和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか? 作:鬼怒藍落
微睡の中から意識が戻る……いつもの景色だ。
湖の上に建つ神社の中、そこに生える神木の下で目を覚ます。
そこには相変わらずの鎖に繋がれた空がいて、俺は前世の姿でそこに――。
「おっやっと起きたか人間!」
そこには俺が倒したはずの知らん女の鬼がいて、なんか軽快に笑っていた。
一瞬で止まる思考と訳の分からない現状に飛び起きればそいつは「やはは」と笑い俺の頭を撫でてくる。
口調とその面影に過るのは嫌な予感、俺の感覚的に金平鹿っぽいけど。
「まじなんで、死んだお前が、ここにいる?」
「なんで俳句風にしたのか知らないが、お前に殺されたからだな!」
俺は此奴を倒した感覚は覚えてる。
だからこそ知りたいのだが、なんでこいつはこの世界にいるんだ?
ここは造り替えられた俺の心情世界、空以外が立ち入る事の出来ない魂の世界であり彼女の許可が無ければ入ることは出来ない筈なのに……。
「……私の炎のせい、ごめんね吸収しちゃった」
悩んでいれば社の奥から相棒となって空が姿を現した。
相変わらずの白い巫女服に身を包んだ彼女は頭の痛そうな顔でこっち……というより金平鹿の方に視線を送っている。
そういえばあったその効果を思い出しながら、だとしたら空に吸収されるはずでは? と余計に疑問を持ってしまった。
「普通の魂なら黒陽の糧になる筈だけど……
「――まぁ確かに」
鬼神であり王の一角。
……最強の戦闘妖怪にしてラスボス配下の一角であるこの男。
そんな化け物がただの魂と同じように吸収されるわけが無かった。
「なんだよその馬鹿を見るような目は……」
「実際戦闘馬鹿だと思う。今分かることは最悪な同居人が増えたことだよ」
「え、居住確定?」
「この馬鹿の魂はもう貴方の物……でも消化するまでは暫くは一緒になりそう」
「良い物件だよなこれ、瘴気に溢れて死霊が沢山だ! お前の気質もあって、星五の評価だな!」
これはなんだろうか?
俺の気質というのは依木体質の事だろうが……褒められているのに素直に喜べないというか……純粋に帰ってくれという気持ちが湧いて出てくる。
「そういえばというかツッコミを入れたくないんだけどさ……なんで女性に?」
「あー……ノリと勢い?」
「それは、何の?」
「お前の周り女多かったし?」
「…………だからって、はぁ?」
蒼い髪をした灼眼の女性。
男だった時の面影は残っているが、どう考えても色々でっかいし何より立派だった筋肉が全部女性に振られてるせいか、なんかすっげぇ美人の鬼。
これが同居確定? いや、なんだろうか――俺の中に住んでいる現状に何を物申せばいいのかが分からない。
「というわけでだ新たな主、改めてだがオレの名は金平鹿。オマエの式神となった鬼に名前を教えてくれないか?」
「え、違法契約マジで?」
「おう、もうオレはお前のものだぞ――それと言っとくが、離れる気はねぇからな」
「クーリングオフとかぁ……」
「あれだけオレを悦ばせて、切り刻んで、嬲っておいて、今さらそれは」
すっげ誤解されそうな言い方だぁ。
横にいる空が凄い微妙な顔をしているし、字面が最悪。
この世界に他に人がいなくてよかったなとおもっていると、ふと鈴の音が聞こえてきた。それは神社で聞くような神楽鈴のようなしゃらんという音。
何事? と思うのも束の間、何重にもある石鳥居の向こうから……見知った少女たちの姿が。
「ねぇ、蓮。その女なに?」
「うーこの瘴気の量最悪、離れちゃだめだよ雫」
「おっけー意味わからん」
現れたのは、黒髪の五歳児と雫の姿を借りてないゆえの白髪赤目の少女。原作ヒロイン様である、宵闇雫とその中に宿る最強様――奏がそこにはいた。
……ここは俺の魂の中だぜ? なんで二人おるん?
異常事態に混乱する頭、意味わからな過ぎてフリーズする体。状況を把握しようにも頭痛が痛くて。
「え――は、え?」
「くはは、綺麗な二度見で笑えるな!」
「いやだって……わっつ?」
カオスの発端に茶化されたが、本当に待ってほしいなんで二人がここにいるんだ?
多分奏が張った結界に守られる雫は、その足元から影の群れを構えて鬼を威嚇し、けらけら笑いながらもこっちに来た奏は、固まる俺を抱きかかえる。
「じゃあばいばい、連れてくねー」
「意味わからないけど、今死ぬ?」
「えー……ってなんでこの子にばっちぃ契約が?」
「ふふん、もう手遅れ彼は私のものだよ」
「はあ!? だめ、わーたーしーの!」
「ガキっぽいね奏」
一触即発、俺が契約を事前にしてるから離れないっぽいが、なんか死ぬほど本気で引っ張ってるせいか体が痛い。なんか空が操っているであろう鎖まで地面から生えてきて俺の左腕に巻き付いてるけど、めっちゃ痛い。
あれ、こういうのなんて言うんだっけ? あ、大岡裁きだぁ。
「痛い、マジ痛い、どっちか離して? 死ぬちぎれる俺が終わるぅ!」
「子供が離したらいいよ」
「そこのお子様が離せばいいと思うな」
「助けてっておい、金平鹿――笑ってないで、助けて! おい、元凶!」
この発端というか、カオスを創り出した原因であり元凶。
けらけら笑っているが、この状況で救ってくれそうなのはこいつしかいないからそう叫んだ。
「はークーリングオフしたんだろ? じゃあ無理だ」
「わかったごめん助けて死ぬぅ!」
「ん、じゃあ最初の仕事だな」
そうして、俺は鎖を断ち切った金平鹿に救われたのだが……。
「よぉし、これでオレはお前の式神だな、何て呼べばいい? 主、主様? ご主人? どれでもいいぞ?」
そんなことをぶっちゃけられて、余計に鋭くなる女性陣の視線。
もうどうしろと? と思いつつも、あきらめた俺はこの世界から逃げようとしたんだけど。
「あ、そうだ――ちゃんと契約しないとな? 合意はされたんだ……ってなわけで」
抱えられた俺は金平鹿の腕の中、どう考えても完全に捕まれているしで逃げられない状況。というかこれはその先を想像できなかっただろう俺が悪いのかもしれないが、先に言わせてくれ――この鬼、嫌い
「じゃいただきます」
そのままされるのはなんかめっちゃ激しい、言葉にしたくない何か。
ディープというか、最悪なそれに――俺の思考と魂は凍り付き。
「殺す」
「殺すわ」
「消し飛ばす、ね」
影の波に黒陽の焔と九曜曼荼羅の権能が解放されて。この世界が半壊した。
あぁ、拝啓前世とこの世界の両親へ。
貴方達の息子は、なんか今日も元気なんでしょうか? すっごくやらかしたし、なんなら同居人と式神が増えましたが、どうすればいいんでしょう? というか、なんで? そろそろ心労で死にそうなのですが、俺の人権とか癒しとかってどこにあるんでしょうか? PS.多分次起きるの、結構かかりそうです。
一章終わり――完!
五月から二章始めます。