機動力に特化した機体だ。

 

脚部や腕部は軽量化の影響で耐久性、耐荷重性は乏しく、軽量級の武装しか腕部に搭載できないものの、その空戦能力は他の追随を許さない。

 

特に俺が言いたいのは、機体の安定性。

俺はそれが気に入っている。

 

「こういう時ほど、暴れてくれる」

 

ビルの屋上を着地点として目指しつつ、相手に照準を合わせて、撃つ。着地と同時に特A型のボディーが爆ぜた。

 

「ちっ、怯みもしないか。無敵か?こいつは」

 

着地と同時に即移動。さっきまでいた場所が位相収束砲で貫かれる。危ない危ない。動かなければ直撃だった。

 

「ほんと、あの人と一緒にいると退屈しないな」

 

「少佐!」

 

そんな言葉を漏らしていると通信が入る。相手はデルベルト・ロッジ大尉麾下の訓練生たちだ。俺はすぐに指示を出す。

 

「今は周りを気にするな!地上の路面は最悪だ。足を引っ掛けないよう注意しながら、とにかく動いて撃て!撹乱して相手を惑わせる!」

 

「りょ、了解!」

 

戸惑いながらも澱みはなく、訓練生たちが乗るレイジングブルは軽快な機動力を発揮して敵を翻弄する。

 

上手いものだ。

 

ナノマシンによる補助ゆえか……いや、それを抜きにしても三人のパイロットとしての素養が光るのだろう。

 

「いいぞ、そのまま引っ張れ……!」

 

特A型が三機のレイジングブルに意識を向ける中、俺は隊長機とデルベルト機に通信を繋ぐ。

 

「隊長!ロッジ機、無事か!応答してくれ!」

 

返ってくるのは雑音。いや、デルベルトの乗るエンフィールドからは僅かながら反応がある。しかし、言葉としてコミュニケーションが取れる状態ではないのだろう。

 

「……応答しろよ、隊長……!」

 

撃墜された瞬間、見えた破損箇所は左腕と左脚部、そして背部に接続された武装も機体もろとも吹き飛ばされていた。

 

左腕に備わるMMXは、俺が陣取っていた滑走路にまで吹っ飛んできて、硬いアスファルトに突き刺さるほどだ。

 

あの隊長がああもやられてしまうとは、つくづく驚く。

 

(改めて化け物だな、特A型ってやつは)

 

……そんなもの、ノルマンディー反攻作戦で隊長やアルたちと共にトリプルゼロを操って戦場に出た時から分かっていたことだ。

 

V.L.T。

コイツらは掛け値なしの化け物。

 

正直に言ってしまえば、こんな奴らと戦う奴なんて気が触れてるんじゃないかと思える。

 

「隊長ぉ〜〜無理ですよこんなの〜〜勝てるわけないじゃないですかぁ〜〜!!」

 

ノルマンディー反抗作戦でそのセリフを何度言ったか。その度にダン隊長はこういう。

 

「まだまだこれから」と。

 

うん、やっぱりアホな隊長だわ。

 

何度も逃げようと思った。

 

何度もダメだと思った。

 

何度も死んだと思った。

 

何度も、何度も、何度も。

 

その度に、あのアホな隊長は自分に言うのだ。

 

「いいアシストだった。次も頼むぞ」と。

 

信頼しきった顔で。まるで仕事がうまくいったから次も頼むと言わんばかりの気軽さで。

 

まったく、こっちはアホな隊長に振り回されて、命懸けでついていってるというのに。

 

「……ほんと、あの人は困った人だ」

 

ニヤリと笑みを浮かべる。

 

状況は絶望的。俺たちじゃ特A型を落とすのは叶わない。今だって逃げ回りつつ、無意味と思える攻撃をしているだけだ。

 

だが、そんな修羅場はいくつも潜ってきた。

 

ここで無様に逃げるのは、隊長が信頼してくれた俺のやることじゃない。

 

「俺1人で逃げれるかよ……こんなとこで」

 

ノルマンディーで経験したあの地獄の日々も、今となっては懐かしい。

 

なんだかんだとは言え……死ぬ死ぬと騒いでいた自分や、ほかのメンバーたちも生き残ることができた。

 

そして今の状況も、その地獄を潜り抜けたバックボーンと自身が俺を支えている。

 

もちろん、その過去の栄光が自分たちの力だけじゃ達成できなかったことくらい知っている。

 

だからこそ、俺たちは全員、隊長を尊敬し、信頼しているのだから。

 

「さて、現実逃避をしてる暇はないぞ、フレッド。……ここが正念場だ」

 

一喝するように走らせた言葉。

それだけで幾分か空気感はマシになった。

あとは自分がどれほど……特A型に迫れるか。

 

(隊長。寝てないでさっさと起きて手伝ってくださいよ)

 

内心でつぶやいた言葉で自分を奮い立たせる。

飛来した追尾ミサイルを躱し、爆炎の中から飛び出す。

こちらを見据える特A型と目が合ったような気がした。

 

「おい化け物。ミラクルイーグルスの狙撃手を舐めんじゃねぇぞ」

 

吐いた言葉と共に、俺の操るアーマライトは、装甲の隙間に備わるサブスラスターとメインスラスターを閃かせ、特A型へと向かってゆくのだった。

 

 

 

 

「……クモ…尉……ムラクモ中尉!!」

 

ヘルメットに内蔵された通信機から聞こえる声で、俺は目を覚ました。

 

あーくそ。頭いてぇ。全身いてぇ。

 

どれくらい眠っていたんだ?

 

目の前に映し出されているVRモニターはノイズだらけでまともに機能していない。

 

体はコクピットシートと繋がるセーフティベルトによって宙ぶらりんになっているのがわかった。

 

「ムラクモ中尉!聞こえていたら返事をしてください!」

 

「あ、あぁ……ううん……聞こえてるぞ……」

 

聞こえていた声の主がようやく認識できた。

 

デルベルトが接触回線で話しかけてきているが、機体コンソールは酷い有様だった。

 

操縦レバーも、フットペダルも、何も反応しない。

 

たしか、特A型の流体エネルギー膜を反転させた

B.I(ブロウクン・インパクト)を食らって……よく生きていたな、俺。

 

あの一撃はマジで洒落になっていない。

 

高耐久の機体でも裏返った一撃を喰らえば墓場に直葬される。

 

ほんと……ほんとに運がよかった……けど、その運も使い切ってしまったらしい。

 

機体データを見れば、左手、左足、背部武装が破壊されている。これじゃあ動くどころか、武器を構えることも出来やしない。

 

「あぁっ!よかった!無事ですか!?早くその機体から脱出を……!?チィッ!!」

 

すぐに爆発音とノイズ、銃弾が掠めるような金属音が響き渡った。凄まじい破壊音と共にデルベルトの機体が戦闘機動をし始めてる音が聞こえてくる。

 

体に痛みはあるが骨折や欠損は感じられないのが不幸中の幸いだ。

 

しかし、とにかくこの機体はダメだ。

 

動力回路も機体に受けたダメージの影響か、全部ダメ。

 

わずかに機能を保持したサブモニターでは、武装したエンフィールドに乗るデルベルトが、徐々に近づいてくる特A型と戦っている様子を映し出していた。

 

「くそっ!コイツ!俺のことを無視してムラクモ中尉を……!?」

 

デルベルトの操るエンフィールドは、俺が庇ったおかげか最小限のダメージで済んでいる様子で、まだ生きている武装を駆使して特A型に挑んでいる。

 

しかし流体エネルギー膜に阻まれてダメージが通らな――「わたしの隊長に近寄るんじゃねえええ!!!!」と、思っていた時期が私にもありました。

 

「てめぇ、よくも隊長を!ぶち殺ぉぉぉす!!」

 

うおおお!リン・ターレン!リンさん!

 

MMXは斬るじゃなくて叩き込むものってのは教えはしたけど、横合いから特A型の顔面に2回もブッ放すって、お前やっぱり最高かよ!

 

普段敬語な口調からは想像できないきったねぇ言葉と共に特A型をぶん殴ったリンは、そのまま空中で姿勢を整えて俺の近くに着地する。

 

「隊長!生きてますか!?手足はありますか!?怪我はないですか!?返事してください!!沈黙だったらコクピットを引き摺り出して……」

 

「いやいやいや!無事!無事だから!!落ち着け!!」

 

「私は冷静そのもの……ええい、てめ……邪魔するなら殺す!!」

 

全然冷静じゃねーじゃん!

 

鬼追尾ミサイルを睨みつけて右手のライフルで華麗に撃ち落とすリン。

 

あかん、完全にキレてる。

 

これ、デルベルト指揮下のアイランズ隊を救助した時に、襲われてる記憶がフラッシュバックしてC型を一人で蹂躙した時のバーサーカーリンちゃんモードじゃないですか、やだぁ怖い。近寄らんとこ。

 

「デルベルト!貴方には隊長の援護は任せます!隊長に特A型を近づけるわけには行きません!!」

 

「アッハイ!!」

 

ほらぁ!デルベルトくんめちゃくちゃ気を使ってるじゃん!とにかく落ち着……あーあー行っちゃったよリンちゃん。ああなったら言うこと聞かねーからなぁ。

 

「隊長。ご無事で何より。しかし相変わらず凄いですね、彼女」

 

通信機能は幸い生きていたので広域通信をオンラインにすると、すぐにフレッドが応答してくれた。

 

主人公たちが乗るレイジングブル三機に指示を出しながらフレッドも特A型と大立ち回りをしてくれている。

 

援護するデルベルト、そして鬼の近接戦を仕掛けるリンの様子に、フレッドは慣れた様子で、他3人は無言だった。

 

コクピットの中で驚いてんのかな。

 

「きょ、教官!援護します!カイ!カレン!フォローを頼む!」

 

「りょ、了解!」

 

「あんたこそ、アタシについて来なさいよ!」

 

オープンチャンネルで聞こえる主人公のテルリード、カイ、カレンの応答する声。

 

マシンガンの銃声や、位相収束砲の独特な発射音があたりに響き渡る。

 

リンの猛攻、フレッドの正確な砲撃も当たっているが……やはり、あの特A型、インチキレベルで強すぎる。

 

頭部に二発、MMXを叩き込まれてるのに全く怯む様子がない。

 

「この……いい加減に……!?」

 

MMXを多用しすぎてエネルギーが不足したリンが一度離れようとした瞬間、彼女の左腕が収束砲に呑み込まれた。

 

「リン!!!!」

 

俺の声に反応したのか、リンはすぐさま左腕をパージして収束砲から逃れる。

 

なんとか離脱はできたが……MMXを装備していた左腕が消失してしまった。

 

「訓練機!デルベルトは援護を!俺が仕掛ける!!」

 

離脱したリンに変わり、今度は背部に懸架した大型の分子振動ブレードを取り出したフレッドのアーマライトが跳躍して特A型に仕掛ける。

 

動き回る撹乱攻撃も効いていて、フレッドはブレードの切っ先を構えると、出力にものを言わせた突きを放った。

 

その一撃はたしかに流体エネルギー膜を貫くが……MMXほどの貫通性は分子振動ブレードにはない。

 

「クソ!やはり足止めにもならんか!」

 

貫けなかった反動を利用し、機体の姿勢を空中で立て直すフレッドだが、それを見逃してくれるような相手ではなかった。

 

エネルギー刃を振り上げ、距離を取ろうとするフレッドを追撃する特A型。

 

その一閃は構えていた大型ブレードを引き裂く。

 

「チィ!少しでもリスクのあるものは潰しに来たか……!!」

 

一撃は凌いだ。そう思ってしまった。フレッドが次に見た光景は……振り上げて、そのまま振り下ろしたエネルギー刃から生成された〝飛ぶ斬撃〟。

 

「うおおおおおっ!?」

 

あわや縦に両断される直前だったが、フレッドは機体を横にロールさせて斬撃を躱わす動きを取る。だが、完全に避けることはできず、斬撃の進路上にあった両足が切断された。

 

「ぐぅ……!」

 

姿勢制御を担う脚部バーニアを失った影響で一気にバランスを崩したアーマライトだが、墜落間際にカイとカレンが操るレイジングブルに受け止められて致命傷は避けることができた。

 

だが……これはまずい。

 

リンとフレッド、二人の戦力が文字通り削り取られた。

 

戦線が、音を立てて崩れていくのがわかる。

 

鬱陶しいハエを撃ち落としたと言わんばかりに、特A型は足を止めることなくこちらに近づいてくる。

 

その歩みは遅い。

 

なのにもう、逃げ場がない。

 

「……くそっ、とにかく脱出しないと……」

 

コクピットハッチを押し上げようとしたが、びくともしない。地面を数度転がった影響か、コクピットハッチが歪んでしまったのだろう。

 

嫌な汗が背中を伝う。

 

時間が、ない。

 

俺はハッチの横にある緊急脱出用のレバーを引く。

 

ハッチが歪んだ時に応じて、炸裂ボルトで装甲ごと分離すると、転がるように外へと飛び出した。

 

ノイズが余計にひどくなったVRヘルメットを脱ぎ捨てた瞬間。

 

世界が、妙に静かに感じた。

 

眼前にいたのは、俺を見下ろす形で佇む特A型だった。

 

思った以上に、近い。

 

横合いから両足を失ったフレッドのアーマライトに代わって、デルベルトや主人公たちもハウンドアーマーが攻撃をしている。

 

だが……その全てが流体エネルギー膜で無効化されている。

 

弾丸が弾かれる音すら、もう意味を成していない。

 

圧倒的な力の差がそこにはあった。

 

銀色の装甲に赤いラインを迸らせる特A型は、収束砲の発射口を俺に向けて緩やかにエネルギーを充填してゆく。

 

逃げ場はない。

 

遮蔽物もない。

 

距離もない。

 

「隊長!逃げて!!」

 

……あぁ、これは避けられないやつだ。

 

地面に横たわるリンの機体のスピーカーから、悲鳴のような声が響き渡る。

 

頼みの綱の愛機は物言わぬ瓦礫と化している。

 

視界の端で、味方が必死に何かを叫んでいるのが見える。

 

けれど、その声はもう届かない。

 

……これほど酷くやられたというのによく生き延びたものだ。

 

死ぬ間際だというのに呑気なことを考えていると、充填を終えた位相収束砲が俺に向かって放たれる。

 

光が、世界を塗り潰した。

 

その閃光が全ての物体を分子レベルに分解しようとした……その瞬間、俺の前に何かが割り込んだ。

 

「グランドシールド!!」

 

一つの影が、本来防ぐことが不可能だと言われていたボルトのエネルギー収束砲を……両手から展開したシールドで完全に防ぎ切っていたのだ。

 

「なんだ!?」

 

「あ、あの機体は……一体!?」

 

腰にぶら下げた無線機から驚く声が聞こえる。

 

俺はまるで傘に阻まれるような形で辺りに分散する収束砲を呆然と見ていた。

 

それを一身に受ける機体は、俺にオレンジ色のカメラアイを向けた。

 

【助けに来ましたよ、ダン・ムラクモ】

 

エーテリアスの声が聞こえる。調査委員会によって監視下に置かれていたはずのボルガー。

 

なぜこの機体がここにあるかというと。

 

「ああああ!無理ィイ!?」

 

「え、待って、その機体に乗ってるの誰だ!?」

 

【レイラ・ストーム少尉です】

 

「はぁあ!?」

 

「収束砲を受けるなんて自殺行為、聞いてないァアーい!!」

 

なんて汚い絶叫……ていうか、なんでストーム少尉がその機体に!?

 

なんで!? 動かせるの何で!?

 

【彼女ならば、私の補助で短時間の操縦は可能です。……あくまでボルガーのみではありますが】

 

そう言ってる間にも、ボルガーは収束砲を受けている影響で出力がどんどん落ちていく。

 

このままじゃシールドが剥がされて、俺ごとボルガーが収束砲によって消し飛ばされてしまうぞ!?

 

「はぁあああっ!!」

 

そう思った矢先、収束砲を放っていた特A型から火が上がった。

 

目を向けると、MMXを装備した右手を突き出し、特A型に取り付いている一機のハウンドアーマーが見える。

 

それは主人公、テルリード・サーキスの駆るレイジングブルだった。

 

「ムラクモ中尉!今のうちに退避を!!」

 

すかさず機体を翻して二発目のMMXをぶち込むテルリード。

 

……その動きは、まさにボルトボックスの主人公にふさわしい身のこなしだった。

 

収束砲を受けるという自殺行為から解放されたレイラは、ボルガーを膝立ちにしてコクピットハッチを開く。

 

差し出された手の上に乗ってコクピットを見ると、シングルシートだったはずのコクピットが何故かタンデムシートに変貌している。

 

震えて顔を青ざめさせながらも後部座席に乗る軍制服姿のストーム少尉を横目に、俺は躊躇わずにコクピットシートに滑り込む。

 

【あの特A型はここにある戦力では対抗できません。貴方たちが乗る……このボルガーの力が必要なのです】

 

この機体は謎が多すぎる。

 

ゼブロイドと自称するエーテリアス。

 

V.L.Tの技術で合体するシステム。

 

聞きたいことも、知りたいことも、山のようにある。だが、今はそんなもの、どうだっていい。

 

「エーテリアス」

 

【……はい】

 

「たしかに、お前の言う通り……俺たちの力じゃ何もできなかった。ここで特A型を好きにさせれば、そのまま全員死ぬことになる。それだけは……許しちゃならないんだ」

 

たとえ、この力が何かの思惑の上にある歪みであったとしても。ここにいる全員が救えるというなら。

 

「だから、もう一度俺に……力を貸せ!!」

 

その声に呼応するように。

 

コクピットの中央コンソールには、ボルガーによる「ユナイト・シグナル」を示す光が灯された。

 

 

 

 

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