リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う!   作:紅乃 晴@小説アカ

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第29話 そして次の戦いへ

 

 

「ニューブリテン基地所属、サイラム・ラブグッド少佐です」

 

そう、鋭く揃えられた敬礼と共に挨拶をしてくれた相手は、ニューブリテン基地でハウンドアーマー機甲部隊の部隊長を務めていたベテランパイロットだった。

 

煤けた外壁を背にしてなお、その姿勢は崩れず、まるでここが戦場であることを忘れさせるほどに整っている。

 

俺も反射的に背筋を伸ばし、敬礼を打って挨拶に答える。

 

「レンネル基地所属、ダン・ムラクモ中尉であります」

 

「そう畏まらないでください。貴方の話はよく聞きます。ヨーロッパ、そして北米の英雄である貴方に敬語を使われると、我々の立つ瀬がありません」

 

柔らかな口調だったが、その奥にある疲労は隠しきれていない。

彼もまた、この基地を巡る地獄を潜り抜けてきた一人だ。

 

彼もニューブリテン基地の襲撃で多くの戦友を失ったばかりだろうに。

 

奪還した基地内では、焼け焦げた格納庫の一角に臨時の机が並べられ、戦死したパイロットや左官クラスの人間の名簿が作られている。

 

名前を書き連ねるペンの音がやけに大きく響き、その横では、仲間の死を悼んで声を押し殺して泣いているパイロットや、無言で遺品をまとめる者たちの姿があった。

 

ほかにも、この地に住んでいた一般市民たちも多くが犠牲になった。

 

顔見知りだった者たちの名前が名簿に並んでいるのを見て、膝をつく者もいる。

 

この地獄と化したニューブリテン基地の有様は、誰の心にも深く刺さっていた。

 

そして、ラブグッド少佐はそんなことを一切悟らせないよう気丈に振る舞っている。

 

声の調子も、視線の置き方も、崩れていにない。

 

そうさせてしまっている俺としては、どうしても申し訳なさが胸に引っかかった。

 

それに、地球軍所属のハウンドアーマー乗りの大半……とくにノルマンディー反抗作戦に参加したパイロットや、その頃から軍属になった人からは敬語を使われることが非常に多い。

 

北米大陸で、リンや部隊に配属された戦友たちと大暴れしていたことは認めるけど、こうやって上官や、明らかに目上の人から敬語で話しかけられると、どうにも落ち着かない。

 

その思いが表情に出ていたのか、ラブグッド少佐は困ったように小さく笑い、しかし視線だけは真っ直ぐにこちらを見据えたまま言葉を続けた。

 

「貴方のような人が万年中尉というのがおかしな話です。貴方ほどの功績があれば大佐……将官になっても不思議じゃないんですが」

 

「まぁ上に嫌われてますからね」

 

軽く肩をすくめて返す。

 

なにせ、レンネル基地の時点でV.L.Tが作った生体兵器扱いまでされてたわけですし。

 

そう思わず言いつつ、おれが横目でハウンドアーマーの整備場に運び込まれたボルガーを見ていると、ラブグッド少佐も同じ方向へ視線を向け、何とも言えない表情を浮かべていた。

 

整備ベイの中央。

 

黒い装甲に覆われたボルガーは、他の機体とは明らかに異質な存在感を放っている。整備するためにやってきた工員たちも、どこか遠慮がちな様子なのは見てとれた。

 

ラブグッド少佐も、特A型V.L.Tとボルテリガーの激闘を目撃した人物だ。

 

デルベルトたちが「地球軍の新型です!」と言い切ってはいたけれど……それで納得する人は少ないだろう。

 

戦いの様子や、戦闘後のユナイト・アウト(分離)を見ている以上、ボルガーがただのハウンドアーマーではないことは、薄々感じているはずだ。

 

なんとなくだが、そのパイロットが俺だったからという部分も、あえて踏み込まない理由の一つになっている気がした。

 

話題を切り替えるように、ラブグッド少佐は視線を戻し、淡々と続ける。

 

「まもなく、レンネル基地からフライテールが戻ってきます。破損したハウンドアーマーはこちらの基地で修理しますよ」

 

「可能なのですか?」

 

思わず聞き返す。

 

破損したハウンドアーマーとは、俺が乗っていた漆黒のレイブンアームズと、リンのスカイブルーカラーのレイブンアームズ。

 

そして、フレッドのアーマライトに……訓練機のレイジングブルだ。

 

前線へ主力配備されたレイジングブルはともかく、第二世代前期のレイブンアームズやアーマライトが実戦配備されているのは北米大陸がほとんどだ。

 

修理部品や拠点も北米に集中している。そんな中、この北米からはるか後方に位置する基地に、修理部品や設備があるというのか?

 

そう疑問をぶつけると、ラブグッド少佐はわずかに胸を張り、自信を滲ませる口調で答えた。

 

「ニューアイルランド基地はハウンドアーマーの点検、修理拠点では南方方面の最大施設です。主力のレイジングブルはもちろん、第二世代前期のレイブンアームズ、アーマライトも修理できます」

 

その言葉には、失われたものを取り戻すための意地のようなものが滲んでいた。

 

部品についても在庫は揃っていて、レイブンアームズで言えば約30機分の組み立て部品がある。

 

レイジングブルは生産設備もあるため問題なく修理できるとのことだ。

 

南方方面の能力を俺は侮っていたようだ。潤沢な支援体制を示してくれたラブグッド少佐に感謝しながら、俺はようやく一息つく。

 

「これで戦力は補充できるな」

 

そう呟いた瞬間、ラブグッド少佐の表情がわずかに曇る。

 

ハウンドアーマーの修理は可能。だが、戦力をレンネル基地へ回す余力はない。それが、この基地の現実だった。

 

「ニューブリテン基地のパイロットもいるのですが……こちらの戦力もズタズタにやられておりまして……」

 

言葉を選びながら、それでも事実だけは濁さずに伝えてくる。

 

「その点は理解してます。ハウンドアーマーの修理だけでも大いな助けとなります」

 

「そう言ってもらえると助かります」

 

短いやり取りの中に、互いの事情と覚悟が滲む。

 

ところで。

 

ラブグッド少佐は一度言葉を切り、周囲を軽く見渡してから、俺に視線を戻した。

 

「昨夜撃破された特A型についてですが、興味深いものがありまして」

 

そう言って、ラブグッド少佐は声を落とし、俺についてくるよう静かに促した。

 

周囲に聞かせる話ではない……そんな空気が滲んでいる。

 

「レンネル基地のカエデ・ガルダリア女史が到着されてから本格的な調査にはなりますが……」

 

案内された先には、簡易的なテントが工作兵によって設営されていた。

 

焼け残った滑走路の端。

 

焦げた金属の匂いがまだ漂う場所に、白布のテントが無理やり押し込まれている。

 

内部では解析用の機器が唸りを上げ、その主電源となる太いケーブルが基地の生きている電源元から引きずられるように伸びていた。

 

仮設ゆえの雑然とした配線。足元には転がる工具、無造作に置かれたデータパッド。

 

念のために防護服を着た作業員たちが忙しなく行き来し、低く抑えた声でやり取りをしている。

 

その中央。

 

ボルテリガーとの戦闘で装甲を砕かれた特A型が、仰向けに倒れたまま鎮座していた。

 

倒れ、沈黙しているだけなのに、それが与える圧迫感はいまだに現場を引き締めているように思える。

 

そして、その残骸を見た俺は、一目見た瞬間に気づいた。

 

「……違う」

 

言葉になる前に、感覚がそれを捉えていた。

 

砕けた装甲の一部が撤去され、内部が露出している。

 

その奥。

 

おそらく作業員が発見したのだろう。周囲には切断された外殻と、無造作に積まれた残骸。

 

「発見時、我々も同じようなリアクションをしましたよ」

 

ラブグッド少佐の声が、わずかに硬くなる。

 

真っ白で、凹凸のない滑らかな特A型の装甲とは、明らかに異質な存在。

 

そこにあったのは、角張った装甲。深い緑色。

各関節部には、機能を示すかのように走る白のライン。

 

人工的に整えられた曲面ではなく、どこか“意志”を感じさせる、設計思想の違う装甲。

 

その姿は、紛れもなく人型だった。

 

特A型より一回り小さいそれが、まるで中に“隠されていた”かのように収まっている。

 

「特A型の中に、こんなものが……」

 

戸惑いを隠しきれないラブグッド少佐の言葉。だが俺は、それに答えることなく、ただそれを見つめていた。

 

知っている。

 

いや、“知っているはず”の何かが、脳の奥で引っかかっている。

 

その確信に近い違和感を辿り、俺は脳内で繋がっている存在へと問いかける。

 

「エーテリアス」

 

呼びかける。

 

だが、返答はすぐには返ってこなかった。

 

沈黙。ただそれは、答えを選んでいる間ではなく、理解が追いついていない沈黙だ。エーテリアス自身も、俺の視覚情報から見えたこの光景に驚いているのだろう。

 

【……私も、このことは知りませんでした】

 

ようやく返ってきた声は、わずかに震えていた。

 

エーテリアスは、この世界に来る以前、ボルテリガーや、それに連なる技術の研究をしていた存在だ。

 

ボルテリガー。

 

それはエーテリアスのようなゼブロイドが、まだ有機体だったころから存在する、V(victory)・ウェポンと呼ばれる存在。

 

その目的も、運用も、多くが謎に包まれている兵器。

 

そして、彼女が研究していたV(victory)・ウェポンは、「ボルガー」と、三つの「V・モジュール」からなる「ボルテリガー」。さらに、その強化ユニットである「A(アルファ)・アーマー」。

 

それだけだ。

 

それ以外の存在については“存在していることすら知らなかった”。

 

だが今、目の前にあるものは違う。

 

特A型……カリプトのボディの内部から見つかった存在。

 

【まさか……】

 

それは、一目見ただけで理解できる。

ボルテリガーに連なる意匠。

そして、技術。

 

エーテリアスの声が、わずかに掠れる。

 

【特A型の素体が……V(victory)・ウェポンだったなんて……】

 

信じられない。そう言外に滲むその言葉に、俺は何も返すことができず、ただ目の前のそれを見つめることしかできなかった。

 

 

 

 

「隊長!ご無事でしたか!」

 

「リン、お前さん……なんでここに来てるんだ」

 

レンネル基地から、破損したハウンドアーマーと必要人員を乗せて蜻蛉返りしてきたフライテール。

滑走路に停止した機体のハッチが開き、次々と人影が降りてくる。

 

その先頭に立っていた相手に、俺は開口一番そう言った。

 

真っ先に降りてきたのは、北米大陸で副隊長を務めていたリン・ターレン大尉。

その後ろに続くように、基地代表としてフレッド、護衛パイロットとして訓練生のカイ、そして技師担当のカエデさん。

 

さらにその奥では、レンネル島の作業員たちがニューブリテン基地の工員と合流し、ハウンドアーマーの荷下ろし作業に追われている。金属音と怒号が入り混じる、慌ただしい光景だ。

 

そして俺は、目の前のリンの様子に、俺は思わず眉をひそめた。

 

骨折しているはずの腕は簡易的なサポーターで済まされ、肋骨の保持具も外れている。

 

どう見ても「安静にしている人間」の姿じゃない。

 

最低でも全治一ヶ月って言われてなかったか?

レンネルでの戦闘から、まだ一週間も経ってないんだぞ?

 

「絶対安静から安静になったので!」

 

「それ、動き回っていいって意味じゃないからな?」

 

ふんす、と胸を張るリン。

 

……ダメだ、反省してない。

 

フレッドに視線を向けると、彼は苦笑しながら肩をすくめるだけだった。

 

ほんとこの子……。

 

俺の言うことは聞くくせに、人の言うことは上官でも聞かないんだから。俺が上から目をつけられてるの、こいつの狂犬ぶりも一因なんじゃないか?

 

そんなことを考えていると、リンはビシッと敬礼を打ち……そのまま、俺の隣にいるレイラへと視線を向けた。

 

途端に、空気が変わる。

 

鋭く細められた目。

明らかに「獲物を見る目」だ。

 

「な、なんですか……」

 

レイラが思わず身構える。

 

リンはじろじろと、上から下まで値踏みするように視線を走らせ、つまらなさそうに鼻を鳴らしてから、ぽつりと呟いた。

 

「隊長の動きに食らいついていけるなんて……アンタ、やるじゃない」

 

……え。うわ。リンが、人を、褒めてる……?

 

怖。

 

そのまま顔に出ていたのか、フレッドに肩を軽く叩かれて我に返る。

 

ああ、うん、そうだな。

 

本人に失礼だ。

 

ここは素直に、成長を祝っておこう。

 

一方、当のレイラも困惑気味に言葉を返す。

 

「え、あ、はぁ……」

 

「でも次は譲らない。隊長の隣は、私だから」

 

リンの目には、冗談ではない確固たる意志が宿っていた。

 

……でも、ごめんなリン。

 

多分俺、レイブンアームズに乗る機会、減ると思う。

 

色々と曇ってたものも晴れたし、今回の作戦でボルガーのポテンシャルの高さも理解できた。まぁ隠密活動は 武器(音声認識)の仕様上できないことは確定しているものの……ボルテリガーがもたらすこの世界の行く末も気になる。

 

それに……たぶんハウンドアーマーに乗ったら、レイラとエーテリアスのダブル音声で文句飛んでくるからな。

 

やかましくてたまったもんじゃない。

 

リンの言葉を受けて、レイラもふっと笑みを浮かべる。

 

「負けませんよ。ダン中尉のパートナーは、私ですから」

 

「そう言ってられるのも……ダン中尉?ねぇ今、ダン中尉って言った?ねぇ!!?」

 

私もまだ名前で呼べてないのに!!そう叫びながらレイラの首根っこを掴んで揺さぶるリン。さっきまでのいい雰囲気はどこへやらだ。

 

「気にするところそこですか!?」

 

そんなリンを必死に引き剥がそうとするレイラ。

 

完全にキャットファイトである。

 

その光景に一同が呆れ返る中、フレッドがため息混じりにリンの首根っこを掴み上げた。

 

「隊長、ご苦労様です」

 

「あ、ああ……来てくれて助かったよ、フレッド」

 

本当に。フレッドがいなかったら、収拾つかなかった。

 

レイラは俺の後ろに隠れるし、リンはそれを見てさらに威嚇するし。こら!リン。お座り!

 

「この子を一人で送ったら、どうなるかわかったものじゃないですから」

 

「ほんとすいません……」

 

監督不行き届きで連名で責任取らされた過去があるんだが、その張本人(リン)が「隊長とお揃いですね!」とか笑ってたの、普通にトラウマなんだよな。こいつ、全然懲りてねぇな。

 

「ムラクモ中尉」

 

荷下ろし作業を見守っていたカエデさんが、こちらに歩み寄ってくると、俺の顔を見て、わずかに息を吐く。安堵、か。仲の良いレイラもボルガーに同乗していたから、相当気を揉ませたらしい。

 

「カエデさんも。来てくれてありがとう」

 

「当然よ。ボルテリガーの件もあるし、特A型のこともあるもの」

 

そっけない口調。

 

「この人、ずっと心配してたんですよ」

 

しかし横からフレッドが余計な一言を添える。

 

それも同時、カエデの顔が一気に真っ赤になり、隣にいたフレッドの肩をポスポス叩き始める。

 

「あぁ、痛い痛い、やめてやめて」

 

「仲良いね、君ら」

 

思わず口から出た本音だった。

 

そんなにレイラのことが心配だったのか。申し訳ないとは思うけど……たぶん、これからも出撃は続く。

 

そのたびに同じ思いをさせることになる。

 

だからこそ。

 

その不安ごと、背負って戦うしかないんだろうな。そんなことを、騒がしい現場の中で、ぼんやりと思った。

 

「テル!」

 

「カイ!」

 

その一方。

 

訓練生であるカイ・ローベルトは、無事だった幼馴染のテルリード、そして同じく訓練生でありライバル視していたカレンとの再会を喜んでいた。

 

「無事でよかった。本当に」

 

安堵を滲ませたカイの言葉。

 

「アタシがついてるから当然よね」

 

そう言って、赤毛を払い上げるカレン。

 

いつも通りの強気な仕草と口調。

 

なにかとカイと張り合う彼女だ。返ってくるのは、売り言葉に買い言葉。そんな素っ気ない応酬になると、誰もが思っていた。

 

「うん、カレンもありがとう。無事で本当に良かった」

 

まっすぐな目で、迷いなく感謝を伝えるカイ。

 

その言葉に、身構えていたカレンは一瞬言葉を失い、拍子抜けしたように、ぎこちなく応じることしかできなかった。

 

「え、あ……うん。どういたしまして」

 

調子が狂う。

 

けれど、どこか悪くない。そんな空気が、ほんの一瞬だけ流れた。

 

そこへ訓練部隊の教官であり、彼らの指揮官でもあるデルベルトが歩み寄り、申し訳なさそうに口を開く。

 

「すまないな。こんな形で実戦に巻き込んでしまって」

 

「いえ、そんな……自分は……」

 

カレンが言葉を返す。

 

だが、その隣でテルリードは口を閉ざしていた。確かに、自分たちはあの平原で、この島で、実戦に加わった。

 

だが、戦いの中心にいたのはダン・ムラクモとレイラ・ストーム、そして、あのボルテリガーだ。

 

そんな中で自分は、何をした?

 

戦ったのか?

 

それとも、ただ生き残っただけなのか。

 

胸の奥に残るのは、達成感ではなく、拭いきれない、空白のような感覚だった。

 

「ムラクモ中尉の戦いを前に……何もできませんでしたから」

 

その言葉に滲んだのは、悔しさか。それとも、生き残った自分への惨めさか。それは本人にも、わからない。

 

デルベルトは何も問わず、ただ静かにテルリードの肩を叩いた。

 

「気にするな。……アレは、そういう類のものだ。割り切れ」

 

「……」

 

言葉は短いが、それで十分だった。

続けて、カレンも口を開く。

 

「アレと張り合おうって思えるだけでも上等よ」

 

それは慰めではなく、率直な評価だった。

カレン自身も感じていた。

合体したボルテリガーの力は、もはや別次元だと。

 

あれを見てなお悔しさを抱ける……それ自体が、普通ではない。

 

「……」

 

テルリードは何も言わなかったが、わずかに顔を上げた。その目には、まだ火が消えていなかった。

 

そんな再会の空気を背に、滑走路に立つ俺のもとへ、フレッドが歩み寄ってくる。

 

風が強い。焼けたコンクリートの匂いと、機体の排熱が混じった空気が頬を打つ。

 

「無茶苦茶な計画ではありましたが、基地の奪還には成功しました」

 

一拍、置いて。

 

「……次は、どうするつもりですか?」

 

ニューブリテン基地は取り戻した。

 

だが肝心の北米大陸は、いまだ沈黙したまま。

通信も、増援も、何一つ来ない。

 

ここに留まれば、いずれ物資も戦力も尽きる。

ジリ貧になるのは目に見えている。

 

「決まってるだろ」

 

だからこそ、俺は即答した。

 

ハウンドアーマーの戦力は回復した。

 

パイロットも揃っている。

 

そしてボルガーも使えるとわかった。

 

なら、やることは一つだ。

 

「次はハワイを奪る。カイルア・コナ基地の奪還だ」

 

フレッドの目がわずかに細まる。

 

それが何を意味するのか、理解したからだ。

 

俺たちが進むのはユーラシアへ渡る表ルートじゃない。

 

敵の裏を突く、もう一つの戦線。

 

太平洋を横断し、北米大陸へ上陸する……裏ルートだ。

 

 

 

 

 

 

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