和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか? 作:鬼怒藍落
命式……それは、属性の適性を確かめると同時に魂の価値を量る儀式。
どの陰陽師も経験することになり、陰陽師ならだれもが憧れるものではあるが、それを置いといても人生が決まるものである。
この世界での陰陽師で大事なのは、属性の才能と魂の起源……というか価値。
努力で補える部分もあるが、その絶対値を決めるためにも必要なこれは、原作でもちゃんと描かれていたが……こうも大規模なのは記憶にない。
この場合原作知識と言っていいそれでは、鏡に自分を映して……とかだった気がするが、あの鏡なんか禍々しいというか怖いというか。
「まぁ始めるって言っても、そこのガキしか残ってねぇけどな!」
笑いながらもそう言う源弥という男。
明らかな狙い撃ちというか、作為的なものさえ感じる現状に胃が痛むが、それは父さんも同じようで深く溜息を吐いている。
「はぁ……オマエな」
「俺とお前の仲だろ? それに、五行全部の適性なんて疑われても仕方ねぇ。だからこうして場を用意してやっただけでも感謝してほしいんだが?」
「相変わらず変な気遣いありがとな……悪い蓮、こんど詫びはするから付き合ってやってくれ」
……まぁそれはいいけど。
これ、大丈夫だよな? 魂を見られるということは俺の魂の事をここでさらすことになるこれで高校生ぐらいの俺が出てきた場合嫌な予感しかしないけど。
「わかったよ父さん」
「……助かる」
そういうことになってしまったので、俺はこの空間にいる者達に見守られながらも、鏡に向かって歩いていく。緊張はするし、何より値踏みされるような視線が慣れないけど、気にしても仕方ないだろう。
目の前の鏡の奥には木・火・土・金・水という文字と五行の印が刻まれていて、真っ暗。目の前に立っているのに何も映らないそれの前で、違和感を覚えてしまう。
「じゃあそこで霊力練ってみろ」
言葉をかけられた通り、いつも通りに霊力だけを練る。
術を使ってしまえばまた前みたいな暴走が起きる可能性があるだろうから。そう思いながらも霊力を練っていれば、目の前の鏡に何か景色が映る。
五つの漢字すべての光が灯り、それどころか真ん中に巨大な木のようなものが浮かぶ、しめ縄がまかれた一本の巨木。それを照らすのは、どこまでも禍々しい黒陽。
空気が死んだ。
気配が全て殺された。
それを表す言葉は分からないが、感じたのは異質で強大で荘厳で気味が悪いほどに重いなにか。知らない、理解ができない、だけどその根本にあるものは言い表せない安心感――純白透明の少女の姿を幻視した。
「また、会えたね」
それは鎖につながれた大罪人。
全てを滅亡させる空の瞳。
百鬼を従える……あの時出会った百鬼空亡その子であって――その姿はすぐに掻き消えた。
「ははははは! なんだ五行の適性? おい史郎、なんだよこいつ! そんな程度の器じゃないぞ!」
すべての音が死に、誰もが声を出せない中で、笑うのは宵闇源弥そのヒトだった。今の光景を見た俺を含めた誰もが声を出せない中で、彼は嗤う。
心底おかしいのか、心の底から楽しいのか、どこまでも声を張り上げて。
「欠けているのに満ちている! ……よろこべよ、五行の英雄共、こいつは千年生まれてこなかった神依木そのものだ!」
それは知っている情報、俺がそういう存在の適性があることは原作を読んで知っていたが、なにやら反応がおかしい。この場にいるすべての者がのどを鳴らし、その反応があまりにも不気味で父親のほうを見れば、彼までもが驚いていた。
「俺らとは違う天然物の大神秘……なぁ、史郎。オマエこれを知ってたか?」
「――知ってたら、連れてくるわけないだろ」
「あぁ、納得だ。ほんとうに今日はいい日だ。なぁお前ら宴を開こう、こんなめでたい日はそうそうない」
ずっと笑い、そう言い切った彼は何かを手配してこの場にいる者に待てと命じた。
俺だけが置いていかれてる状況で、なんとか神依木というモノの存在を思い出す。確かそれは、神を下す器とかだった気がするが……そんなに喜ぶものなのだろうか?
作中では最後の方に明かされた設定ではあるし、重要そうではあったけど、その場面では納得されてたから、こんな大事になるとかわからなかったし、何より状況がわからないから。
「さぁ、宴を始めよう――祝いであり、我らが悲願の成就の一歩としてな」