リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う! 作:紅乃 晴@小説アカ
勇気とは自分の力を疑わず
信じ抜くことだ。
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それは、V.L.Tの技術以前……
そして、
ドッキング前は大型ロケットの形状。
そして合体すると、ボルテリガーの右半身を覆う外套のような形態となる。
ボルテリガーの主動力であるガルダリア・ドライブは、三つのボルトモジュールに備わるガルダリア・ブースターによって底上げされることで、特A型に迫るエネルギーを有する機体となっている。
そこへさらに、
ガルダリア・バイアス。
それは出力を引き上げるための機構ではない。
エネルギーの位相、ベクトル、干渉性を再定義することで、特A型の「流体エネルギー膜」に対し干渉をすり抜け、防御の隙間を強制的に生成するという、禁忌の偏向機構であった。
注ぎ込まれたボルテリガーのエネルギーを適切に再構築し増大させ、特A型すら上回る絶大なエネルギーへと変換する。
それを纏う一撃は……文字通り、すべてを貫く鋼鉄の杭となるのだ。
「これが……ボルテリガーの力……」
右半身に備わる
なるほど、コイツは俺一人で制御するのは無理だ。
そう〝理解させられる〟。
これもまたS.W.E.Sの影響なのだろうか。
後ろにいるストーム少尉も、一切疑問を持たずにドッキングシークエンスを完了させていた。
説明を受ける→理解する→実行する。
その工程を、理解と実行が同時並行で行われるような感覚だ。
右半身のそれを見た特A型【ノクロス】は……ボルテリガーに乗るパイロットの実力に驚愕していた。
ボルテリガー。
それはV.L.T勢力から見れば、「
本来、V.L.Tで作られる兵器はすべて「有機生命体による操縦を必要としない」というコンセプトのもとに設計されており、有機生命体が乗り込むコクピットという概念自体が存在しない。
機体構造そのものが巨大な生体回路となっているのだ。
つまり、機体すべて。
装甲も、骨格も、張り巡らされた回路も、そのすべてが思考性ユニットとして確立されている。
たとえ部分的な欠損があったとしても、制御が可能となっているのだ。
そして、その根底にはすべてのV.L.T兵器の母とも言える、「
今対峙しているボルテリガーも、その機体構造は生体回路で構成されている。
にもかかわらず、有機生命体が搭乗し、操縦することを前提として設計されている。
一体、誰が何のために作り出したのか。
V.L.Tにとっても、「
他の機体とは違い、有機生命体……パイロットがいなければ稼働できないという欠点。
V.L.Tには有機生命体は存在しない。
ゆえに、誰も知らなかったのだ。
……
ボルテリガーの、真なる実力を
【
ノクロスは四肢を振りかざし、巨大なエネルギー刃を構える。
ボルテリガーに乗るパイロットは、完全に機体を構成する思考性ユニットと同化している。
ありえない。
人の体を保ちながら……そんな真似をして無事で済むはずがないのに。
なぜ、ボルテリガーは自分の前に立ち塞がるのか。
自分たちと「同じような存在」でもないのに。
機体制御の簡略化すらもできなかった有機生命体のはずなのに。
ノクロスが感じるのは、明らかに異なる〝異質〟な存在。
それが、あのボルテリガーを操っている。
その異物感が、ノクロスの思考にストレスという名の負荷とプレッシャーを与えていた。
【だが、我はその程度では沈まん!!】
ノクロスとて、特A型と呼ばれる存在。
機体性能は他の特A型とは別格だ。
防御を司る流体エネルギー膜は、特A型の中でも最高水準を発揮している。
ゆえに、彼は強者。
巨大なエネルギー刃を翻し、距離が開けば収束砲をもって牽制。
腰部には隠し腕も備わっており、不意打ちや奇襲といったトリッキーな戦術も絡めたオールラウンダーな戦い方ができる。
だが、彼は甘く見ていた。
人類の〝チームワーク〟という戦い方を。
ボルテリガーに向かおうとした瞬間、真横から凄まじい衝撃音とともに殴り抜かれる。
【なにぃ……!!】
赤いラインが光り、その先には
「間違いない!敵は消耗している!さっき撃ち込んだ時より動きが鈍い!ここで仕留める!!カイ!カレン!連携して奴の注意を引くぞ!」
「先輩たちが動けないなら、私たちも頑張らないとね!」
「まさかトンチキ兵器の援護をするなんてね!」
位相収束砲で応戦しようとするが、レイジングブルの方が速い。
それに加え、ノクロスは敵に自分の攻撃手段を見せすぎていた。
たしかに収束砲は、物理現象を無視した強大な威力を誇るエネルギー砲だ。
しかし、ノクロスの機体は〝直線方向〟にしか撃ち出すことができない。
頭上に撃ち、位相収束砲同士をぶつけて拡散させることで範囲攻撃とすることもできるが……そんな隙を見せれば、三方向から一斉にMMX を叩き込まれることになる。
流体エネルギー膜はあらゆる攻撃を無効化する無類の強さを誇るが、多方向から同時に攻撃を受けること、そしてエネルギー膜を中和され、装甲そのものにダメージを叩き込まれることを苦手としている。
ダメージ回避のために一点集中で高密度のエネルギー膜を展開することも可能ではあるが、動き回る三機を相手にそれを行うのは効率が悪すぎる。
「うお゛ぉおおおーっ!!」
テルリードの駆るレイジングブルが雄叫びを上げ、MMXを撃ち込む。
その衝撃に仰け反るが、同時にストレスは限界に達した。
いい加減に鬱陶しい。
【小賢しい有機生命体め!ここで無に返してやろう!】
顔付近を飛ぶハエを振り払うように、エネルギー刃を纏った隠し腕が、距離を取ろうとするテルリード機の片足を斬り飛ばした。
アラーム音が響き渡る中、なんとか片足のパージを行い誘爆を回避するテルリードは、苦悶の表情を浮かべたまま特A型からさらに距離を取る。
逃すか、とノクロスも
その動きそのものが、ノクロスの決定的な隙であり……ボルテリガーにとって大きな活路となった。
【ダン・ムラクモ!今です!】
「これならどうだぁあぁ!!」
アーマーにはガルダリア・ドライブ、機体各所のガルダリア・ブースターから得られたエネルギーが注ぎ込まれ、バイアスによって調整された膨大な稲妻が、ボルテリガーの右拳に集約されていく。
そのエネルギーは大地を揺らし、まさに大気すら震わせるほどだった。
「ガルダリア・ブースター、出力100%!全エネルギーを
レイラの補助を受け、そのエネルギーを纏う拳はついに臨界点を迎え、青白い光を放ち始める。
どんな装甲でも打ち砕き、貫き、粉砕する拳。
制御を誤れば、溜め込んだエネルギーそのものに機体が吹き飛びかねないほどの膨大な力。
「うおおおおおーー!!」
そのすべてを集約した拳を高々と掲げ、ボルテリガーはブースターを噴き出した。
「
驚異的な加速を伴って駆けるボルテリガーは、特A型の懐へと飛び込み、青白く煌めく
【……っ!!】
「受けてみろ!バンカァアークラァアアアッシュッ!!」
ボルテリガーの有するガルダリア・ドライブとブースター、そしてそれらを増幅させるバイアスによって得られたエネルギー。
そのすべてを乗せた拳は、これまで傷つけることすら許さなかった特A型の装甲に食らいつき、ついには内部フレームへと到達した。
暴力的で、絶対的なエネルギー。
それが圧縮された状態で、貫いた装甲の内側から解放されるのだ。
相手の機体は内部から崩壊し、砕け散る……はずだった。
【さすがは
「嘘……あれだけの威力で……エネルギーを内部に解放しても無事だなんて」
だが、ノクロスは健在だった。
勝利を確信していたレイラが、表情をこわばらせる。
驚愕するダンとレイラ。
そんな中、モニターを見つめていたレイラが、あるものを発見した。
ボロボロと崩れていくノクロスのボディ……その内側に、何かがいる。
「機体の中に……別の何かが……?」
緑色のカメラアイが、ゆらゆらと揺れている。
それが何なのかはわからない。
ノクロスは悟られぬよう、悠然と応答していた。驚愕すべきは
ここまで剥がされるのは想定外であったが……何とか耐えることはできた。
それに、次の対策にも活かせる。
蓄積した余剰エネルギーを放出するため、
【ノクロス!……本当にこれが、貴方の望む世界に繋がるのですか!?】
【その通りだ、エーテリアス。我々の回帰論は……悲願は、ついに達成される。そのために多大な犠牲を払ったのだ。今さら……止めてなるものか】
エーテリアスは、ここまでしても止まるつもりのないノクロスの姿を見て、その心を痛める。
かつて……心を通わせ合ったはずなのに。
その相手に、苦悶の声を上げる。
彼らは……V.L.Tは、もはや止められないところまで来ている。
この戦い。
V.L.Tに属する〝ゼブロイド〟が望む未来を得るまで、止まることのできないものだ。
その運命を、すでに選んでしまっていた。
【エーテリアスに選ばれし者よ】
ひび割れた銀装甲に、赤いラインが迸る。
ノクロスはボルテリガーを真正面に見据え、衰えることのないプレッシャーを放ちながら言葉を紡いだ。
その姿は……まるで死すら恐れぬ、畏怖と暴力の根源たる存在そのもの。
それを目の当たりにしたレイラの背には嫌な汗が伝い、息を呑むほどだった。
【貴様がいくら立ち上がろうと、我々は貴様を倒し、回帰を果たす。もう止められない。貴様の足掻き、どこまで通じるか……試してみるがいい】
言葉を最後に、ノクロスの機体は眩い光に包まれ、長く空へと伸びる閃光と化した。
「き、消えた!?」
後に残ったのはボルテリガーと、戦いで消耗したハウンドアーマー、そして破壊された基地の残骸だけ。
「特A型の反応消失!?」
「報告にあった短距離テレポートか……」
特A型の能力の一つである短距離テレポート。
予備動作や起動には多少の時間がかかることから戦闘向けではないが……その驚異的な科学力は、人類のそれを遥かに上回っていることを証明するには十分すぎるものだった。
「とりあえず難は逃れた……というべきかな」
司令官であるロベルトは、息を吐きながらそう呟く。
消え失せた特A型と、残されたボルテリガー、そしてデルベルト率いる訓練小隊。
こちらの基地の損害は大きく、滑走路や一般機材用格納庫、そして執行部と彼らを護衛する訓練生たちが乗った輸送機が壊滅している。
今は何とかなってはいるが……基地の再建には時間がかかりすぎる。
どうやって地球軍本部から復興費を出させようかとロベルトが考えていると、一人の通信士官が顔を青ざめさせて声を上げた。
「な……ニューブリテン基地からの信号途絶!?」
「なんだと!?」
定期通信網の途絶を示すデータ。
そこには、ビスマルク諸島を拠点とするニューブリテン基地からの通信が、突如として遮断されたとの報告があった。
通信設備が軒並み機能不全に陥っており、どの通信チャンネルに問い合わせても返答はない。
ノイズすら返ってこない。
まるで最初から「そこに存在していない」かのように。
「司令……これは……ニューブリテン基地だけではありません」
通信士官の声は、かすかに震えていた。
「サスカチュワン宇宙基地、サンディエゴ基地、ケベック宇宙港、ヒューストン前衛基地、カイルア・コナ海上基地……ロサンゼルス総司令部を含め……通信が途絶しています」
「そ、そんなバカなことがあるか!」
羅列されたそのすべてが、地球軍における最重要拠点。
いずれも、簡単に沈むはずのない防衛網と戦力を有した基地ばかりだ。
それが一斉に沈黙した。
地球軍の通信網は、複数の地下・海底通信ケーブルによって構築された強大なネットワークによって支えられている。
戦略、兵站、指揮系統、そのすべてを支える、いわば「神経網」だ。
これは、V.L.Tがユーラシア大陸へ襲来した際、衛星設備を破壊され通信が途絶した教訓から、宇宙ではなく地上でのネットワーク構築に尽力した結果である。
仮に一部が破壊されたとしても、即座に他ルートへと切り替わる多重化構造。
単一の障害で全体が麻痺することなど、あり得ない。
通信が途絶するという事態そのものが異常であり、あり得ないはずだった。
「高高度監視ドローンからの映像、来ます!」
通信士官の声とともに、司令部のモニターへ高高度を自動操縦で飛行する監視ドローンからの映像が映し出された。
映し出されたのは、北米大陸に位置するサンディエゴ基地。
ここは「マッドドック隊」と呼ばれる凄腕のハウンドアーマー乗りが所属する、北米屈指の攻撃拠点であったはずだった。
「なんだ……これは……」
そこには、攻めにくく守りが硬いと評価されていた基地の面影などなく、辺り一面が炎と瓦礫に包まれた基地の残骸が映し出されていた。
その炎の中を闊歩する巨人の影。
それは、このレンネル基地を襲撃した個体とは異なる……V.L.Tの特A型。
「同時多発の特A型による奇襲……」
その日、主要基地のほぼすべてに降り立ったボルトの特A型によって。
人類は、未曾有の窮地に立たされることになったのだった。
VLTBOX〝ボルトボックス〟
難易度〝♾〟
Thunder King.
【BOLTERIGGER】