最近世間はクマが出たと騒いでいて、なんとも物騒な世の中だなと思いながら自分の20年間を費やした至高の田舎暮らしをする為に購入した山間部のデカ目な家の中で自分の好きなゲーム、モンスターハンターサンブレイクをプレイしていたら、なんとびっくり窓の外に熊が!
あまりの衝撃に放心している間にも、熊はこちらに向けて視線を送り続けてくるし、ハンターはガランゴルムに叩き潰されているのだが、それでも俺は体が動かなかった。
おち、おち落ち着こう!一旦救急車呼んで…いや先に警察?それとも猟友会?いや人と関わりたくなさすぎてここら辺最寄りの交番も徒歩1時間は掛かるし現実的じゃないのでは?
いや現実的かどうかよりも実行だ
とにかく俺の知りうる限りの生存策を弄さなければ死ぬ!そんな直感が俺にはあるね!
急いでスラッシュアックスのテンプレート作成用に開いて置いてあったスマホを少し震える手で取り、110番を入れていく。ふと怖くなって熊の方を見れば、なんだか狂った*1ように俺の家の窓をぶっ叩いている……。あれヒビ入ってね??
マズイですよ!非常に!
うおおおお急げ警察!ここで出なかったら俺は警察署の亡霊になってやるからなぁぁぁ!─────あ、窓割れた
「ぐぐる!」
窓をロケット生肉よろしく破壊した熊はそのまま一直線に俺の元へ突進してきて、そのままとんでもない膂力に任せて俺を殴った。
至る所の骨が折れる感覚と、皮肉が裂け血がどくどくと溢れていく感覚に苛まれる。痛すぎるだろ!ハンターすげーな!
絶対今考えることじゃないが、ゲームの世界とはいえハンターも、こんなのを常日頃からやりあっているモンスターもイカれてるなと思う。
血の暑さと寒さに感覚がバグり、どうにも視界がふらついてあの熊が何処にいるかもわからない。クソ!もっと視力が良ければよかったのに!
《確認しました 千里眼 成功しました》
そういえばとテレビに視線を戻せば、ネコタクにゴロゴロと運ばれて何故か五体満足のハンターが仁王立ちしウツシ教官をシカトしているのが見えた。
まだ狂化lv2のお守りも獲得してないのに!死にたくねー!
俺もネコタクみたいに死んでも生き返れるってんなら良かったのになぁ!アイルーに世話されてぇなぁ!俺もなぁ!
《確認しました
《確認しました ユニークスキル 猫ノ手を獲得… 成功しました》
ウツシ教官のクソうるさい声が耳に響く。友達もいなければ救援要請をするのもなんだか恥ずかしくて出せなかった俺にとってはウツシ教官がありがたかった…。ほんとにうるさかったけどな!もうちょっと声量落としてな!
《確認しました 音響耐性 成功しました》
もし来世があんならモンハンのモンスターみたいなのがいいな
ハンターに怯える日々かもしれないけど、自然の中で生きるってのが楽しそうだよな。田舎に来たって結局文明を捨てきれなかったし、いっそそうなったら楽しそうなのに
《確認しました エクストラスキル 牙獣種 を獲得…成功しました》
《確認しました エクストラスキル 甲殻種 を獲得…成功しました》
《確認しました エクストラスキル 甲虫種 を獲得…成功しました》
《確認しました エクストラスキル 翼竜種 を獲得…失敗しました》
《上記の翼竜種と同様に、鳥竜種 魚竜種 飛竜種 海竜種 獣竜種 牙竜種 蛇竜種 古龍種の獲得に失敗しました》
《欠損したスキルのみで、アルティメットスキル ■■■■の獲得に挑戦……失敗しました》
《代替案として、ユニークスキル 獣甲種 を獲得…成功しました》
さっきからうるせぇなウツシ教官!!
くそ!こうなったら最期にウツシ教官に小タル爆弾ぶち当ててやる!───と思ったら俺をじっと見ていた熊がのそのそもぞもぞと動き出した俺の背に全体重の乗った右腕のストンプが炸裂した。
◆
「Gaeeeeeeee?」
そしたらよく分からん森にいました。なんで??
辺りを見渡せば木!木!木!3つ合わせて森!
んなふざけてる場合ではなく、真剣にあたりを見渡す。
どうにも俺が住んでいた集落の山ではなさそうだ。 だって俺の記憶が正しければあの時は12月ごろ…。間違ってもこんなにあおあおとした草木がある訳がない。
それと……なんだ、さっきの声は。俺か?俺が出したんか?
《解。先程の咆哮は、
誰やねん(反射)誰やねん(驚愕)
《解。私はユニークスキル 猫ノ手 です》
✟ユニークスキル✟ですか…で、なんの冗談ですか??
どうせタチの悪いドッキリだろ…と思いたいが、俺はあの熊にやられた痛みを覚えている。思い出せている。
《……》
それで、ラングロトラとか言ったな。つまりなんだ?俺は輪廻転生でもしたのか?畜生道に?それもわざわざ即時転生で?
《……》
だんまりやめてもらえます???虚しさと切なさと悲しさ*2が襲ってくるので!!
《……解。私は限られた範囲のみにしか回答できません》
あー。なるほどね。なんとなく理解出来たかもしれない。これあれか?俺が死ぬ前のくそみたいな雑念と、ウツシ教官だと勘違いしてた声か?*3
《是。その認識で間違いありません》
だとしたらさ、モンスターになりたいっていうあの願いがラングロトラになるって形で現れたってこと?
《是。その認識で間違いありません》
あと、俺にそのユニークスキル?ってのはキミ以外になんかあるの?あるなら知っときたいんだけど。どうせモンハンの世界は強くてなんぼでしょ?
《是。私の他に、ユニークスキル 獣甲種 が存在します》
獣甲種…?モンハンにあったかそんな種類。
あいやでも、ラングロトラって赤”甲””獣”なんだよな
分類は牙獣種だろうけど、確かにそういう扱い方も出来るのかなぁ?だとしたらユニークスキルとか大層なもんじゃない気がするんだけど。せいぜいレア止まりじゃないすか??
《解。■■■■の劣化である獣甲種には、牙獣種、甲殻種、甲虫種のみが保存されており、ラングロトラ以外も存在します》
………。いまいち分からない、もうちょい簡単に言うと?
《ラングロトラのみでなく、例えばアルセルタスにもなれるということです》
へーアルセルタス。へー………。
なれる???
なんだ?つまりは俺はラングロトラからアルセルタスになれたり、アトラル・カにもなれるってこと??!最強じゃん!
《否。現時点での旦那様では生物としての格が低いためラングロトラが最高地点となります》
ラングロトラが最強とか終わってて草。