和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか? 作:鬼怒藍落
カオスな朝を過ごし、ようやく朝食を終えた頃の事。
今日は我が家に来客が来るらしく、俺はその人の事を待っていた。一応来る人のことは聞いているが唐突ではある様な気もして何の話かは予想が……。
「……いや、あったわ」
「ん、なんだご主人こっちみて」
俺の目の前にいるのは、蒼い髪色をした女性? の鬼。
ここ数日で我が家に馴染んだこの阿呆鬼は、現在進行形で俺の新しく買ったベッドの上でごろごろしており、危険性はないように見えるが、陰陽師を殺しまくった最悪の妖怪の一匹なのだ。
馴染みすぎて忘れていたわけじゃないが、敵意が無さ過ぎて警戒してなかった。
「今日お前に客人来るっぽいぞ」
「おけ……りょーかい、戦っていいか?」
「だめだ、この家が壊れる」
「ちぇー……んーでもあれだな、独占されてる感じしていいな」
「もう、黙ってくれよお前」
自室で霊力を増やすための瞑想をしつつ、そんな会話を続ける俺達。
最近自由に出入りしまくっているこいつと過ごすのに慣れてきてしまった自分が怖いし、受け入れている自分にも変な感じがする。
「そういえばさお前、あの世界でどう過ごしてるんだ?」
ふと気になってそう聞いた。
俺が月下の湖にあまり行かないからではあるが、あの世界で空と基本過ごしてるこいつが何してるかが不思議だったから。
「気になるのか?」
「まぁ、少し」
「そっかーご主人は俺の事気になるのかー」
「純粋な興味だ。で、どうなんだ?」
「基本は力を戻すための鍛錬だな、体変わっちまったし」
「戻れば?」
「それは嫌だ。というかもう戻れん」
「それは、何故?」
一度女になれたってことは戻ることもできると思ったんだが、今の言い分を聞くに無理っぽい。だけど純粋にどうやってこうなったのか聞いてなかったから、ちょっとした興味で聞いてしまい……。
「ほらオレ死んだだろ? で肉体失って魂だけになってさ……そのまま勢いで女になったのはいいんだが、それで形が固定されたからもう戻れねぇ」
「馬鹿かよ」
「失礼だな。ご主人を想ってだよ」
「俺はお前に何だと思われてるんだ?」
「ド天然女誑し戦闘狂」
「その認識は改めてくれ?」
心底思ったしそう願った。
俺はそんなんじゃないと。あと、そんなんだった場合カス過ぎるからなんとかしたいと……とそう考えたんだけど、どうしてだろう。心当たりが少し過って、魂の中にいる空がジト目でこっちを見てる気がして、つらくなった。
「……おっ、その客人っぽいの来たみたいだぞ?」
「わかるのか?」
「ここまでの気配を持つモノは見たことねぇ、宿してる式神もだが相当やべぇな」
見るからにわくわくしているのか、笑みを浮かべる金平鹿。
来たのを確かめるために軽く霊力感知を飛ばしてみれば、玄関付近に見知った気配。一人で来ているらしく、周りには護衛がいなさそう。
感知し続けていれば、父さんが迎えているそうなので多分そろそろ呼ばれそう。話の内容も予想できるので、金平鹿に声をかけて準備をしてもらうことにした。
「とりあえず着崩すのやめてちゃんとしてくれ」
「えー怠い」
「頼むそれだけしてくれれば今度あっちで戦うから」
「おっ言質取っただぞ? ふふー戦えるならしゃーねーなー」
ちょっろ、心配なるわ。
上機嫌に鼻歌を奏でて笑顔を浮かべる最早男の面影を感じない鬼美女様。
そんな彼女を連れて居間に向かえば、そこには煎餅を食べる源弥さんの姿があり、俺の隣に陣取る鬼を見て目が死んでた。
「あー……それは知らん」
そういえば倒したという報告はしたが、彼に式神にしたっていう報告をしてなかったことを思い出した。急速に表情が無になっていく彼を見て、ごめんとは思ったけど……今までさんざん色々やられてるから許してほしい、というか許して。
「おい、蓮……アホ馬鹿蓮」
「なんですか?」
「――そいつは?」
「金平鹿、ですけど」
「なぁおいやべぇトラブル持ってきたなオマエ! なんであの鬼神金平鹿が女になってるんだよ!?」
「ノリと勢いだ! あとご主人の趣味に合わせた!」
「カスがァ! 陰陽寮への説明増えたぁ!」
まぁ倒したぐらいだろうと思ってたんだろうなぁ。
……彼の反応を見てそう思ってしまった俺は、げらげら笑う父さんを見てそう思った。そういえば、この件についての報告は父さん達に任せていたけど、これ自分じゃ抱えきれないと思った父さんが源弥さんを巻き込むことにしたんだろうなぁと。
「とりあえずあれだ、お前は金平鹿を祓ったんだよな?」
「まぁ一応、襲撃されて雫が攫われて――それから突撃して祓いました」
「おっけー後で詳しく聞くが、それはいい……で、今回お前に会いに来たのは、そのせいでお前を巡った四つの派閥ができたからそれの説明だな」
「……それは、なんで?」
「数千年以上祓われず伝説として残っている生きる災害なんだぞ、そいつは。近年では姿を現してなかったが、こいつが齎した被害は甚大なんて規模じゃねぇ……それを五歳の子供が祓ったんだ、疑うやつやお前を利用しようとするやつとかが出る」
面倒くせぇと心底思ったが、それは確かに理解できた。
この世界で強い陰陽師は重宝されるし、貴重である……俺も普通の陰陽師だったら五歳が金平鹿祓った! とか言われたら正気を疑うし。
「それで、その派閥ってどんなのです?」
「主にあるのが、さっきの否定・疑惑派と利用派。それはお前が認めさせればいいだかだから楽だが、問題が残った二つなんだよ」
「そんなにやばい噂流れてるんですか?」
「やべぇって言えばやばいな、主に雫が」
「…………?」
何でここで雫の名前が出てくるんだろう。
……急に伝えられたあいつの名前に首を傾げてしまい、その反応を笑われてしまったが、彼はこう続ける。
「とりあえず残ってるのが、英雄派と……育成派って言えばいいのか?」
「いまいち分からないんですけど、どういう?」
「英雄派はお前をより強くして妖怪ぶっ殺すぜっていう思想の奴らで、育成派が……そのあれだ。オマエを英才教育するのは変わらないんだが、陰陽師の子供で囲ってひたすら血を続かせるっていう思想の奴らだ」
「――――ゑ?」
思考が止まった。そして、考えるのをやめた。
言ってることは理解できたし、何よりも合理的ではあるが。
「その、俺まだ五歳ですよ?」
「あぁそうだな、だけどな史郎が連絡先絶ってるせいか、俺の元に死ぬほど見合い話が送られてくるんだよ。ほらお前って俺の弟子扱いされてるっぽいし」
「まじかよ」
「しかもな、下は最低で三歳で……上をほぼ三十後半までだ。俺も怖ぇわ」
前世一般人価値観の俺としてもそれを聞かされるだけで怖いし、そんなことなってるの!? って恐怖がやばい。知らない子との見合い話があるのもそうだが、年上すぎるのはちょっと。
「断ることはぁ」
「できるが、パンクするぞ多分――それに、これが雫の耳に入ったらやばい」
「まぁ、確かに?」
「で、ここから本題なんだが……お前、しばらく
それが、今回の事件のきっかけ。
……原作で火を祀りそれに呪われた一族との関りを持った序幕。
そして何より、この生涯で最も相性が悪いクソガキと出会う前日の事だった。