リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う!   作:紅乃 晴@小説アカ

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ニューブリテン島編
第17話 そして始まるメインストーリー


 

 

 

【エーテリアスが動き出しました】

 

待ちに待った時が来た。

 

ハイパーゲートから現れたV.L.Tが真っ先に攻めた「ユーラシア大陸」。

 

統一政府の設立、軌道エレベーター、ハイパーリンクによって、差別や弾圧がなくなった世界。

 

そこには万を超える民族の血を引く者たちがひしめき、様々な思惑が交錯していた。

 

巨大なユーラシア大陸の現実と平和。

 

その地を、V.L.Tは焼き払った。

 

世界の覇権を握る資質を持った国も、長年地を治めてきた戦士の国も、抵抗という戦いをすることもなく、V.L.Tによって消滅させられた。

 

それは「回帰論」における前提条件をつくるための、必要なフェーズであった。

 

この世界に生きる有機生命体は、複雑な思考論理で行動する。

 

思考は枝分かれし、意思は増殖し、より複雑化する。それではダメだ。複雑な思考はノイズとして残り続けるのだから、数を減らし、その複雑な論理をシンプルにする必要があった。

 

この地で散った有機生命体の命は、例外なく「必要な犠牲」として処理された。

 

ただ、その犠牲も、この5年という実験の結果、あまり意味をなさない結果に終わってしまったが……それも必要なことでもあったと、今なら確信を持って言える。

 

【では……計画も最終段階に入ったというわけだな】

 

ユーラシア大陸の占拠。欧州の占拠。

そして、大西洋を渡った先にある北米大陸への進撃。

 

すでに地球の70%を手中に収めつつあるV.L.Tは、今回の同時多発の奇襲作戦で、敵の司令部をほぼ壊滅させたに等しい。

 

それでようやく、計画は大詰めを迎えたということだ。

 

【しかし……V・ウェポン……ボルテリガーはどうするつもりです? V・モジュールをも呼び覚ます逸材ですよ?】

 

そう問いかける側を嘲笑する。

 

【構うことはない。所詮は一人の有機生命体。こちらからどうにでもできる。それに……すでに布石は打ってある】

 

この5年間……惨憺たる結果しか残せてこなかったわけだが、今日この日をもって……いや、彼女が動きを見せた段階で、これまで失ったもの、そのすべてに意味を持たせることができた。

 

【あぁ……喜ばしいことではないか。回帰論に必要な「箱庭計画」において、エーテリアスは、その成功例としての意味も勝ち得た】

 

彼女と対話したノクロスからの報告を確認する。

 

エーテリアスの行動は非常に興味深い。

 

今もなお、自らの宿命を疑わずにいるのが、なおのこと。

 

映し出されている場面は暗転する。

 

そこには北米大陸の各地に点在した、地球軍の成れの果てがあった。

 

特A型の面目躍如……とでも言うべきか。

 

単体であまりある力を前にすれば、これまで抵抗をしてきた者たちの行動も意味をなさない。

 

まったく役に立たなかった有機生命体との戦いは、これでようやく終わりを迎えられそうだ。

 

【それに、このままいけば……結局は我々も同じく……待つのは緩やかなる滅びだ】

 

我々は……過去にその肉体を捨て去り、高位電子生命体に至った。だが、それは生命としての輪から逸脱した存在の証左だ。

 

【我々は存在し続ける。滅びはしない。だが、生命として完結することもできない】

 

生命とは「死」によって完結されるものだ。その死は、回帰することによって手にすることができるのだ。

 

【何もしない。その選択を我々は永劫に選んできた。その過去を振り返れば、今回の5年など些細なことで……幾分かマシであろう? 荒療治というのも、時には必要なことだ】

 

失って気づいた尊さを理解しない存在に、その尊さは似合わない。いらないのなら、我々がもらおう。我々はそれを望んでいるのだから。

 

【どうせ滅ぶために懸命に命を輝かせてきた者たちだ。少しはそれを上向きにしても問題はないだろう】

 

映し出される北米大陸を占拠した特A型の姿を見つめ、そう言った。

 

 

地球軍の「7つの拠点」を特A型で奇襲、占拠させた段階で、何百、何千、何万、何億と繰り返してきた「最終段階」の場が整った。

 

ようやくだ。

 

肝心の場にいなかった……相手のキングが、ようやく現れた。

 

だから、うまく道を選びたまえ。

 

この物語の主演たちよ。

 

 

 

 

勇者ロボ、雷王ボルテリガー!!

 

……の影響からか、原作『ボルトボックス』のメインストーリーの時間軸よりも、だいぶ早い段階で特A型による同時多発奇襲作戦が決行されてしまったわけだが……。

 

本編のシナリオとしても、北米大陸はボルトの手に落ちているという展開から始まるため、大筋には沿っているという皮肉でもある。

 

さて、プロローグが終わり、次はいよいよ本編だ。

 

ボルトボックスのストーリーモードには、多くの分岐ルートとエンディングが用意されている。

 

分岐要素は大きく分けて二つ。

 

それは、主人公たちがレンネル基地からどのようにV.L.Tを攻略するか、そのルートによって変化する。

 

一つ目は、ユーラシア大陸を横断してV.L.Tの本拠地を潰すルート。

 

このルートでは、特A型に占拠されたユーラシア大陸が、北米大陸への奇襲によって防御力などの影響力が弱まっていると予測した主人公たちが、中国や中東を経由し、仲間・物資・兵器を集めながら、ヨーロッパに根城を置くV.L.T最大基地を叩く。

 

二つ目は、太平洋を渡って北米大陸の各拠点を奪還するルート。

 

ニューブリテン基地から始まり、ハワイのカイルナ・コア基地を奪還。

 

太平洋の制海権を確保した主人公たちは、いよいよ北米大陸への反攻作戦を開始する。

 

だが、西海岸に位置するサンディエゴ基地、そしてロサンゼルス総司令部は、いずれもV.L.Tの中でも最も強固な防衛網を誇る拠点であり、正面からの攻略は不可能に近い。

 

そのため主人公たちは、直接西海岸へ侵攻するのではなく、内陸へ上陸する迂回ルートを選択する。

 

ニューメキシコ州へ強行上陸し、そこを足掛かりに、まずは南部最大の兵站拠点であるヒューストン前衛基地を制圧。

 

補給線と展開力を確保し、続いて北上して、ハウンドアーマーの生産拠点であるサスカチュワン宇宙基地へと進軍する。

 

ここは地球軍の戦力供給を支える中枢であり、この拠点を制圧するV.L.Tを撃滅することで、戦局そのものを揺るがす決定打となる。

 

さらに東進し、宇宙との連携を担うケベック宇宙港を攻略。

 

これによりV.L.Tの通信網と軌道支援は大きく寸断され、北米大陸における各拠点は孤立状態へと追い込まれていく。

 

南・北・東、三方向から包囲網を形成された西海岸。

 

サンディエゴ基地、そしてロサンゼルス総司令部は、もはや外部からの支援を受けることも、撤退することもできない「孤立要塞」と化していた。

 

それでもなお、V.L.Tはこの地を手放さない。

 

残存戦力を集中させた防衛線は、人類がこれまでに経験したことのない規模と強度を誇っていた。

 

そして満を持して開始される、西海岸攻略作戦。

 

地球軍も、主人公を基軸に再集結した全ハウンドアーマー戦力を投入する。

 

まずは南側からサンディエゴ基地を強襲し、防衛線の一角を崩壊させる。

 

その突破口をもとに、一気にロサンゼルスへとなだれ込む総力戦。

 

それは単なる拠点奪還ではない。

 

北米大陸を覆い尽くした絶望を打ち砕き、人類が再び反撃へと転じるための、最大にして決定的な戦いであった。

 

そして地球軍の基地を解放した後、体制を整えてヨーロッパ方面へ向かい、最終決戦を迎えるルートとなる。

 

一つ目のルートはプレイヤーから「表ルート」と呼ばれ、宣伝トレーラーなどのプレイ動画は基本的にユーラシア横断ルートが採用されている。

 

このルートはとにかくシナリオのボリュームが多く、中国や中東系のヒロインや戦友たち、元覇権国家だった重鎮たちの策謀や裏切りなどが重なり合う、複雑な人間模様を楽しめる。

 

さらに、ボルトによって占領された中東基地やゲリラ、レジスタンスも巻き込んだ総力戦となっている。

 

表ルートでは、ユーラシアで大暴れする主人公たちを迎え撃つために、北米大陸を占拠していた特A型もいくつか派遣される。

 

その隙を突いて地球軍も反撃を開始し、ユーラシア側と北米側の両面から、じわじわとV.L.Tを追い詰めていく展開となる。

 

もちろん、ヒロインや戦友の死という展開や、逆に生存させる分岐など、多彩な選択肢が用意されているため、表ルートだけでも十分に楽しめる要素が満載である。

 

そして後者である「裏ルート」。

 

このルートは、真のエンディングというわけではなく、濃厚なキャラクター関係やハウンドアーマーの造形、物語の奥行きといった要素を削ぎ落とし、怒涛のV.L.Tとの戦闘を主軸としたルートである。

 

通称「RTA御用達ルート」とも呼ばれている。

 

多分岐による表ルートのエンディングとは異なり、特A型との死闘、死闘、そして死闘が続くハイテンションバトルシナリオとなっている。

 

序盤からニューブリテン基地に鎮座する特A型との戦いからスタートするため、まずは表ルートをクリアして武装や機体を整えてからでなければ、ニューブリテン基地のボスで詰むことになる。

 

中には初期機体で踏破した猛者や、防御を捨てて速さと火力に全振りする「最強の紙飛行機戦術」を展開し、敵を撃破する変態も存在する。

 

基本的にボルトボックスは、表ルートをひとまず遊び尽くし、その後に裏ルートを楽しむ。

 

これが攻略法の定石と言えるのだった。

 

 

 

 

「くっそ、頭がいてぇ」

 

あと、身体がクソだるい。

 

起き抜けに襲ってきた倦怠感に、思わず顔をしかめる。

 

白いシーツの上で身体を起こしてみるが、頭の痛みはまったく治まらない。

 

酒は飲まないタチなのだが……二日酔いというのは、こういうことを言うのだろうか。

 

おまけに気分も最悪だ。吐き気まである。

 

昨日は散々だった。

 

レンネル基地へ特A型襲来。

 

そして始まる、地球軍拠点に対する特A型の電撃奇襲作戦。

 

……というところまでは意識がはっきりしていたのだが、ボルテリガーがユニオン・アウトしてから、気を失って前のめりに倒れ込んできたストーム少尉の頭突きを頭のてっぺんにモロに喰らったこと、さらにハウンドアーマー搭乗時に受けた墜落のダメージも相まって、俺もボルガーのコクピットの中で意識を手放したのだった。

 

そして目が覚めると、基地の医務室のベッドの上である。

 

「隊長! 目を覚ましましたか!?」

 

と、いきなり間仕切り用のカーテンが勢いよく開いた。

 

そこから身体ごと飛び込んできたのは、頭に包帯を巻き、片腕を吊っているリンの姿だ。

 

「リン、無事だったか。よかった。ああ、クソ……酷い頭痛だ」

 

「軍医が言うには一時的なものらしいです。お水、飲まれますか?」

 

そう言って甲斐甲斐しく、コップへ水を注ぐリン。

 

視線を向けると、リンの左腕が硬いギブスに覆われているのが見えた。

 

いやいや、待って。

明らかにリンの方が重傷じゃない?何を平然と俺の看病をしようとしてるの。

 

そう言うと、リンは俺にコップを手渡しながら、にこやかにこう答えた。

 

「嫌だなぁ、隊長。大したことありませんよ」

 

と、そう言ったリンの頭をファイルが叩く。

 

彼女の後ろにいたのは、レンネル基地に所属する軍医だ。

 

「何が大したことないか。左腕骨折、肋骨は骨折とヒビ、脳震盪に各所打撲……なぜそんなにピンピン動けるの?」

 

「私は副隊長なので!」

 

「ほんと、お願いだから安静にして」

 

そう懇願する軍医の言葉に、リンは渋々といった様子で隣のベッドに腰を下ろした。

 

この子、ほんとに突拍子もないことをするからなぁ。

 

リンを副隊長にしてからも任務に連れ出していたが……いつからこんな猪突猛進娘になったのやら。

 

……ちなみに、かつてダンが率いたミラクルイーグルスに所属した五人の高官のコメント。

 

「隊長の近くにいると、ネジを外さないとついていけないので」

 

「あの人は他人の頭のネジを無意識に外すのが上手いんですよ」

 

「何度死ぬ思いをしたか数えられない」

 

「アホな隊長は何をするかわからんから、気がついたらこうなってた」

 

「ただの変態ですな」

 

皆、笑顔で広報部のインタビューに応じていたりする。

 

リンがネジを外されたのは、ダンの部下になって二回ほど任務に同行してから、「あ、この人について行こうと思ったら振り切らなきゃ無理だ」と自覚したからのようだ。

 

「うう、うるさ……変な頭痛が……」

 

少し遅れて意識を取り戻したストーム少尉も、俺と同じように頭痛に悩まされている様子だった。

 

採取した血液データや脳波カルテを見てから、軍医は心配するなと声をかけてくる。

 

S.W.I.S(スウィス)の影響だ。まあ、第二世代後期のハウンドアーマーに長時間乗っていた新兵にはありがちな症状だな」

 

なんてことはない、と言う軍医。

 

だが、疑問が湧いた。それはストーム少尉も同じようで、戸惑った顔で尋ね返した。

 

「あのぉ……S.W.I.S(スウィス)って、ナノマシンの影響で起こるものですよね? 私、ナノマシン投与してないんですが……」

 

S.W.I.S(スウィス)を使うと、個人差はあるものの、長時間ハウンドアーマーを操縦しているうちに脳へ過負荷が生じ、症状が発生したりする。

 

症例としては、頭痛やめまい、吐き気、三半規管の乱れ、自律神経の乱れなど。

 

数時間療養すれば回復するが、初期の頃は廃人が爆誕するという例もあった。

 

もちろん、「ナノマシン投与」という前提条件のもとで使用するシステムのため、ナノマシンを投与していない俺や、不適合だったレイラには無関係の話であり、頭痛やめまいもそれとは関係ないはずだが……。

 

「君たちの脳波を確認したところ、S.W.I.S(スウィス)を使用したパイロットと同じ結果が出てるんだ。間違いないよ」

 

そんな馬鹿な、と信じられなかった俺たちだが、軍医から見せられた脳波は確かにその通りで、発症時のパイロット(ナノマシン投与済み)と同じ波形を示していた。

 

ということは……。

 

「ボルテリガーは……S.W.I.S(スウィス)と同じシステムで運用されている?」

 

【概ね、それが正しい見解です】

 

「うわぁっ!?」

 

声を上げたのはストーム少尉だった。

 

突然驚いた声を上げる彼女に、隣にいるリンもビクリと肩を上げる。

 

まあ、それもそうだろう。

 

いきなり、自分とは異なる声質の誰かが脳内から直接語りかけてきたら、ひっくり返りたくもなる。

 

そして、なぜか俺にも聞こえるエーテリアスの声。

 

なぜ脳内の声がストーム少尉とリンクしているのか。

 

【貴方たちはボルテリガーに認められた数少ないパイロットだからです】

 

さらっと思考を読むエーテリアスさんに、俺は思わず顔をしかめる。

 

蘇ってくる、ボルテリガーでの戦闘シーン。

 

明らかに俺やレイラは、「存在しない記憶」をもとにボルテリガーを操っていた感覚がある。

 

俺自身も、鉄杭拳など……技名を叫びながら攻撃していたことを思い出すと死にたくなるが、どうやらそれらも……今の体調不良と深い関係があるようだ。

 

【詳しい説明は致します。しかし……それよりも事態は深刻です】

 

そう重苦しい声色で言うエーテリアス。

 

すると、医務室の扉が開いた。

 

「目が覚めたか、二人とも」

 

レンネル基地司令官であるロベルトと共にフレッドが入ってくる。

 

彼も戦闘で負傷したのか腕に包帯を巻いているが、リンよりは軽症そうだった。

 

フレッドも、目を覚ました俺とリンを見てほっと一安心した様子だった。

 

「起きて早々で悪いが、事態は急を要するんでね。ブリーフィングルームに集まってほしい」

 

ストーム少尉は、状況が飲み込めないままといった様子だ。

 

俺は、これからどうなるのか……ボルテリガーとは何か、という疑問を抱きながらも、運ばれてきた軍服に着替えるのだった。

 

 

 

 

 

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