リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う!   作:紅乃 晴@小説アカ

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第7話 勇者とは心で操縦するものだ!

 

 

リアル系ロボットの世界に転生したと思ってたら勇者ロボのパイロットになってました。

 

状況説明終わり。

 

じゃねぇええええ!!

 

「なんだよ、ボルテリガーって!!!!」

 

え、なに?これ……なに?

 

ボルトボックスってリアルロボット路線のアクションゲームだったよな!?バチバチのミリタリー要素満載のロボットゲームだったよな!?

 

なんで勇者ロボに鞍替えしてるの?

 

え?ハウンドアーマーってもしかして勇者シリーズだった?

 

機体が紙装甲すぎて簡単にズタズタにされたり。パイロットが捻り潰されてモニターが鮮血に染まったり。助けたパイロットの下半身がなくなっていて既に息絶えていた話とか。母親を呼びながら炎に焼かれて死んでゆくとか。ズタボロにされるシーンとかあるんですけど……。

 

ボルトボックスというゲームはシリアス路線のリアルロボットのはずなのに……なぜ俺は勇者シリーズのナンバリングを飾れそうな機体に乗っているんだ!?

 

【それは貴方が自ら掴み取ったからです】

 

声がコクピットの中に……あれ?と言うかコクピットも変わってる……スロットルやフットペダルが無くなっていて、両手には手首まで覆うような機材が繋がっている。え、俺の体どうなってるの?半人半機械になってたりするわけ?

 

【安心してください。貴方は人間ですよ】

 

そう答えるコクピットの声……女性のような柔らかな印象があるその声は、俺がまだ人間であると言うことを強く肯定してくれた。

 

よかった、まだ「ナニカサレタ」ということではない。

 

それに、この感覚というか……脳内に直接イメージを叩き込まれるような感覚を、俺は知っているぞ……。

 

この世界に来てからは体験してないが、モニターの前でこのゲームをプレイしていた時に……。

 

ゲーム難易度をノーマルにして、初めてプレイした時。

 

俺の操作する主人公は、ナノマシンを投与されていた。人の思考力を補助し、何をするのが最適なのかを思考として伝達してくれる……付与される機体アシストの感覚に、今自分が置かれている状況が酷似していたのだ。

 

ナノマシンによる機体制御統合技術……通称、スウィース【正式名称、S.W.I.S(Solid Wave Interface System) 】は、ナノマシンを介してパイロットとハウンドアーマーを接続し、機体制御AI、ガルダリア・エンジン、各種センサーを高速通信ネットワークとして統合するシステムである。

 

このシステムの中核機能として、パイロットの体内から発せられる電気パルスを読み取り、操縦入力として機体へ反映する D.C.S(ダイレクト・コントロール・システム) が存在する。

 

D.C.Sによりハウンドアーマーは従来の操縦桿操作を超える応答速度を獲得した。

そのほかにも、機体制御におけるアシストや、弾道予測、危険察知能力の底上げにも貢献している。

 

ナノマシンは単に人体に投与されているわけじゃなく、制御チップも首に打ち込む仕組みになっていて、そのチップ内に戦闘で得られたデータをロギング、高度なデータベースにすることでパイロットスキルを平均化するという試みもされているわけだ。

 

つまり、パイロットが求めるモノ、作戦時に必要となる情報、武装知識、戦闘教練などもデータベースから最適なものを選び、チップからナノマシンを経由して知識として脳にダウンロードすることができるのだ。

 

例えて言うなら、ゲームのチュートリアルなどでよく表示される機体操作法の解説バー……というのがゼロタイムで表示され、半ば強制的に〝理解させられる〟と言った感覚に近い。

 

【私の名はエーテリアス。貴方が乗るボルテリガーと共にあるゼブロイドです】

 

ゼブロイド……エーテリアス?

 

俺はナノマシンもチップも投与していないのに……なぜ、そう心の中で問い直したと同時、避けてという警告がゾワリと背筋を撫でた。

 

その直感にも似た感覚に従い操作レバーを引くと、俺が乗る勇者ロボ……ボルテリガーはひらりと機体を翻した。

 

脇を掠めたのはB型による位相収束砲。

 

普通のハウンドアーマーだった場合、収束砲の餌食になっている。

 

敵は更に収束砲を放ってくるが、そのことごとくをボルテリガーは躱してゆく。

 

この機体……見た目は大きいが、加速性能、旋回性、そして操作性が異常だ。それでいてコクピットにいる俺にはGの負荷が一切ない。

 

背中に備わるファイアボルトのスラスターが閃光を放ち、一気に機体を空へと押し上げてくれる。

 

それだけでも、この機体のポテンシャルが既存のハウンドアーマーを遥かに凌駕していると言うことがわかった。

 

【今は目の前の敵に集中を。このボルテリガーと貴方がいれば……負けることはありません】

 

そんなことを言われても、こっちはなにも納得できていないんだけど……!?そう思った俺の疑問はすぐに理解させられることになった。

 

【ボルテリガー。なぜ、有機生命体側につく!!】

 

そんな声が耳に響く。

 

そしてその声の発信源は、目の前にいるA型V.L.Tだった。

 

通信回線も接触回線もない……というか、V.L.Tは自律AIで動く機械で……そこには人格やパイロットも存在しないはずだ。

 

なのに、なぜこうやって声が聞こえる?

 

疑問は溢れてくるばかりだ。

 

この機体はなんだ?

 

俺に語りかけてくる女性の声はなんだ?

 

なぜ、A型V.L.Tと話をできる。

 

こいつらは……意思疎通が出来なかったが為に、人類と戦争状態になったんじゃないか?

 

【やはり貴方達に何を言っても無駄なようですね。貴方が私を強制連行しようとしているのも……回帰計画の邪魔になるから。ですが、私は貴方に捕らえられるわけにはいかない!】

 

【反乱分子の分際で……貴様が人類に手を貸したせいで計画は大幅に遅れているのだ!】

 

【その計画こそが、過ちだと言うのです!回帰できないようにしたのは、他ならぬ私たち自身。自らの業を平和に暮らす人々に押し付けることが……それはいけないことなのです!】

 

【ほざけ、裏切り者めが!!】

 

いや、ぜんぜん話についていけないし、戦ってるの俺なんですけどぉおお!?

 

放たれた収束砲を躱すが執拗に追ってくるC型の群れ!

 

反射的に機体を操ろうとすると、どう言う操作をすれば敵を撃退できるかと言う情報が脳に強制的にダウンロードされてきて……おえええ!吐きそう!気持ち悪い!ナノマシン投与状態だとこうなるのかよ!気持ち悪っ!拒否しててよかった!

 

【ダン・ムラクモ様。申し訳ございません。貴方を……戦いの場に巻き込むことになってしまいました。私の目的はいずれ必ずお話しします。まずは目の前の敵を倒すことを先決してください!】

 

めちゃくちゃ勝手なことを言ってくれるな!?俺は何も説明されてないし、納得もしてねーぞ!!

 

【しかし、貴方が負ければ……結局は何からも逃れることはできません!貴方が救うのです!全てを!】

 

女性の声が響く。

 

俺がA型に負ける、すなわち「死」と言うこと。

 

死ねば、何もかも終わる。

 

これまでがむしゃらに戦ってきたことも、俺が守れた命も、守れなかった命を忘れないことも……。

 

《私の代わりに……お前が救え》

 

この世界に来る直前に聞いた……その言葉が頭をよぎる。

 

あぁ、たしかに混乱も戸惑いも困惑もある。

 

この機体のことも何も知らない。

 

ナノマシンを投与していないのに何故、ナノマシン補助を受けたようなパフォーマンスができるのかと言うことも。

 

目の前のV.L.Tと声の主がどう言った関係なのかも。わからないことだらけだ。

 

……だが、ボルトボックスでの敗北は死だ。

 

ならば、俺が取るべき行動に迷いはない。

 

俺の目的は、常に一貫している。

 

俺のできる中で、この世界の人を守る。生き延びさせていくことだけだ。

 

「今は何も聞かないでやる……。とにかく今は、俺に力を貸せ!!ボルテリガァー!!」

 

【来ます!その手に勝利を!】

 

武装は何がある!

 

そう考えた瞬間、この機体に備わる武装の全てが把握できた。

 

うお、凄まじいデータ速度だぁ……俺の脳、焼ききれなきゃないいんだけど……ええい、迷ってる暇はない!!

 

「行くぞ!!ガルダリア・フレアァア!!」

 

右腕の操縦桿を前へと突き出すと、それに連動してボルテリガーの右腕に備わる発射口からオレンジの極光が放たれる。

 

ボルガーの動力源である「ガルダリア・ドライブ」から生まれるエネルギーは、合体したボルトモジュールに内蔵された「ガルダリア・ブースター」で増強され、敵と同じ位相収束砲となったのだ。

 

ガルダリア・フレアは放たれたB型の収束砲と激突し、本来ならば相殺すらできないはずの収束砲を打ち破った。

 

【ボルテリガー……!我々と同じ技術を使う忌々しい機体め!ここで葬ってくれる!!】

 

収束砲では決着がつかないと判断したA型は増産したC型、そしてB型を展開し、一気に包囲してくる。

 

数による蹂躙、格闘戦か……!俺はすぐに対抗策を展開した。

 

「トンファァアアーードリルッ!!」

 

ボルテリガーの肘部に備わるドリルがスライドし、下部のパーツごと両腕に備わる。

 

メカニカルな音と共に突き出した取手を握り締めれば、見た目は完全にトンファーで、先端には肘部にあったドリルが装備されている近接戦闘用武器だ。

 

しかも先端部のドリルにはガルダリア・ブースターから供給される力場が発生している。

 

「スパイラルブレイカァアアー!!」

 

腕を薙ぐように一閃。すると取り囲もうとしていたC型がまるで薄紙を裂くように引き裂かれ、次々と爆発していく。

 

【馬鹿な……そんなこけ脅し如きに……!?】

 

数にものを合わせて蹂躙するはずだった敵は、あっけなく包囲網を突破したボルテリガーに怯む。その隙を見逃しはしない!

 

「うおおおりゃああああーーっ!!!」

 

包囲網を突破し、狼狽えたA型の懐に飛び込む。更に空いた片腕で殴りつける。するとドリルがまとった力場が作用したのか、C型射出口が粉々に砕け散った。

 

【ぬおおおお!?】

 

「食らえ!!ドリルゥゥ……スマッシャァアアーッ!!」

 

そのままトンファードリルで、A型を殴り抜け、凄まじい衝撃音とドリルが敵の装甲を抉る音が周囲に響き渡る。力場とドリルの回転エネルギーによって周囲にいたB型や、防衛を担っていたC型もエネルギー余波に巻き込まれて爆発していく。

 

あ、圧倒的じゃないか……!

 

追撃をするべく、もう片方のトンファードリルを大きく振りかぶった瞬間。

 

【この……人間風情がぁあああ!!】

 

生き残っていたB型の位相収束砲がコクピットの視界を覆い尽くした。

 

 

 

 

ほぼゼロ距離で放たれた位相収束砲に晒されたボルテリガー。

 

その一部始終を見ていた管制室にいた誰もが驚愕で声を上げることすらできなかった。

 

位相収束砲は絶対的な力だ。

 

V.L.Tの科学力は人類をはるかに上回っていて、ガルダリア・エンジンがあるとはいえ、あの収束砲を完全に防ぐ手段は存在しない。

 

そんな収束砲を真正面、しかもゼロ距離から受ければどうなるか想像するまでもない。機体は分子レベルで分解され、跡形もなく消滅する。

 

そうなることが、この世界の常識だった。

 

誰もが静まり返る中、管制室のドアが勢いよく開け放たれる。いきなりの音に驚いたように司令官を除く全員が振り返ると、そこには肩で息をするレイラ・ストーム少尉と、カエデ・ガルダリアが立っていた。

 

「し、司令官!!ムラクモ中尉が」

 

「あの機体はどうなったの!?」

 

彼らが繋いでいた映像通信は、Unknown01がボルテリガーに合体した時から音信不通。

 

管制室からならモニタリングができると、カエデに連れられてレイラも大急ぎでやってきたのだ。確かに司令室には、基地周辺を定期監視する高高度ドローンから送られてくる映像が管制室のメインモニターに映し出されていた。

 

「……グランドブレストッ!!」

 

そう声が響いた瞬間、眩い光が薄れてゆき……ボルテリガーの前面に強固なシールドが展開される姿が映し出される。

 

グランドブレスト。

 

ガルダリア・ブースターから得られる高密度のエネルギーを集約し、更に前腕部の増幅機から一気に放出させることで、一時的なシールドを生じさせる防御装備。

 

その防御性は、これまでいかなる手段でも阻止は不可能と言われた収束砲を完全に無効化するほどだった。

 

結果、ボルテリガーは放たれた位相収束砲を無傷で耐えきったのだ。

 

その光景に誰もが声を発することができなかった。全くの無傷のボルテリガーに、A型V.L.Tも困惑しているように見えた。

 

動じることなく向き合うボルテリガー、それに恐れや戸惑いを浮かべるA型。その対比を見るだけで勝負の結末は明らかだった。

 

「あれが……Unknown01の真の力だというのか……」

 

「司令官。あれが……この地に墜落してきた存在なんですか?」

 

レイラは薄々勘づいていることがあった。基地の全員が仕事に不真面目なフリをしながら何かを隠しているということを。

 

司令官は「まぁ、知るべきことでもなかったからね」とレイラに目線を向けずにそう言った。

 

「俺たちも……あの機体が動くなんて思ってなかったんだ。あんな姿になることも……。だけど……動き出した。もう誰にも止められない」

 

ただの研究用だった残骸が息を吹き返してしまった。

 

それも圧倒的な力を携えて。

 

怯えるA型に拳を構えるボルテリガー。

 

その機体も、そしてそれを操る資格を持つものも、これからきっと苦難の道を歩むことになるのだろう。

 

そしてそれは……おそらく自分達も。

 

言いようのない確信めいた何かを感じながら、その場にいる全員は終局を迎えようとしている戦いに目を向けるのだった。

 

 

 

 

グランドモジュールに備わるガルダリア・ブースター。

 

最大限利用して生じさせるグランドブレスト。

 

反重力フィールドを防衛に展開した技であり、相手にぶつけることで攻撃技にも転用できるそれは、文字通りゼロ距離にきたA型を押し返した。

 

【な、何故だ!?その機体のどこに、それほどのパワーが!?】

 

困惑の声を放つA型。

 

グランドブレストの影響で収束砲も破壊された。あとは近づいて近接攻撃を打ち込み、沈めるだけだ。

 

【今です、ダン・ムラクモ様!トドメを!!】

 

「はぁあああーーっ!!」

 

エーテリアスの後押しのような声と共に、ボルテリガーは背部のスラスターを全開にし、構えた拳のまま、一気に懐へと飛び込む。

 

だが、相手もまだ諦めてはいなかった。

 

【馬鹿め、まだこちらには手があるぞ!!】

 

A型V.L.Tの機体前方から、エネルギー刃が展開される。

 

ちょっとまて!そんな武器、A型にあるなんて聞いてないぞ!?

 

【拠点制圧を目的とした我に、近接武器があるはずがないと油断したな!!】

 

ボルテリガーが超接近戦を挑んできた瞬間、A型の声の主は雄叫びを上げる。自ら突き進んだ結果、エネルギー刃によってボルテリガーは貫かれる!

 

「なら、それごと打ち砕く!!」

 

エネルギー刃を展開したA型へ、拳を放つ。

 

放つ間際に腕は前腕から高速回転をし始めて、稲妻を纏う。

 

「いっけぇええーー!!」

 

その一撃は、敵の切り札であったエネルギー刃を砕き、発生装置を粉砕し、そして腕を貫いたまま胴体へと致命の一撃となって達した。

 

「サンダーボルトォオ……バンカァアーー!!」

 

ガルダリア・ブースターから放出された力場が稲妻となる。

 

更に回転も加わった一撃はA型の胴体を軽々と食い破った。

 

拳で貫かれたA型は耐えきれずに火花を散らし、やがて発生した火は大きく広がっていく。

 

【エーテリアス!なぜ、理解しない!回帰こそが、我らの……ぐあああああっ!!】

 

そしてボルテリガーのコクピットと、そこにいるはずのエーテリアスにしか聞こえない断末魔が響き渡った。

 

A型は青空の下で爆発し、姿を消した。

 

爆炎を切り裂き、空に舞ったボルテリガー。

 

 

 

その日、本来なら動くはずのなかった歯車が噛み合わさり……動き出した。

 

 

 

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