TSして触手産卵ゲーのマゾメス堕ちロリ女神になった 作:ハリケーン
――――それは、突然起こった。
『何か』が衝突した感覚――――実際に揺れがあるわけでもなのに、間違いなく『何か』がぶつかったという実感だけがある。
「これは――――」
「これが、『
「な、な、なにが起こってるんですかー!?」
揺れているような感覚が気になるのかぴょんぴょん飛び跳ねるエルピスだが、揺れているのは地面ではない。『世界』だ。『世界』の空間そのものが軋んでいる。
「これがラグナロクだとすれば―――くっ。すみません、私は一旦失礼します! できれば今度、会いにいらして下さい! すぐに衛兵も派遣しますから!」
水の鞭で犯人たちを拘束。そのまま白い翼をはためかせ、神器で窓を切り取って飛び出したユースティア。それを見送って、ユーリは静かに歯を噛みしめた。
「ど、どどうしましょうか、ユーリ!?」
「………俺は」
――――――――――――――
「なんとか、間に合いましたか」
イマイチ『ラグナロク』の発生タイミングが良く分からなかったが、『原作』通りユーリとユースティアが出会った直後に起きたあたり、何かしらの修正力のようなものがあるのかもしれない。……過度な期待は禁物だろうけれど。
ラグナロクは一度の現象ではない。
世界と世界の衝突、何度か反発し、距離が縮まり、最終的にはどちらの世界も崩壊して無くなる――――防ぐ方法は単純明快。どちらかの世界を滅ぼすしかない。
あるいは―――――『前回』の最後を再現するか。
最強の魔王であったアスモデウスと、全能の女神だったカーディナル様が総力を尽くして。その力のほぼ全てを喪失して、なお『先延ばし』が限界であったその奇跡を。
――――けれど、今は。
「―――――ほぅ。噂では鄙びた凍土だという話だったが――――2千年も前の話だ、アテにはならんか」
ノースランドの広大な草原――――もとは凍土であったそこに現れたのは巨大な角を持った竜人。身の丈5メートルはあろうかという巨体。そして更にそれを上回る大きさの血色の槍を持つ『憤怒』の魔王――――サタン。
「生憎とアポイントメントを受けておりませんので、お帰り願います」
神器ゼピュロスを構え、ぽっかりと空間に空いた裂け目――――巨大なゲートからあふれ出してくる魔物の大群を見据える。
「ふん――――貴様が女神とやらか」
「一応、そうなりますね」
魔装『ヨルムンガンド』。
どこまでも伸び、敵を喰らうまで止まらない槍――――憤怒の化身のようなそれを、サタンは無造作に振るい。
次の瞬間には既に私のいた場所は喰らわれ――――それを見越してゼピュロスで転移していたことで、ヨルムンガンドの攻撃は不発に終わる。
サタンの首筋――――わたしの非力さも問題なのだろうがゼピュロスでも歯が立たず、血の一筋も流れない。
「――――固いですね。肩こりにしては頑固ではないですか、ご老体?」
「ふん。随分と素早い蝿がいたものだが――――効かぬぞ、小童」
もとより様子見でしかない一撃。
ゼピュロスに渾身の神力を込め――――ノースランドを守っていた温かな風のベールが剥がれ落ちる。
瞬く間に凍える凍土に戻ったノースランドに分厚い雲が渦を巻く。それは氷を纏った巨大な竜巻になっていく。
「―――――テンペスト・ニヴルヘイム」
「喰らえ―――――我が
大気が悲鳴を上げているかのような轟音の中、魔槍たる魔装ヨルムンガンドが駆ける。それを紙一重の瞬間移動で回避しつつ、巨大な竜巻でサタンの取り巻きを一掃する。
およそ彼の距離では最強の魔王、サタン――――竜の悪魔である彼は、生半可な攻撃など通じない。槍を伸ばすだけでは回避されると判断するや、地獄の業火にも匹敵するファイア・ブレスを吐き出して周囲を灼熱地獄に変える。
「フ、ハハハハ―――――面白いではないか! さあ、逃げ惑え! どこまで避けられるか、余に見せてみるがいい!」
「―――――テンペスト・フレアアーク」
故に――――可能な限りの最大火力を一息に叩き込む!
片や、極寒の竜巻。片や、サタンの吐き出した炎による灼熱の竜巻。油断か、慢心か、はたまた自負か――――一歩も動かない魔王を、温度と、力と、二つの竜巻の衝突点として、双方から引き裂く!
「――――――テンペスト
「―――――ぬ、おおおおおおおっ!?」
「ちぃっ!」
かっっっったい!
何食べたらあんな超合金みたいな鱗ができるのか。サタンの身体がギチギチと音を立てて僅かに鱗が引きちぎれて血が滲む。
油断している間に殺し切れればよかったが、この速度では間に合わないだろう。
サタンの身体が炎に包まれたかと思うと魔装ヨルムンガンドは消失。
竜巻を引き裂くように、元よりも5倍以上のサイズになった巨大な四足の竜体が現れる。
『フハハハハ! そうでなくては! 歯ごたえが無い!』
巨大な邪竜としての本体を露わにしたサタンを倒す方法は――――正攻法では、ほぼ無い。
―――――――――――――――――――
「ユーリ! 何がどうなってるんですかぁ!?」
「『これ』がラグナロクだとすれば。始まったんだ――――戦争が」
己の世界の存続を賭けた、戦い。
何をどうするべきか――――それを決めることすらできていないのに、ユーリは走っていた。戦う? 何と? 自分を見下した魔界のために戦うのか? 大して思い入れもないエデンのために戦うのか?
(いや、俺は―――――生まれ故郷を、魔界を見捨てたくなんてない。……なのに、エデンも悪くないと思ってしまっている)
良い思い出もない魔界も、大した時間を過ごしていないエデンも――――そのどちらも、切り捨てたくないと思ってしまうのは強欲だろうか。
(何か、方法があるんじゃないのか? 必ず滅ぶというなら、なぜ『2千年に一度』なんて話になった? 『前回』はどう凌いだ――――?)
それを知っているとすれば――――エデンの統治者、カーディナルしかいない。
だが、正面から会いに行ってどうこうできる相手でもない。だが、今なら――――カーディナルと話せるだろう女神ユースティアが、すぐ近くにいる。
「……女神カーディナルに会う。会って、確かめるぞ。どうやって『前回』のラグナロクを乗り越えたのか―――――そのために、女神ユースティアの力が要る」
「――――よく分からないですけど! わかりました!」
「お前それは分かったと言わない」
「ユーリが分かってくれてればいいんです! ―――急ぎましょう!」
謎の身体能力を発揮してユーリの前を走り出したエルピスに、負けじとユーリも速度を上げる。幸いにも、ユースティアの気配はそう遠くはなく――――それと同時に、感じ取った気配にユーリは奥歯を噛みしめた。
「これは―――くそっ!」
「ユーリ!?」
―――――――――――――――――――――
「―――――ククッ、ここがエデンか――――肥沃な大地に、豊富な水―――なんとも妬ましいことだ」
「ま、魔族め……魔界へ帰れ!」
勇敢な兵士が、震えながら槍を構えて吼える。
それを見据える『嫉妬』の魔王レヴィアタンは――――その巨大な鯨のような身体を揺らすと、嗤った。
「ほう。もう一度言ってみるがいい――――言えるものならば、な」
レヴィアタンの魔装『タンニーン』、巨大な輪が輝き、どこからともなく大量の水があふれだしてくる。それは、瞬く間に兵士を飲み込む――――その寸前で、青い輝きとともに女神が舞い降りる。
「――――させません!」
「ほう、女神か――――」
翼を広げた女神ユースティアは神器を振るい、鋼鉄すらも切り裂く水の斬撃を放ち――――レヴィアタンの強固な外殻の前に、成す術もなく弾かれる。
「これが――――魔王…!」
「我こそは『嫉妬』の魔王レヴィアタン! ――――この世界、我らが魔界の糧として―――貰い受ける!」
「―――――我こそは『正義』の女神ユースティア! 我が神器の輝きがある限り、そのような無法は許しません!」