仮面ライダー剣 Another Ace   作:上川 朔真

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第五章 相川 始

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─研究所にアンデッドが出現する少し前。

 

一人の青年がパソコンのキーを叩いている。

彼の名は相川 始(あいかわ はじめ)

 

真崎 剣一(まさき けんいち)』というペンネームで活動するフリーライターだ。

 

彼は少しばかり特殊な事情を抱えていた。

その事情の一端により喫茶店『ハカランダ』の地下室を間借りし、生活している。

 

依頼された記事を書き上げていた最中─。

 

突然、身体中がカッと熱くなり、鼓動が速まる。

血が沸き立つような感覚。

こみ上げる衝動。

 

唐突な苦痛にキーを叩く手を止め、懐から一枚のカードを取り出す。

すると、彼の腰にハートマークを模したような物体が出現する。

 

その中央に走った溝にカードを通す。

 

先程までの身体の火照りが冷め、息を整えつつ独りごちる。

 

「またあの感覚か…」

 

あの時以来感じることがなかった感覚─。

 

「何かが起こったのか…?」

 

〈再び戦うのです。相川 始─。いえ、『ジョーカーアンデッド』。〉

 

いきなり脳内に響いた声に反応し、狭い室内を見回す。

 

声の主は自分の正体を知っているらしい─。

 

(貴様は何者だ…!?)

 

〈その質問には答えられません。私とゲームをしませんか?〉

 

(ゲーム…?)

 

始は眉をひそめた。

 

〈その通り。これからカテゴリーA(エース)を順次解放し、全て封印できたら第一ステージクリアとします。〉

 

(ばかばかしい。そんな誘いにのるとでも?)

 

強気で突っぱねる。

 

〈強制はしません。ですが、どちらにしろカテゴリーA(エース)は解放します。今の人間が対抗する力をもっているとは思えませんがね…〉

 

(貴様…!)

 

嫌らしい口調で語りかけてくる声の主に怒りが湧く。

 

〈それでは参加ということでよろしいですね?ゲームスタートまでしばしお待ちを─。〉

 

謎の声は聞こえなくなった。

 

─相川 始は人間の姿をし、人間としての心をもっていたが、その正体は異なっていた。

 

彼の本当の名は『ジョーカーアンデッド』。

 

ハート型をしたバックルにカードを通すことで、カードに封印されたアンデッドに擬態する能力をもっていた。

 

彼の今の姿は(ハート)2『SPIRIT』に封印された人類の始祖生物『ヒューマンアンデッド』のものである。

 

彼は、四年前の最後の戦いの後も封印されず、人間『相川 始』として生きてたが、やはり本能までは捨て去れない。

先程の感覚は心の奥底に眠った闘争本能を駆り立てるものだった。

 

地下室から飛び出し、階段を駆け上がって店の外に出る。

 

その時、後ろから声があがった。

 

「始さん!」

 

後ろを振り向くと、一人の少女が立っていた。

その少女の名は栗原 天音(くりはら あまね)

 

この店を一人で切り盛りする女主人の娘だ。

居候となった始にすっかり懐き、半ば父親代わりに思っていた。

 

「始さん…。そんな怖い顔をしていったいどこへ行くの?」

 

「すまない。ちょっとした用事ができたんだ。」

 

「…早く帰ってきてね。」

 

彼女は始の正体を知らないはずだが、なにか良からぬ予感を感じているようであった。

 

(今の俺にはこうして心配してくれる人がいる…守るべき存在がいるんだ。)

 

「心配しなくていい。すぐに戻るさ。」

 

「必ず帰ってきて…。」

 

始が微笑みをうかべ、優しく語りかける。

 

「もちろんだ。お母さんと一緒に待っていてくれ。」

 

そう言い、バイクに跨がる。

エンジンを掛け、ピリピリした気配を感じる方向へと走り出してゆく。

 

その後ろ姿を天音が心配そうに眺めていた─。

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