和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか?   作:鬼怒藍落

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第31話:束の間の平穏

「……ふふ、可愛いわ」

 

 そんな一言で、目が覚める。

 昼頃に自室で起きて見上げれば、そこにはここ一か月で見慣れた少女と目が合った。にこにこと少し怖いような笑顔を浮かべながら俺を見下ろす少女、何をする訳でもなく見下ろすだけの彼女から離れれば残念そうな声を漏らした。

 

「……ほんと相変わらず兎みたいに逃げるわね」

「怖いからな……あと何回か言ったが部屋に忍び込むの止めてくれ」

 

 主にプライバシーが死ぬしさ……そこまでは口に出さないが、普通に起きると膝枕されてるのはビビるから止めて欲しい。だけど返ってくるのは予想通りの反応。

 

「嫌よ、最近の楽しみだもの」

「………………」

「やっぱり良い顔するわね」

 

 そしてこれはもう三回目ぐらいになるやり取りなのだが、少し慣れてきたのが複雑な気分だった。ドSというか……俺のそんな複雑な表情を楽しんでいるのか雫はめっちゃ困らせてくる。しかもキレないギリギリの範囲で……。

 

「朝食はもうイザナが作ってあるわ。でももう昼だから、昼食になってしまうのだけれど」

「……誰のせいだよ誰の」

「勿論私よ? だって昨日も戦ったばかりじゃない。もしかして忘れたの?」

「忘れるわけ無いだろ、ここ連日ずっと戦ってるんだからさ。そのせいで大体昼起きだぞ俺は」

 

 自室で向かい合いながらそんな事を言い合う俺等。

 余裕を持って笑顔を浮かべる雫様は本当に傍若無人の我が儘娘だ。というか今更ながら原作ではここまで酷くなかったはずだが、あれは幾分か成長したから何だろう。

 本当に五歳と思えないほどに達観しているし、怖いと思う。

 だけど、未来というか原作の良妻? の片鱗は今も見せてはいるし、割と恋愛脳な母さんを説得して俺のご飯を作るようになったしで、可愛い部分は少しあるとは思ってしまうが。

 

「なぁ、今更なんだが雫は何でうちに来たんだよ」

「だってイザナだけはずるいじゃない」

「……あのずっと見るのはやめて頂戴?」

 

 思い出す過程で彼女の事をずっと見てたら顔が少し赤に染まり、そのまま離れて行ってしまった。

 

「ん、了解……ホント重いけど色々可愛いんだよなぁ」

 

 先に居間に戻る彼女を見送ってから、そんな言葉を吐く。

 彼女は原作では馬鹿重いヤンデレキャラと言われるくらいに愛が重く、主人公君にに敵対する者には一切の容赦がなくて、とても一途で重いことを除けばかなりのヒロイン力を持っている。

 これはマジで思うのだが、本当に対象が俺じゃなかったら普通に愛が重いだけで微笑ましく感じるぐらいには彼女は本来初心なのだ。

 それは主人公君との関係値もあるだろうけど、怖いのに時折見せる初心さが可愛かったなぁと……前世で読んだであろう記憶を頼りにそう思った。

 

「とりあえず、居間に行くか」

 

 寝すぎたのと、ご飯を作ってくれたのなら食べないのもイザナに悪いし、せっかくの食材が勿体ないから。 

 

「おはようございます貴方様、ご飯できてますよ?」

「ん、ありがとイザナ。父さん達は?」

「朝頃には食事を済ませて妖怪を祓いに行きました」

「助かる」

「いいえこちらこそ。それにお義母さんのおかげで料理も上達しましたし、迎えてくれてありがとうございます」

 

 こっちからすれば感謝してもしきれないが、このままではお礼合戦になりそうなのでそこでやめる。とりあえずみんなで席について食事を始めれば――

 

「ねぇ貴方、どうして昨日も私は負けたの?」

「そりゃあルールがルールだし、単純に相性問題」

「教えてくれると嬉しいわね」

「…………まぁいいか」

「ならお願いね」

 

 食事中そう頼まれたので、少し解説することにした。

 一撃当てた方が勝ちというルールの下で、父さん監修で戦ったのだが……影から作った式神などをメインで操り戦う彼女と俺とだと相性的にこっちの方が有利なのだ。

 理由としては、俺の術がやはり他者の術を焼くというモノなのと単純な今の時点の出力問題。雫も手札が多彩であるが、俺は一応すべての属性の術を使えるわけで相性的にはこっちが有利である。

 

 現状の彼女の式神の数は少ない。 

 ただこの先で成長すれば、あらゆる術を使い無限の軍隊を創れる最強の陰陽師が誕生する。というか五行外の技をたくさん覚えるし、何よりも奏ともっと親和性を高めれば……。

 

「そうね、確かに今の私だとそうよね。でも変ね、その言い方だと私がもっと強くなると思っている言い方よ?」

「そりゃあ、お前凄いし。実際強くなるだろ?」

 

 それにこれは言えないが、原作で強くなった姿を死ぬほど見ているのでそんな風に断言できるのだ。最終的にあらゆる影を操る彼女の姿を覚えてる俺からすると、彼女が弱い姿なんて想像出来ない――そんな事を思い、俺は苦笑する。

 だって百を超えるケモノの大群を闇に沈めた彼女が頭に過ったからだ。

 というかさ、現時点で影の軍隊などを使えてたら割と冗談抜きで負けるからやばいし全然負ける。

 

 

「なぁ、そういえばさお前はどうして強くなろうとしたんだ?」

 

 ふと思った疑問、これについては原作でも語れなかったこと。

 読者としてもこの世界で生きる今の俺からしても聞いてみたかったのでそう聞いてみれば……雫は少し驚いた様な顔をした。

 

「どうした?」

「私に興味を持つなんて、ここまで一緒にいてはじめてだわ。だから驚いたの」

 

 驚いた様な表情、だけど嬉しそうな彼女はこう続ける。

 

「お母様に言われたの、誰にも負けないくらいに強くなりなさいって――だから私は強くならなくちゃいけないのよ」

「……茜さんとの約束か?」 

「えぇ、そして私を負かす人が現れたらその人を逃がさないようにしなさいって」

「……えぇ、落差が」

「ふふ、だって強くなった私を倒せる人よ? その人ならきっと私を真っ直ぐ見てくれるはずでしょう?」

 

 そう言って絞めくくり、ちょっと赤い顔で別室に向かう雫。

 今日は私が夜ご飯の献立を考えるわといいながら、歩き去って行くお姫様を変な気分で見送った俺は食器を片付けることにして、キッチンに皿を運ぶことにした。

 

「……無視もいいですね」

「頼むから戻ってきてくれ、イザナ」

 

 黙々と食事を続けていたイザナが、彼女が去った時にそんな事を言った。大丈夫かなと思ったが、単純に道を踏み外すのはまずいので、なんとか軌道修正をする。

 それが、今の俺の日常。

 嵐が過ぎて味わえる束の間の平和。

 だけど、あぁ……なんで忘れていたのだろうか? この世界に救いはなくて、どんなものよりも理不尽で、世界が救われるその時まで、平和なんてないということを。




 というわけではい――連日連続更新を続けている鬼怒です。 
 ここまでで約七万文字、次の話から第一章のラストスパートに入ります。ほぼリアルタイムで更新していて書き為もない現状ですが、なんと日間ランキングに入れるまで来れました! これも皆様のおかげですし、多大なる感謝を。
 そして、これはお願いなのですが……mode=rating_input&nid=406233》高評価《/link》やお気に入りどうかお願いします。四月中に一章を終わらせるためにも、何よりやる気を維持するためにも入れてくれると幸いです。
 
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