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─一人の男が卓上の写真を眺めている。
彼の名前は
現在では人類基盤史研究所『BOARD』の所長を務めている。
前理事長であった天王寺亡き後、代わって就任した
彼には時折写真を眺める癖がある。
その写真に写っているのは本人ともう一人、元同期であり、密かに想い続けていた女性であった。
彼女は橘の事情を知らずとも、献身的に支えようとしてくれた女性だった。
しかし、彼女の存在を邪魔に思った上級アンデッドの一人、伊坂(ピーコックアンデッド)により殺害されてしまう。
その事が心身をともにすり減らしていた橘を再び立ち上がらせたのは皮肉だったかもしれない。彼女の死後、心の奥底にへばりついた恐怖心を克服した橘は伊坂を圧倒するほどの力を見せ、彼を封印した。
心の中で彼女に語りかける。
(俺は…俺は誰も救えなかった…君のことも…そして剣崎のことも…)
─
彼の後輩にあたり、彼とともに仮面ライダーブレイドとして戦った男。
自分を慕い、時には叱責し、奮い立たせてくれた良き後輩であり戦友。
しかし、彼はもういない。
四年前の最後の戦いの中、自ら『もう一体のジョーカー』となり、全生命のリセットを防いだ後、姿を消してしまったからだ。
今はただ、彼が使っていたライダーシステムの一つ、ブレイバックルだけが手元に残っている。
(剣崎…お前はその''運命''を選んだんだな…)
『もう一体のジョーカー』となり、人間の世界から離れ、孤独に生き続ける''運命''─
(もっと他の道があったなら…)
自分の不甲斐なさに苛立ち、机に拳を叩きつける。
写真立てがパタンと倒れた。
シンと静まり返った部屋の中に音が響く。
大きな溜め息を一つつく。
〈はじめまして、橘 朔也さん。いいえ、仮面ライダーギャレン─〉
突如として何者かの声が響いた。
辺りを見回すが、部屋の中には自分一人。
聴覚を刺激するのではなく、頭の中に直接響く謎の声。
「誰だ!?」
そう怒鳴りつける。
〈まだ正体は明かせませんが、あなたなら心当たりは有るでしょう〉
「貴様は…『統制者』か…!」
バトルファイトを取り仕切り、アンデッド同士の勝敗をジャッジする者。
いわばバトルファイトにおける絶対にして唯一の審判。
それが『統制者』であった。
〈当たらずとも遠からず─、といったところですね。〉
「何が目的だ!」
〈あなたたち人間が始めたバトルファイトに決着をつけるのです。〉
「決着だと!?」
〈ええ、バトルファイトに保留は許されない─。なのでゲームを行いませんか?人類の存亡をかけたゲームを─ね。〉
〈ルールは簡単です。これからカテゴリー
〈場所はランダムに決定しますので、ご了承ください。解放したアンデッドすべてを倒したら第一ステージクリアとなります。〉
「貴様…ふざけているのか!!」
〈大真面目です。ああ、それともう一つ…二体のジョーカーを封印してもゲームはクリアとなります。〉
〈用意はよろしいでしょうか?それではゲーム…スタート!〉
「待て!!」
そう叫んだのも虚しく、謎の声はもう聞こえなくなってしまった。
歯軋りする間もなく、けたたましいサイレンが鳴り響く。
〈第三研究室にアンデッド出現!繰り返します!第三研究室にアンデッド出現!〉
「なに!?」
切羽詰まった放送の声がそう告げた。
(封印していたはずのアンデッドが解放されたのか!?)
橘は深く呼吸し、気持ちを落ち着けた後、四角い箱型の機械を手にした。
それは、彼が四年ぶりに手にするライダーシステムの一つ、最後のカテゴリー
「またこれを使う時が来るとはな…」
小さく呟き、逃れようのない''運命''を感じながら、彼は部屋を飛び出していった─。