和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか? 作:鬼怒藍落
あれよあれよと雫と戦う事になった俺は、鍛錬場所に使っていいとされる庭に向かいそこで彼女と向き合っていた。
彼女は原作でも見たことのある黒い扇を手に持っており、改めてだがこの世界が「あやかしがたり」のものなんだろうと理解する。
「武器はどうするの? 持ってこさせた方がいいかしら?」
「いやいい――起きてくれ、
呼び出すのはそんな名前を前の俺が名付けていた一本の刀。
基本刃を潰してあるが、金の術を覚えたときに父さんに褒められた最初の一振り。ほぼ本物のこれは過剰かもしれないが、全力でやった方がいいのは確かだろう。何故なら彼女に試されるというならば一切の手加減など出来ないからだ。
「――へぇ、本当に金の術も使えるのね」
「まぁな、もともとそっちだけの才能だと思ってたし」
「すごい才能よね、ほんと。五行すべてに適性があるなんて」
「まぁいいだろ」
「それもそうね――来なさい
彼女が名を呼べば、初めて出会った夜に姿を見た二匹の獣が姿を現す。
あの時見たから驚きはないが、今思えば彼女は五つという歳でこいつらを使えてたのかと驚いてしまう。幼少期の回想なんて数えるくらいしかないから知らなかったが、才能と努力がやばいなと。
正式な二匹の名称としては
原作でのシズクは最初は主人公君に協力し、先輩陰陽師として何度か戦闘を共にする事になるんだが、その共にした戦闘で圧倒的な力を見せたうえにピンチの彼を救い続けた。
何よりやばいのはこの式神達は彼女の魔力と影を触媒に生み出されるもので、すぐに復活してしまう。流石に試しでそこまでの殺し合いになる事はないだろうが……気を抜けばやられるのは確かだろう。
「――合図はどうするの?」
「そっちからで良いぞ」
「そう――なら甘えるわ、行ってちょうだい?」
彼女の式神達はその言葉を合図として俺へと襲いかかってくる。
真神の方は速度を活かし、黒面は氷の術を唱えて接近してきた。
その牙と爪を使い何度も攻撃してくる狼と援護するよう氷の弾幕を張り巡らせる狐。原作通りの戦い方だが、ここは漫画やゲームと違って現実でHPがあるから耐えれるなんてことはないのでミスれば死ぬ。
「殺す気か?」
「いいえ、貴方はこのぐらいじゃ死なないでしょう?」
軽くそう言えば、聞こえたのか言葉を返してくるお嬢様。
期待しすぎだと思いながらも俺は真神の攻撃を躱して、氷を刀で切り裂き続ける。今回の勝利条件は来る途中に聞かされたが雫に触れる事。
だから俺がやるべきなのはこの二匹を倒して彼女に近付けば良いだけで、言葉にすれば簡単そうだが……。
氷の弾幕が壁のようになる。
一本一本が人を貫けるような氷柱の弾丸、それは高速で俺へと迫り避けるのが精一杯。危険な奴だけを判断して対処しているが、それだけに意識を向けられない。
――何故ならば。
「……そっちもいるからな」
俺に襲いかかる真神があまりにも苛烈に攻撃してくるからだ。
斬っても斬ってもシズクから魔力を供給される限り回復し、何度倒してもすぐに攻めてくる――つまり、それを考えると刀だけでは多分不利だ。
「この程度?」
「……いや、ここからだな」
……手加減してたわけじゃないが、彼女を巻き込むと思って他の術を使う気は無かった。だけど、今思えばそれは彼女に不義理だろう。試されるというならば全力でやらないと彼女を認めさせられない。
もともとは試しの戦闘ではあるが、こうもやられっぱなしで侮られるのは癪だし何より俺だって自我を取り戻す前も、そのあともかなり頑張ってるのだ。正直に負けたくない。
「
俺の足元から激しい炎が広がり、迫る氷を取り込んで無に返した。
流石に生物に近い式神に使うのが気が引けるが、それは今の術を切り替えながら戦えば良いだろう。
俺の今使った蝕という術は、対陰陽術用の技で父さんが教えてくれたもの。
他者の術を喰らって無効化するというものであり、喰らうという部分を変えればこの術で物理ダメージすら与えられる。
「よし、攻めるぞ」
それだけ言って俺は走り出す。
真神の攻撃を掻い潜り、誰でも使える身体能力の強化術を使って彼女に迫る。
近付けば主を守るためか黒面がより高密度で術を使ってくるが、それら全てを蝕で喰らい、そして俺は彼女の前まで辿り着き。
そしてこつんと……俺は彼女の頭を軽く小突いた。
「よし、これで俺の勝ちだな」
「……思ったより優しく叩かれたわ」
「そりゃあ、あんた仮にも女子だしな……傷付ける訳ないだろ?」
そう言って俺は笑う。
刀を離せば空気に溶けるようにして俺の持っていた暗月が消える。
それを見届けてかなのか、雫が消したか分からないが二匹の式神が俺等に一礼して消えていった。