和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか? 作:鬼怒藍落
「掃除はもう終わったから……あとは料理の手伝いだけか?」
命式を終え未来の俺の死因となる【宵闇雫】の家にやってきて早いもので三日、割と理不尽な世界にムカつきながらも俺は今日ももらった仕事をこなしていた。
訳の分からない神依木という存在から彼女が住んでいる屋敷にやってきて避けられると思っていたが、なんだかんだ受け入れられており、率先して働くせいか今の俺でも出来るような家事を任されている。
「野菜を運ぶだけでいいから楽と言えば楽だけどさ」
俺の体は頑丈だし、鍛えてるから普通の子供と比べてかなり体力がある方だ。
一応働く以上は妥協するつもりないし、俺的にはもうちょっときつい仕事を任されてもいいと思っているんだが……どういう訳か、皆かなり優しくて今みたいな楽な仕事ばっかり……今も箱に入った野菜をキッチンに運ぶだけの仕事だし。
「お、蓮坊。そこに置いといてくれ!」
「了解、今日は何を作るのですか?」
「今日はそうだな……肉じゃが作って入ったばっかりの魚を捌く予定だな! もうすぐ出来るが味見するか?」
「……雫お嬢様のだろうし、先に食うのは気が引けるから大丈夫です」
善意だろうが、今世であまり人と接してなかったせいかそれをむず痒く感じた俺はそう言って断って、他の仕事もないしで彼の料理風景を見ることにした。
手際よくあのお嬢様の料理を作る彼はこの屋敷ではかなり古参の人間のようで、屋敷で出会った中でもかなりの善人。金髪碧眼の筋骨隆々の彼は顔に刀傷があり、昔は戦場にいたとかなんとか。
「よし出来たぞ、雫様に持って行ってくれ! あと今日もありがとな」
「はい、ん……あれ、なんで皿が二つなんですか?」
「お前の分だ。雫様と一緒に食べてこい」
「流石に駄目だろ」
「気にすんなって、雫様は気にしないぞ?」
俺が気にする……とは言えないので、素直に従うことにして御盆に乗せられたそれらの料理を雫がいるだろう部屋に持って行った。
部屋に辿り着けば勝手に空く襖、ここ数日で慣れたその光景を見ながらも、俺は空いた部屋に入り机に食事を置いてどうせベッドの中にいる雫の方を向いた。
「あら、もう食事の時間なのね。今日は何かしら?」
「肉じゃがと味噌汁……あとは、白身魚の名前分からないやつ?」
「そう分かったわ。貴方の分もあるみたいだし一緒に食べましょうね」
「断ったらどうする?」
「泣くわね、私が」
「……食べるか」
彼女がベッドから起き上がりながらも伸びをして、机の前に正座する。
俺もそれに習うように正座して座り、雫と向き合いながら食事を始めた。
「さて貴方、ここでの生活はどうかしら?」
「……修業はどこだよってぐらいには雑務ばっか、素直に慣れない」
「私としてはなんで従者みたいになってるのか不思議なのよね」
「いやだって、一応世話なってるし何もしないの嫌だし」
「貴方、最初は嫌がってなかった?」
「ほんとそう」
俺の神依木の才能とかいうモノは、かなり重いらしくて雫父の源弥さん曰く、一歩間違えれば邪神に憑依される類のものらしい。
それを知識と術がない水蝕家に置いておくのは危ないという説得を彼がしたせいか、俺はこうして宵闇家預かりとなった。
父さんは死ぬほど渋っていたが、この才能を扱う技術がないのが事実らしく母さんと話し合ってこうなったのだが。
「……でもさ正直、この生活は楽しいから」
父さんたちが忙しいのは知っている。
それは俺が目覚めるまでの水蝕蓮の頃からわかっていたことだが、そのころ俺はやっぱり少し寂しかった。お手伝いさんはたまに来るが、基本妖怪退治の仕事で忙しい二人。甘えることも、遊ぶこともできない生活で我慢してたからか、こうして人とかかわるのはちょっと楽しいというか。
「へぇ……ふぅん、貴方本当に従者にでもなるつもり?」
「いやそれはないわ。あんたの従者とか命いくつあっても足りない」
「言うわね、塞いでやろうかしらその減らず口」
「へいへいすいません……で、そう聞くあんたは最近何してたんだ? ここ数日なんかしてただろ」
「貴方に似合う首輪を探してたわ」
「うっわ」
……ドン引きした。
その発言と彼女なら本当にやるかもしれないというのを感じて。
あからさまに引いたせいか、露骨に目を細める雫様。こわいなぁとか思いながらもこれが本当に同じ五歳なのか疑いたくなる。
「失礼ね、貴方はともかく私はまだ五歳よ?」
「ないわぁ。オマエが五歳とかないわぁ……というか心読むなよ似非幼女」
「ふふ口調、お父様に言いつけるわよ?」
「俺は客人でーす」
本来なら子供らしい口調を……というか、元の蓮の口調を基準にここ数日話していたのだが、あの時彼女に魂を見透かされて取り繕うと彼女が怖いので俺はもとの自分の……それこそ前世の自分で接するようになっていた。
これは子供らしさと話しやすさを天秤にかけたというより、素の俺で接しない限りめっちゃずっと笑顔で圧をかけてくるこの宵闇雫という少女が悪い。
「でも偉いのは私よ、敬いなさい?」
「それで畏まったら怖いだろ、あんた」
「正解ね、よく私のことわかってるじゃない。ご褒美に首輪を巻いてあげるわ」
「遠慮しとくわ」
「ふぅん、じゃあ今日は術の修行に付き合ってあげる。貴方の実力を試したいの」
「やる必要はあるのか?」
「えぇ、修行はしてると聞いてはいるけれど実際には目にしてないでしょう?」
「まぁ、それはそうだな。でもどうするんだ? どう試すんだよ」
「――そんなの私が相手になるわ、不足はない筈よ」
それだけ告げた彼女は、やはり笑みを浮かべており……何処までも自信満々な態度でいた。そんな彼女の実力を知っている俺からすると、不足はないと思えるのだが。
「怪我するぞ?」
「そんなの望む所よ、それに一度確かめないといけないとは思っていたの。だから戦いましょう?」
……この五行家を束ねる宵闇の姫である彼女は勿論だが固有の術を持っている。
それも古来からの血由来の最高峰と言っていい程の陰陽術を――実際、この世界の主人公君の真横に立っていたヒロインである彼女は強い。
――正直彼女と戦うのは気が引けるが……それでも一度は自分の実力を試す必要があったのは確かだろう。だって模擬戦なんて親以外としたことないし。
「よし分かった。場所は庭で良いよな?」
「えぇ……行きましょう?」
明日も適当に三話更新します