和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか? 作:鬼怒藍落
また、目を覚ます。
あの世界から浮上して、目を覚ませばそこは蠟燭が灯る部屋だった。微かな明かりを頼りに周りを見渡せば、部屋の四隅には札が張られており見た限り回復用の文字が記された字図符だろうと。
「……かなり高価だろ、あれ」
陰陽師が扱う霊符と呼ばれる道具。
主に種類としては、字符に図符――そして、今言った字図符の三つがある。
字符は文字通り漢字だけで構成された霊符であり、一般的に使われる物。図符は神霊の姿や呪力を象徴する記号・図形を描き、図そのものに意味が込められており効果が高い。そして三種類目である字図符はそのハイブリットであり、効果が高いが作成難易度が高いとかだった気がする。
しかも癒しの効力があるものとなれば、その価値はさらに上がりそれを四枚。
ただの客人に使うには勿体ない使い方にドン引きしながらも、ありがたくはあるのでこの状況を甘んじることにした。
「ってことはしばらく安静だよなぁこれ。暇かぁ……」
まだ状況を説明されてないからどこまでやっていいかわからないし、何より勝手にやったら怒られそう。だから何かするわけにはいかないが、まじで暇は苦手なのでどうしようかと考える。
「……蓮、起きたかしら?」
「雫?」
そんな時だった。
こんこんと戸がノックされ、聞きなれた声が聞こえてくる。
一応感知を使えば本人であることは分かったが、どういうわけか少しの違和感が。でもまぁ雫には違いないので入っていいと伝えれば雫が部屋に入ってきた。
「よっどうした?」
「心配だから見に来たのよ」
「へぇ……ってちょっとこっち来れるか?」
見るにいつも通りの彼女。
黒い髪に端正な顔、どこまでも鋭利な雰囲気の原作のヒロイン。
ずっと覚えている彼女の容姿、だけどいつもと違って目が赤く、初めて見るくらいにニコニコしてる。だからこその二つの違和感に俺は。
「なぁ、君は雫じゃないだろ」
「なんで、そう思うのかしら?」
「眼と、その無邪気さが違う」
「……どうして?」
「いや眼の色は普通に違うし、あいつは君みたいに笑わないんだよ」
あいつの笑いはラスボスみたいな愉悦を味わうような笑いだ。というか嗤いっていてもいい。普通に本能的に怖いし、俺に向けられたときとか肝が冷える。
だけど、今のこの子の笑顔はそれとは別種の無邪気な笑み。
そんな年頃の女の子のような笑顔をあいつが浮かべられるわけがない。だから、こいつは別人というか。
「へぇーやっぱりすごいね、蓮って。ほんとうに私がわかるんだ」
「まぁ明らかに違うし、で……君は?」
「私? 私はね、
その存在は知っている。
……うん、知っているというか。読者として覚えているというか……今更だけどこの子を見てしまったからこうなってるんだよな? あれ、選択間違えた?
というか普通に話してるけどさ、この子もやべぇんだよな。
空が妖怪側の神だとしたら、陰陽師側の神であるこの子。関りは二人にはないけれど、対等な格を持ち真っ当には関われない存在。
「……それで、その神様が何の用だよ」
どうしよう、気づいた瞬間にめっちゃ声が震えた。
平静を装っているけれど、なんかすごい怖い。やらかしたら死ぬし、なんなら首が飛ぶ。そんな存在に軽口叩いた事実と微妙に認識されてるせいで急に態度を変えたら不審がられるから、詰んでそうで笑えても来た。
「んーっと、挨拶?」
「じゃあこれで終わりだな、自己紹介はしてないけど俺疲れてるから」
「ふふ、やーだ。だってさあの娘を宿してる男の子なんて気になるでしょ? もっとお話ししよーよ」
「……そういえば雫は見えてるのか」
あの出会った夜に、さりげなくバレてたし、もうこれ詰んでるとかいう次元じゃなくないか? このままではよくて死亡、悪くて永劫に魂を囚われるとか普通にあり得るので、原作とはじまる前に死ぬかもしれない。
「うん、私も名前は呼べないけどね。でねでね、君はなんで生きてるの?」
「それ聞こえ方によってはめっちゃ悪口だぞ」
「だってー気になるんだもん」
なんか雫の顔でこんな砕けた口調で話されるのは違和感がすごい。
ぶっちゃけるとこの状況に慣れないが、なんで生きてるの? は普通に悪口だろう。というか今更だけどさ外に目を向ければすごい強固な結界が張られているし、逃がすつもりがないようだ。これ、答えなきゃダメな奴だろうか。
「俺も知らないよ、気づいたら空が俺の中にいたらしいし」
「嘘……じゃないっぽいね。ふっしぎー」
「で、用件はそれだけか?」
「うーん、まぁそうだけど。素っ気なくない?」
「そりゃそうだろ、初対面だし。何より、俺は君を崇める気はないから」
「…………へぇ、なんで?」
「そりゃあ、つまんなそうなあんたを祀っても……なんかご利益なさそうだし」
やっべ、勢い余って原作で一方的に知っている情報を話すところだった。
彼女は人間には表面上は友好的だ、それこそいつも笑顔で何より親身に接してくれる。だけどその中身を知っている俺からすれば、寂しいなって思う子で、救えるのは主人公君だけだろうから関わる気がない。
「――なんで、そう思ったのかなー?」
「言わなきゃダメか?」
「うん、言ってくれたら帰ってあげる」
「眼が……笑ってないんだよ。ずっと笑ってんのに、空っぽに見える」
「そっか――へぇ、そっかぁ! あー決めた、君を絶対手に入れるね」
「は? おまっ何言って!?」
急に壊れたのか、そんなことを言い出す神様。
何を思ったのか知らないが、それはまずいというか。そのセリフは主人公君にとっておいてあげて欲しいというか。
「ぜーったいに、私と雫の物にしてあげる。これはね、もう決めたんだ。えへへへ、これからよろしくね、空の瞳の
拝啓、今頃妖怪退治している両親へ。
貴方達の息子は、なんかめっちゃやらかしたかもしれません。助けてください、できれば今すぐ迎えに来てください、あと俺の人権ってどこですか?