和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか? 作:鬼怒藍落
我らが王より承ったとある任務。
太陽の加護を持った人間の力を奪えと、与えられた至上の命にワタシは心を躍らせる。預かった数匹の悪鬼、それをワタシ好みに改造も終え、準備は万端。
陽光を封じるために王の力も借り、高千穂の地に根まで張った。侵入し、浸食しこの忌まわしき神の地を奪えるとなると心が躍り、ワタシを蔑んだ空の神々の事を思えば頬が緩む。
「絡繰使い、しかしワタシは揺るがない――護衛の陰陽師もいるでしょうが、この戦力の前には無意味でしょう」
空に呪いをかけて、ここら一帯に
「あぁ、堕ちてよかった、ですねぇ」
達成すれば、もっと材料をくれる。沢山のことを試せる。
あぁ、私が好きな怒号に悲鳴といった音楽を。
飽き果てるまで、聞いていた。
そうして恍惚に酔いしれ、想像を膨らませつつ目的の屋敷の前に到着した。
結界を利用されると思ってなかったのか、無防備なその場所。忌々しい陽の神威に満ちているが、それも時間の問題だろう――と、礼儀を持って屋敷に侵入した時。
「アナタは何者ですか?」
子供がいた。
それも、見るだけで極上だとわかるくらいの魂の持ち主が、元は一つの星であったワタシじゃなければ分からないだろう、その素質。
見るだけで食指がうずき、一瞬で利用価値を幾百も想像させられる金銀財貨とは比べられないほどの至宝のようなその存在。神通力を通してわかるその価値に思考が巡り、愉悦を隠せない。
しかし情報にはないが、なぜこんなものがここにある? 察知して供物を用意でもしたか? それは殊勝な心掛けだが、何かが妙だ。
本当に人なのか……そう思ったのも束の間。
目が合った。深淵の如くに暗い絶望した瞳がそこにはあり、余計に興奮を隠せない。この世に何の希望も持ってないようなそれ、まさか趣味まで合わせてくれるとはと喜び、せめてもの礼に名前を告げようと。
「あぁ、供物の子よワタシは
「あぁぁぁぁぁぁやっと、やぁぁぁっと来た――遅いんだよなアホカス天狗ぅ!」
次の瞬間に、ワタシは――上空に打ち上げられていた。
――――――
――――
――
「ッなに、を!」
上空に土の術の応用で作った岩石の拳で打ち上げた天狗が叫んでいる。不意を突かれたのか、呆気にとられているようだけど。
俺は手を休めない。
そのまま木の術で植物の根を伸ばして足場を作って駆け上がり、暗月を創り出してそれに炎を纏わせ切りかかった。
「――絶望した表情を見せたモノが、なぜ急に!」
「絶望? あぁそう全部お前のせいだわカスが――お前が遅いせいでどこまでやっていいか分からなくなった源弥さんにどれだけ半殺しにされたと思ってるんだよ!」
水蝕蓮は激怒した。
この天狗を祓ったらかの邪知暴虐な宵闇家当主を一発殴ると心に決めた。なんだよあれ、確かにさ限界まで鍛えてくれとは言ったぞ? だからって臨死体験無限1upとかふざけんな! 流石に自分でもわかるレベルで強くなったわ。
覚悟、負い目、未来を変える恐怖? それはあるぞ、だけどさ――今だけは怒りでこいつを祓う。
「なにを――言っているのです!?」
「うるせぇ、自分で考えろ!」
「このガキぃ!」
俺が今できる術の一つ。
それを練りきって使うのは――。
「岩石巨剣――デイダラァ!」
修行の後は札づくりぃ!
何千枚も書かされた召喚呪符。俺の術を閉じ込めたそれによって世界に現れるのは岩石を削り取ってできたかのような塊。質量兵器のそれを空中にいる相手に向かって振り下ろす。
「ほんとはさ、色々あったんだぞ? 強いお前だから、術の練度が凄くて六枚の羽根を持つ邪仙のお前と戦えるかって、ちゃんと言ったことを守れるかって」
「ッ重――だから先ほどから何を言っているのです!」
「知ってるか、地獄って生きながら味わえるんだぜ? 等活、黒縄、衆合、叫喚、大叫喚、焦熱、大焦熱、無間――最悪の地獄巡りギリ手加減された成果を見せてやる」
「会話をしろぉ!」
壊れたテンション、自分でも何言ってるか分からないし……ハイになってるのは分かるけど、まじで――ほんとこいつ祓う。
俺めがけて呪符を投げる邪天狗。
そいつの札からはキメラのような鬼が四匹現れる。どれもが強い気配を持つ妖怪で、この修行の前だったら怖気づいていたような相手。
しかし、今の俺。
いや、俺達には一切通じない。
「イザナ、頼んだ」
「後で私にも荒く接してくれませんか?」
足場を伝い現れたのは桜の少女。
腕に影を纏い、黒い角を生やしたイザナが現れてその大きな腕に生える鋭利な爪で鬼を肉塊へと変えたのだ。
「なっ――何者ですか、それは!」
「この方の唯一無二の道具であり、所有物の黄泉坂イザナと申します。どうか、彼の安寧のために食べさせていただけると、嬉しいですね」
「気狂いしかいないのですか、この場所には!」
何かブチ切れてるけど、知らん。
というかお前が言うなだし、どの面フレンズ筆頭だからなオマエ。
まだこの時代でやってるか分からないけど、こいつ外道筆頭で倫理観なんかないし、胸糞の悪さで言えば作中上位だ。そんな相手に慈悲などいらない。
「だい、ったい! 陰陽師なら名乗りぐらい上げたらどうですか」
「名乗らん、喋らん、お前に教えるのは本能が拒否するからな――というか、そんなこと言うなら自分から名乗れよ」
「はぁ、はぁ邪魔しておいて――なんて無礼なガキだ、しかし聞かれたのなら答えましょう。ワタシの名は!」
「貴方様、確かこの方はザコカスと名乗ってませんでした?」
「……そうだっけ? もうちょっと仰々しい感じだった気がするけど。あと自分で雑魚って名乗る奴いないだろ」
えっと、ざくろこからす……とか言ってた気がするけど。
あれ、そういえばこいつの前世でなんか蔑称あったよな、名前が呼びにくいから、とりあえず文字を抜き取って――なんだっけ?
うーん、思い出したざこかすだ。
「あ、ザコカスか」
「そんなふざけた名前な訳ないでしょう!」
「でも、そうやって呼ばれてたぞ?」
「誰が、どこで!? あぁ、もう呪い殺しましょうか!?」
ごめん、確かにひどいけどそれで通じてたんだよな。
あーあれ、どいつだっけ呼び名酷いの! って友達と話すときとか、ザコカスじゃねで意思疎通できるぐらいには。
「まぁ、なんだ強く生きてくれ。祓うけど」
「こっ――の!」
「あとすまん、これで終わりだ。焔纏い――空」
突っ込みに集中しすぎでも、なんとか戦ってたこいつ。
だが、新しい術の準備が終わったからもう生かして返す気はない。
これは、空と友達にそれこそ仲良くなった影響か覚えたというか俺の炎が変わって使えるようになった術。今までの炎ではなく、空の焔を纏えるのだ。
「その、炎……は。なぜ、あの方の恩寵を人間が!」
「企業秘密だ、眠ってろ」
こいつは研究者、それも800年代から生きる者だった。
だからその存在を見ただけでわかったのだろう――故に、この術の力も格も理解してしまったからか、完全に体が鈍り。
「灼獄」
「あの方、に――これだけは伝えなければ!」
最後に言葉を残し必殺をその体で受けて――黒い焔に飲まれて消えた。