リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う!   作:紅乃 晴@小説アカ

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第20話 奪還作戦開始!

 

 

 

「ねぇ我慢してよ〜お願いだからさ〜」

 

【断固拒否します】

 

レンネル基地の倉庫に鎮座する機体、ボルガー。

 

その機体の中に存在するゼブロイド、エーテリアスは硬い口調でそう返した。

 

交渉中なのは俺。

 

なぜ、エーテリアスが硬い口調のままで拒否をしているのか?

 

その理由は単純で……。

 

「ムラクモ中尉。あー……エーテリアスはなんて言ってるの?」

 

「ボルテリガーになれば無用の長物になるので……F.C.S(ファイアコントロールシステム)は必要ないの一点張りでして……」

 

そう答えると、カエデさんが夜なべして拵えた外付け端末を両手に持ったまま、がっくりと肩を落とす。

 

現代文明の利器で、ハウンドアーマーすべてに搭載されていれるF.C.Sの取り付けを、エーテリアスは断固拒否の姿勢を示しているのだ。

 

F.C.Sは、文字通りハウンドアーマーの火器管制システム。

 

基本武装が近接戦闘の「サンダーボルトナックル」と、防御技「グランドシールド」程度しかないボルガーの火力増強のために、レンネル基地の倉庫に余っている試作武器などを載せれるよう取り付けたわけだが……。

 

【ボルテリガーになる際、破棄しなきゃいけない武器をなぜわざわざ装備する必要があるのですか?】

 

と、エーテリアスからの強気の抗議が炸裂。

 

そのせいで搭載が難航している。

 

ええい!訓練生たちのレイジングブルや、デルベルトのエンフィールドは着々と準備が進んでいるというのに!

 

エーテリアスが納得しないと困るんだよ!色々!

 

共通規格の通信ができんからボルガーから指示を出す時なんてオープンチャンネルなんだぞ!

 

指示が外部に丸出しとか指揮系統が根本的に成り立たんわ!

 

そう説得を試みてる俺の後ろでは、カエデさんは死んだ目のまま、せっかく作ったF.C.Sの端末を両手で持って上げ下げしている。

 

あの、本当に申し訳ない。

 

「たしかに合体をすりゃあ何とでもなるだろうが……もし、肝心な時にエネルギー切れとか起こしたら元も子もないだろ?」

 

【その前に殲滅すれば問題ありません】

 

「脳筋すぎだろ」

 

思わず呟いてしまった一言に隣にいるフレッドが頭を抱えてしまったじゃないか。

 

たしかにボルテリガーになればC型なんて吹けば消える程度の戦力かもしれないけど……戦場ってのは想定外が付き物。

 

高火力を有するボルテリガーの武装だが、ガルダリア・ドライブのエネルギーが不足すれば使い物にならない。

 

実戦経験はたったの二回。

 

しかもA型と特A型の戦いも短期決戦。

 

C型やB型との長期戦になれば何も保証ができない以上、手札を増やして備える準備は必要不可欠だ。

 

そう説得するが、F.C.Sの搭載を断固として拒否をするエーテリアス。

 

まったく、この聞かん坊め。

 

問題は君だけじゃないんだから早く言うことを聞いてくれないか。

 

「良いから黙って私に譲ってください!」

 

「無茶言わないでください!?」

 

俺とカエデさんの背後。

 

面白がってついてきたフレッドたちの前で取っ組み合いをしてるリンとレイラの方がヤバさでいうと上回っている。

 

側から見てる司令官のロベルトは「何やってんのアンタら」と呆れた目を向けていたが、それを言いたいのはこちらも同じです。

 

「リン、こらリン!何やってんの!お座り!!」

 

「隊長!なんで私じゃダメなんですか!私だってナノマシン無いですし、訓練機にすら乗れないこんな女よりは実戦経験もあります!」

 

それは君、ボルガーというかエーテリアスに拒否されたからね!

 

俺たちがボルガーのところへ来た段階で、「待ってましたよ、隊長!」とボルガーのコクピット前で仁王立ちしてるのを見た時は目ん玉飛び出るかと思ったわ。

 

【おいトンチキ兵器。私を乗せろ】というリン。

 

取り付く島もなく【無理です】とエーテリアスに搭乗拒否をされて、医療室に帰るかと思ったらレイラに「お前!そこを変われ!」って挑んでいくという暴挙。

 

うん、それはいいけど君まだギブスも包帯も取れてないからね?自覚ないだろうけど重傷患者だからね?医務室の軍医がすごい顔して見てるからね?

 

「だいたい、訓練機すら満足に動かせない女が隊長と相乗りするなんて認められません!訓練機すら満足に動かせないのに!」

 

「言ったなぁ!?人が気にしてることを!気にしてることを!!」

 

「とりあえず落ち着け、この聞かん坊ども!」

 

収拾が無くなりつつある倉庫で、痺れを切らしたフレッドが怒声を上げるとようやくリンが不満たっぷりそうにレイラから離れる。

 

だいたい腕骨折してるんだから操縦できないでしょうが。無茶苦茶言うんじゃない。

 

「片腕でもハウンドアーマーは操れます!」

 

うん、本当にできそうだから怖いわ。

 

頼むから大人しくベッドで横になってくれ……!

 

「エーテリアス。マジで頼む。このシステムはハウンドアーマーの連携上、欠かせないんだ。武装も信頼できるモノで出撃したい」

 

ボルテリガーの武装はどれもこれも殺意が高い武装ばかりだが……こちらとしては未体験のものばかりだ。

 

C型やB型程度に合体シークエンスをしていたらキリもないし……現行武装でどうにかできる範囲なら、信頼性のある武装でどうにかしたいんだよ。

 

ほんと頼むよ、エーテリアス。

 

そう頼み込むと、ボルガーのオレンジ色のカメラアイが点滅して応じてくれた。

 

【……承知しました。ですが、一つだけ条件があります】

 

「条件?」

 

外付けF.C.S(ファイアコントロールシステム)の改善案だろうか?

 

まぁ、ボルガー、ボルテリガー含め、武装選択が音声認識だったからな。

 

手動操作での武器仕様には相応の変更点が求められるのも無理はな……。

 

【武装使用時の音声認識システムは譲りません】

 

てっめ、エーテリアス……この……!

 

音声認識システムってことはアレか!?

 

ボルテリガーみたいに武装使用時は叫べってことか!?

 

ええ!?

 

ふっざけんじゃねぇぞ!

 

あれ脳内に直接のぶち込まれるから仕方なく叫んでやってるんだぞ!そうしないとダメだとも直感的に理解できてるから我慢してやってるというのに……通常武装も叫べってか!

 

俺からすればクソ恥ずかしいんだぞ!?

 

カエデさんも!

 

そんな音声認識なんて急に言われても対応なんて「よぉし、わかったわ!手始めにライフルの起動コードは〝ボルトシューター〟とかでいいわね!?」

 

【ボルティックシューターでお願いします】

 

神は死んだ!!!!!!

 

「言い合いしてる場合ですか。隊長もさっさと準備をしてください。猶予はあまりないんでしょ?」

 

フレッド!お前!

 

マジで帰ってからお前のアーマライトの武装も音声認識型に変えてやるからな!!

 

 

 

 

少し時間は遡り、夜が明けきらぬ早朝。

 

白み始めた空の下、再び会議室に呼び出された面々は、俺やフレッド、ロベルトが夜通し議論して練り上げた作戦内容の説明を受けていた。

 

寝不足の空気が残る室内には、どこか張り詰めた緊張が漂っている。

 

「今回の作戦は背面からの中央突破だ」

 

進行役のフレッドが低く言い放つと同時に、室内の照明がわずかに落ち、ニューブリテン島の三次元地図が青白く展開される。

 

浮かび上がる島影に、誰もが無言で視線を向けた。

 

フレッドは赤いペンライトを手に取り、地図の一点をなぞる。

 

「ニューブリテン基地を占拠しているV.L.Tの主力は、ラバウルに集結していると予想される」

 

「我々はラバウルとは反対側のワイド湾から上陸。そのまま北上し、山岳地帯を突破する」

 

赤い光が、島を縦断するように滑る。

 

「天然の要害に守られていると油断している敵の背後を突き、そのまま一気にラバウルへ進出する」

 

静まり返った会議室の中で、その軌跡だけがやけに鮮明に見えた。

 

ワイド湾からラバウルへ抜けるには、バルルメア山稜を越えなければならない。

 

険しい地形、大部隊での移動は現実的ではない。

 

だが少数部隊とハウンドアーマーならば、踏破は不可能ではない。

 

「ワイド湾までは、レンネル基地にあるフライテールを使用する」

 

フレッドが続ける。

 

「年式は古いが、ハウンドアーマーの搭載には十分だ。……古いが故に、無茶も効く」

 

フライテール。

 

トリプルゼロ輸送を目的に開発された中型輸送機で、つい最近までハワイ基地との連絡路として使われていた機体だ。

 

俺がこのレンネル島に来た時も乗った、あのボロ機体。

 

見た目は頼りないが、積載性能だけは折り紙付きだ。

 

フレッドはモニターを切り替え、レンネル基地からワイド湾へ至る侵入ルートを表示する。

 

海面すれすれをなぞるような航路だった。

 

「フライテールは水上着陸も可能だ。海面ギリギリを飛行し、レーダーを回避しながらニューブリテン島へ向かう」

 

「その間に発見された場合は?」

 

最前列で腕を組んでいたデルベルトが、間髪入れずに問いを投げる。

 

当然の疑問だった。

 

こちらには敵の展開状況に関する情報がほとんどない。

 

見つかるか、見つからないか。

 

正直、運の要素が強すぎる。

 

「ハウンドアーマーには急造だがフロートサンダルを装備させる」

 

フレッドは淡々と答えた。

 

「発見された場合はフライテールを放棄。各自で島へ向かう」

 

さらりと言うが、内容は無茶そのものだ。

 

「なお、フライテールは懸架されたハウンドアーマーから遠隔操作可能だ。囮として使える。撃墜されても問題はない」

 

……問題は大あり。撃墜されれば、海面に放り出される。フロートサンダルで浮かびながら、波間を縫って上陸。

 

しかも敵に見つかっている状況だ。

 

B型の迎撃が来ない保証もない。

 

正気の沙汰じゃない。

 

だが、それでも……それしか手がないのも事実だった。

 

「メンバーは既に三名決定している」

 

フレッドの声が、わずかに重くなる。

 

「一人は、デルベルト・ロッジ大尉。エンフィールドで出る」

 

その名に、デルベルトは静かに顔を上げた。

 

事前に話は通していて、なおかつデルベルトは自ら志願した。責任感の塊みたいな男だ。後ろで待つことなど、彼にはできない。

 

「そして、ダン・ムラクモ中尉と、レイラ・ストーム少尉。ボルガーで出撃する」

 

名を呼ばれ、俺とストーム少尉は一歩前へ出て敬礼する。

 

横目で見た彼女の表情は硬く、敬礼する手がわずかに震えていた。

 

それでも、下げない。

 

「出すんですか!?」

 

思わず声を上げたのはカエデさんだった。

 

ボルガーの出撃、というよりレイラ・ストームの出撃に対する驚きだろう。

 

「……決定事項だ」

 

フレッドの一言が、それを完全に断ち切った。

 

「戦える者を置いておけるほど、今の我々に余裕はない。使えるものはなんでも使う。それについては、ストーム少尉も承知してくれている」

 

静まり返った会議室に、その言葉だけが冷たく落ちた。フレッドの言葉に、カエデさんは明らかに顔を顰める。

 

気持ちはわかる。

 

これまで、パイロットになりたいと願いながらも戦闘とは無縁だった彼女を、最前線に送り出すのだ。思うところがないはずがない。

 

それについても、ストーム少尉とはよく話をした。

 

最悪は、俺一人で出るつもりだった。だが彼女は、震える声で、それでも一緒に行くと答えてくれた。

 

「我々に課されたタイムリミットは、あまりにも短い」

 

フレッドは淡々と続ける。

 

「我々が取れる道は二つしかない」

 

そう言って、今後の方針を示す。

 

「ニューブリテン基地を見捨ててユーラシア大陸へ流れるか。それとも、基地を制圧した特A型を撃滅し、奪還するかだ」

 

シン、と。

 

空気が凍りついたように、会議室が静まり返る。

 

デルベルトと俺たち。

 

そして、残り二機のレイジングブル。

 

そのパイロットを選ばなければならない。

 

視線は自然と、三人の訓練生へと集まった。

 

テルリード・サーキス。

 

カイ・ローベルト。

 

そして……。

 

「私がやるわ」

 

カレン・シュバイドが、真っ直ぐ前を見据え、凛とした声で言い切った。赤い瞳が、揺るがない意志を宿している。

 

「カレン」

 

「ここにいたって、何にもならないじゃない。物資も食料も、どんどん減っていく」

 

軽く肩をすくめながら、彼女は言葉を続ける。

 

「こんな常夏の場所なのに、シャワーも浴びられなくなるなんて、私は耐えられないわ」

 

冗談めかした口調。

 

だが、その奥にある覚悟は、誰の目にも明らかだった。不安そうな表情のカイに対し、カレンは胸を張り、ツーサイドアップにした赤い髪を払う。

 

「わかってるの!?命懸けなんだよ?」

 

「上等よ。アタシは、そのためにパイロットになったんだから」

 

言い切った。

 

その言葉の強さに、カイはそれ以上何も言えなかった。カレンは、伝説的な遊撃手である父を超えるために、ここまで努力を積み重ねてきた。

 

その姿を、カイはずっと見てきたのだから。

 

「もう一機、同行するパイロットが必要だ」

 

フレッドが淡々と告げる。その瞬間、カイの隣に立っていたテルリードが、静かに口を開いた。

 

「無茶苦茶な作戦ですね」

 

訓練生の彼でもわかる。この作戦の生存率が、ほぼゼロに近いことくらい。

 

「……承知している。だが、やらなければならない」

 

フレッドはわずかに目を伏せ、それでも言い切った。

 

「やらなければ、我々に未来はない」

 

重い言葉だった。

 

だが、紛れもない事実でもあった。

 

その言葉を受けて、テルリードは一歩前に出る。

 

敬礼。そして、迷いのない声で。

 

「俺が行きます」

 

「テル……」

 

「カイ、お前のレイジングブルを借りていくぞ」

 

カイは一瞬だけ言葉を詰まらせ、それでも、顔を上げた。

 

「……約束して。必ず帰るって」

 

「あぁ、約束する」

 

短いやり取り。だが、その重みは何よりも大きかった。

 

その様子を見ていたデルベルトが、思わずといった風に呟く。

 

「……全く、嫌になるな。こんな若者を連れ出さなきゃならないなんて」

 

苦い顔だ。その肩を、俺は軽く叩いた。

 

「嫌になるからこそ、俺たちは気張らなきゃならないんです」

 

デルベルトは一瞬だけ目を閉じ、そして開く。

 

「ムラクモ中尉。俺は今度こそ守りますよ。俺のこの手で」

 

その表情に迷いはなかった。

 

いざとなれば、自分が身代わりになる覚悟。

それを隠そうともしていない。

 

俺はそんなデルベルトを見て、ふっと笑みを浮かべる。

 

「あまり気負うなよ。先は、まだまだ長いんだからな」

 

戦いは、このニューブリテン基地だけじゃない。

 

この先に、もっと過激で、もっと苛烈な戦いが待っているのだから。

 

 

 

 

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