和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか?   作:鬼怒藍落

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第21話:嫉妬という文字には女が二人

  目を覚ますとひんやりしたようなものに乗っていることに気が付いた。

 ついでに感じる桜の香り、何かバニラのような甘く優しい香りも覚えて、起きること数秒。顔を上げればそこにはイザナの顔があり……。

 

「どわっちょっ!?」

「起きたのですね、貴方様。おはようございます、もう朝食は用意してあるので一緒に食べませんか?」

 

 寝起きで何にも理解できない状況で飛び跳ねる。

 その最中に叩きつけられる情報量に混乱しながらも、とりあえず彼女から距離を取る。びっくり半分、恐怖残りの二分の一、最後にドキドキ少々。

 そんなぐちゃぐちゃな状況で、とりあえずなんでいるかを聞くことにした。

 

「傍にいろと言ったのは貴方様ですよね? だから早く目覚めて枕になってました」

「あの、そんなに近くである必要はないと思うんですけど」

「二言はないのでしょう?」

「距離感バグってるぞ、まじで」

 

 誰だよそんな無責任なこと言った奴……いや、俺なんだけどさ。

 顔を逸らそうにも視線を追ってくる彼女に根負けしつつ、俺は勉強机に置いてあるザ・健康的な朝食に眩暈を覚える。

 そこにあるのは味噌汁、焼き鮭、白ご飯。それに漬物などといった日本と言えばみたいな朝ごはん。美味しそうだけどめっちゃ手間がかかってそうな気配がして……。

 

「これは、イザナさんが?」

「……あの時みたいにイザナと呼んでください」

「でも年上を呼び捨ては」

 

 あの後知ったが、彼女は七歳。

 俺より二歳年上だったらしい。だからではあるが、呼び捨てにするのはと思ってそう言ったら。

 

「そう呼ぶまで毎日起こしに来ますね」

「えっとイザナ、これはイザナが作ったのか?」

「むぅ……素直じゃないんですね。そうですね、料理長に頼んで場を借りて作らせていただきました。冷める前にどうぞ」

「俺自分で用意してるから次からは別にいいからな」

「ですが、生きる意味を見つけろと言われましたので最初は料理に挑戦しようかと」

 

 ……ぐぅの根が出ねぇ。

 うぅ、自分で言った手前撤回出来ないし――これは口で勝てる気がしない。負けっ放しも癪だし何か言いたいが、彼女の自主性は尊重したかった俺は。

 

「自分の分は?」

「私は済ませたので、気にせずお食べください」

「じゃあ明日から一緒に食おうぜ。それなら作ってきてもいいぞ」

「……貴方様ってやっぱりずるいですよね」

「え、何が?」

 

 心底わからなかったので、聞こうとしたけど初めて彼女から顔を逸らされてしまったので、それ以上追及することができなかった。何がずるいんだろうと、考えるも答えが出ず、無駄だと悟ったのでやめた。

 それからは雫に呼び出されたので、彼女の部屋に行けば……。

 絶対零度のその視線、正座する俺に向けられる鋭いものに言葉が詰まる。それどころか、部屋が冷えているというか殺気レベルに痛い。

 

「……その、雫様。痛いです視線が」

「へぇ何か心当たりでもあるのかしら?」

「…………」

 

 どうしよう、何もわからねぇ。

 あの日、イザナにいろいろ言った後から雫が怖いのだ。

 なんか視線が鋭いというか、とげとげしてるし一緒にいてとても居心地が悪い。いや、俺が原因というのは分かるのだが……心当たりどこぉって状況だし。

 

「怪我したことでしょうか?」

「それもあるけど、まずその取り繕った言葉遣いを辞めなさい、不快よ」

「悪かったな、怪我して」

「そうね、誰かさんは安心しろとか言ったのに私以外のために怪我するなんてあってはならないわ、心配したのよ」

「……え、雫が心配?」

「何その反応、不愉快よ」

 

 その時の俺は、多分心底驚いたような顔をしていただろう。 

 雫は愉悦大好き人間というか、普段は怖いけど性格が破綻しているというわけではない。だけど、相当懐に入れなければ心配なんかしない筈。

 少しは気に入られてるのは分かるが、心配されるくらいまでなってるなんて思ってなかった。

 

「だってお前だぞ? いつも俺見て嗤っててからかってくるお前が、俺を心配って。熱でもあるか? もしかして大蜘蛛に毒貰ったとか……」

「貴方が私をどう思ってるか、よぉくわかったわ。でもね私だって人間よ、大事な人の心配ぐらいするの」

「――――――――」

「絶句しない、それに長いわよ」

 

 それはごめん。

 口には出さないがあまりの驚きに目を見開いて、俺はそのまま今までの言葉を思い出す。一個の原因は理解したけど、まだありそうな感じがするし、このままだと嫌なので解消したい。

 

「なぁ、雫……ほかに俺何かしたか? 心当たりないから聞かせてくれると助かる」

「貴方はそうよね。でも、これは私も分からないの。貴方があのイザナ? っていう子を助けて、あんな言葉を送って、私から抱えて逃げてからずっと胸が痛いのよね」

 

 深刻そうな顔でそう告げられた俺は、一個の可能性に気づいたんだけど。それこそあり得ないというか、空から星でも降ってくるような出来事に口に出すのをやめた。

 だって、雫だぞ? 常に余裕をもって、原作では数あるヒロインを押しのけ正妻の座を揺るがせなかった完璧ヒロインが、そんな状況になるわけない。

 ……嫉妬なんて、ましては俺にそうなるなんてあり得るはずが。それは本当に大事な存在となる主人公君の役割。でも、つらそうな顔をする彼女にその言葉だけは伝えないと思ってしまい。

 

「嫉妬って知ってるか?」

「言葉としては、知ってるわ。でも、今の状況がそれなの?」

「いや、知らん。でもそれが近いと思っただけだ」

「……こんなにも胸が苦しくて、きゅっとして、じりじりするようなこれが嫉妬? 貴方を誰かに渡したくなくて、助けられたあの子が妬ましいと思うこれが?」

 

 あれ、不味った? なんかさっきより空気がドロドロしてるというか、なんか別種の重さを感じる。でもダメだこれ以上は彼女に言わせるべきではない。俺はこの世界の登場人物の一人だが、実質的に異物だから。

 でも、目の前の彼女は……俺の心配なんか振り切って。

 

「私、本当に貴方が欲しいのね。この世界でただ一人、私をちゃんと見て、あの子を見つけてくれて、ただ一人の女の子として見てくれる貴方が――欲しくて欲しくて」

 

 その独白は重いが、彼女の決意を感じさせるものだった。

 止まらない、自覚したからには彼女は止まることがない……そこまで言われて、俺は何かとてつもない勘違いをしていたことに気づいて。

 

「こんな最悪で最低な世界で、真っすぐ生きて光り輝く貴方を自分のものにしたい。その輝きが欲しい。綺麗なそれを守りたいとも思うし、ぐちゃぐちゃにしたいとも思うの。そして、それが誰かのものになったらなんて、考えるだけで怖気が走って、殺したくなる」

 

 ……雫という少女は重い、それこそずっと一人であの子と一緒に生きていたから。でも、それを見つけ寄り添ってしまった俺という存在は……きっと。

 

「あぁこれが嫉妬――いいえ、恋なのね。ねぇ……貴方、違うわ蓮。私は貴方が欲しいの、だからこれからも一緒にいましょうね?」

「あ、ハイ」

 

 拝啓主人公君へ。

 貴方のヒロイン様は、なんかすっごく重いです。覚悟とか、なんかもうそれが意味をなさないくらいに大変なので、頑張ってください。

 きっと俺の親友になるお前なら受け止めるはずだから、早急に会っていただけないでしょうか? このままでは俺が終わってしまいまする。

 PS.俺の周り重い子多くね? どうなってんの???

 




とりあえずここで一区切り!
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