リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う!   作:紅乃 晴@小説アカ

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デスロード編
第一話 転生ストーリーは突然に


 

 

西暦2350年。

 

その時の人類は、歴史上類をみないほどの繁栄を極めていた。

 

人類が赤道ラインから衛星軌道上に建造した「ハイパーリンク」と呼ばれる軌道エレベーターにより、資源不足や食糧問題は大幅に改善された。

 

ハイパーリンクに備わる気象制御システムの加護のもと、干魃や水害も減少。長年人々を苦しめてきた戦争や差別といった負の側面は、静かに姿を潜めつつあった。

 

地球という宇宙船を操縦できるようになった人類が、次に目を向けたのは遥かなる宇宙である。

 

ハイパーリンクは前哨基地に過ぎない。その真の建造目的は、「ハイパーゲート」と呼ばれるワームホール発生装置の開発にあった。

 

ハイパーリンクが安定稼働を開始してから、三十年後。

 

ついに人類は、地球と月の中間宙域において、遥かな宇宙へと踏み出すための長距離移動装置……「ハイパーゲート」を完成させる。

 

その記念すべき初起動の日。

 

全人類が、空を見上げていた。

歴史が動く、その瞬間を目撃するために。

 

だが……。

 

その日を境に、人類の歴史は大きく変貌する。

 

起動してから45秒後、突如として暴走したハイパーゲートから、謎の勢力が出現した。

 

複数の機械兵器が地球軌道へと侵入し、混乱する地球勢力に対して一斉攻撃を開始する。

 

ハイパーゲートを制御する中枢管制構造体《テンタクルブリッジ》は破壊される。

 

それに連動する形で、人類の叡智の象徴であったハイパーリンクもまた、瞬く間に崩壊した。

 

地球への降下を開始した謎の勢力……後に【V.L.T(ボルト)】と呼称される敵である。

 

V.L.Tの兵器群は、その役割に応じて分類される。

 

消耗を前提とした中型ドローン、C型。

長距離攻撃を担う支援機、B型。

拠点制圧を目的とした大型機、A型。

そして、絶対的な戦力を有する特A型。

 

高度に統制されたその侵攻はあまりにも速く、ユーラシア大陸の覇権国家は瞬く間に壊滅した。

 

中東各地でも戦闘は発生したが、その大半は戦いと呼べるものではない。V.L.Tによる一方的な殲滅であった。

 

ユーラシアの大半を制圧したV.L.Tは、そのままヨーロッパへと侵攻。

 

各国は連携し、統合軍事組織【地球軍】を結成。防衛線を展開するも、V.L.Tが有する位相収束砲の前に有効な対抗手段はなく、現行兵装は一切通用しなかった。

 

欧州は次第に侵食され、最終防衛ラインであるイギリスを除くすべての国家が焦土と化す。

 

だが、ここで転機が訪れる。

 

〝奇跡的に撃破された〟V.L.Tの残骸から得られたオーバーテクノロジーを基に、太平洋ソロモン諸島の極秘研究拠点において開発された人型汎用兵器が現れた。

 

その名は、ハウンドアーマー。

 

この機体の投入により、戦況はわずかに好転した。

 

のちに伝説と語られる戦い【ノルマンディー反攻作戦】。

 

百機のプロト・ハウンドアーマー、HA-000〝トリプルゼロ〟が投入されたこの作戦において、人類はひとつの事実に到達する。

 

従来兵器では通用しない敵であっても、近接戦闘による物理的破壊は有効である。

 

その証明は、多くの命と引き換えにもたらされた。

 

生還した機体は、わずか数機。

 

だがその代償によって人類は初めて、「敵を殺せる」と知った。

 

その後、V.L.Tとの格闘戦を前提とした兵装、

多機動格闘処刑刃《MMX》……Multi-Maneuver eXecution Blade が開発される。

 

同時期、第一世代型ハウンドアーマー、HA-08F〝リゴッティ〟がロールアウト。

 

続く第二世代後期型では、複雑化していたコクピットモジュールの刷新と仕様統一が行われるとともに、操縦レスポンスの向上および機体制御補助を目的としたナノマシンがパイロットへ投与されるようになった。

 

これにより、機体性能は飛躍的に向上する。

 

だが、機体そのものの防御性能と生存性は依然として低いままであった。

 

高い攻撃力と機動性を武器に、ハウンドアーマーは各戦線へ投入され、戦果は確実に積み重ねられていく。

 

それでもなお、人類は追い詰められていた。

 

戦線はヨーロッパを越え、北大西洋、そして北米へと到達。地球軍は北米大陸に司令部を置き、徹底抗戦を継続する。

 

戦争は泥沼化し、やがて一つの境界線が引かれる。

 

北緯48度、西経40度。

 

通称「グレイライン」。

 

人類とV.L.Tの戦いは、その海域を境に膠着した。

 

だが、それは均衡ではない。

崩壊までの、猶予に過ぎなかった。

 

 

 

 

 

 

これが、ボルトボックスのストーリーモードにおけるプロローグである。

 

主人公たちは訓練生としてパプアニューギニア、ビスマルク海に面する「ニューブリテン基地」に配属され、過酷な訓練を乗り越えた後、第三世代ハウンドアーマーを駆って戦うことになるのだ。

 

そして、俺は今……ニューブリテン島から遠く離れた基地、ハワイ諸島に位置するカイルア・コナ海上基地にいた。

 

「パイロット共!さっさと準備をしろ!」

 

そして今からプロトタイプ・ハウンドアーマーであるHA-000こと「トリプルゼロ」に搭乗する流れになっていた。

 

why?

なぜこんなことになっている?

 

自室のパソコンでボルトボックスをプレイし、モニターから発せられた眩い光に目が眩んだと思ったら、気がついたらこの基地の医療室だった。

 

ゲームでも何度かお世話になった医療室だったので見覚えがあるが、身に覚えのない状況に一人困惑してると、軍曹らしい軍人に「目が覚めたらさっさと着替えてこい」と更衣室に放り込まれ、パイロットスーツこと「バイタルスーツ」に強制的に着替えさせられて、そして格納庫である現地に至る。

 

いやなんで!?

 

なに?何が起こってるの!?

 

ここは……えーと、おそらくというか、確実にカイルア・コナ基地で、目の前に5機ほど陳座するのは間違いなくトリプルゼロなんだけど!!

 

状況が理解できない。何もかもの展開が早すぎて脳がついて行ってなかった。

 

搭乗!そう軍曹が叫ぶと並んだ5人のパイロットがバイタルスーツのヘルメットを被ってワイヤーウィンチに捕まった。そして何故か俺も体が勝手に動く。

 

いや、意思はあるけれど何十、何百と繰り返した自然な動作というか、軍曹の言葉で自然に体が反応してしまってる……という感覚であった。

 

体は覚えているのに、脳がそれを拒絶しているという、この感覚。

 

理屈では理解している。

だが、理解と実行が一致しない。

 

そんな違和感を抱えたまま、俺の体はワイヤーウィンチに引き上げられていく。

 

抗うこともなく、そのまま横筒状のコクピットへと滑り込んだ。

 

モノコック構造のコクピット。

それがトリプルゼロの特徴のひとつだ。

 

ハウンドアーマーのプロトタイプであるトリプルゼロは、試験機を基にアメリカ企業とヨーロッパ企業の共同開発によって完成した機体であり、プロトタイプと呼称されてはいるが、本機はすでに第一世代機に分類される。

 

真の意味での試作機は、ソロモン諸島にあるレンネル開発局で建造されたものである。もっとも、あちらは戦闘など想定されていない代物で、まともな武装すら持たない。設定資料でも単なるデータ検証と二足歩行型機動兵器のテストベッドとしか記されていない。

 

そして、そのテスト機を戦場へと引きずり出せる形にまで仕立て上げたのが、このトリプルゼロだ。

 

装備は、50mm試作ライフルに大型シールド。

そして分子振動ブレード。

 

ずんぐりとした胴体に、トサカのような頭部。

そこに六基のカメラセンサーが埋め込まれた、ひどく歪なシルエット。

 

合理的なまでに機能を追求したそれは、見慣れているはずなのに、いまだに美しいとは思えない。

 

機体性能としては、背部スラスターによる短時間のホバー移動が可能。直立二足歩行型としては、軽快な運動性能を持つ。

 

だが。

それは、あくまで人類の兵器としては、の話だ。

 

V.L.Tの有する兵器を相手にするならC型、B型までならある程度戦えるが、A型になるとかなり……というか、無理ゲーである。

 

なぜ、俺がそんなことを知っているかというと、この機体に乗ってゲームをプレイしたことがあるからだ。

 

トリプルゼロこと……プロトタイプ・ハウンドアーマーが登場するシナリオがボルトボックスの追加コンテンツに存在する。

 

シナリオ名はボルトボックス・デスロード。

 

ネットでは「怒りのデスロード」とか、「インフィニティランカー御用達」とか、「愛すべきブリキ野郎」とか散々な言われ方をしているが、そのシナリオはプロローグで少し説明されていた【ノルマンディー反抗作戦】を描いたシナリオである。

 

このシナリオの主人公は、従来の武装では歯が立たないボルトの兵器でも「近接戦闘による物理ダメージを与えれば対処可能である」ことを命と引き換えに証明した……その英雄本人なのだ。

 

名前は明言されず、シナリオ中も名前を呼ばれなかった名無しであるが、彼が証明したことは後の世のハウンドアーマーに多大な影響を及ぼすことになる。

 

そして、カイルア・コア基地で5機のトリプルゼロが並ぶというシーンは、機体操作のチュートリアル……つまり、シナリオの序盤も序盤というシーンなのだ!!

 

おいおいおい、死んだわ俺。

 

ふざける余裕があるくらいには冷静になれてきたわけだが、これは所謂……転生というもの、あるいは異世界へ迷い込んだというものなのだろうか?

 

だとしたら神よ。貴方は私に死ねというのか。

 

このデスロードというシナリオは追加コンテンツなわけだが、難易度設定がハード、ハーデスト、インフィニティしかない玄人向けの追加シナリオなのである。

 

トリプルゼロが導入された時代にナノマシンなんてものは存在しない。

 

なので操作感は強制的にインフィニティモードのそれになり、しかも機体は今まで操作していた第三世代のものから一気に後退した代物。

 

その挙動はすごく、もっさりしてるのだ。

 

例えていうなら最新ゲーム機からレトロゲームに切り替わったみたいな感覚に近い。

 

操作方法は従来のものと大差はないが、機体反応速度が致命的に悪い。

 

そんな機体で初戦はV.L.TのC型と戦わされる。

 

第三世代機では苦も無い相手だったが、トリプルゼロでは話が違う。蜘蛛型のC型と遭遇しようものなら引き撃ち(とにかく逃げて逃げて撃つ戦術)しか使えないほどなのだ。

 

もし、この世界が俺の予想通りボルトボックスの世界であり、このシナリオかデスロードだった場合、生き残れるイメージが全く湧かないんですよ。

 

てゆーか、デスロードは最終的に主人公もお亡くなりになるからな!?つまり神は俺に死ねと言ってる。じょ、冗談じゃないぞ。こんな理不尽なことがあってたまるか!俺は逃げるぞ!

 

と思いながらもコクピットに閉じ込められていたら何もできないので、俺はまんまデスロード編のチュートリアルをこなすことしかできなかった。

 

 

 

 

俺にとってのボルトボックスは箱推しなのだ。

 

もちろん、好きな相棒キャラも、ヒロインキャラもいるが、全体的にキャラクターの造形が深いため、結果的に俺はボルトボックスというコンテンツ全てを推せるという形に落ち着いた。

 

さて、今回のシナリオでも一押しのキャラを紹介するぜ!!

 

「中尉、さすがでしたね。貴方ほどトリプルゼロを動かせるパイロットはいませんでしたよ」

 

デスロードシナリオで屈指の相棒ポジションを獲得したアーノルド・ゼノン少尉でーす!愛称はアルだが、主人公は名無しで反応も悪い(ゲームシステム上無口になるのは仕方がなかった)ので、彼の名前を呼ぶことはなかった。

 

そんな彼はとにかく主人公を持ち上げ、褒めまくるキャラである。

 

今日のトリプルゼロのテスト運転でも彼は僚機として操縦方法の再確認(操作方法解説)をしてくれて、右へ左へステップ、屈む、スラスターベーンを展開するという一挙一動をするだけで、「こんなに早く動かす人なんて今までいなかった」とか、「貴方にはトリプルゼロを操るセンスがある」とか、「やはりパイロットとして一流だ」とか、とにかく褒めまくってくれる。

 

そして、アーノルド氏はトリプルゼロを用いた反抗作戦が始まってからは主人公の僚機として行動を共にしてくれるのだ。

 

どんな窮地でも、どんな劣勢でも、彼は共に戦ってくれる。

 

しかし、最終局面でアーノルドは戦死するのだ。

 

主人公を庇い、コクピットを位相収束砲で貫かれる最期を迎える。

 

彼の遺体は跡形もなく消え去り、その突然の死にプレイヤーは衝撃と戸惑い、そして最後の瞬間まで主人公を支え続けた相棒が消えたことで深い悲しみを味わうことになった。

 

デスロード編にはシナリオの分岐は存在せず、彼は必ず死ぬ運命にあり、そして主人公もV.L.Tとの戦いで果てることを運命づけられているのだ。

 

救いたくても、助けたくても、逃げろとも言えず、彼が死ぬのを黙って見ていることしかできなかった。

 

シナリオをプレイをした俺は、ふと……こう思った。

 

アーノルドが生きていれば、きっとこの主人公の未来も変わったのだろう、と。

 

 

 

 

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