和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか?   作:鬼怒藍落

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第30話:家路について

「……入っても大丈夫か?」

 

 久しぶり、それこそ一か月近く帰ってなかった実家の前で……俺は緊張しながらもそこに立っていた。俺が帰ってくるということは父さんたちに伝わってるが、忙しい二人が待っててくれるとは少し思えなくて……。

 

「ここが貴方様の家なのですね、入りましょう?」

 

 横にはいつもと変わらず穏やかなイザナがいる。

 一切気にしない態度で俺の横を陣取る彼女は、不安がる俺の手を引いて入ろうと促してくれた。

 

「私も貴方様の御義母様と御義父様には挨拶とお礼を伝えたいですし、このままでは雨も降ってしまいます」

 

 確かに今の時期は梅雨。

 今日は雨が降るという予報だし、早く入らないと濡れるかもしれない。

 ちょっと違和感はあったけれど、俺のことを思ってくれて、何よりもいつもの様子の彼女に安心して、我ながら絆されたなぁと。

 

「よし入るか、行くぞイザナ」

「はい、私はどこまでも一緒です」

 

 そうしてこの世界で初めて家に帰った俺は、ゆっくりと玄関をくぐって真っ暗な我が家に足を踏み入れた。人の気配を感じない静かな家、ずっと一人この中で待っていた記憶が刺激されたが、やっぱり忙しかったんだなと。

 

「……まぁいいや電気つけようぜ?」

 

 慣れていることだが、せっかく一か月振りに帰ってきたんだから迎えてくれていいんじゃないかと。だけど仕方ないともわかってるので、あるだろう居間の置手紙でも探そうかと――手を洗ってから電気をつければ。

 

「おかえりだ蓮!」

「おかえり、蓮……久しぶり」

 

 クラッカーの音が鳴り響き、俺に向かって何かが飛んできた。

 目をぱちくりさせ、現実を理解するのに数秒。相変わらずの元気な父さん達を認識して、何て言っていいかわからず……。

 

「おい蓮、驚かせすぎたか?」

「初めてだからびっくりしたのかな? 一応誕生日とか使ったような気がするけど」

「……子供っぽいよ、サプライズって」

「ふははは、せっかくお前を迎えるんだから驚かせたいなって思ってな! どうだ、久しぶりの俺等だぞ?」

 

 ……なんて言えばいいんだろうな、嬉しいしたった一か月なのに懐かしい。でも、驚かされたことは事実だしちょっと泣きそうだったから恥ずかしかったから。

 

「って殴るなよ、悪かったって」

「馬鹿父さん、ただいま」

「おう! でだ、すっげぇ今さらなんだけどよ。よこの子供は?」

「あ、えっと。ごめん、えっとこの子は――」

「初めまして御義母様と御義父様――私は、黄泉坂イザナ。彼の唯一無二の道具になる予定であり未来の所有物、気軽にイザナとお呼びください」

 

 一緒にいる彼女のことを紹介しないとなと思ったのも束の間。

 なんか彼女は――俺の事を慕ってくれて、色々天然で、最近はちょっとだけどはっちゃけてる気がしなくもないそんな彼女は、そんなテロレベルの爆弾をこの場所に。

 

「おまっえ、は? おい、蓮!? おまえ、おま――はぁ!?」

「蓮がいつの間にか大人に、それも危ない方に」

 

 これ、今から入れる保険とかないかなぁ。

 あ、なさそう? じゃあダメだわ。俺、終わったナニコレ釘刺さなかった俺が悪い? でも、最近そういう発言控えてたから、安心した俺が悪いなうん。

 ……どうしよう、これ収集つくかなぁ。

 

「……あれ?」

 

 かわいらしく、こてんっと桜色の髪を揺らす彼女は心底不思議そうな顔をしている。そんな風に思うなら言わないでほしかったなと俺の表情は死んでいき、そのまま思考を放棄した。

 

「家族会議だ、なぁ蓮……お前、この子と何をした?」

「誤解だって、ほんと! マジで! 任務で助けて一緒にいるだけ!」

「本当か、誓えるか?」

「誓う、まじで誓う今なら太陽に誓えるから!」

「じゃあ、何を言ったらここまで――その、だな」

「言われたことですか? それなら覚えていますよ?」

「イザナちゃん、よかったら教えてくれないかな?」

 

 濁す父さんに向かって、素知らぬ顔でそう言うイザナ。

 そんな事を聞いてしまった故か、割と恋愛能な母さんが興味を示したせいで家族会議なのにどんどん収拾がつかなくなる。

 

「道具にしてと願ったら今のあんたなんかいらないと、私に生きてほしいから助けたのにそんな事を言われるのはムカつくって、何よりもイザナに今までかかわってきた全てが許せないから、今回だけのお試し期間だ。物とか道具とか考えずに、俺と暫く過ごせと、夢が見つかるまで一緒にいると言われたんです」

 

 一言一句間違えないようにという風に、大切な思い出を語るがごとくに彼女は頬を赤らめながらもそう言った。それは勢いで俺が言った言葉の数々……今のカオス極まる状況で、逆に冷静な俺はその言葉を聞いて天を仰いだ。

 ほぼプロポーズじゃんそれぇ! 何言っての、何言ってんの俺! 怒ってたし多分その時の本心だろうけど! ――恥ずかしい、親にそれを知られたのが本当に!

 

「蓮、俺はお前の事を分かってなかった。男だな」

「……娘、娘かぁ。イザナちゃんいい子だし、いいのかぁ」

「父さん母さん戻ってきて? ほんと、誤解だから!」

「え――貴方様?」

「嘘です、本心だからそんな顔をするなイザナ!」

 

 誰か、助けて……。

 そう願ってしまったのが悪かったのだろう、急に居間の扉が開いて……第三者がこの部屋に入ってくる。それは、太陽を宿す女神の器。

 数日前に別れ暫くある用事がないはずの……。

 

「わぁ、混沌としてるわね」

 

 原作のヒロイン様である宵闇雫であって……彼女はこの光景を見てそう締めくくった。あぁ、神様というか空、マジで何この状況? できれば教えてくれ。

 

『ごめん、わから……ないかも』

 

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