和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか? 作:鬼怒藍落
目を閉じて、そのまま自分の魂に意識を向ける。
命式で見られた神依木の才、それを伸ばす特訓としてか俺にはこの宵闇家にいる間に、一日二時間の瞑想が義務付けられていた。
自分の起源を伸ばすために中の依木を育てるイメージ。
そんな事を教えられ、今日も今日とて瞑想をしてれば……気づけば俺は、またあの月下の湖にいた。
「……うわ、来れるのか」
百鬼空亡が暮らす咒禍の世界。
そこに足を踏み入れれば俺は前世の姿に戻る。
やっぱり変だよなとか思いながらも、俺は前より居心地がよくなったことを感じつつ、そのまま社がある湖の中心を目指すことにした。
「って、なんか生えてる?」
石鳥居をくぐって、中を見れば社の中心部分に少し背の低い木が生えていた。
驚いて目を向ければ、木陰には空亡がいて……一人で目を閉じて休んでいる。声をかけようか迷ったが、気になることが多いので話しかける。
「っとこんばんは?」
「…………」
「……えっと、あれ?」
「……」
呼びかけてみても鈍いというか反応がない、とりあえず空亡の隣に腰掛けてみて目の前で手を振ってみるが、反応はない。
「はぁ空、寝てるのか?」
「ぅ……ぁ……ねて、ない」
「いや、意識限界だろ――声かけてごめんな」
「最近……ね、この世界が温かいから」
いや確かに前より暖かいけれど、そんな器用に寝るほどに暖かいわけではないだろう。それに、かなりぼけーっとしているし、彼女はなんかポヤポヤしているようにも感じてしまう。
「でも、ちょうどいい。膝枕して?」
ぽやぽやしつつも、上目遣いでそんな事をねだってくる女神様。
呼ばれなきゃこれない世界だとは知っているが、まさかそのために呼んだわけではあるまいな。
「……その、断ったら?」
「すごく泣く、とっても」
「それは、どのぐらい?」
「貴方がドン引くぐらい」
「やめてほしいかな?」
「じゃあ、膝貸してね」
脅し……うん、まごうことのない脅迫に屈した俺はそのまま横に腰掛けて膝を貸すことにした。とりあえずこれで話を聞ければいいなと思ったが、彼女の顔を覗き込めばそのまますぅすぅと寝息を立てて。
「いや、寝るなよ」
「やだ寝る、全部ぽかぽかしてるのが悪い……から、責任取って貴方が布団」
「俺のせいなのか?」
「木を生やしたの貴方でしょ?」
「心当たりはあるけどさ、暖かさは関係ないと思うぞ」
「……審議でお願い」
関係あるのかなぁ……いや、それを判断しようにも俺にそこら辺の専門知識がまだないから、何もわからないんだけどさ。
「じゃあおや……すみー」
「だから寝るなって呼んだのお前だろ」
「うん、呼んだ――えへへ、だからまた会えた、でしょ?」
手を伸ばして俺の頬にかざし、そのまま笑顔を浮かべる女神様。
あざといというか、そんな事を一切考えてない無邪気な行動。不覚にも可愛いと思いながらも、色々聞くために心を鬼にして質問する。
「そのさ空亡は俺の中にいるのか?」
「……そう、だね。なんでかわからないけど、気づいたら貴方の中にいた。でも居心地いいから好きだよ?」
「……そういう事を聞いてるんじゃないんだが、これからどうするとかあるか?」
この子はこの世界のラスボスが求めるピースの一つ。
そんな彼女を宿してしまった時点で、俺はラスボスから狙われるのが確定しているというか、知らない死亡ルートが生えているような状況なのだ。
不本意だけどそれを考えると少しは強くないと明日には、廃人ルートが見えている。この先父さんたちが死ぬ可能性もあるのに、何の覚悟も決まってない状況でこうなってるのだが……正直なところ、どうすればいいかなんてわからない。
首をかしげる最恐少女。
俺の質問の意図を咀嚼しながらも、しばらくしてはにかんだ彼女はゆったりと……だけど、はっきり俺と目を合わせてこういった。
「貴方と、一緒がいい」
真っ白な何も映してない瞳が俺を射抜く。
そうして伝えられた意思は重く、まだ関わって日の浅い俺に向けるべきではないものだろう。
「……そっちからすれば攫ったみたいなもんだろ? 理由は分からないけどさ」
「でも、貴方は話してくれたから。それにね、私を……世界から呪われた私を見ても死なないから」
「えっと?」
「普通の人は声を聴いただけでも死ぬんだよ、でも貴方は生きてる。それで私とおしゃべりしてくれるの、とっても嬉しくて……だから絶対に放したくない」
「遠慮したいんだけどいいか?」
「じゃあお試し期間、本当にいやだったら言ってなんとか出てみるから」
そう言って一方的に言葉を伝え、俺の膝から飛び起きた少女は繋ぐ鎖をジャラジャラと鳴らしながらも、笑顔で言う。
「また会おうね、次はもっとお話しするの」
「――ちょまっ!? まだいいっていってな」
それを最後に俺の意識は浮上して、目が覚めると宵闇家の道場の中にいた。しかもそれだけじゃない、なんか視線が低いというか冷たい何かに寝かされてるというか。
……とか思って上を見上げれば、真っ黒い瞳と目が合って飛び起きた。
「あら、おはよう蓮。ウサギみたいね」
「……おはよう、ございます。その、何をしてるのでしょうか?」
犯人の名前を宵闇雫。
……あろうことかなんの恥ずかしげもなく膝にのせてきた彼女は、くすくすと笑いながら答えてくる。
「膝枕ね、貴方が無様に寝ていたから悪戯よ。こないだの仕返し」
「……どれだ?」
「頭叩かれたでしょ?」
「あぁ……それで? あんたはこの時間稽古とかあっただろ?」
「とっくに終わってるわよ、今何時だと思ってるの」
「昼の十二時ぐらい?」
「はずれ、夜の九時よ」
えぇ、そんなに寝てたのか?
確かに道場の時計を見てみれば、そこの針は夜九時を指している。
あの世界の時間の流れは違うということをそれで知れたが、そこまで潜っていたとは思わなかった。
「でもちょうどよかったわ、今日目覚めたのならお父様に会いに行くわよ」
「へ? なんでだよ」
「知らない、用事としか聞いてないもの」
「怖いんだけど……」
「ふふ、いい気味ね」
そのまま俺は、何もわからないままに呼び出されることになり……雫に連れられながらも、宵闇家当主、宵闇源弥さんと再び会うことになった。