リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う! 作:紅乃 晴@小説アカ
ニューブリテン基地。
ボルトボックスのストーリーを味わうプレイヤーが最初に邂逅する特A型V.L.T。
その存在は、表と裏において重要な意味を持つ。
表では、初見のプレイヤーに「勝てないギミックエネミー」として認識されるほどの強さを持ち。
裏では、満を持して挑むプレイヤーを迎え撃つ最初の関門として、圧倒的な壁として立ちはだかる。
そして、インフィニティモードにおいては。
それはもはや「敵」ではなく、プレイヤーをふるい落とすために用意された、明確な“選別装置”として顕現する。
特A型V.L.Tの基本装備は、三門の位相収束砲とホーミングミサイル、エネルギー刃、そして絶対的な防御力を誇る流体エネルギー膜、それを反転させた
さらに特筆すべきは、各拠点のボスとして座する特A型には、拠点ごとの特性が存在するという点だ。
それを知らないプレイヤーにとって、この地で出会う特A型V.L.Tは、今後現れる強敵たちの試金石であり、「ここで理解できなければ先はない」と突きつけてくる存在でもあった。
ニューブリテン基地を襲撃した特A型V.L.Tの特徴は、その剛腕にある。
剛腕とは文字通りの意味で、太い腕部には位相活性化装置が組み込まれている。
その結果、図体に似合わない機敏な動きと、質量そのものを叩きつける物理攻撃を両立。
さらに腕部に備わるエネルギー刃はドリル状に展開し、触れれば削られ、貫かれ、そして最後は質量で押し潰される。
防御という概念を、正面から否定する圧倒的な暴力。
そして極めつけ。
腕部を前に突き出し、三門の位相収束砲を位相活性化装置で増幅させて放つ
表ルートではユーラシア離脱直前に放たれ、ニューアイルランド島の地形を変える。
裏ルートでは言うまでもない。
受ければ問答無用で即死。
だが他難易度では、まだ救いはあった。
腕を前に出すという明確なモーションと、わずかなチャージ時間。それが「隙」として成立していたからだ。
近づいて殴る。
それが正解だった。
そう。
インフィニティモードを除けば。
変態御用達のインフィニティモードでは、その前提が崩壊する。
メガバズーカ砲のモーションに入った瞬間。不定期に
ノーモーションである。
予兆は一切ない。パッと画面が光れば終わる。あるのは、撃墜される結果だけだ。
しかも、友軍がそれで吹き飛ぶ専用ムービー付きである。
本来、
だがこの個体は違う。
メガバズーカ砲の発射モーション中、プレイヤーが「ここがチャンスだ」と判断した瞬間に限って、その常識を裏切る。
近づけば即死。
離れればゲロビで焼かれる。
つまり。
正解だった行動が、そのまま敗因へと反転する。
慈悲?そこになければないですね。
もちろん、
他難易度では「隙」であったものが、インフィニティモードでは「最大の罠」に変わる。
通常時は剛腕とエネルギー刃、格闘と連動しない収束砲がプレイヤーを削り続け、メガバズーカ砲のモーション時は近づけず、そして放たれる絶死の閃光。
加えて。
この個体は戦闘時間が長引くほど、行動のサイクルが早まり、メガバズーカ砲のモーションも早くなっていく。
回避の余白が、徐々に削られていく。
最初は避けられていた攻撃が、気づけば避けられない密度へと変わっている。
つまりプレイヤーは、通常時に攻撃を捌き、超接近戦で
そして、それだけでは足りない。
「罠である可能性」を前提に行動を選び続ける必要がある。
この特A型V.L.Tは、ただの強敵ではない。
プレイヤーの経験、反射、判断。
これまで積み上げたそのすべてを否定しにくる存在。
そしてそれでもなお、突破した者だけが次に進める。
故に、インフィニティモードの最初の難関として、ニューブリテン基地の特A型V.L.Tは君臨しているのだ。
▼
「特A型……V.L.T……!」
現れたV.L.Tの周囲の空がイオン化している。
それは特A型が持つ短距離テレポーテーションによる副作用だった。
たった一機の敵。
しかし、その存在を前にデルベルトやテルリード、カレンは息を呑む。
その一機に対し、自分たちがいかに無力であるかをレンネル基地で思い知らされていたからだ。
「そんな……!ラバウルにいたはずなのに!」
ラバウルのニューブリテン基地司令部。
そこに鎮座し、近づく者を容赦なく撃破していた特A型。
それがラバウルを離れることはなかった。
ニューアイルランドへ逃げた者たちを追うこともなく、ただ“絶望の象徴”として存在し続けていた。
その存在が、なぜこの地に現れたのか。
【来たな、イレギュラー】
ボルガーのコクピットに声が響く。
レイラと俺は、同時に顔を見合わせた。
(声が……聞こえる……!)
特A型V.L.T。
予想はしていたが、レンネル基地で遭遇したノクロスと同様、この個体もまた意思疎通が可能であることが判明した。
もっとも、それが対話に繋がるかと言われれば疑問しか残らないが。
【ノクロスから報告があったように、本当に
その言葉に、エーテリアスが強張った声で応じる。
【カリプト……!貴方も、回帰論に陶酔するのですか……!】
【さぁ、どうだろうな】
カリプト……そう名乗る特A型V.L.Tは、肩をすくめるように答えた。
回帰論。
人類を襲うV.L.T勢力が掲げる、有機体への回帰。
だがその声音には、肉体への渇望は感じられない。
むしろ、それを俯瞰するような冷淡さがあった。
「ど、どうするのよ……!特A型なんて……!」
圧倒的な強者の出現に、空気が揺らぐ。
カレンの声は震え、テルリードやデルベルト、合流したニューアイルランドのパイロットたちも息を呑む。
そして、後席のレイラも。
だが方針は変わらない。
俺たちはこれを越えなければ、先には進めない。
来るべき絶望が、自ら姿を現したのだ。
ラバウルへ攻め込み、ニューアイルランドの友軍と挟撃する予定だったが、向こうから来たなら、それでいい。
「ここで倒すぞ!」
そう言って武器を構えた瞬間。
俺のいた空間が、カリプトの位相収束砲によって打ち抜かれる。
触れたものを分子レベルで消滅させるそれを、咄嗟に跳躍して回避。
次の瞬間、カリプトは剛腕を振るい、エネルギー刃を展開する。
【有象無象は後でどうとでもなる。だから…。イレギュラーを先に潰す!】
ラリアットのように振るわれる一撃。
その質量ではあり得ない速度で迫る剛腕が、空間ごと俺を叩き潰そうと襲いかかってきた。
「無駄に知恵が働きやがって!」
宙返りする形でそのラリアットを避けるが、腕を覆うエネルギー刃の余波を受け、機体ごと空へと弾き飛ばされる。
「ムラクモ中尉を援護だ!」
レイラの悲鳴混じりの声と同時に、打ち上げられた俺を見たデルベルトが即座に指示を飛ばす。
彼を軸に左右へ展開したレイラとテルリードが、カベットライフルとショットランチャーでカリプトへと攻撃を加える。
だが、その火力をもってしても、相手はあまりにも強靭だった。
【そんなカスのような攻撃で、このカリプトの腕を抜けられるものか!】
全身に爆炎をまといながらも、一切臆することなくカリプトは前進する。
そのまま地面を蹴り砕く勢いで、テルリードたちへと肉薄する。
「なんてやつなの!こっちの攻撃、全然手応えがない!」
そう叫ぶカレンのすぐ横を、剛腕が通り過ぎる。
地面は抉れ、エネルギー刃によって切り裂かれた空間はプラズマ化。
異常なエネルギー反応を検知した外気観測センサーが、警報をけたたましく鳴らした。
「あの状態の腕には触るなよ!ミンチになるぞ!」
その言葉に、全員が反射的に距離を取る。
それを見たカリプトは、エネルギー刃を消失させると、ガンッと火花を散らしながら左右の剛腕を打ち合わせ、一つの姿勢に収束させる。
【さっさと終わらせるとするか】
前方へ突き出される両腕。
チャージモーション。
剛腕を砲身と見立て、収束砲の威力を増大させるための動きだ。
「またあの砲撃が……ザス!よせ、やめろ!」
その瞬間。一機のハウンドアーマーが、静止したカリプトへと突撃する。
「うあああああ!仲間の仇だ!」
ニューアイルランドから来た二機のうちの一機。
片腕に装備した
「だ、だめだ!」
その隙に飛び込んだ瞬間。
機体は、フラッシュのような光に包まれ……そして、次の瞬間には粉々に砕け散っていた。
「ザァァァス!!」
「合流した友軍機の反応、消滅……!」
特A型V.L.Tが持つ流体エネルギー膜。
別次元へと受け流したダメージを放出する防壁。
それを反転させる
爆発すら起こさず、ただ砕け散ったハウンドアーマーの残骸が、乾いた音を立てながら平原へと降り注ぐ。
「クソッタレがぁ……!」
吐き捨てた言葉には、怒りと焦燥が混じる。
よりにもよってインフィニティモード仕様。
チャージモーション中に近づけば、さっきのようにノーモーションで
当たれば終わりだ。
「どうすんのよ、これ!」
どうするもこうするもない。
あの状態に入った時にできることは、ただ一つ。
【これで終わってくれるなよ?シュピルフラーレの極光】
「全機、特A型の側面へ全速力で退避!掠めただけでも死ぬぞ!」
全員がカリプトの正面から離脱した、その直後。
両腕の位相活性化装置によって増幅された位相収束砲が、轟音と共に放たれる。
極光が視界を塗り潰す。
青白い閃光はラバウルを越え、ソロモン海域を貫き、そのまま地平線の彼方へと消えていった。
数秒後。
遥か遠方で、太陽がもう一つ生まれたかのように光が膨れ上がる。遅れて衝撃波が海面を叩き、高波を生み、さらに大地を震わせながらこちらへと到達する。
「な、なんて威力……!」
機体が軋み、全身が押し潰されるような圧力。
その向こう、地平線には巨大なキノコ雲と、大気のプラズマ化による無数の稲妻が荒れ狂っていた。
「ヘンリー機!聞こえているな!?」
「くそ!くそくそ!よくもザスを……!」
「落ち着け!冷静にならないと死ぬぞ!」
パニックに陥ったハウンドアーマーを、ボルガーで強引に掴み止める。
接触回線越しに聞こえる荒い呼吸が、徐々に落ち着いていく。
数度、深く息を吐き、ようやくそのパイロットは応答した。
「……すまない……だが、あの光のせいで、俺たちの仲間と司令官たちは……!」
おそらく、この基地の司令所を吹き飛ばしたのは、あの極光だろう。
だからこそ、これ以上撃たせるわけにはいかない。
こんな威力……さっきは海の彼方に着弾したからよかったものの、ニューアイルランドにでも直撃すれば、残存戦力は問答無用で瓦解する。
「全機散開!まとまっていたらやられる!」
問題は、あの剛腕だ。
迂闊に近づけばやられる。
とにかく数で撹乱し、狙いを絞らせない。
そのやり方は、レンネル基地で遭遇した
「方針は変わらない!短期決戦だ!」
「全機、ボルガーに敵を近づけるな!」
デルベルトの言葉と共に、それぞれのハウンドアーマーが散開し、各機から火力が叩き込まれる。
【お前たちの動き……ここにいる連中とは違うな?こいつは楽しめそうだ】
その火力を受けながらも、カリプトは平然としていた。
撃ち込まれた攻撃はすべて流体エネルギー膜で防がれている。ダメージを与えるには、近づいて
【シュピルフラーレの雨!】
背部と胸部の装甲がわずかに開く。
そこから扇状の軌道で放たれたのは、V.L.T特有の強力な誘導性能を持つミサイル群だった。
「ホーミングミサイル!?こんな数!」
デルベルト、テルリード、カレンは即座に機体を切り返し、ミサイルとは逆方向へ後退する形で戦闘機動を取る。
そして、迫るミサイルをカベットライフルやショットランチャーで次々と撃ち落としていく。
だが、一機だけミサイルに背を向けてしまった機体がいた。
「だ、だめだ!避けきれな――」
逃れようとした動きが仇になった。
そのハウンドアーマーは、雨のように降り注ぐミサイルに対処しきれず、そのまま爆炎の中に呑まれた。
「へ、ヘンリー機が!」
後ろから、レイラの戸惑う声が聞こえる。
仲間が撃墜された衝撃か、カレンの動きにも一瞬の乱れが生じる。
飛来したミサイルの一発が片腕に食らいついた。
咄嗟に片腕をパージしたものの、爆発の衝撃波は容赦なく機体を襲う。
「あうっ!」
「カレン!このぉ!」
片腕を失ったカレンを見たテルリードは、後退していた機体を一気に前進させる。
ミサイルの抜け道を縫い、紙一重で飛来弾をすべて回避してみせた。
そんな神技じみた操縦を前に、カリプトは歓喜するように剛腕を振りかぶる。
【挑んでくるか!勇猛だな!】
「テルリード!迂闊に近づくな!」
デルベルトの制止に、テルリードの動きがわずかに鈍る。
そして、その一瞬の迷いが命運を分けた。
【シュピルフラーレの刃!】
振り抜かれた剛腕の軌道をなぞるように、エネルギー刃がテルリードを襲う。
指揮官の言葉によって、攻める意志に迷いが生じたテルリードのレイジングブルは、辛うじてその刃を潜り抜けた。
もう一歩、踏み込んでいたら確実に引き裂かれていた。
「これが、特A型の力……!」
着地したデルベルトのエンフィールド、テルリードとカレンのハウンドアーマー。
その後ろ。
三機に守られるようにして佇むボルガーのコクピットで、淡い光が明滅する。
戦場の轟音の中で、それだけが異様なほど静かに、確かに脈打っていた。
【ダン・ムラクモ!ユナイト・シグナルを!】
エーテリアスの声が響く。
その言葉の通り、ボルガーの中枢からユナイト・シグナルが発せられている。
だが、この状況で合体など可能なのか。
ドッキングシークエンスに入る直前、
その瞬間は、どうしようもなく無防備になる。
一瞬の硬直。
一瞬の隙。
それは、この戦場において致命的だ。
その間に攻撃を受ければ、こちらは確実に崩される。
ジリ貧どころか、一撃で終わる可能性すらある。
それでも。
【俺に挑むか、ボルテリガー。ならば、全力で来い!】
俺とレイラにしか聞こえない声。
特A型V.L.T……カリプトの、嘲るような挑発。
……ふざけるな。
散々好き勝手に暴れ回り、
散々好き勝手にハウンドアーマーを破壊し、
そして……好き勝手に、人の命を奪ってきた。
その当人が、まるで舞台を楽しむ観客のような口ぶりで、こちらを試すように言葉を投げてくる。
「どいつもこいつも……自分勝手なことばっかり言いやがって……!」
吐き捨てる。
エーテリアスも。
目の前にいる特A型V.L.Tも。
そのどちらもが、自分の理屈だけでこの戦場を動かしている。
なら。
その“勝手”を、ここで叩き潰す。
胸の奥で、何かが切り替わる。
恐怖も、迷いも、全部押し込めて。
今、やるべきことはただ一つだ。
「お前は……ここで倒す!」
俺は、淡く明滅するユナイト・シグナルへと手を翳した。
光が、応えるように強く脈打つ。
それはまるで、戦えと。
そう命じているかのようだった。
▼
レンネル基地、司令部。
「アレキサンダー司令!ボルガーよりユナイト・シグナルが来ています!」
通信士官の言葉通り、指揮所のメインモニターにはボルガーからのユナイト・シグナルが表示されていた。
指揮所に集まるフレッド、リン、カエデ……そして、幼馴染のテルリードと、ライバルであるカレンを心配するカイは、そのモニターを前に祈るように手を胸元で重ねていた。
シグナルがくると信じていたロベルト・アレキサンダーは、士官の言葉を受けて手を翳して声を上げる。
「よし、ユナイト・シグナル、承認!」
「了解、ユナイト・シグナル、承認します!」
その言葉と同時に、士官はユナイト・シグナルの承認を告げるスイッチへ、勢いよく拳を叩きつける。
「……いくぞ!ユナイト・コネクトォオオ!!」
俺の発した声に呼応するようにハイパーゲートが光を放ち、3機のボルトモジュールが飛び出す。
三つの光は音速を超え、一筋の光となって宇宙から地球へ……ボルガーの元へと集った。
【ボルガー・ユナイト!セット、オン!】
「はぁあああ!!」
気合い一閃と共にボルガーを中核に三機のボルトモジュールが同調する。
【おお、これが、V・ウェポンの真の力か!】
合体時に生じるエネルギー波を受けながらも、カリプトは合体を始めるボルガーを見つめていた。
「いくぞ!!」
まずはファイター型のモジュール、「ファイアーボルト」が変形し、ボルガーの上半身へと接続。
【ファイアーボルト、セット】
ボルガーの両肩が開き、コネクタユニットと接合されることで次の合体へと移行する。
タンク型のモジュール、「グランドボルト」が折り畳まれたボルガーの脚部へとドッキング。
タンクは二分割するように変形し、その姿は巨大な脚と化した。
【グランドボルト、セット】
最後に腕部にドッキングしたのがドリル型のモジュール「サンダーボルト」。
ドリルが折り畳まれて変形すると、その姿は腕となった。肘部から突き出したドリルはパーツを展開することによりトンファーのような武装へと変形することも可能だ。
【サンダーボルト、セット】
ボルガー。
ファイアーボルト。
グランドボルト。
サンダーボルト。
【ボルトモジュール、ドッキングオールクリア。ボルテリガー、起動します】
全てのドッキングが完成する。
「はぁあああ!雷王招来!」
ボルガーのガルダリア・ドライブと、三基のガルダリア・ブースターの波長が同期することで、完全なる姿が完成したのだ!
「ボルッ!テリッ!ガァアアアアーーー!!!」
三つのボルトモジュールと一つになった勇者。
戦え!負けるな!勝利を掴め!
我らの希望を背負うその勇者の名は。
雷王、ボルテリガー!!