リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う!   作:紅乃 晴@小説アカ

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第六話 雷王 招来

 

 

 

カエデ・ガルダリア。

 

ハイパーリンク、そしてハイパーゲート建設に出資した大貴族……ガルダリア家の血族。

 

かつて彼女は、ただの少女だった。

 

家族に囲まれ、未来を疑いもせず、笑っていられた。そんな、ごく当たり前の幸福の中にいた。

 

だが。

 

そのすべては、V.L.Tの侵攻によって一瞬で奪われた。

 

焼け落ちた屋敷。声を上げる間もなく消えていった家族。血と炎と、理解の及ばない暴力。

 

残されたのは、彼女ひとりだった。

 

生き残り。ガルダリア家最後の血。

その価値ゆえに、彼女は丁重に保護された。

 

だが、その胸の奥で燻っていたものは、そんな扱いで収まるようなものではなかった。

 

家族を奪ったV.L.Tへの復讐。

 

それだけが、彼女を繋ぎ止めていた。

 

そしてソロモン諸島に墜落したUnknown01。

 

正体不明の敵、V.L.Tに対抗する術を持たぬ人類は、その解析にすべてを賭けていた。

 

地球軍はまだ未熟で、寄せ集めで、だが必死だった。その中で、かつてハイパーリンクに出資したガルダリア家への期待は大きかった。

 

そして、見学に訪れたカエデが、それに触れた瞬間。

 

世界が、変わった。

 

脳が焼き切れるような閃光。

 

思考が爆ぜ、記憶でも経験でもない何かが、脳の奥底へと直接叩き込まれる。

 

それは知識ではなかった。

 

もっと原始的で、もっと暴力的な……「理解させられる」何かだった。

 

息が詰まる。だが、止まれない。溢れ出る。

 

存在しないはずの機械工学。

存在しないはずの理論構造。

存在しないはずのエネルギー循環。

 

それらが、彼女の中で完成された形として存在していた。

 

「……作らなきゃ」

 

それは使命だったのか。

それとも、植え付けられた衝動だったのか。

もう、区別はつかなかった。

 

そして、その果てに生まれたのがガルダリア・エンジン。

 

だがそれは、あまりにも歪だった。

 

作り方は分かる。

 

だが、なぜ動くのかが分からない。

 

原因が存在せず、結果だけで成立している存在。

 

それは人類の科学の否定であり、理解の拒絶でもあった。

 

それでも。それは動いた。

 

そして、同時に人を殺した。

 

廃人化現象。

 

ガルダリア・エンジンによる精神汚染。適合しない者の精神崩壊。仮にそれを制御できたとしても、戦場では若いパイロットたちの死体が増え続けた。

 

彼女が作ったものは、確かに人類を救う力を持っていた。

 

だが同時に、確実に、人を壊していた。

 

「……私が、作った」

 

呟いたその言葉は、どこにも届かず、ただ自分の中で反響する。

 

夜ごと、夢を見る。

 

焼ける。

潰れる。

引き裂かれる。

ばらばらになって、壊れて、叫んで……助けを求める声。

 

届かない手。途切れる音。

 

……そして、最後は消える。

 

何度も、何度も、何度も。

 

まるで終わらない記録の再生のように、同じ光景が繰り返される。

 

知らない誰か。

見たこともない兵士。

 

けれど、その全員が、自分が作り出した未来を辿っている。

 

「……お……え゛ぇ……」

 

起きるたびに喉が痙攣する。呼吸がうまくできない。胃の奥から何かがせり上がってくるのに、吐き出すことすらできない。

 

逃げ場がない。

 

目を閉じても、そこにいる。

耳を塞いでも、聞こえてくる。

忘れることも、壊すこともできない。

 

全部、自分のせいだ。

 

その事実に。カエデ・ガルダリアという存在は、耐えられなかった。

 

だから彼女は、逃げた。

 

考えることをやめた。

 

作ることをやめた。

 

関わることをやめた。

 

第二世代ハウンドアーマー開発チームから外され、レンネル基地へ。

 

それは半ば幽閉であったが、彼女にとってはその罰はあまりに軽すぎた。

 

何も作らない。何も関わらない。何も残さない。

そうすれば、もう誰も死なない。

 

そう、思っていた。

思い込もうとしていた。

 

 

 

 

「なぜ、貴方がそれに乗っているの……!どうして!」

 

抑えきれない声が、スピーカー越しに溢れ出る。

 

「カエデさん……」

 

隣にいるレイラが心配そうに狼狽えているカエデに寄り添うが、それにも気づかずにカエデはマイクに向かって悲鳴のような声を上げた。

 

「戦いから遠ざかったはずの貴方が、どうしてそれに乗って戦うの!?」

 

震える。それな怒りなのか、恐怖なのか、自分でも分からない。

 

「私は……!」

 

言葉が詰まる。

だが、それでも止まらない。

 

「私は、貴方たちのようなパイロットを……死地に送るものを作ってしまったのに……!」

 

吐き出すように叫ぶ。

 

それは告白であり、懺悔であり、そして拒絶だった。

 

「どうして……どうして、戦えるの……!」

 

見ないようにしてきた。

関わらないようにもしてきた。

思い出さないように、考えないように、全部、全部、押し込めてきた。

 

けど。それでも消えない。

 

逃げても、逃げても、逃げても。

 

それは、離れない。

 

自分が犯した罪は。

自分が作り出した未来は。

 

影のように張り付き、息をするたびにすぐ後ろで囁く。

 

お前がやったことだ、と。

 

「だから……私は……」

 

その先を、言葉にしようとして、できなかった。

 

言ってしまえば、完全に終わる気がした。

 

ここで逃げたままの自分を認めてしまえば、もう二度と戻れなくなる気がした。

 

だから……。

 

「カエデ女史。それでも俺は……ハウンドアーマーのパイロットだ」

 

轟音がその思考を切り裂く。

 

ミサイルを海面へ叩きつけるように躱しながら、Unknown01の中でダンは言った。

 

その声には、迷いがなかった。

 

「俺は守るために戦ってきた。それは今も……これからも変わらない」

 

その言葉は、あまりにも真っ直ぐで。

 

あまりにも、残酷だった。

 

「だから、コイツで戦えるなら俺は……戦う。それだけだ!」

 

どうして。

 

どうしてそんな顔で言えるの。

 

壊れることも、失うことも、全部知っているはずなのに。

 

それでも、前に進むのか。

 

稲妻が走る。

 

Unknown01がA型の懐へと飛び込み、その拳が敵の頭部を打ち砕く。

 

鈍い音。

 

変形する金属。

 

それは確かな現実で……ようやく気づいた。

 

《ムラクモ中尉。その機体は特別よ》

 

震える声で、それでも言葉を紡ぐ。

 

《ハウンドアーマーとは違う〝何か〟を持っている。そして……貴方は選ばれた》

 

彼は……ダン・ムラクモは選ばれた。

 

自分で言ったその言葉が、胸に刺さる。

 

かつて、自分もそうだった。

選ばれてしまった側だった。

 

だが、今は違う。

 

今度は、自分の意思で向き合う。

逃げないし、背けない。

壊れることも、救うことも全部、引き受ける。

 

だから……!

 

 

 

 

《ムラクモ中尉!壊れたら私が直す!だから思う存分にやって!》

 

ユナイト・シグナル。

 

そんなシステム……機能があると言うことも知らないし、第一どうやって起動するのかもわからない。え、音声認識?そんな機能がハウンドアーマーにあるんですか。

 

だが……今の装備や性能のままではA型に勝てるイメージはできない。A型を撃破できなければ……南アタリア基地は確実に破壊される。

 

そうなれば、モニター越しに見えるカエデ女史や、ストーム少尉も、挨拶を交わした基地の人も……そして俺も死ぬ。

 

「アルたちにまだ文句の一つも言えてないからな……死ぬわけにはいかないさ」

 

それに言っただろう。

 

俺は……ボルトボックスの箱推しだと。

 

たとえそれがモブキャラであろうと、この世界で生きようとしている人を、俺は簡単に見捨てない。

 

見捨てずに足掻いたから、今こうやって……ここにいる。だから、最後まで足掻き続けるままよ!

 

「よし、やってやる!!」

 

そのままコンソールに光りが灯る先を見据え、俺は勢いのままそう叫んでスロットルレバーを後ろへ一気に下げた。その瞬間、コンソールで輝いていた光が一閃となり、俺の額を突く。

 

「ユナイト・コネクトォオオ!!」

 

あれ、どうして俺は……こんな言葉を知ってるんだ?

 

それにやり方も。

 

そんな疑問が脳内に過るが、それら疑問や懸念を一気に吹き飛ばす事象が起ころうとしていた。

 

まず変化があったのはハイパーゲート。

 

地球と月の中間点にあるゲートは、今は人類の手から離れて自律制御状態で宇宙を漂っている。

 

人類にできることはゲートのデータを確認し、監視し続けることだけだったのだが、静寂であったハイパーゲートから突如とした高エネルギー反応が検出されたのだ。

 

《ハイパーゲートからエネルギー反応!……早い!?すぐに出ます!!》

 

緑光を煌めかせ起動すると、すぐさま稲妻が迸るワームホールと化したハイパーゲートから三つの影が飛び出してきた。

 

凄まじい速さでゲートを抜けた三機は、そのまま大気圏を貫き、真っ直ぐにレンネル基地へと飛来する。

 

三角のような編隊を組んで飛んできた機体はその姿を鮮明に表した。

 

ファイター型、ドリル型、そしてタンク型の三つのV.L.Tモジュール。

 

A型の気が逸れている内に、Unknown01が空へと飛翔した。

 

ハイパーゲートからV.L.Tの勢力が現れた日。

 

レンネル基地に墜落した謎の機体。

 

Unknown01。

 

人類がそれを解析することによってオーバーテクノロジーを手にし、そしてV.L.Tに対抗しうる機体、ハウンドアーマーを作り上げた。

 

だが、Unknown01は目覚めなかった。

 

技術のみを地球側へと与え、機体は深く眠りについていたのだ。

 

本来ならばV.L.Tがレンネル基地を壊滅させ、このUnknown01はV.L.Tに奪取され、地球側へは二度と戻れない結末を辿っていた。

 

 

 

だが、〝今回は間に合った〟。

 

 

 

 

【ボルガー・ユナイト!!セット、オン!!】

 

V.L.Tモジュールの中央に飛んだUnknown01。

 

その本当の名は、ボルガー。

 

三機のV.L.Tモジュールに積まれたガルダリア・ブースターが強力な力場を周囲に展開する。

 

それはA型V.L.Tすらも怯ませるフィールドであり、その内部では収束砲ですら無効化されるのだ。

 

【はぁあああ!!】

 

気合い一閃と共にボルガーを中核に三機のボルトモジュールが同調する。

 

まずはファイター型のモジュール、「ファイアーボルト」が変形し、ボルガーの上半身へと接続。

 

【ファイアーボルト、セット】

 

ボルガーの両肩が開き、コネクタユニットと接合されることで次の合体へと移行する。

 

タンク型のモジュール、「グランドボルト」が折り畳まれたボルガーの脚部へとドッキング。

 

タンクは二分割するように変形し、その姿は巨大な脚と化した。

 

【グランドボルト、セット】

 

最後に腕部にドッキングしたのがドリル型のモジュール「サンダーボルト」。

 

ドリルが折り畳まれて変形すると、その姿は腕となった。肘部から突き出したドリルはパーツを展開することによりトンファーのような武装へと変形することも可能だ。

 

【サンダーボルト、セット】

 

ボルガー。

 

ファイアーボルト。

 

グランドボルト。

 

サンダーボルト。

 

【ボルトモジュール、ドッキングオールクリア。ボルテリガー、起動します】

 

全てのドッキングが完成し、ボルガーのガルダリア・ドライブと、三基のガルダリア・ブースターの波長が同期することで、完全なる【ボルテリガー】が完成したのだ!

 

 

 

【雷王招来!!ボルッ!テリッ!ガァアアアアーーー!!!】

 

 

 

 

ここに、一人の勇者が誕生した。

 

永劫に続く二つの世界の悲しみと痛みを断ち切る勇者。

 

その名は、雷王……ボルテリガー!!

 

 

 

 

 




カエデ「それは知らなかった」
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