TSして触手産卵ゲーのマゾメス堕ちロリ女神になった 作:ハリケーン
「ぐっ………ここは……?」
ユーリが目を覚ますと、そこは見知らぬ清潔な部屋で。
やけに身体が重いと思えば、アホ面で寝ているエルピスが人の身体の上でよだれを垂らしながら熟睡していた。
「ここは私の本拠地――――城塞都市アルメールです。身体に異常はありませんか、ユーリさん」
ベッドから少し離れた場所に置かれた机で、書類の山と格闘しながら目線を向けて微笑んだのは女神ユースティア。鎧を外し、翼も出していないと普通の美女にしか見えない彼女の手はしかし、逼迫した情勢を示すかのように素早く動いていた。
「ユーリさんが『嫉妬』の魔王を撃破して下さったお陰で、現在このイーストランドは多数の野良魔族が暴れている程度――――ボヤ騒ぎ程度になっています。けれど、他のノースランド、ウェストランド、サウスランドはそれぞれ『憤怒』『強欲』『暴食』の魔王に。そしてカーディナル様の座すセントラルもまた、『傲慢』の魔王の襲撃をうけていると」
「俺は……『前回』のラグナロクで何があったのか――――この戦争を終わらせる方法がないのか知りたい。ユースティア殿、何か知らないか?」
ユーリの質問に、ユースティアは苦悩するように目を伏せて首を横に振った。
「私は、前回のラグナロクの細かな経緯を知らないのです。……ただ、カーディナル様が以前のような全能の力を振るえなくなった、としか」
「ならやはり、カーディナルに直接確かめるしかない――――か」
「……魔王たちは、各地で女神を足止めしつつ本隊をセントラルに向けているようです。多数の軍勢が入り乱れる死地――――私も援軍を出すつもりではありますが、正直なところオススメはできません」
「軍勢の配置は?」
問いかけるユーリに、エルピスが熟睡しているのを察してかユースティアは立ち上がって地図を手渡す。ユーリはそれを一瞥して、「『傲慢』のルシファーらしい」と吐き捨てた。
要は自分がカーディナルを倒せば終わりだ、という傲慢なまでの自負だ。が、現在の魔界で最大の勢力が誰かと言われれば間違いなくヤツだろう。
「……私としては、各個撃破が良いかと思っています」
「それで間違いないだろうな」
「それで、これは提案なのですが――――ユーリさんにもご協力願えないでしょうか」
「……俺に?」
「正直なところ、私だけで『嫉妬』のレヴィアタンは倒せませんでした。もちろんカーディナル様に口添えはさせていただきますし―――――軍を動かすのを待つには事態は急を要します」
「まあ、俺だけでカーディナルに会いに行ったところでどうにもならないし……他の女神と連携すればなんとかなる、か」
「じゃあ、協力成立! ですね」
「……そうだな」
笑顔で手を差し出してくるユースティアに毒気を抜かれつつも、しっかりと握り返して。
伝令が駆けこんでくるのがほぼ同時だった。
「報告! 『嫉妬』の魔王が出現した魔界とのゲートが閉じたとのことです!」
「あら」
「……小康状態になったか?」
ラグナロクは複数回にわたって徐々に魔界とエデンが接近する現象。一旦魔界との距離が離れつつあるということだろう。
ゲートが閉じれば補給線も何もない状態になる以上、魔界の軍勢が一度撤退する可能性もある。各地のゲートの様子が気になるところだが――――。
ユースティアは僅かに逡巡してから呟く。
「普段なら、アイリスが風で何かしらの知らせをくれるのだけれど……」
「その、ノースランドは凄まじい寒波が起きているとの話です」
「………あの子が、そこまで……やはり各地の魔王は強敵のようですね」
「そういえば魔界の伝承だとノースランドは何もない極寒の地という話だったが」
極寒の地で更に寒波? というユーリの疑問に答えるようにユースティアは地図のノースランドをぐるりと指し示して言った。
「本来であれば、全体が寒波で覆われた土地だったんです。けれどアイリスが女神になってから風を操って温かな南風を入れることで他と変わりない――――いえ、むしろ快適に制御された気候になっています」
「……気候を、変える?」
「あ、私の神器も海とか湖ならもっと凄いことができるんですからね」
「……いや、対抗しなくていいが」
「…………アイリスがいれば移動も連絡も自由自在なので、アイリスの救援に向かうのでもいいですか?」
理屈は通っているが、どちらかというと妹を心配するような口調のユースティアに、ユーリは苦笑しつつ頷いた。
「ああ、構わない。……正直、『憤怒』が相手だと――――いや、そうか。瞬間移動か」
「……?」
「『憤怒』の魔王、サタンが使う魔装ウロボロスは音が追い付かないくらい速く伸びて、どこまでも相手を追い、喰らいつかれた相手はほぼ死ぬ――――らしい」
「迎撃はできないんですか?」
「並大抵の攻撃だと丸ごと喰らわれて終わりらしいな」
「……私では相性が悪そうですね」
「だが女神アイリスなら――――」
「ゼピュロスでの瞬間移動、ですね。……というかユーリさん、アイリスと会ったことが?」
「ある。……危うく殺されるところだったが」
「アイリスが見逃したんですか!? すごいですね、どうやったんです?」
かなり大袈裟に驚くユースティアに、普段一体どれだけ暴れまわっているのだろうか。とちょっと遠い目になった。
「多数決で」
「多数決で…?」
「アイリスなら『反対ですか? それはそれとして私がルールなので殺しますね』くらいは言いそうなのに」
「…………エルピスがアホすぎて毒気を抜かれた、とかか?」
どんだけ物騒な女神なんだ、あいつ。
「『疑わしきは罰せず、私が裁く』なんて言ってたこともありますね」
「殺意が高い」
「『信仰』の女神ですからね……ちょっとその、正義感が強いというか。カーディナル様の信徒に相応しくないと思うと排除しちゃう……のかも?」
「なんで疑問形なんだよ……」
「腐敗した信徒だけじゃなくて、犯罪者全般に容赦がないというか……あ、普段はとっても優しい子なんですよ! お菓子焼いてくれたりとか、ノースランドが豊かになるようにいつも頑張ってるんです」
「処刑を?」
「あはは……」
そこは否定してほしかった。
……が、甘くするだけは民衆がつけあがるのも事実だろう。
「で、寒波とやらは大丈夫なのか?」
「アイリスは普段、環境の維持のために力の大半を使っている……らしいですけど。それを解除しないと戦えない相手ということだと思います。ただ、油断さえしなければアイリスが倒れることはないかと」
何しろ瞬間移動である。
瞬間移動を貫通して魔装『ウロボロス』が追尾してくるなら打つ手なしだが。そこまで理不尽ではないと思いたい。
――――――――――――――――――――
一方、ノースランドでは。
太陽すら隠れるような凄まじい暴風と豪雪、それすら全て蒸発させんとするサタンの圧倒的な熱量が激突し霧のように凄まじい量の水蒸気が噴出していた。
『――――フハハハ! どうした、逃げるだけか?』
「そちらこそ、遅すぎて一度も当たっていませんよ」
神器『ゼピュロス』、鉄扇をサタンの脳天に叩きつけるがアイリスの非力さも相まって風の力を多少乗せた程度ではサタンは全く痛痒を感じていないようである。
対して全てを薙ぎ払う勢いで暴れるサタンの攻撃も、風に舞う木の葉のように自由自在に空を駆けるアイリスには当たらない。
ならば、と目を狙うが瞼すらも攻撃が通る気配がない。
ひたすらに、アイリスの精神が削られるだけの鬼ごっこが続けられる。
のだが、先に痺れを切らしたのはサタンの方だった。
『……ふむ。少々飽いた―――――何故、我がこのようなコバエの相手をせねばならん』
「短気ですね」
『ああ、腹立たしい―――――全て燃やし尽くしてくれよう』
瞬間、サタンの鱗の下から深紅の光があふれだす。
全方位への強烈な『憤怒』の発露――――シンプルな熱の放出だが、その温度が高ければ? 鉄すら溶かす温度なら?
「――――っ!」
まるでレーザーが全方位に照射されたかのような衝撃。
アイリスは咄嗟に真空の壁を作り出すことで防いで見せるが、急激に温度が上がるのは止められない。
『猪口才な――――疾くその首を差し出せ』
「あっつい! ああもう、このクソボス!」
繭のような真空の防護壁を張ることで凌ぐが、動きが止まったと見るやサタンはその巨大な竜の爪をアイリスに向けて叩きつけ―――――。
「いった――――くはないけど! おっもい!」
『ほう、これも防ぐか』
感心したようにサタンが呟き、周囲の温度が下がったのを確認するとアイリスは真空の繭を解除して飛翔。すかさず放たれた追撃のブレスを、鉄扇で煽ぐことで逸らす。
サタンは『怒り』によって放出する熱が変わる特性を持つ。怒れば怒るほど熱くなり、手に負えなくなる。故に倒すなら一撃必殺が望ましい――――のだが。
(あんまり時間かけると、絶対怒るもんなぁ)
アイリスの大技は、どうしても時間がかかる。
暴風雪を切り裂いて空を飛ぶアイリスは、魔界と繋がるゲートの位置を確認して位置を調整する。
『どうした? 何かあるなら見せてみるがいい』
「―――――あはっ。もう見えてるでしょう? ばーか」
――――――――――――――――――
「―――――なんだこれ」
「これは……アイリス!?」
一方そのころ。ユースティアが翼を出して、ユーリを抱えて飛翔。ユーリはエルピスを抱えるという移動方法でノースランドまで来たところで――――とんでもない光景が目に映った。
「………竜巻、か?」
「う、うわぁ……でっかいですね……」
天を貫き、ノースランド全域に広がろうかという圧倒的な雲の量。それが渦を巻いて一点に集中する光景は異様だった。
「もしかしなくても、あれの中か?」
「はい。神力を感じます。あの竜巻全体がアイリスの操る風――――まさか、ここまでの大技を使えるなんて」
さながら、台風が一点に収束するかのような異常事態。
では、その内部は?
―――――――――――――――――――――
「―――――台風の目、知ってますよね?」
『貴様―――――』
「此処は本来あり得ない、
凄まじい雪の量、大量の水蒸気で見えなかっただけで嵐の壁がサタンのすぐ近くまで迫ってきていた。
「さて。一つの国の信仰と風を全て束ねた、台風竜巻――――受けてみる勇気がありますか?」
サタンは無言で全力のブレスを吐き。僅かに水蒸気が生み出されるだけで消える。竜巻は、この世界に存在しない核爆弾すら比較にならないエネルギーを秘めた大自然の力。
アイリスは、厳密にはこの超巨大竜巻を作ったわけではない。これができるように風を操り、自然の条件を整えてやったに過ぎない。
奇跡的なバランスで保たれた竜巻が、動く――――。
大地が悲鳴を上げるような凄まじい音とともに、サタンの巨体が浮き上がる。
必死に地面にへばりつこうとするその様は、まるで蜥蜴が必死に壁に張り付くかのようで。
「―――――あははは! じゃあ、逝ってらっしゃーい」
『き、貴様ぁ――――――ッ!』
「ぷっ。ぶざまぁ」
無様に浮き上がり、洗濯機に放り込まれたごみのように攪拌されるサタンに爆笑するアイリスだが、ここで手は抜かない。ここまでやっても多分死なないのがサタンである。
心臓を破壊しない限り、ほぼ倒すことは不可能――――それを念頭に、奇跡的なコントロールで竜巻ごと魔界へのゲートに放り込んでやる。
『殺す―――――貴様は犯しぬいた後、無様に殺してやる――――!』
「はいはい、じゃあねー」
怨嗟の声を吐きながら、トイレに流されていくような無様っぷりで魔界に送られていくサタンに爆笑するアイリスだが。既にサタンに抗う術はなかった。