和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか? 作:鬼怒藍落
第40話:朝に目が覚めて横に鬼美女
唐突だが、朝に起きるという行為もしくはその事象についてどう思う?
目が覚めるということものは、つまりは睡眠からの覚醒。その日一日の始まりを意味する行為。よほどの昼夜逆転や徹夜をしなければ基本的に行われる事象だ。
それはきっと、気分がいいほど良いもので、朝から嫌な目覚めだとその日の気分も沈む……ということもある。
悪夢を見て目覚めたり、騒音に起こされたり……それこそ夢の中で怪我をして、足をつって激痛に悶えたりなんかしたら最悪だ。
え、俺が何を言いたいかって?
まぁ待ってくれ結論を急ぐ必要はないだろう。もうちょっと話を聞いてくれ。
つまりは目覚めというのは良い方が良く、悪い目覚めや最悪なものは嫌で、どうせなら気持ちく朝を過ごせるものがいいのだ。
だからこそ。そう、だからこそ――叫ばせてくれ?
「お前また実体化して布団に潜りやがったな!?」
「やはは、オレ布団だ。ひんやりして気持ちいいだろう?」
「暑苦しいわ! 骨バッキバキになっていてぇ!」
目が覚めた時、そこにあるのは金平鹿の顔。
何の因果か女になりやがったこの鬼神の無駄に整った顔面と、絶対に意識したくない双丘がそこにはある。
抱きかかえられ、むぎゅっと潰れる俺の体。
鬼の膂力に抱きかかえられて骨はギシギシ、何よりそこはかとなく存在する柔らかさに文句しか出てこない。
俺の体が五歳だからセーフ? いや、どう見ても事案なんだけど、多分前世の俺の体だったら絶対大変な事になるこの事象に俺は吠える。
「大体、なんで勝手に出てるんだよ!」
「いやぁあれだろ? オレの興味は基本お前だぜご主人、ぶっちゃけると暇、構え」
「会話してくれ? 答えてくれよぉ」
「なんでそんなに哀愁漂わせてるんだよ、こんな美女の顔見れて幸せだろ」
「貴様元男我困惑」
「似非中国語みたいになってるけど、どした?」
お前のせいだけど?
……は、喧嘩? 喧嘩する?
内心ガチギレしながらも、それはそれでこいつを悦ばせそうだから考えるのを放棄する。こいつは原作ではちゃんと無敵だったんだけど、こういう感じで無敵になってほしくなかった。
「あの、貴方様……お茶でもいります?」
「え、あ……ありがとイザナ――――えっと、なんでいるんだ?」
ぜぇぜぇはぁはぁと心底疲れる俺に、声をかけてお茶を手渡してくるのは、肩ほどまでの桜色の髪を後ろにまとめる七歳の幼女様。
最近セキュリティを強化して、昨日鍵を設置した筈の我が部屋にどうして彼女がいるのかが本当に分からなかった。
「つけた鍵は?」
「あ、それでしたら……こちらに」
そう言われて渡されたのは、拉げて壊れた錠前。
何か万力に潰されたかのような有様の、黒い何か。
親に頼んで蔵から持ってきてもらったはずの相当強固なそれが、無残に壊された姿だった。
「えっと、イザナさん?」
「貴方様の近くに雌鬼の気配を感じたので、有事と思い壊しました」
「やはは盛大に嫌われたよなぁ、オレ」
その状況も面白がる快楽主義者は、笑っているが俺からすると一切笑えない。
一触即発、すでに殺気が凄いしなんか気のせいか受け取ったお茶が冷えていってる。殺気ってお茶に作用するんだっていう新たな発見をしながらも、そういえばなんで嫌ってるか分かってなかったし、宥めつつ聞くことにした
「イザナ、
「おっいいぞご主人、いけいけー」
黙っててくれないかな? 今説得中だから。
とりあえずそう言ってみて、続きを言おうと思ったんだが。
「私は許せません。貴方様を傷つけておいて……死ぬほど羨ましいポジションに居座るその雌鬼が」
「えっと?」
「わぁお、今更だけどこいつもか」
なんかぶっちゃけられるのは、そんなこと。
思ってもいなかったその言葉に、俺の思考は一瞬凍り付いて……多分というか確実に元凶である金平鹿はそれを見て笑ってる。
「そこに、貴方様の式神になるのは――私だった、はずなのに!」
「落ち着こうぜ、イザナ。えっと俺が悪かったから、あとこいつが九割くらい悪いから落ち着いてくれ?」
「私だって命令されたい、雑に扱われたい、その距離感で接してほしいのに! この鬼が全部!」
「おもろ、確かこういう時は単芝って言えばいいのか?」
もうお前黙ってくれよ。
え、これ何が悪いんだ? このアホ鬼と同じようにイザナと接するのは違うし。大切に思ってる仲間である彼女に、そういう扱いをするのは嫌だ。
何より最初に言ってるが、彼女にはそういうことをしないと言っている。だからこそだけど、正解は
今まで溜めてたものが決壊したのか、泣きながら金平鹿を威嚇する桜色の少女。そんな俺の部屋に一人の少女がやってきた。
「ねぇ二人……鬼もいるのね、そこそろご飯――何したのよ、蓮」
「しらん、助けてぇ雫」
「どうせ貴方が悪いわよ」
そうかなぁ、そうかも。
カオスしか広がらない自分の部屋。けらけらやははと笑う金平鹿と、困惑する俺に、イザナを宥める雫と泣き喚くイザナという光景があって、それは母親がご飯を呼びに来るまで続いたのだった。