リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う!   作:紅乃 晴@小説アカ

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第14話 勇者は再び立つ

 

 

 

倉庫から血相を変えてやってきたカエデの口からは、こんな言葉が出てきた。

 

「Unknown01……ボルガーが……再び起動しました」

 

爆音と戦闘による振動が司令室を襲う中でため息を漏らす。

 

「全く、厄介事ばかり起こるよね。昨日といい、今日といい」

 

ソロモン諸島、レンネル基地の司令官として赴任したロベルト・アレクサンダーは、ぼやくようにそう言うしかなかった。

 

Unknown01……またの名をボルガー。

 

動かないからと放置されていたはずの……地球外技術で作られた存在。

 

それが“動いた”。

 

だから今さらになって、地球軍本部は高速輸送機で調査委員会の担当官を送り込んできた。

 

ボルガーに乗っていたダン・ムラクモ中尉はもちろん、基地司令であるロベルト自身も尋問を受けた。

 

「驚きましたよ。まさか環太平洋防衛艦隊の指揮官に名を連ねていた貴方が、こんな場所に赴任しているとは」

 

「昔の話だよ。今は戦略的価値なんてなーんにもない基地にいる、お飾りの司令官ってやつさ」

 

調査委員会の担当官にそう皮肉めいた言い方をされたものの、それがロベルトの現実であり、事実だった。

 

5年前。

 

ハイパーゲートから現れたV.L.Tは、ユーラシア大陸の侵略を開始した。

 

当時、環太平洋防衛艦隊の護衛艦で艦長に就いていたロベルトは、V.L.Tの圧倒的な力を人類の誰よりも早く味わう一人となった。

 

ハイパーリンクの建造から30年。世界は軍縮傾向にあったものの、環太平洋防衛艦隊は強国と呼ばれた国々が共同で出資し、編成された国家の枠組みを超えた艦隊だった。

 

原子力空母に加え、艦載機や護衛艦、ミサイル艦も充実していた。その戦闘能力は、世界でもトップクラスのはずだった。

 

それがどうだ。

 

V.L.Tという圧倒的な脅威の前に、世界最高峰の艦隊は蹂躙され、なす術もなく壊滅した。

 

多くの士官や将兵が犠牲になった。ロベルト自身、その戦闘で多くの戦友を失った。

 

なす術もなく、自身の船すら失った彼に待っていたのは責任のなすりつけだった。

 

艦隊の大部分が戦死した中、わずかに生き残った高級士官たちに、すべての責任が押し付けられたのだ。

 

笑えない話だ。

 

環太平洋防衛艦隊に出資していた強国は、その責任を取ろうとせず、現場で懸命に戦った者たちにすべてを押し付けた。それが軍縮と人類の繁栄の果てにある成れの果てかとも思えた。

 

僅かに生き残った中には、ロベルトの恩師である中将もいた。

 

しかし中将は、その責任に耐えかねたこと、そしてV.L.Tの攻撃で家族を失ったことも重なり……自身の執務室で首を吊って亡くなっていた。

 

その冷たくなった遺体を見つけたのは、ロベルトだった。吊られたままの身体を見上げ、しばらく、何もできなかった。

 

そして、その遺体を下ろしたのも、彼自身だった。

 

中将の死をもって責任を有耶無耶にした各国の高官たち。

 

地球軍を創設してなお続く、責任のなすりつけ合いという愚かな風習。

 

それでも、V.L.Tの被害は加速度的に増えていく。

 

もう、どうでもよかった。

 

責任を取らされる形で赴任した、このレンネル島基地。

 

ここで彼は、お飾りの司令として席を置くことになった。

 

赴任当時は、ガルダリア・エンジンの発明もあり、人の出入りが絶えない活気ある基地だった。

 

だが、ハウンドアーマーの開発が各国企業へと移行してからは、この基地は戦地のはるか後方へと押しやられ、戦略的価値など何一つない場所へと成り下がった。

 

全く。

 

つくづく……ろくでもない世界だ。

 

「あーあー、これだから嫌なんだよねぇ。未知の技術ってやつは。乗っているのは誰なのさ」

 

「この識別番号は……レイラです!レイラ・ストーム少尉が乗っています!」

 

そう報告したカエデの表情は、苦虫を噛み潰したようなものだった。

 

レイラとの交友があったから、彼女の身を案じているからだろうか。その両方も含まれているだろうが、ロベルトからすれば別の意味もあった。

 

レイラ・ストーム少尉。

 

彼女はアメリカ大陸の名家、ストーム家のご令嬢であり、今北米大陸で指揮をとる女傑、ソフィア・ストームの妹君だ。

 

ナノマシン試験に落ちたにも関わらず、頑なに軍属にこだわるレイラ。

 

彼女の父は、比較的に安全なこの基地へと配属するように軍部へ手を回して、このレンネル基地に配属されたのだが……。

 

「まったく……よりにもよって……」

 

レイラがハウンドアーマーのパイロット志望であったこと。

 

そして前線への配属願いを提出されたことも知っている。

 

だから、あれに乗り込んだ理由と気持ちは何となくは察せられる。

 

しかし、彼女がどういう経緯でボルガーに乗ったのか?

 

そもそもなぜ、今まで誰も動かせなかったはずの機体が活発に動き始めているのか。

 

その場にいる管制官や、監視員、通信士官……誰もが疑問を抱いている中。

 

「し、司令官!」

 

「今度は何?」

 

「ボルガーにムラクモ中尉が搭乗し……ユナイト・シグナルが来ています!」

 

ユナイト・シグナル。

 

それはムラクモ中尉からの報告にもあった「合体」に至るシグナルだという。

 

もっとも、それが何を意味するのかは、技術に疎いロベルトにはもちろん、技術畑のカエデにとっても判然としていなかった。

 

そもそも、そのシグナルがどういう経路で司令部へ届いているのかすら不明だ。

 

理屈も仕組みも分からない。

 

分かっているのはただ一つ、

 

今この場で求められているのは、ボルガーの合体を認めるか、否か。その判断だけだった。

 

「アレキサンダー司令。Unknown01の件は、上層部からも安易に動かすなという通達があります」

 

司令部にいるオペレーターの声は冷静だった。だが、その冷静さの奥にある緊張は、この場にいる誰もが感じ取っていた。

 

「……わかってるよ。わかってるけどさ」

 

ロベルトは小さく息を吐き、力の抜けたような口調で続ける。

 

「このままじゃあ、ここにいる全員が死ぬわけだよね」

 

静かな声音だった。けれど、その言葉の重さに反論できる者はいなかった。

 

相手は特A型。

 

最前線に投入されている最新鋭機ですら撃破困難とされる化け物だ。

 

そのうえ、エースパイロットであるムラクモ中尉が乗るハウンドアーマーすら、すでに撃墜されている。

 

残された戦力で特A型を打ち倒す。

そんな希望は、現場の誰が見ても薄い。

 

このまま手をこまねいていたところで、状況が好転する可能性など限りなくゼロに近かった。

 

「僕は軍属だけど、命を懸けるほど立派な軍人じゃないんだよね」

 

その場の空気がわずかに揺れた。

 

「司令官……」

 

誰かがかすれた声を漏らす。それが咎めなのか、戸惑いなのか、自分でも分かっていないような声だった。

 

ロベルトは肩をすくめるようにして、設置されたスピーカーへ視線を向けた。

 

そしてマイクを手に取り、どこか投げやりで、それでいて確かめるように口を開く。

 

「それで構わないかな? スミス少佐」

 

わずかなノイズが走る。数秒の間を置いて、通信の向こうから返答が届いた。

 

「えぇ、状況が状況です。調査委員会の担当官が存命なら話は変わりますが……今は、その調査委員会は誰もいない」

 

フレデリック・スミス少佐の声は、負傷してなお不思議とよく通った。

 

両脚部を切断され、ライフルや迫撃砲を撃つトーチカ程度の戦力しか残されていないアーマライト。

 

それでも彼はまだ前線にいて、まだ生きていて、まだ判断を下そうとしている。

 

「上については私がなんとかしましょう。今は……生き残ることを最優先としていただきたい」

 

立場の上では、佐官であるフレデリックより、基地司令であるロベルトの方が上だ。だがそれでも、ロベルトは念のため彼の意見を仰いだ。

 

必要な手続き。必要な確認。組織という枠組みに属している以上、そういう体裁は避けられない。

 

もっとも、形骸化した手順など、こんな土壇場では滑稽でしかないのだが。

 

「……承知した」

 

短く答えたロベルトは、マイクを握り直した。

 

そして、一度だけ目を伏せる。

諦めたような顔だった。

何も期待していない人間の顔だった。

 

けれど。

 

ロベルト・アレクサンダーは、全てを諦めてここへ流れ着いた人間だ。

 

夢も、誇りも、出世も、とうの昔に置いてきた。

 

だが、それでも。

 

まだ諦めていない者がいるのなら。

 

死地の只中にいてなお、抗おうとしている者がいるのなら。

 

そんな人間たちを前にして、自分まで本当に終わったような顔をするほど、彼は壊れきってはいなかった。

 

「スミス少佐が言ったように、これは命令じゃない」

 

ロベルトはゆっくりと顔を上げる。

 

その目には、さっきまでの投げやりさとは違う光がわずかに宿っていた。

 

「生きるための戦いだ。……ユナイト・シグナルを、承認する」

 

一拍置いて、彼は告げる。

 

 

 

 

 

 

「え、えぇえ!?が、が、合体するんですか!?ムラクモ中尉!?私乗ってるんですけど!?」

 

司令部からの承認も受けたので行動を開始しようとした時、後部座席に座るストーム少尉が驚いた様子でそんなことを言い始めた。

 

まぁ確かに、ボルガーは最初は一人乗りだったはず。

 

そこがタンデムシートになったのだから、彼女を安全な場所に移動させてから動くのが最適だと思ったのだが……。

 

【この戦いには貴女が必要なのです】

 

「え……えぇええ!?」

 

エーテリアスいわく、このボルガーは2人の搭乗者が必要で、そうしなければ本来の力は発揮できないらしい。

 

メインで戦うパイロットは俺で、ストーム少尉の役目はボルテリガーに備わる機能管理や補助を担当するサポーターだ。

 

【貴女の力が必要なのです。レイラ・ストーム。私とダン・ムラクモと共に……戦ってください】

 

「わ、私が必要……へへっ……よ、よっしゃあ!やってやろうじゃない!」

 

やけにちょろいな、この人。いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。

 

操縦桿を引くと、ボルガーは俺の意思に応えるように鋭く挙動した。

 

よし、前回みたいに無理やり連れ回された時と違って、ちゃんと言うことを聞くな!

 

【その節は大変申し訳なく……】

 

「ひょあああぁぁあーー!!」

 

うるせぇ!サラウンドで同時に話しかけてくるんじゃねぇ!聞き取れねぇだろ!!

 

脳内に響くエーテリアスの声。

背後から聞こえるストーム少尉の悲鳴。

 

情報量が多すぎて処理が追いつかない。

 

次に飛んできたのはエネルギー刃。

 

逃がす気はないってことか……!!

 

「とにかく距離を取らないと何もできない!ストーム少尉!少し揺れるが舌を噛むなよ!」

 

「こここ、これ!少しじゃな……イヤアーッ!あああぁぁあー!?」

 

言葉になっていない抗議は無視。

 

右へ左へと戦闘機動を繰り返し、飛来するエネルギー刃をギリギリで回避していく。

 

壁面を蹴って距離を稼ごうとするが……コイツ、さっきより増してしつこい!!

 

こうも追われたら合体どころか反撃も……。

 

 

「よそ見してるんじゃねぇえええ!!」

 

 

そんな絶叫に似た怒声と共に、片腕を失ったスカイブルーのレイヴンアームズが横合いから特A型をぶん殴って……て、えぇええ!?

 

リンさん!左手のMMX無くなってるのにどうした!?

 

「瓦礫の鉄骨を持ってぶん殴りました!効いてるかはわからないですけど注意を逸らす程度には……!!」

 

バイオレンス振りきってるな!?無茶苦茶すぎるだろ!!

 

だが、その一撃で特A型の意識は確かにこちらから逸れた。

 

だが、次の瞬間。振るわれた特A型の腕がリンのレイヴンアームズに直撃し、そのまま機体は残骸の中へと叩きつけられる。

 

「リンッ!!」

 

「ゲッホ……コイツ……化け物すぎ……」

 

地面に叩きつけられた衝撃からか、通信はノイズまみれで、コクピットにいるリンも声が掠れているように聞こえた。

 

火花を散らして満身創痍のレイヴンアームズに、特A型がトドメと言わんばかりに収束砲を向ける。

 

「全機、撃て!!」

 

その一喝と共に、特A型の背後が爆ぜた。

 

それも一度じゃなく何度も。

 

煩わしそうに振り返った先には、ライフルを構えるデルベルトのエンフィールドと、同じくショットランチャーを構えたテルリードのレイジングブル。

 

そして、カイ、カレンの乗るレイジングブルに担がれた……フレッドのアーマライトが背中に背負った迫撃砲からも煙が上がっていた。

 

「隊長!今です!」

 

フレッドの声が響く。

 

目の前にいる特A型はしまったと言わんばかりに顔を向けてくるが……少しでも注意を逸らそうと奮戦する仲間たちが攻撃を重ね続ける。

 

響き渡る爆発の音。

 

それが全て遠くなる。

 

 

【意識を集中して】

 

 

意識を委ねろ。

 

体を委ねろ。

 

……この機体の全てに!!

 

「……いくぞ!ユナイト・コネクトォオオ!!」

 

俺の発した声に呼応するようにハイパーゲートが光を放ち、3機のボルトモジュールが飛び出す。

 

三つの光は音速を超え、一筋の光となって宇宙から地球へ……ボルガーの元へと集った。

 

【ボルガー・ユナイト!セット、オン!】

 

「はぁあああ!!」

 

気合い一閃と共にボルガーを中核に三機のボルトモジュールが同調する。

 

まずはファイター型のモジュール、「ファイアーボルト」が変形し、ボルガーの上半身へと接続。

 

【ファイアーボルト、セット】

 

ボルガーの両肩が開き、コネクタユニットと接合されることで次の合体へと移行する。

 

タンク型のモジュール、「グランドボルト」が折り畳まれたボルガーの脚部へとドッキング。

 

タンクは二分割するように変形し、その姿は巨大な脚と化した。

 

【グランドボルト、セット】

 

最後に腕部にドッキングしたのがドリル型のモジュール「サンダーボルト」。

 

ドリルが折り畳まれて変形すると、その姿は腕となった。肘部から突き出したドリルはパーツを展開することによりトンファーのような武装へと変形することも可能だ。

 

【サンダーボルト、セット】

 

ボルガー。

 

ファイアーボルト。

 

グランドボルト。

 

サンダーボルト。

 

【ボルトモジュール、ドッキングオールクリア。ボルテリガー、起動します】

 

全てのドッキングが完成し、ボルガーのガルダリア・ドライブと、三基のガルダリア・ブースターの波長が同期することで、完全なる【ボルテリガー】が完成したのだ!

 

 

【雷王招来!!ボルッ!テリッ!ガァアアアアーーー!!!】

 

 

今再び、勇者は地上に降り立った。

 

宿命と運命を背負ったその手に鋼の意志を込めて。

 

勇者の名は、雷王、ボルテリガー。

 

そして、特A型は銀の装甲に赤いラインを迸らせ、まるで睨みつけるように……大地に立った勇者と相対する。

 

レンネル基地という運命の地。

 

宿命を背負う二体は、ついに出会うのだった。

 

 

 

 

 

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