TSして触手産卵ゲーのマゾメス堕ちロリ女神になった   作:ハリケーン

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その先にあるもの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――アイリス!」

 

 

 

 女神メティスの声は悲痛だった。

 巨大な竜巻を圧縮して『暴食』を削り切ろうとする女神アイリスと、それすら全て喰らい尽くそうとする『暴食』の壮絶な削り合い。

 

 先ほどまでは恐ろしいほどに漲っていたアイリスのその膨大な神力が、瞬く間に萎んでいく。『暴食』の力もそれ以上の速度で削れていくのは分かるが、そちらは常にマナを喰らうことで回復している。これはもうどちらが先に斃れるかの根競べ。

 

 それでもアイリスは壮絶な笑みを浮かべ、まるで相打ちになっても本望かのように振舞う。部下や仲間のために、自分を犠牲にする――――どこまでも女神らしいその姿に、抱く感情は何だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユーリは瞳を閉じ、静かに己の中に向き合う。

 既に『箱』は開かれて、スルトは『色欲』に基づいてどこまでも貪欲に全てを味わいつくそうとしている。

 

 エルピスによく似た女が持っていた箱――――そもそも、次元の狭間にいたエルピスは何者なのか。

 

 未だに分からないことばかりで、それでも事態は待ってはくれない。

 

 

 

 

 

「ユースティア姉さま! 後の事は頼みます!」

「くっ、アイリス!?」

 

 

 

 

 バチバチと不吉な音と光を放ちながら少しずつ渦巻く風が圧縮されていく。

 アイリスの口元に血が滲む。その膨大すぎる神力の出力に対して、肉体が耐えきれていないのだろう。

 

 己の限界を超えて、それでも信念を貫く――――。

 

 

 

 

 

 その姿を、美しいとユーリは思った。

 

 

 

 

 

『――――さあ、俺に全てを委ねろ。全てを喰らい、味わい尽くす――――『暴食』だろうが『信仰』だろうが変わらねぇ』

 

 

 

 暗闇の中で、スルトの声が響く。

 

 

 

 

『何より、あの女は死なせるには惜しい』

(それだけは同感だが―――断る)

 

 

 

 

『アアン? 舐めてるのか? テメェの雑魚っぷりじゃ何の役にも立ちやしねぇ。大人しく俺に任せておくんだな』

 

 

 

 

 

 

 

 『色欲』を背負うのは、幼いころからユーリにとって苦痛だった。

 単純に衰退した家だという侮蔑、繊細な年頃の男としても。そして、苗床にされるのを恐れるように周囲の者たちから避けられるという環境も。

 

 

 

 

 

 だが、今は違う。

 完全にでは、ない。未だに心の傷は深く、残り続けている。

 

 けれど、エルピスの無邪気な笑みが。

 ユースティアの穏やかな微笑みが。

 

 二人を見つめるアイリスの慈しむような笑みが。

 

 

 

 

 

 この『色欲』が単純に悪い物だとは思わなくなった。否、思いたくなくなった。

 

 

 

 

 

 

 スルトの姿は、ユーリが恐れていた『色欲』の化身のようだ。

 欲しいだけ奪い、好き勝手に荒らし、絶望を振りまく。

 

 

 

 

 

(――――従うのは、お前だスルト! 俺の『色欲』はそんな程度で終わらない!)

 

 

 

 

 

 

 好き放題に汚すのが『色欲』なら、慈しむような『色欲』もあっていい。

 

 

 

 手を伸ばせば、本能そのままに全てを貪ろうとするスルトの欲望が吹き荒れる。

 それでも譲れないものがある。――――男として、精一杯張り通したい見栄があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 ユーリが黒い炎に呑まれ、ユースティアはスルトが出てくると思った。

 しかし、それを切り裂くように黄金の焔が舞う。

 

 スルトの全てを無差別に燃やす炎とは違う。煌々と周囲を照らす、見る者を魅了するような不思議な焔だった。

 

 

 

 

 

 

「『―――――ぅ、ォォォオオオッ!』」

 

 

 

 

 

 黒い炎と黄金の焔、スルトとユーリの中間のような姿で、ユーリが斧槍をアイリスの創り出す圧縮竜巻に突き刺す。

 

 その瞬間、『暴食』が吸い取るマナが停止し。

 『暴食』と『信仰』の拮抗が破られる。

 

 先ほどまでの壮絶な削り合いが嘘のように一気に竜巻が圧縮され――――風船のように弾ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………わぁ。美味しいのに、食べられない―――不思議」

 

 

 

 

 

 

 『暴食』ベルゼブブ、その真の姿。

 無節操な、アイリス風に言うならゲーミングカラーな髪色に、とんでもなく巨大な胸部装甲、あらゆる栄養が胸に行ったかのような爆乳少女が、ぺろりと舌で唇を舐めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なんかユーリ君が覚醒しかかってるんですけど!?)

 

 

 

 

 

 おかしい。

 それはもうちょっと先、具体的には全女神を攻略したあたりで出てくるハズ……というかその中間形態みたいなの存在しないハズでは!?

 

 

 

 髪が半ば深紅に、半ば黄金に染まりやや年齢を重ねたようにも見える中間形態ユーリ君はスルトの黒い炎とそれを抑え込むように舞う黄金の焔を纏わせつつこちらに目線をくれた。

 

 

 

 

「『無事だな、アイリス!』」

「え。あ、はいっ!」

 

 

 

 

 咄嗟に返事をして、混乱する。

 いや、それだと私のために覚醒したみたいでは。いやいや流石に自意識過剰すぎる。

 

 とかなんとか思っていると、半ば暴走形態なのか苦し気にしつつもユーリがこちらを庇うように前に立つ。

 

 

 

 

 

 

 

「『ここからは俺が相手だ――――ベルゼブブ!』」

「いいよ。その子も美味しかったけど。………貴方も、今度こそいただきます」

 

 

 

 

「――――ユーリ!」

 

 

 

 

 かぷり、とベルゼブブが何もない空間に向かって口を開いた瞬間。

 咄嗟にユーリに飛びついて転移する。

 

 

 

 

――――――結果は、まるで何かに齧られたかのように空間ごと抉られ。その先に魔界が見えるという異様な光景で。

 

 

 

 

 間一髪、半ば抱き着く形になったのは必要経費として。

 この中途半端な形態のユーリが『暴食』の『次元捕食』に喰らわれたらどうなるのかイマイチ予測しきれないことに歯噛みする。

 

 転移が通じるということは、次元捕食も通じる可能性がある。いや覚醒ユーリなら敵の能力だけ無効にできるから多分平気だとは思うけれど。それで即死ギミックを見過ごすのは流石に怖すぎる。

 

 

 

 能力としては視界に映っている物体に食いつくことで、遠距離からでも次元ごと喰うことができるというもの。どっかの作品の視界に映る掌に収めたものを圧縮してキューブ化する能力(トラッシュアンドクラッシュ)のより悪質なものと思ってもらえればいい。

 

 

 

 

 

 

「『なんだと!?』」

「あれ。……避けちゃった?」

 

 

「あれは危険です! 視界の外から仕掛けましょう!」

 

 

 

 

 再度の転移。

 咄嗟に回避だけに専念したのと異なり、ベルゼブブの背後に転移。

 

 即座に意図を汲んでユーリが攻撃するが――――背中に斬りつけた斧槍を、ベルゼブブの背中にできた口が受け止める。

 

 

 

 というか、こいつは見た目が爆乳美少女なだけで全身が口できているのだが。

 あらゆる場所に口ができるので、それでユーリ君に奉仕したりスルトに弄ばれたりするが、それはともかく。

 

 

 

 

「うーん、後ろからだと食べにくいよぉ。あついぃ!」

 

「テンペスト・エッジ!」

 

 

 

 

 

 ユーリはそのままに、横に転移して放つのは風の刃。

 するとユーリの斧槍を捕まえていた口が消滅し、代わりに右手に現れた口が風の刃を飲み込む。

 

 

 

 

 

 

「うん、甘くておいしいー」

「同時に出る口は制限があるはずです! 視界の外から総攻撃を!」

 

 

 

「『なら――――スピカ!』」

「――――とぅッ! お呼びとあらばスピカ、推参です!」

 

 

 

 

 ユーリが袈裟斬りに斬りつけるのと同時、スピカが左腕に斬りつける。それを振りかえったベルゼブブはユーリの一撃を顔にある口で、スピカの一撃を左腕に生やした口で食らいつく。

 

 

 

 

 

 

「嚙み砕く大地の牙よ――――――猛き刃となって我が敵を引き裂け―――――ラスト・クラッグランド!」

 

 

 

 

 

「おおぅ」

 

 

 

 

 

 

 地面が割れる。

 メティス姉さまの即死攻撃、大地の断層を創り出し全てを飲み込むそれにちょっぴり驚いた様子のベルゼブブ。そこにユースティア姉さまが更に畳みかける。

 

 

 

 

 

「猛き水流よ! 押し流せ―――タイダル・ウェイブ!」

 

 

 

 

 

 

 地割れを塞ぐように、大量の水が流し込まれる。

 およそ過剰火力にしか見えない攻撃はしかし、やはりというか次元ごと喰らう相手を倒し切るには足りない。

 

 

 

 

 

 大地も、水も、全てを飲み込んでベルゼブブがクレーターの中心に立つ。

 その姿は先ほどまでとほとんど変わらず――――ただ、強いて言うなら爆乳度合いが更に増した。

 

 

 

 

 

 

「ユーリ、どうやらベルゼブブはマナを食べるほど巨乳になるみたいです」

「『……いるか? その情報……』」

 

 

 

 

 

 いやまあ。

 ギミックとしてあまりに胸がデカくなりすぎると動きが鈍くなるというのがあってですね…。

 

 

 とかなんとか言ってる間にユースティア姉さまとスピカが絶え間なく攻撃を仕掛けてくれているし、メティス姉さまが地面から鉄杭を生やしてベルゼブブを貫こうとするが全身に口を出せるというのは、人体でも特に丈夫な歯をあらゆる場所に出現させられるのとほぼ同義。大したダメージにならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ。食べ放題だ、ね」

 

 

 

 

 

 

 

「なら――――ユーリ!」

 

 

 

 

 

 

 再びユーリごと転移し、遥か上空へ。

 

 

 

 

 

「私の全てのマナを込めた竜巻を叩き込みます! 合わせて下さい!」

「『―――――ああ!』」

 

 

 

 

 

 黄金の焔に合わせるように、二人で構える斧槍が竜巻を纏う。

 イメージするのはライフリングだ。竜巻で軌道を安定させた最大の一撃を、遥か上空から不意打ちで叩き込む。

 

 

 

 

 

 

 

「『「――――――いっけええぇええええッ!」』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間、斧槍は黄金の光となって稲妻のように轟音とともに放たれた。

 

 

 

 

 

 

 まるで隕石が衝突したかのように全ての音が消え、大地が吹き飛ぶのをメティス姉さまとユースティア姉さまの土と水の壁が防ぐのが見える。

 

 

 

 

 マナの吸収を防ぐ黄金の焔に焼かれた『暴食』の少女は、どこか満足気に、まるで満足するまで食べ尽くした子どものように仰向けに倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

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