和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか? 作:鬼怒藍落
「属性反転――火天氷夢」
空と契約したことで得たのは、属性を反転させる力。
それを唱えれば、瞬間的に冷気が世界に顕現する。
俺が降り立った大地全てが凍り付き、異常なまでの霊力がこの場を支配した。
「ハッ来たか、ガキ!」
そして、俺が冷気を解放すれば即時に金平鹿が俺を捕捉し、眼前に現れた。
圧倒的な邪なる神威――前に感じた時以上のその力の奔流が俺の身に襲いかかるが、それは今は気にならない。
「二日ぶりだな金平鹿」
「あぁ、そうだなそれにしてもなんかあったか? 気配が俺らと変わらねぇぞ」
「まぁあれだ、優しい女神さまと契約しただけだよ……でだ、こいよ。雫が待ってるんだお前に時間かけてる暇ないんだよ」
「――あ゛? ……ぬかせよ人間、お前今なんて言った?」
「聞こえなかったか? さっさと倒すから戦おうぜっていったんだ」
「そうか――ほんっと面白いなお前! あれだけボコったのにそんな啖呵を切るか! それならだ、一撃で死んだらぶっ殺すぞ?」
……開戦の合図なんてない。
武器を互いに構えた――俺の霊力と鬼神の神威がこの場全てを支配する。
始まりは相手から、相手が槍を構え振った瞬間に幾つもの雷が明確な殺意を持って俺へと迫り串刺しにしようと迫ってきたが、
「なんだよ、この程度か?」
俺の発する冷気に雷が触れた瞬間にそれら全ては凍って、それどころか冷気は渡り術を発して金平鹿の腕さえも凍る。
そして俺はそのまま懐に潜り込み、暗月を横薙ぎに振って相手の腹を切り裂いた。
「待った甲斐が――」
反射的に相手が拳を放ってくる。
だけどそれすら俺に近づいた瞬間に凍って静止したのだが、それすらお構いなしに雷が出現しそれを纏った拳が俺へ迫る。
「あったじゃねーか!」
「さぁ勝負だ絶望、全力のお前を祓ってやる」
「あぁ、そうだな陰陽師! ――滅ぼし合おうぜ!」
全方位からくる雷と水の攻撃、俺の間合いに入る瞬間までに霊力を練り――瞬時に凍らせる。契約を受け入れたことで増えた莫大な霊力、それら全てを使って俺は鬼の神と対峙する。
――雷が走り、水が迸る。
後方、上方、前方――それどころか下方から彼の鬼神の攻撃が迫ってくるが――今の俺にはそれは届かない。想像しろ……俺の術が全てを凍らせるその未来を。
凍る。
――凍る。
そして凍り砕けた雷の一つ一つの破片にすら意識を回し、霊力を奔らせてまだ使われたばかりの水の術すら凍らせた。
「触れてすらいねぇだろ!」
「それが今の俺だ――絶望」
「はっ最高じゃねーか!」
迫るは百を超える雷の群れ。
飛行するあいつは無限に近しい射程で攻撃をしてくる。
届かせるには――俺の今までの全てを使うしかない。
移動して行う上空での戦闘。
空を駆けるために氷の足場を使いながらも俺は何度も攻めて、遂に創った暗月で攻撃することに成功した。
「氷界――氷刀乱れ桜」
そしてその瞬間、千を超える刀の群れが現れてその全てがに牙を向く。
「ほんっと、化け物みたな霊力量だな!」
「これで死ぬなよ? まだまだ俺には残ってる。
空中に霊力で雲を作り出してそこから氷の槍を降らす。
相手がほぼ無限の射程で攻撃をしてくるのなら俺はそれを真似ればいい。
上から下から休まず攻撃を続けろ、少しでも攻撃の手を緩めるな!
「――あぁ、こんな戦いを千年は待ったぞ?」
言葉は短く、そして空気が変わる。
相手の姿が変質し始めたのだ。角が生えた黒い雷が迸り鎧を纏ったような姿へと変わった。彼の持つ槍が主の変化に応じるように巨大になり、あいつの背中の太鼓が回転を始めて金平鹿の中に消えた。
これは、原作でこの鬼が見せた最終形態。
あぁ、本当ににあまりにも強すぎる……それに、この形態の時のこいつは雨を呼ぶ。つまりは自分で無敵になるのだ。
ビリビリと――圧を感じる。
膨れ上がった神威が俺の体を竦ませる。
――あぁ、ここからが本番だ。命が幾つあっても足りないだろう、まだ爆発的な回復能力なんて持ってない俺からすると一撃でも致命傷を喰らえば負けてしまう。
霊力を回せ――限界まで、いや限界以上に強化しろ。
「さぁ、もっと遊ぼうぜ――人間?」
――黒雷が奔る。
槍が迫る――水が蠢き、俺を喰らわんと脈動する。
それらは獲物を捕食する蟲のように、変則的な軌道で俺へと迫り――。
「ッぅ――」
掠った。
ただそれだけなのに、魂そのものが焼かれるような感覚を味わった。これは不味い、直撃したら死ぬ。
元より分かっていた事だけど、本当に終わってる理不尽さ。
接敵、打ち合い。
傷つけ治され――何度も何度も槍と刀をぶつけ合う。
地獄のようだ。息つく暇もなく、一手ミスれば命が終わる。未来の蓮が経験しただろう絶望が俺を襲う。
状況が違う、過程も軌跡も何もかも。
でも未来で彼は、蓮は、この絶望に打ち勝った。年齢が違うから経験が違うからなんて言ってられない。俺は原作の蓮からは外れた存在だ。才は同じだが覚悟は違うし、思考も能力も何もかも全部違う――だけど、俺は雫を連れて帰ると決めたのだから!
――
――――
―――――
とてつもなく、たまらなく、愉しくて楽しくて――この戦いが終わってほしくないと思える。
迫り来るのは無尽の氷刀、全方位から迫るそれらの技が俺の体を削り続ける。
横薙ぎ、振り下ろし――そして刀を手放した際の一瞬の殴打。無尽蔵とも言えるレベルの霊力が俺に牙を突き立て、何度も何度も俺の命を脅かす。
本当に、これは何の冗談だ? 迅さも技も俺が上なのに――パワーだけが段違い、桁はずれた出力が数千年の研鑽の差を埋めてくる。
技を放つ、その全てが凍りつく。
女神の加護がこの男の霊力によってその性能を引き出され、俺の魂までその寒さが届く。
「――」
あいつが目の前の人間が構えた一振りの刀が氷を纏って迫ってくる。
避けようとした。だけど、その瞬間に足が凍っていることに気がついた。
あぁこれは避けられない、絶対に当たる。そしてその一撃は、俺がかつて相対し俺を追い詰めた人間を想起させ――。
『俺では無理だった――なぁ金平鹿、笑ってくれ。オマエが死ぬその時まで、きっと飢えは満たされるはずだ』
「言われ――なくてもな!」
相手は、目の前の人間は俺が与えた試練を超えて限界を超えた。
――何千年も待ちわびた、俺すら殺す可能性を持った英雄だ。
この程度の力で、満足させる訳にはないかない――何よりこれで終わりなんてつまらない、やっと満ちることが出来るのだ。
ならば、全部を使え――ガス欠だって気にするな。それでは待った甲斐が一切なくなるだろう――俺を満たす可能性を持った、この英雄を輝かせろ!
「――来いよ、人間!」
―――――
―――
――
――冷気を束ねる。
狙いを定めて術を使えば、氷の柱が現れて襲った。
それは一瞬で雷によって破壊され――俺の元まで迫ったが、俺の纏う冷気を破れず辿り着く前に完全に凍った。
「それはもう届かねぇ!」
意識する事は変わらない。
相手の攻撃を防ぎながら攻撃をする。そのために術を絶え間なく使い、金平鹿に隙を一切与えない事だ。
思考を回せ、術を練り続けろ――術を維持して一瞬たりとも気を抜くな!
「火力勝負だ、耐えろよ? ――
熱気を感じたと思った瞬間のこと、俺の纏い用意していた冷気が全て消えた。
あいつの手の中に雷の槍が生み出され、それが俺へと迫ってくる。受ければ即死――本能でそう悟り、防御手段を探すが……間に合わない。
「影の波よ、防ぎなさい!」
だけど、それは第三者によって防がれた。
鎖に繋がれていた雫が、百鬼を退けた父さん達に救われ俺のことを守ったのだ。その隙を俺は見逃さない。
「――ッこの一撃が最後だ
それを聞き妖怪が鬼の神が……いや、彼が笑う。
この世界で主人公と敵対し、俺の因縁である彼が、ラスボスを支える鬼の一柱が。
「くはっ面白い! つまりは俺を倒すって事だよな?」
「そうだ。そして、これはお前への言葉。力比べだ……全力で行こうぜ?」
「乗るギリはねぇ――でもな、それに乗らなきゃ俺じゃねぇよな!」
相手が今の姿を捨てて姿を変えた。
最早それは妖怪と言うより雷そのものだ――直感で分かった。俺にとっての最恐の一撃が来ることが、だから俺は……。
「……頼む空、俺に力を貸してくれ」
そこで俺は言葉を止めた。
彼女に祈りを捧げて、俺が未来を覆すという覚悟を込めて。
何よりも――決意を伝えるために。
「ここがお前の終幕だ」
彼女の炎を一撃に束ねて、どんなものよりも速く何より鋭く――神の一角を祓う。
相手もそれは分かっているだろう。これが俺の全てだって。残った全てを炎の全て圧縮して、一瞬だけに命を懸ける。
相手は雷だ。だからそれより迅く刹那の技を。光りすら凌駕する須臾の一撃を!
「
「
そして終わりを冠する二つの技が、黒炎と極雷がぶつかって、訪れるは閃光。
「はっ、俺の負けだ――天晴れだよ」
――最後に聞こえたのはそんな声。それが聞こえ雷雲と共に相手を、金平鹿という曇天を祓い斬ったのだ。