リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う! 作:紅乃 晴@小説アカ
勇気とは
自分の勝利を、最後の最後まで諦めずに
戦い続けた者に、宿るものだ。
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どうする。
目の前に迫る、特大の極光。
カリプトから放たれる、フルチャージされたメガバズーカ砲。これを何もせずに受ければ、今度こそボルテリガーごと俺の体はバラバラになるだろう。
躱す?
俺の後ろにはニューアイルランド島。そこには、ニューブリテン島から逃れた地球軍の残存部隊がいる。
そんなところに、この光が撃ち込まれたら?
島の形を変えてしまうような威力だ。あの島にいる仲間は、まず助からない。
ここから先、自分たちの力になってくれる人たちを失うわけにはいかない。
けれど……受ければ、たとえこの機体でも耐えられない。
ここでボルテリガーが……俺が死ねば、すべてが終わる。
テルリードやカレン、デルベルトが死んだら、この先どうなる。
V.L.Tに抵抗する勢力は現れず、地球軍は敗北に追い込まれ……人類は消滅する。
それを防ぐためには……ニューアイルランドにいる仲間を見捨てて、俺はテルリードたちメイン戦力の命を取る必要があるのか。
ここで取捨選択をするしかないのか。
ここで……!!
「ダン中尉!!」
ふと、背中を叩きつけられるような声が響く。
「私は、信じてます」
レイラは、揺るぎのない目で俺を見ていた。
迷いはない。
恐怖も、ためらいも。
この絶体絶命の状況でさえ乗り越えられると、ただ一つの答えだけを信じている。
そんな強さを宿した声だった。その一言で、暴走していた思考がぴたりと止まる。
あぁ……そうか。
そうだな。
何を、馬鹿なことを考えている。
取捨選択?
誰を生かして、誰を切り捨てるか?
そんなものは最初から、俺の選択肢に存在しない。
レイラは、ずっとボルテリガーのサブパイロットとして行動を共にしてきた。
あの初陣の時も。圧倒的な戦力差に押し潰されそうになった時も。一歩間違えば命を落としていた、あの瞬間でさえ。
彼女は逃げなかった。
俺と共に立ち続けた。
自分の命を賭ける覚悟を決めて。
今もこうして、この戦いについてきている。
俺が、この戦いを切り開く存在だと。
強敵を打ち倒す力を持った、勇者だと信じてくれている。
あぁ。
危うく、行動指針をぶらすところだった。
信じてくれるレイラの、その信頼に……応えない理由がどこにある。
俺の行動指針は、最初から一つだ!
「仲間を……守る!!」
フラクタルウイングを展開。
背部から放出される余剰エネルギーが、尾を引く光となって収束し、そのすべてを片腕へと叩き込む。
装甲が軋む。
フレームが悲鳴を上げる。
「まさか……真正面から受けるのか!?」
デルベルトの驚愕を背に、俺はすべてのエネルギーをこの一撃に賭ける。
「ガルダリア・ドライブ、フルパワー!!」
【いいぞ、面白い……!それでこそだ!】
レイラのコンソールには、エネルギー充填を示すアイコンが表示される。
だが、そのゲージは規定値を超え、
さらに、さらにと伸びていく。
臨界。
片腕が弾け飛ぶ寸前までエネルギーを溜め込む。警告音が連続して鳴り響く。だが、止める気はない。
「こいよ……!真っ向勝負だ!!」
力には力。
シンプルで、だからこそ迷いはない!!
「フルパワァアー……ガルダリアァ……フレアァアアーーーッ!!」
【受けてみろ!シュピルフラーレの極光を!!】
次の瞬間。
互いに放たれた光が、正面から激突した。
視界が白に染まる。
世界そのものが焼き潰されるかのような閃光。大気が震え、空間が軋み、衝撃波が周囲を薙ぎ払う。まるで、そこに太陽が生まれたかのような極光。
だが、その均衡はすでに崩れかけていた。
シュピルフラーレは、特A型の中でも別格のエネルギー量を誇る砲塔。
位相活性化装置で増幅された収束砲の一撃は、フルパワーのガルダリア・フレアを上回る。
押される。
じりじりと、確実に。
光が、こちら側を侵食してくる。
それでも、諦めるつもりなど毛頭ない。
歯を食いしばり、操縦桿を握り潰すほどに力を込める。
「グランドブレスト!からの!」
迫り来るシュピルフラーレの極光を、片腕に展開したグランドブレストでさらに受け止めてみせた。
そして、それだけでは終わらない!
「リフレクトォォスマッシャァアーッ!」
受け止めた攻撃のエネルギーをさらに圧縮し、打ち返すカウンター技、リフレクトスマッシャー。それで放たれていた極光を押し返そうとする。
しかし、それでもなお、シュピルフラーレの極光が出力で上回っていた。
【その程度で止められるものか!】
「だが、隙はできたぞ!!」
カリプトの放つメガビーム砲の最大出力は、これで出し切らせた。威力はまだある。だがそれは、ボルテリガーの原型を失わせるほどの威力ではない。
なら、こちらから。
恐れずに前に、踏み込むしかない!
「サンダークロスッ!!」
両手を前で組むように突き出す。片腕のサンダーボルトバンカーでは、シュピルフラーレの前では力不足。
なら、底上げをすればいい!
一つでダメなら、二つ同時だ!
稲妻が迸り、指を組んだ両手の拳からエネルギー波が発生する。
「うおおぉおおおーーー!!」
そのエネルギー波を前面に、フラクタルウイングで相手の元へと突き進む。
血を削るように体を前に押し出す推力は、リフレクトスマッシャーを消滅させたシュピルフラーレの極光へと突き動かしていく。
拳が光の壁に激突する。
両手に焼けるような痛みが走る。装甲が軋み、火花が散る。
それでも構うことはない。
これをどうにかしないと、前には進めない。
この先には――!!
「バンカァァァークラァァァシュッ!!」
光の壁と競り合っていた組んだ手は、その光を縦に引き裂き、ついに
【見事!だが、まだ甘い!】
「バスターリフトォオ!」
タンク型のグランドボルトで形成される脚部。
その堅牢な膝にエネルギー波を宿して放つ
【やるなぁ!】
「まだまだぁ!サンダーボルトォ!バンカァー!」
接近戦!ここで手を緩めるのは愚の骨頂!ダメ押しとばかりに、空中でさらに拳を構え、稲妻を纏わせた一打を追撃で叩き込む!
【ぐはぁっ!】
胸部に叩きつけた一撃で、カリプトは大きくのけぞり、後方へと弾き飛ばされる!
これで距離ができた。
ここからが正念場だ!
「レイラ!
「了解!」
「よし、ユナイト・コネクトぉお!!」
レイラがコンソールを操作すると同時、再び宇宙にあるハイパーゲートから、高エネルギー反応が発せられた。
空間が歪み、光が収束する。ハイパーゲートから何かがが飛び出す。
【ボルトアーマー【
それは、ロケットのような形状をした大型の「V・モジュール」。
ハイパーゲートを突破したそれは、一条の光と化し、一直線にボルテリガーのもとへと飛翔する。
背面のスラスターを轟かせ、ボルテリガーも空へと上昇する。
雲を裂き、現れるロケット型のボルトアーマー。その軌道に合わせるように並走し、俺は手をかざした。
「いけます!同調率100%!!」
「はぁああっ!ユナイト……!」
【それは……許さんぞ!】
瞬間。ロケットのように打ち出された
「くっ、このぉ!」
直撃。衝撃で機体が大きくぶれる。
ドッキング寸前で姿勢を崩され、
【せっかくいいところだ。もう少し付き合え】
無防備となったこちらへ、剛腕を構えたカリプトが迫る。
エネルギー刃が剛腕にまとわりつき、回転する。まるでノコギリのように空間を削る、暴力の塊を拳として叩き込んでくる。
「づぁあああっ!」
こちらも真正面から拳を叩きつけ、受けて立つ。空中でカリプトとボルテリガーが激突し、衝撃波が夜空に放出された。
「な、なんて戦い……!」
「手を出すことができない!」
地上からその死闘を見上げるデルベルトたちは、その強大な力のぶつかり合いをただ見ていることしかできなかった。
拳がぶつかる衝撃波だけでも、自分たちの機体が持たないことをはっきりと思い知らされるからだ。
地面を抉るように着地しても、火花を散らしながらカリプトの剛腕とボルテリガーの拳がぶつかり合う。
衝撃波が辺りに飛散し、落ちていた瓦礫を吹き飛ばしていく。
【はは!いいな!さっきとは別人のようだ!これはいい!】
ギリギリのところでガードはしたが、ビリビリと装甲全体が震え、動きが固まる。
「なにを!」
【お前なら俺の本心を晒せる!】
頭突き同士で、カリプトとボルテリガーが互いの額をぶつけ合い、雌雄を決するために死力を尽くす。
【エーテリアス!俺がなぜ回帰論に賛同したか教えてやる!それは俺が本心を晒したかったからだ!】
カリプトはボルガーに宿るエーテリアスに嘯く。
それは、ゼブロイドであるカリプトが回帰論を肯定するという宣言だった。
【ゼブロイドは高位電子体。死ぬこともなければ朽ちることもない!ただ存在し続けるだけの存在だ!だが、それは生き物としては……生を担うものとしては破綻している!】
カリプトは思う。
生きるということは、本心を覆い隠すこと。
だが、時には本心を曝け出し、全力で戦うことを強いられる。
それが生き物という存在だ。
カリプトにとって、この戦いは生きることに他ならない。
【俺は今、誰にも晒したことのない本心を晒している!】
剛腕がボルテリガーの腹部を捉えるが、こちらもお返しと言わんばかりに拳を振るい、顔面を殴り抜ける。
互いの剥がれた装甲がボロボロと落ち、それがまるで汗……血のように辺りに散らばった。
【エーテリアス!ゼブロイドなんていう普遍の存在は、生き物として破綻している!】
悠久の時の中で存在し続ける高位電子体。
だがそれは、生きているとは言えないとカリプトは断言する。
カリプトにとって、歪さこそが生き物の極地。
命と本心を曝け出し、自分の手にしたいものを手にする。
振り抜いた剛腕は肉弾戦の範囲にいたボルテリガーを吹き飛ばし、無理やり押し返す。
これだけ距離があれば十分だ。カリプトは両腕を再び合わせて前に突き出す。
【お前もそうだろう!エーテリアスに選ばれた者よ!】
戦いの中で最適化され続けたこの強力無比なエネルギー。
カリプトにとって、その攻撃はすでにチャージが完了していた。あとは放つだけ。それで全てにケリがつく。
本心という得難いものを互いに晒し合って戦ったのだ。ならもう十分だ。
この必殺の一撃をもって、勝利を堂々と終わらせるために!
【俺は本心を晒し、この生の実感を手にする!喰らえ、シュピルフラーレの……】
そこで……カリプトはふと違和感を覚えた。
「それを待っていた……!」
極光が襲いかかろうとしているのに。
なぜ、ボルテリガーはこうも落ち着いて……。
その瞬間、カリプトの意識はほんのわずかに明滅する。激しい衝撃が真横からもたらされたのだ。
攻撃された?どこから?周囲のハウンドアーマーか!?
そう困惑する中、衝撃を受けた方向を見ると、そこにはぶつかってきた犯人がいた。
【こ、これは……さっき飛んでいったA《アルファ》アーマー!?】
ロケットタイプのV・モジュール。さっきカリプトの攻撃で合体を阻止されたそれが、なぜここにいて、再び干渉してきたのか?
「成層圏に上げ、地球を一周させて戻しました!」
自信満々に言い切ったのは、俺の後ろに座るレイラだった。
一周?この星を?こんな短時間で?
そう疑問が起こるよりも先に、カリプトは目の前の事実を認識する必要があった。
一度阻止した
外れたならそのまま直進させ、地球を一周させればいい。
そう即決できる頼れるパートナー、レイラの思い切りの良さに、ダンも思わず笑みを浮かべる。
【な……】
「ダン中尉!いけます!同調率100%!!」
「はぁああっ!ユナイト・アァーマァアーーッ!セット、オン!!」
俺の気合いの声に応じるように、ボルトアーマーがボルテリガーにドッキングを果たす。
ロケット型のアーマーは各部を展開。
まるでボルテリガーの右半身を覆う、巨大な外套のようなアーマーと化したのだ。
ボルガーのガルダリア・ドライブ。
三つのボルトモジュールに備わるガルダリア・ブースター。
そして、
「ボルテリガー・
カリプトはすでにエネルギーのチャージを終えている。目の前から迫るボルテリガーは、
「
その一撃は、
しばしの沈黙ののち、バキッと何かが砕ける音と共に、V.L.T最高峰の強度を誇る素材で作られた
そのひびは徐々に増えていき、そのひびからは溜め込んだエネルギーが、光の帯のように漏れ出していった。
そして爆発。
活性化したエネルギーを受けきれなくなった
「よし!!」
「やった!ムラクモ中尉!」
「すごい……!」
大爆発する特A型を見ていたデルベルト、テルリード、カレンだが、その爆炎は発生したエネルギー刃によって引き裂かれる。
【まだだぁ!】
飛び出したのは、細身となった影だった。
右腕で受け止めるが、警告音がボルテリガーのコクピットに響き渡った。
「ダン中尉!鉄杭拳の影響が!このままじゃ
「
大きく後退しつつ、右半身を覆っていた
残ったのは、剛腕を失っても三門の収束砲とミサイル、エネルギー刃を持つカリプト。
そして地上に残ったのは、体の数か所から火花が散り、装甲にひびが入ったボルテリガーだけだ。
【カリプト!】
エーテリアスの声を合図にするように、カリプトはエネルギー刃を構えて距離を詰めてくる。
振り下ろされそうとした腕を受け止め、力の押し合いで拮抗する。
【お前のような存在と命を張り合えるのが、生きているということだ!】
脚部の膝蹴りがボルテリガーに突き刺さる。今度は頭突きだ。ミサイルを扇状に放ち、幾つもの爆炎とともに自らとボルテリガーを包み込む。
カリプトは今持てるすべての力で、ボルテリガーに挑んだ。
【俺は今、ここに回帰した!!】
エネルギー刃を発生させる箇所を折られる。それでも腕でボルテリガーを殴り、なおも戦う。カリプトはすべてを晒し出す。
今ある力のすべてを絞り出して戦う!
それが生きているということだ。
本音を曝け出し、本心を晒して戦う!
今、カリプトは間違いなく、全身全霊で生きていた!!
【最高だ、ボルテリガー!!】
三門の収束砲をその身に受け、ボルテリガーは吹き飛ばされる。
「ぐっ……うぉおおお!!」
その光の束を手で遮り、完全に防ぎ切るボルテリガーは、オレンジ色のカメラアイを閃かせる。
「ムラクモ中尉!」
「勝って!ムラクモ中尉!」
「負けるなぁあー!」
デルベルトたちの声援が響き渡る。
【喰らえぇーー!!】
一度吐き出した三門の収束砲を、さらに斉射しようとするカリプト。だが、それよりも一歩……ほんの一歩早く、ボルテリガーは上に出ていた。
拳に稲妻を纏わせ、そしてエネルギーをありったけ集める。
これが、最後の一撃だ!!
「サンダァアー!ボルトォー!バンッカァァァァーーーッ!!」
その一撃は、打ち出された収束砲をものともせずに突き進み、ついに三門の収束砲の砲門を押し砕き、カリプトのボディへと突き刺さった。
「バンカークラッシュ」
バキン!その音とともに、ボルテリガーの拳の装甲がスライド。溜め込んでいた稲妻のエネルギーをカリプトに叩き込む。
突き刺さった拳を引き抜く。
バチバチと稲妻のエネルギーを体に迸らせたカリプトは、満足そうな声でつぶやいた。
【見事だ、エーテリアス。いい相棒を見つけたな】
その言葉を最後に、ふっとカリプトは光を失い……その場で仰向けに倒れ伏せたのだった。