和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか?   作:鬼怒藍落

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第22話:太極を司る二人の女神

……目が覚める。いつもと同じで空の夢に誘われる感覚だ。

 誘われるように堕とされるように優しく奈落に堕とされる感覚――だけど、どうしてかいつもと雰囲気が違った。なんというか、暖かくて懐かしくて何処までも包み込んでくれるような、そんな感じなのだ。

 

「……何処だよここ」

 

 いつもの俺の成長した元の姿。

 まぁ、それはいいのだが……どうしてか、居る場所が違ったのだ。

 いたのは湖の上に浮かぶ神社の前、相変わらずの神社だが……完全に場所が違う。

 黒ではなく石で出来た灰色の鳥居。そこから奥には大きな社が構えられており、石造りの参道の下を見れば見たことのない魚のような生き物が沢山居る。

 

「いやさ、本当に何処だよ。まじで心当たりないぞ俺」

 

 俺が覚えている限りこんな世界は知らない。

 こんな穏やかで綺麗で……何故かいるだけで感傷に襲われる場所なんて一切記憶にない。だけど、根本的なところでこの世界は空のモノと同じだろう……と、どうしてかそんな予感めいたモノが確かにある。

 

「あ、来れたんだいらっしゃい」

 

 で、少しすると聞き覚えはあるが全く違う声が耳に入ってきた。

 目を向ければ神社の奥には社の賽銭箱の上で浮くのは白い巫女服を着た雫の色違い。腰まで伸びる白い髪に真っ白な肌を持った絶世とも言える赤い瞳の少女がいた。

 

「…………は、奏 ――いや待て、なんで俺だと分かるんだよ」

「もともと見てたしねー、こっちでは始めまして……お兄さん?」

 

 ……そう言ったあとで手招きをしてくる女神様。

 ヒトデナシのこの少女が何を考えてるか分からないが、既に空の事を認知されている以上警戒する事しか出来ない。

 

「むぅ怖い顔しないでよ……私はただお話ししたいだけなの。それに私はあの子とは違うから、呪わないよ――本当は呪えないんだけど」

「……で、話ってなんだよ」

「あら聞いてくれるんだ? 嬉しいね――まぁ今回はお礼かなぁ? あとあの子のお姉ちゃんとしてのお礼もあるし」

 

 鈴のような綺麗な声で警戒心の隙間を縫うように……甘く優しく言葉を紡ぐ少女。空とは違うがどこまでも人を堕とす魔性の女神は、気を抜けば誘われる。

 それに今まじで聞き捨てならない言葉があった。

 姉だって? ……奏が?

 確かに原作で二人が出揃った時から二人の関係は考察されていたが、それは終ぞ明かされなかった要素の一つ。それがこんな所で明かされた事実に俺の中のオタクが喜びかけたが、あまりの爆弾情報に普通に目眩がしてきた。 

 

「それにしても凄いね蓮は、天然の依木の才は見たことないし――天性だろうけど突然変異みたい」

「……みんなそういうけど、やっぱりやばいんだな」

「神なら分かるかなー、君は神性を持つ者からすると極上の餌だよ? それこそ色んな意味でね。稀血でもあるから魔のモノも狙うでしょうし、とっても面白いのねー」

 

 あぁ、一番お墨付きを貰いたくない人からそう言われると軽く鬱だ。

 というか盛りすぎだよ、原作者。五行の才能に神依木の素質、どっちか一つにしてくれないと俺が大変。

 

「……あれ? 今気付いたのだけど、契約してないんだ。もうしてるモノだと思ってたのに、あの子こんなに奥手だったんだ?」

「私は奏と違って子供じゃないから。ねぇ、奏。なんでこの人を取ろうとするの?」

「それがお姉ちゃんに対する態度? ――数百年ぶりだけど、変わらないね」

 

 突如として俺と奏の前に遮るように現れる空亡。

 彼女は一本の刀を手に持ちながらその切っ先を相手に向けた。だが、奏は一切余裕を絶やさずにどこまでも笑顔でそう煽る。

 透明と白、存在として太極の女神の二人が揃うこの空間。

 空気が急に変わりすぎて二人とも顔面偏差値たけぇな……と現実逃避してしまったが、多分俺は悪くない。

 

「それにしても人の社に急に来るなんて礼儀がなってないのね」

 

 そもそもだ。

 こんなに険悪な奏は原作で書かれてただろうか? ……いつ誰に対しても視点は違うし試練を与えるしヒトデナシな彼女だが、どこまでも一見優しそうではあったのだ。それがこんなになるって、どんだけ二人は仲悪いんだよ。

 

「そっちこそ、彼を誘うなんて一言ぐらいいうべき。退屈すぎてボケた?」

「……殺すよ?」

「それは私の言葉だよ、奏」

 

 あ……思い出したぞ、確か原作のメイン舞台で空がある学園を襲撃したときにすっごく機嫌悪かったんだよな奏様って……雫から飛び出して、殺そうとする勢いで。

 …………と、まぁ現実逃避はここまでにして。

 どうすればいいんだよこの状況、やばいぐらいに怖ぇよ。

 空の能力そして奏の力を考えるに巻き込まれたら死ぬ。魂が剥き出し……というか、そのまま夢に連れてこられる状態で女神大激突戦争とか起こったら余波で俺は逝くだろう。だからどうにしかして止めないといけない。

 

「……あの、二人とも喧嘩は止めないか? つもる話もあるだろうし、一時休戦じゃ駄目……ですか?」

 

 口調が崩れた。

 あまりの恐怖に普通に敬語になった。

 だってやべぇじゃん、原作最強と原作災強がぶつかるのなんて読者であった俺からすると一番見たくないから。

 

「貴方が言うならいい、感謝してね……奏」

「……そうだねー。子供に付き合っても意味がないから。またね、蓮。今度はゆっくり現実で話そう?」

 

 空間の主である彼女がそう言えば、俺の意識が堕ちていく感覚に襲われた。

 いや、正確に言えば上がる感覚だが……堕ちるように上がるという不思議な感覚に身を任せて俺が夢から追い出された。

 

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