すいません、『エクスタスの裏ワザ』を解禁します。   作:原作改編

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チブル暗殺終了後。


絶対悪を斬る!

「止まれ、そこのふたり。ナイトレイドだな?」

 帝都警備隊セリューユビキタスは公園に潜んでいた。

 深夜のこの場所は広いにも関わらず人が通っても目立たない構造になっている。心理的にも警備的にも『警護する必要性が薄い』とされるポイントだった。だからこそ彼女はここにナイトレイドが来るだろうと夜ごと身を潜めていた。

 そして、セリューの思惑はこうして的中したのだ。顔を見られてしまったマインはやれやれとセリューへ話しかける。

「アタシらを待ち伏せたあげく、一発で見抜くなんてやるじゃない」

「……」

「気に入ったわ、アタシらと一緒に来ない? アンタならスカウトしてあげてもいいわ」

「……スカウト?」

「そう、腐った帝国を一緒に変えようって誘ってんのよ。アンタにその気があるならアタシが紹介してあげる。まあ悪いようには―――」

「――――黙れ、オーガ隊長を殺したお前らの軍門にくだるわけないだろう」

 マインは心の中で舌打ちする。

 怨恨、こういった復讐鬼はどうしたって仲間にならない。もともと帝都警備隊員など引き抜くつもりは毛頭ないけれど、確定的に付け入るスキがなかった。どうあがいてもこの場で決着を着けなければならない。

「わたしは絶対正義の名のもとに、悪をここで滅するッ!」

「あらそう、じゃあアンタが消えなさい―――!」

 返事と同時に、パンプキンの光線を放つ。

 衝撃波の塊、極限まで圧縮された一筋の光は一直線にセリューへと向かった。直撃すれば、銃弾のように人体を貫通しうる破壊力を秘めている。しかも射撃の天才であるマインが放つ一撃は的確に心臓を狙っていた。

 必殺の一撃に、セリューは余裕を見せていた。すでに彼女は安全圏に入っていたからである。

 足元にいた犬型生物帝具『ヘカトンケイル』が本性を表わす。

 白い身体は大きく膨張し、セリューを弾幕から守る壁になっていた。マインの放った光線は一発も貫通することなく、コロの体内で消滅する。

 そして、間髪入れずに首が斬れる。

 セリューたちの死角から、エクスタスが繰り出されたのだ。エクスタスの刃はコロの首を斬り裂き、大量の赤い血液を周囲にまき散らす。傷は深く、だれがどう見ても致命傷なのは確実だった。

 しかし、コロは死なない。首を斬られても生きていた。

 そして、一旦後退したシェーレは傷口の再生を目撃する。

「やはり、あれは帝具『ヘカトンケイル』で間違いないですね」

「核を潰さない限り永遠に再生し続けるって噂は本当らしいわね。めんどくさいわ」

「おまけに斬られる前より確実に強くなってます。気を付けないと」

「ああいうタイプは『使い手』を叩くに限るわ、良いわねシェーレ」

 コロの修復が完了する。

 セリューはしたたかに二人の戦闘能力をはかっていた。万物両断エクスタスと浪漫砲台パンプキン、そして扱うふたりの技量、それらを想定してこれからふたりがしてくるであろう抵抗を推測する。そして、すぐにプランがまとまった。

「コロ、『腕』―――」

 セリューの命令とともに、コロに新しい『腕』が生える。もともとあった可愛らしい肉球をした手は危険種顔負けの怪腕へと変化した。ひとたび掴まれれば骨など砕けてしまうのは目に見えてわかる剛腕だった。

「―――そして『捕食』ッ!」

 コロはマインに向かってダッシュする。人間さながらの腕振りと鬼の形相で二人に迫った。

「ちょっとちょっとちょっとぉ!? こっち来んなぁ!」

 マインは慌ててパンプキンの標準を定める。いくら再生する帝具といえど、足を狙撃すれば転倒することはよくわかっていた。一撃で沈める火力に乏しい以上、マインの狙いは下半身、それも足の親指付け根である。

 しかしパンプキンの狙撃は失敗に終わる。

 なぜならコロが跳んだからだ。2メートルはある巨体が空中を飛んだのである。パンプキンの光線を躱し、なおかつマインに喰らいつかんと無数に牙が並ぶ大きな口を開いた。

 ――あ、死んだこれ。

 マインは一瞬、死を覚悟した。次の引き金を引くより先に喰われる。けど足がすくんで逃げられない。コロが迫るスロー再生のような映像を眺めている自分がいる。

 マインの前に、シェーレが立ち塞がった。

「マイン、私の後ろへ」

 シェーレが帝具エクスタスを横に構える。受け止めるつもりだ。しかしそれには圧倒的に重量が足りないことはわかっていた。マインは瞬時にそれを理解し、シェーレの背中を支えた。

 轟音とともに激突するコロとエクスタス。

 突進力と重量のあるコロ、シェーレのエクスタスがいかに頑丈であるといえど、力比べにおいて圧倒的な力量差があるのは明白だった。それをカバーするようにマインがパンプキンを後ろに連射する。反動で少しでも押し負けないように。

 結果、コロの突進は止まった。

 エクスタスがコロの歯を受け止める形で止まったのだった。

 ここからは、シェーレの仕事である。

「すいません、すこし目を閉じててください―――『エクスタス』ッ!」

 シェーレのエクスタスの奥の手が発動する。

 まばゆい閃光、直視すればしばらく行動不能になりかねない強い輝きだ。ネタを知っているマインはともかく、コロにはなにが起こったのか理解できないようだった。コロが思わず口からエクスタスを放すことは生物的本能と言っても良かった。

 コロは怯んで後退する。

 シェーレはそのスキを逃さない。ハサミを開いて最大限のリーチを確保したまま思い切りエクスタスを振りかぶる。そして、コロの首を一刀両断した。

「――すいません」

「ナイスシェーレ」

 コロの胴体ほどある首が地面に落ちる。ドチャっと赤い血が公園の床を汚した。いかに生物型であろうと頭を潰されては行動することができない。使い手を殺すまでの時間を稼ぐには充分だと判断したのだ。

 コロは完全に活動を停止した。それでもセリューユビキタスの表情は余裕そのものだった。

「充分だ、コロ。『戻れ』」

 突然、首なしのコロが動き出す。落としたはずの首と血液は蒸発をはじめ、蒸気が首へと集まることであっという間に首の切断面から新しい頭が生えてきたのだ。核があるだけで決して死なない千年生きた生物にとってはこの程度のダメージなど珍しくないようだ。

「あらあら、なんとまぁ――」

「うへぇ、これだけ復活が早いと嫌になるわね」

 コロは、セリューの横へと戻っていった。さっきの切断でより強く、たくましくなった首をセリューに撫でられる様子は本物の犬のようだった。彼女の笑みは、余裕と怒気を孕んだものだった。

「たしかに見たぞ、ハサミ型帝具の奥の手。なるほど大したことはないな」

「……そういうアンタの帝具こそ、よっぽど核が大事みたいね。とっさに庇う仕草と今の一撃で大事なところの位置はもうバレバレなんだから」

「そうやって強がっておけ。最後に勝つのは正義なのだからな」

 セリューはシェーレに向けて指を指す。

「ナイトレイドのシェーレに判決を言い渡す! お前は殴殺刑のあと、コロの餌の刑だ!」

「……お腹壊しますよ」

「次で終わらせるぞコロ、準備はいいか―――」

 コロは手を地面につき、お座りの体勢になる。

「――コロ、『狂化』ァ!」

 瞬間、コロの身体が真赤に変貌した。大きな瞳が赤く血走る。全身の筋肉が膨れ上がり、首輪を引きちぎってもまだ太くなっていく。筋骨隆々の身体。コロは『狂化』によって更に強くなっていった。

 そして、耳を塞がざる負えないほどの『咆哮』。町全体に響き渡る音の振動は間近にいるふたりの鼓膜を容赦なく叩く。圧倒的な存在感に大気が震えた。

「さあ、狂化のギアを上げろコロ、絶対正義は悪に屈してはならないッ!」

 これが帝具ヘカトンケイルの奥の手。

 数カ月のオーバーヒートと引き換えに得た圧倒的な力だった。

 シェーレは赤く染まったコロを見て、考える。この場でふたりとも生還できる可能性が高い手段を模索した。完全に怯えているマインに耳打ちをする。

「マイン、使い手の方はあなたに任せます」

「え?」

「私はあの生物型をなんとかしますので」

「なに言ってんのよ、あんなのひとりで相手に出来るわけないじゃない」

「そうかもしれません、けど私にはトッテオキがありますから」

 シェーレはエクスタスを振り回し、血糊を飛ばす。そして、マインの前に盾として立ちはだかった。この場で最も強い存在として君臨するコロへと対峙する。

 

「すいません、『エクスタスの裏ワザ』を解禁します」

 コロに言ったのか、あの日のボスに言ったのか本人にもわからない。

 

 




次回、絶対強者を斬る!
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