名前は逢瀬 准一(おうせ じゅんいち)といいます。
─"ヤツら''が近づいてくる
獣のような唸り声をあげる黒い化け物の影から湧き出してくる。
俺の親友を動かない血塗れの肉塊に変えてしまった''ヤツら''だ。
腰がひける。
身体が小刻みに震える。
情けない声が漏れる。
真っ白になった頭の中に浮かんだ言葉はたった一つ。
『死にたくない』
しかし、コイツらに命乞いをしようにも言葉が伝わる道理はない。
そもそも恐怖のせいか口を動かすこともままならないのだ。
(だめだ…もう殺される…)
死ぬ。殺される。
コイツらに。化け物に。
俺をかばってくれた親友と同じように。身動きひとつしない肉塊になってしまう。
目の前いっぱいに黒い化け物が迫ってきた。
歯を食いしばり、目をそらそうとする。
だが、次の瞬間、化け物は横合いから飛び出してきた何者かに弾き飛ばされる。
『助かった』
そう思う間もなく、その何者かは蠢く化け物の群れに突っ込んでいった。
次々と化け物を薙ぎ倒し進んでいく何者かは、青い鎧を纏い、剣を携えていた。
群れを蹴散らし、中心にいる親玉らしきものと切り結んだそいつは、何かを必死に語りかけているようだった。
すると、黒い化け物は獣の如き雄叫びを一つあげた。
それと同時に、凄まじい衝撃波が辺りに広がる。
俺はその強烈な衝撃波を浴び、吹き飛ばされた。
そのまま身体が木に強く打ちつけられ、視界がぐにゃりと歪む。
いつの間にか青から金色に変わっていたそいつと化け物の繰り広げる死闘をぼんやりと眺めながら、俺は気を失った─。
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─それから四年後
俺、
あのとき自分を助けてくれた『仮面ライダー』と呼ばれる戦士の噂を知り、何らかの関係が有るとされるこのBOARDに勤めようと思ったのだ。
もっとも、理由はそれだけではない。
一番の理由はあのとき助けられなかった親友のような人をつくりたくはないからだ。
そのためには助けるための『力』が必要になる。
青い鎧を纏った戦士『仮面ライダー』のような力が─
物思いに耽っていたさっきまでの気分を振り払い、手元の資料に目を通す。
ここでは生物種の始祖となったアンデッドを研究している。
そう、またアンデッドが復活する事態に備えてだ。
かつてここで開発されていた『ライダーシステム』はブレイバックルを除き、4年前の戦いで失われてしまったという。
その後、新たに開発がおこなわれたものの、所長の指示により新型ライダーシステムはアンデッドのカードとともに凍結されてしまったようである。
少し残念な気もするが、またライダーシステムが使用される日が来ないことを祈るばかりだ。
資料から目を離し、研究室を後にする。
次の瞬間、誰かの悲鳴があがる。
反射的に振り返ると、そこには甲冑を身につけたような姿をし、カブトムシの角を模した大剣と左腕を覆う盾を装備した異形の者が立っていた。
それは、ついさっき資料で目にしたものだった。
(あれは封印されていたはずの…)
何故だ?何故ヤツが?
心の底から湧き上がるいくつもの疑問。疑問符で埋め尽くされる脳内。
だが、それも次の瞬間には恐怖に塗り替えられていた。
腰がひける。
身体が小刻みに震える。
情けない声が漏れる。
あのときと同じように。
必死で声を搾り出す。
存在するはずのないもの。
ヤツは…
「ビートルアンデッド…!」