和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか?   作:鬼怒藍落

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第20話:誰かの道具として生きていた少女

 私は穢れている。

 ……それは、魔喰いという能力を持って生まれたからではなく。ただ単に生を得た瞬間から歪で欠けていたから。

 私は人の顔が判別出来なくて、分かるのは妖怪の顔だけ。

 心にも穴が開いていて、誰かのためでないと動けない質だった。

 

 私を育てた人は言った。

 お前はこの村を守るために生きているんだと。

 私はそれを受け入れて、住んでた村の道具となった。妖怪を食べて力を奪い、どこまでも殺す日々。この世界で、命を奪い村を守って生きるだけで死ぬはずだった。

 魔を喰らい力を奪うという私に触れようとするものなんていない。化け物でも人間でもない私に関わろうとするモノなんて一人だけ。

 育ててくれた顔も分からない誰か、名前をも教えてくれなかった他人だけ。だけど声音から恐怖が感じられてそれがとても嫌だった。

 

 村の子達はいつも言う。

 私は化け物だって、私は怪物で、妖怪と変わらないんだって。

 そんな環境で、怖がられないように仮面を被るようになったのを覚えている。丁寧な言葉遣い、村の名家の子達の所作を盗み見て覚えたその態度。

 

 そんな中で村を襲った蜘蛛の群れ。

 ……最後の一匹以外を全部殺して、いつものように終わるはずだったのに、私は村の皆に裏切られて蜘蛛の女性の贄となった。なんでもその妖怪が言うには、私さえ手に入れればあとはどうでもいいからと手を引くからって取引をしたらしい。

 

 それからは散々だった。

 人間を襲い、蜘蛛の妖怪を集めて、奪う日々。

 陰陽師を騙すために生餌として使われたり、意識を沈められ私の手で殺させたりと。でも、それを楽しいと思う自分もいた。

 だって、この世界では自由だったから。

 道具として使われて、妖怪の役に立つも誰にも怖がられない。そんな世界に身を置いていた。相反する人を守らなきゃという感情と、殺す快楽に頭がどうにかなりそうだった。

 

 そしてその日もそうなるはずだった。

 ……いつものように弱い妖怪を装って、陰陽師をおびき出す憑依主。

 そんな彼女のもとに来たのは、同い年ぐらいの男の子。あぁ、似てるなと勝手に思った。同い年なのにこうして死地に送られて、可哀そうだとも。

 

 そして、沈む意識で彼を見て……あり得ないことがあったのだ。

 初めて人の顔を見た。鏡で見る自分の顔とは違う、男の子の顔。

 衝撃だった。意味が解らなかった。だって、認識できるはずがないんだから。でも現実は、私を救おうとどこまでも頑張って、必死に戦う彼の姿しか映さなくて。

 だけど、狡猾なあの妖怪の策で彼は憑依されて……私と同じになるはずで、なのにどうしてかあいつは死んで、彼と私は助け出された。

 

 それが、彼との出会い。

 一方的に救われて、そのあとは色々大変だったのを覚えている。

 私の血筋を知った宵闇という家に保護されての事情聴取、色々話すことはあったけどずっと気になる彼の事。あの顔が、声が、どこまでも忘れられなくて、初めての状況に追いつけなくて、夢かもしれないとそう思って。

 彼と会いたいとそう願った。 

 礼を伝えて、それで彼になら使ってもらえると、私は強い。

 妖怪さえ食べれれば、どこまでも強くなれるから。きっと必要としてくれるはずと。あの時顔が見えたのは幻想かもしれない、でもそれに縋りとたいと。

 

「君も無事でよかったです?」

 

 そして再び会えた時、彼はそう言って困ったように笑ってた。

 初めてだからわからないけど、綺麗な顔だとそう思った。濡れた鴉の羽のような黒い髪、宝玉のような蒼い瞳のそんな男の子。

 育て親がたまにくれた漫画というモノで知った、どきどきするという感情。きっとそれに近い何かに襲われて、平静を保つのがやっとだった。

 

 どうしてかずっと見ていたいと思えて、顔を逸らされてむっとした。

 それから、私は自分の思いを伝えたのだ。式神に彼の道具に、モノになりたいと。こんな事を言っても引かれるのは分かっていた。だけど、それでも止まれなかった。

 この世界で唯一、顔がわかる私の恩人。

 優しくて可愛いようなそんな男の子にそう言えば、彼は……怒っていた。最初はなんでかなんてわからなかったけど、彼が口走った内容は。私なんかの言葉よりずっとずっと恥ずかしくて私のための言葉で。

 

 気づけば誰も触れなかった私に触れて、何処までも真っすぐに私を見つめて、何よりも私を思って言葉をくれた。

 

「……名前、聞きそびれましたね」

 

 暗い部屋。あの後、気づけば客室に寝させられたいた私は、その部屋で一人言葉を残す。そして、昼のことを思い出して、顔が赤くなって。

 

「生きる意味を見つけるまで一緒にいると、あの方は言いました」

 

 嬉しかった。

 初めてだった。

 そんな言葉を貰うなんて思ったことなんてなかった。

 でも、ごめんなさい。私は彼にこのさきずっと嘘をつくでしょう――だって。

 

「生きる意味なんてものは、もう見つけたのですから」

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