TSして触手産卵ゲーのマゾメス堕ちロリ女神になった 作:ハリケーン
――――ユーリは自分の家名が嫌いだった。
『色欲』のアスモデウス――――そもそも論、繊細な子どもに『色欲』というのは嫌だったし、『零落』した魔王だのと見下されるのがセットになっていればなおさらのことだ。
それでも家の人間たちは、魔王が揃うパーティーには出ろという。
名ばかりの魔王。そんな名前に縋る家の人間が嫌だった。
あるいは、そんな称号ではなく自分自身を見て欲しかったのかもしれないが――――。
いつも最低限だけ挨拶をして、会場を抜け出す。
そうしていると、同じように抜け出している白髪の少女がいることに互いに気づいていた。
『怠惰』の魔王。ベルフェゴール―――。
彼女は、ユーリと同じだった。
『怠惰』も『色欲』と同様、何もしない引きこもりとして扱われていた。
だからユーリ・アスモデウスもエリシア・ベルフェゴールも家名を聞いても、態度が変わらないことを同じように喜んだ。
生来の世話焼き体質であるユーリが、何もしたがらないエリシアのために面倒を見るようになるのは自然な流れだった。
――――魔界。
そこにはエデンと比較して荒廃した大地が続く世界。
ここでは『暴食』ベルゼブブも自重している。まあ一番の理由は「魔界はマナが美味しくないから」だったりするがそれはさておき。
「―――――女神アイリスとやらを殺すための方法は!?」
「あやつに生まれてきたことを後悔させてやる…!」
「えぇ……」
未だ怒り心頭な『傲慢』と『憤怒』の二人に迫られて、心底面倒くさそうな顔を隠そうともしない白髪の少女。『怠惰』のベルフェゴールは――――。
「無理だよ。めんどうくさいし……わたしだって全部わかるわけじゃないって言ってるでしょ」
魔装『バエル』。祈祷用の杖であるそれは、短期的な予知――――「なんとなくこうした方が楽な気がする」という程度の精度だが――――魔界の軍勢が初回のラグナロクから万全の準備で奇襲を成功させた最大の要因だった。
なんとなく相性が良さそうな魔王を、なんとなく良さそうなゲートに導く。
魔界の『頭脳』。最適解が分かってしまうが故に、必要最小限以外は動くのが面倒。なにもしたくない。それが『怠惰』エリシア・ベルフェゴールだった。
つまりアイリスからすると最優先の排除目標――――というわけでもない。
そもそも魔界に引きこもっているので排除に行くのはリスクが高すぎる、というのもあるが。
(……はぁ。ユーリ兄さま、元気かなぁ……)
ガミガミ五月蠅い『傲慢』と『憤怒』の言葉を完全スルーして、思い出すのは幼馴染の顔。
『怠惰』という性質上、何もかも面倒なエリシア。誰もが「そういうもの」だと放置していた中、なんだかんだと心配してくれたのがユーリだった。
自分を気にかけてくれる、唯一の年上の異性――――淡い恋心を抱えて、それでもエリシアは自らの『怠惰』に導かれて自ら母胎になることはしなかった。
ユーリが自分を、『色欲』の魔王としての自分自身を認められていない今。何を言っても恋は叶わないし面倒なことになると直感したためである。
けれど、この戦いでユーリは変わる。
女神も、魔王も己のものにして、きっとエリシアも―――。
(………ふふ。たのしみ)
とりあえず目の前の邪魔な女どもを排除するには―――やっぱり女神カーディナルとやらにぶつけるのが一番だろうか。下手に勝たれてしまっては困るが、それなりにあっちが苦戦してくれた方がユーリが活躍できるだろう。
小さな胸に大きな野望を膨らませて、エリシア・ベルフェゴールは微笑んだ。
―――――――――――――――――
―――――恋する相手のために全魔王苗床計画をこっそり推し(押し)進めるヤベー魔王、それこそが『怠惰』のベルフェゴールである!
いやまあ、色々複雑なアレやソレもあるのだが、乙女の機微をあれこれネタバレするのも良くない気がする。というかベルフェゴールに恨まれたら魔王に包囲されて圧殺される気がする。ゆるして……ゆるして……。
とはいえ、基本的にかかわらなければ無害な相手ではある。
向こうはこっちに興味ないので。
ユーリ君を見下してる魔王を全員ゴミクズだと思っているだけで。ユーリ君を馬鹿にしなければ基本無害。なんなら他の魔王を馬鹿にすると好感度がアップする疑惑もある。
女神が基本的に不利な戦いを強いられるのも、なんかいい感じに倒してユーリ君のもとに戦力が集まっていくのも『怠惰』たる彼女がその天才的すぎる頭脳で導き出す盤面に他ならない。それがまた奇跡的に世界を救うルートに直結するので影のMVPと言っていい。魔王的には大戦犯だけど。
で、問題は次のノースランドに誰が送り込まれてくるかなんだよなぁ……。
ルシファーとサタンを同時に相手させられたりしたらユーリ君に泣きついて助けてもらう気満々なので多分平気なはず。
ゼピュロスで逃げ回ることを考えると、いるだけでノースランドが壊滅するサタン第二形態か『暴食』のベルゼブブが厄介すぎる。
まあベルゼブブは極寒の大地で冷え切ってもらえばいいからやっぱりサタンが一番嫌かなぁ……。
そんな風に思っている時が、私にもありました。
「―――――何が言いたいか、わかるよね?」
「ひぇっ」
ノースランドに帰ると、眠そうな白髪の少女が深紅の目でこちらを見据えていました。言わずとしれた『怠惰』――――エリシア・ベルフェゴールである。
こ、こわっ!? なんでいるの!?
というか何!? 何が言いたいの!?
「ごめんなさい何も分かってないです」
「………はぁ。めんど」
怖いよぉぉぉおおお!?
急激に周囲の気温が下がっていくのは、ゼピュロスによるノースランドの守護から自分に神力を還元して戦闘態勢に入っているからだけれど。そうでなくても体感気温は下がってる気がする。
「なんでユーリの母胎が増えてないのかな?」
「…………わ、分からないです」
ズン、と軽そうな見た目から想像できない杖。魔装『バエル』が地面を突いて大地が震えたような錯覚すら覚える。
「本当ならあのユースティアっていうのも母胎になってるはずだよね?」
「…………そ、そんな気がしますね……」
で、何か言い分は?
と言いたげなベルフェゴールだが、残念ながら抗弁の言葉は持たない。
多分何かしらのバタフライエフェクトだと思うんですけど…。
「………邪魔」
「えっと、許して?」
「苗床になって詫びて」
「―――――嫌です!」
それが嫌だから頑張ってるんですけどぉ!?
バエルを向けられた瞬間に転移して逃亡――――した先に仕掛けられていたのは爆発するタイプのトラップ。
「痛ったぁ!?」
「………へぇ。やっぱり耐えるんだ」
そりゃ回避先を読むくらいはしてくるよね、ベルフェゴールだし!
と思ったのもつかの間、次のトラップが作動。爆発して棘をばら撒く厄介なタイプのそれをベルフェゴールのすぐ近くに転移することで回避。
「これ以上やるなら、ユーリをオナネタにしたの暴露してやる!」
「――――――…!?」
「………な、何が言いたいのか全然分からない。意味不明」
「『偶然』にもユーリの私物をゲットしてるのも!」
「………」
「………」
雪が降りだしたノースランドで、二人で睨み合う。
奇しくも似たような身長、扇と杖を向け合って相手の考えを読み合う。
「思うに、私みたいなのよりベルフェゴールさんみたいな立派な魔王が強くて優しいユーリさんには相応しいと思うんですけど」
「………………そ、そう?」
暫しの沈黙。
考え込んだベルフェゴールは、面倒くさくなったのか溜息を一つ。
「……まあ、今回は警告。……じゃましたら、サタンとルシファーを嗾けるから」
「絶対しません!」
「………じゃあ、帰る」
「あっ、はい……」
すたすたと歩いて去っていくと、その先に『偶然』にもゲートが開く。
いや、多分発生するのを予期していたんだろうけど。
怖すぎる……。