リアル系ロボットゲームなのに世界観が違う!   作:紅乃 晴@小説アカ

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第8話 拘束されるのはパイロットによくあること

 

 

ボルトボックス。

 

そのメインストーリーが開始される2355年は地球とV.L.Tが全面戦争へと突入して5年後の世界が舞台だ。

 

各地で奮戦する地球軍だが、その戦果は日に日に悪い方向へと流れつつあった。

 

人類が窮地に立たされるきっかけは、最大の基地であった北米に位置するサスカチュワン宇宙基地が特A型V.L.Tに奇襲されたことにある。

 

この宇宙基地はハウンドアーマーの開発、生産を担う重要拠点であり、V.L.Tは的確に人類が対抗する力の源を叩きにきたのだ。

 

第二世代型後期型であるハウンドアーマー「レイジングブル」が合計106機。

 

それに加え、防衛施設、三師団の艦隊、艦上戦闘機が迎撃に出たが……たった一機の特A型の前に迎撃に出た戦力は殲滅され、基地もその機能を根こそぎ奪われる結果となる。

 

そのサスカチュワン宇宙基地の襲撃を皮切りに各地に点在する地球軍拠点に特A型が襲来。

 

その電撃的な奇襲と、特A型による強大な戦力は瞬く間のうちに地球軍拠点を攻略。

 

その大部分が破壊し尽くされ、地球軍……ひいては人類全体が崖っぷちに追い詰められることになった。

 

その絶望的な状況の中。

 

ソロモン諸島にあるレンネル基地まで後退した主人公を筆頭に、訓練生上がりのパイロットたちが頭角を表し始める。

 

「リトルウイング隊」と呼ばれる訓練生で構成された小隊は、まずニューブリテン島基地を制圧していた特A型V.L.Tを撃破。

 

その後、残存兵力を再集結し、ハワイ諸島に位置するカイルア・コナ海上基地へ夜間奇襲を仕掛け同基地を監視していた特A型V.L.Tを撃破し、基地を奪還する。

 

そのまま状況が好転し、北米大陸へと上陸した主人公は多大な犠牲を払いながらもロサンゼルス基地を奪還。

 

その後、アメリカ大陸を横断しつつ、点在する拠点を制圧している特A型V.L.Tを撃破し……最終的にヨーロッパ方面に存在するV.L.Tの最終兵器との戦いに挑む。

 

それが、大まかなメインストーリーの全容である。

 

ここで一つ重要なことは、主人公たちが反撃の狼煙を上げたのが、レンネル基地からということ。

 

そして、その基地は主人公たちが逃げ込んだ時点で破壊され、無人となっていたということだ。

 

レンネル基地の機能が回復し始めるのは、ニューブリテン島基地を奪還してから。技術チームは前線で拠点を奪還するために戦う主人公たちの為にレンネル島に残り、レンネル基地のウェポンベイや、機体修繕工廠が復旧し始め、主人公たちの武装強化や、カスタムに対応すると言う流れだ。

 

ただ、主人公たちが逃げ込んでくるまで、レンネル基地には物資が残る基地倉庫だけがあったというくらい、破壊され尽くした基地だった。

 

そこでプレイヤーのネットワークでひとつの疑問が浮かんだ。

 

なぜ、V.L.Tは北米大陸やハワイ諸島、ニューブリテン島の奇襲作戦を展開する前に、わざわざソロモン諸島のレンネル基地を破壊したのか?

 

それもまた、ボルトボックスの中にある謎の一つであった。

 

軍事面での考察では、反撃を許さないために地球軍の兵站を担う後方基地を破壊してから奇襲に移ったという意見も散見されたが、レンネル基地がいつ、どのタイミングで破壊されたかは明言はされていないし、もっと言えば日本に位置する在籍軍基地は全く被害を受けていないという事実もある。

 

そのため、多くのプレイヤーの認識はこうだ。

 

【V.L.Tは何らかの理由でレンネル基地を破壊しなければならなかったのではないか……?】

 

結局のところ、真相はV.L.Tの正体と同じく運営のみが知る闇の中だ。

 

その後、追加コンテンツの発表や、100対100の追加要素などが次々と発表され、攻略、解説サイトなどがそれらの情報で埋め尽くされたことにより、レンネル基地がなぜ破壊されたかということに言及するプレイヤーはほぼ居なくなり……その疑問は忘れ去られてゆくのだった……。

 

 

 

「隊長ぉ……せっかく休暇と思って色々手回ししたのに……なにやってるんですか」

 

リアル系パイロットだったはずの俺、勇者ロボのパイロットに選ばれた上に……敵勢力の人間かと疑われ執行部に尋問されているという件について。

 

あの、何か質問ある?

 

そうふざけてみたが、今回の一件についての調査委員会の一員としてやってきたフレデリック・スミス少佐(愛称はフレッド)はジト目で俺を睨みつけてくる。

 

「ごめんなぁ、フレッド。まさか俺もこうなるとは思ってなかったんだけどねぇ、ハッハッハッ」

 

「ほんとに笑い事じゃないんですよ……!!」

 

地の底にでも届きそうな深いため息をついてフレッドは頭を抱えていた。

 

フレデリック・スミス。

 

彼は、かつてノルマンディー反抗作戦において、【ミラクル・イーグルス】と呼ばれた5人のパイロットで編成された小隊、「イーグルス隊」のメンバーであり……つまり、元俺の部下である。

 

イーグルス隊は、小隊長はダン・ムラクモ。副隊長にアーノルド・ゼノン、そのほか遊撃手や支援機、狙撃手と、計5名で構成された小隊。

 

ノルマンディー反抗作戦におけるA型撃破は、この5名のチームワークによって成されたと言われている。

 

全滅必至の作戦、ゲームでは損耗率99%だった戦場から3割を生きて還す活躍を見せた……と、後世に語り継がれているらしい。

 

小隊長であるダン・ムラクモが突出した動きと撃破スコアを叩き出し、隊のメンバーは「自分は何もやってない、あのアホな隊長が全部自分でやった」という認識なのだが……当人が役職や出世に興味を示さず、英雄と言われながら誰もが嫌がるような任務に赴いては敵を倒して帰ってくるというバーバリアンみたいな生き方をしている。

 

それゆえに、それぞれのメンバーは機を見てパイロットを引退し、前線で好き勝手暴れる隊長の尻拭いをする為に役職についたというのが実情であった。

 

「隊長。加減という言葉を覚えてください。方々に頭を下げて鎮火するのも限度があります」

 

万年中尉である俺にそういうフレッド。

 

側から見れば「逆なんじゃね?」と思われかねない光景だが、フレッドの鬼気迫る表情で「このパイロットの尋問をする」という宣言の元、監視カメラと録音を中断させているから何ら問題はない。

 

……アルやフレッド、他のメンバーもそうだけど俺が役職や階級に応じた話し方をするとスゲェ嫌そうな顔をするんだよな……。

 

俺とは違って出世したんだから、立場もあるだろ?って言ったら「これだから隊長は……」って呆れられるし。

 

さて、話を戻そう。

 

フレッドが言うには、俺が乗り込んだ「Unknown01」というのは、軍の禁則事項の一つらしい。

 

この禁則事項というのがポイントだ。

 

軍の上層部はレンネル島に墜落した「Unknown01」について軍部の最高機密として扱っていたようだ。

 

その割にはレンネル基地自体が防衛網がザルだし、機密施設にも思えなかったんだけど?

 

「戦況が変化したのもありますし。ハウンドアーマーの開発が、レンネル開発局から他に移譲されたのも大きな理由になりますね」

 

フレッド曰く、開発局を移行したばかりの頃は、それなり機密管理をしていたらしいが……

 

①Unknown01が起動しなかったこと。

②計画を前倒しした第二世代機が完成したこと。

③ボルトの侵攻が激しくなりふり構っていられなかったこと。

 

それら要素がうまく重なり合ったことと、ガルダリア・エンジンと第一世代ハウンドアーマーが開発されたあと、レンネル基地の価値は低下した。

 

そもそも、ハウンドアーマー開発が各企業に移譲されたことや、ガルダリア・エンジンという完成された動力源ができた以上、レンネル基地で出来ることも残されていなかったそうだ。

 

ガルダリア・エンジンの生みの親である、カエデ・ガルダリアも、新たな技術を作り出すことに消極的だった点もあったことから、レンネル基地そのものを特別機密扱いする必要性がなくなったとも言える。

 

本来なら、Unknown01は別の研究機関に運び込まれて更なる解析とかされそうなものだが、ノルマンディー反抗作戦で撃破したA型の残骸調査が優先されたということもあり、そんな隙間がなかったという時勢的な問題も重なり合ったらしい。

 

言い方はアレだが、上層部がコロリと忘れていたUnknown01。

 

それが今になって動き始めたのだ。

 

しかもパイロットは最近厄介払いしたはずの俺。

 

ボルテリガーが、ユナイト・アウト(分離)し、三機のボルトモジュールはハイパーゲートに入って消息を絶った。

 

そして俺はボルガーとなった機体をなんとか操作してレンネル基地へと帰還した。

 

最初はカエデや、ストーム少尉が出迎えてくれたが、それからすぐに地球軍本部から調査委員会のメンバーが文字通り飛んできて、俺は拘束されたのだった。

 

その担当官の殺気がやばいのなんの。

 

調査委員会に割り込んでやってきたフレッドがいなければどうなっていたことやら……。

 

そしてもう一つ驚いたこともあった。

 

『ダン隊長!一昨日ぶりです!』

 

『副隊長!?なんでここに!?』

 

『スミス少佐の護衛でついて参りました!』

 

なんとすっ飛んできた地球軍の調査委員会に、前線で戦っていた頃に副隊長をしていたパイロットが同行していたのだ。

 

正確には無理くりひっついてきたんだがな、とゲンナリした様子で言うフレッド。

 

この副隊長は、俺が前線で戦っていた時に救い出したパイロットであった。

 

C型V.L.Tに襲われ、コクピットにあわや牙が貫通する……という直前で救い出して以降、めちゃくちゃ俺に懐いてくれたパイロットで、気が付いたら副官になってた。

 

だってしょうがないじゃん。

 

このパイロット、メインストーリーにも出ていて、放っておいたら瀕死の重傷を負って、半身不随になった上に重篤なPTSDになってしまう結末だったんだから。

 

あれ割と救えなかったプレイヤーの心を抉る場面なのよ。

 

絶叫が無線で聞こえるし、PTSDになった描写もV.L.Tとの戦いが如何に残酷で過酷であるかというのを解らされてしまう鬱展開だったし。

 

ボルトボックス箱推しを謳う俺からすると、救えるなら救うしかないやん……。

 

んで、俺が前線で乗り回していた専用のレイブンアームズを託した相手なんだが……。

 

『ではさっそく失礼します』

 

カチャリ。

そんな笑顔の副隊長に俺は手錠をかけられた。

 

『今度はちゃんと、私が隊長を逃がしませんから』

 

……いやその忠誠心の方向性おかしくない?

 

それになんで拘束?と戸惑っていたら席を外せと調査に同行した担当官たちへ命令したフレッドが丁寧に教えてくれた。

 

「あんなものを動かして、さらにV.L.Tの機体と合体して帰還。どう見てもアウトです」

 

Unknown01……ボルガーは、どのような手段でも起動しなかった兵器。そこから得られたオーバーテクノロジーで作られた存在が「ハウンドアーマー」であるのだが……なぜ俺があの機体を起動できたのか。

 

「上層部は、隊長を……V.L.Tの生体兵器ではないかと疑っています」

 

はぇー、とんでもないこと言い出したな!?

いやいやいやいや!

俺、普通に前線で戦ってた人間なんですけど!?

 

「ナノマシン未投与でその戦績だからですよ」

 

あっ、それは……はい。

火に油でしたわ。

 

しかも、取り調べのやり方がまぁ酷い。

完全に秘密警察ムーブである。

 

カエデやストーム少尉も、執行部からの圧力で面会することも出来なくなってしまってるし、取り調べのやり方も脅迫めいたことが多いので本当に参る。知らぬ存ぜぬで通し切ったけどさ!

 

……まぁ、俺に家族や親族いないのだけが救いだな。無駄に人質にされる心配はない。

 

「隊長、今回は我々でも擁護が難しいかもです。まさか、出所不明……おそらくV.L.Tの技術で作られた機体に乗って、しかも……」

 

そう言ってフレッドが言葉を探し始めた。

 

……まぁ、うん。そうだね。

 

あんな勇者ロボに乗るとは俺も予想してなかったわ。それに関しては、本当に俺にもよくわからん。

 

たしかにボルガーに乗る(拉致された)ことはできた。

 

あのコクピットの中で聞こえてきた声の主の正体も、相手だったA型V.L.Tの声の意味もわからないし、ハイパーゲートから出てきた三機のボルトモジュールとの合体だって体が勝手に動いたわけで……。

 

あれは確実にナノマシンの作用だったが、俺はナノマシンなんて投与されていない。

 

あれ?これって俺が自分を単なるパイロットと思い込んでるだけで実は肉体は人知を超えた何か……っていう展開なの?

 

「隊長ならあり得そうなんでやめてもらえませんか?」

 

冗談でも洒落になってないですというフレッド。

おいおい、俺はあくまで人間ですよ。

 

あと監視のために同席している副隊長。深く頷いてフレッドに同意するのは、どう言う意味なんですか。

 

そんなやりとりをして、とにかく調査委員会の面々へ、俺を処刑場に強制送致しないよう手を回しますと言い残し、フレッドは副隊長を連れて部屋を後にした。

 

ポツンと聴取室に残された俺。

 

手錠をはめられた手を見つめる。

 

……俺は、前世……この世界をゲームと知った上で紛れ込んだイレギュラーだ。

 

やはり、この肉体は人間とはかけ離れた〝何か〟なのだろうか。

 

【いいえ、貴方は正真正銘の地球人です】

 

うわぁ!?びっくりしたぁ!?

 

一人そんな思考に耽っていたら脳内にいきなり声が響いた。その声はボルテリガーの中で聞いたエーテリアスの声である。

 

【申し訳ありません。貴方が一人になるタイミングを見計らっていたのです】

 

えぇ、どういうことなの……、声を出すと録音されるので聞こえたようにイメージを脳内思考で返す。

 

【私たちはゼブロイド。貴方たちの定義に合わせるなら……高位電子生命体、とでも呼ぶべき存在です】

 

なにそれつよい。

 

【電子機器への干渉は可能です。この基地の監視網も、すでに掌握しています】

 

ということはこの部屋の鍵を開錠することも可能だったりするのか?

 

【物理的な鍵なのでそれは不可能です】

 

クソ仕様がよぉ!!!

 

これだから中途半端に自動化してる奴はよぉ!光学モニターとかあるなら鍵も電磁キーにしろってんだ。

 

【ですが、貴方がここを脱走せずとも……近く、貴方はここを出ることになります】

 

え、どういうこと?釈放?それとも死の12階段でも登らされるの?

 

そんな疑問をエーテリアスにぶつけると、彼女はとんでもないことをぶち込んできた。

 

【私の元に通告がありました。貴方たちが特A型と呼称する存在がこの基地にやってきます】

 

え゛………それってここにいる全員への死刑宣告じゃねぇか!!!!?

 

 

 

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