欠けた彩葉   作:ドルフィンズナマチンズ

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初投稿頑張ります。


「天才」彩葉を知った凡夫は囁く

「天才だね彩葉は」

 

私に対する周りの評価は概ねこんなものだ。

幼少の頃から大抵のことは努力しなくてもできてしまう。自身でも周りとは何となく違うのだと理解していた。

大抵のことはできてしまう故なのかがわからないが、他人の感情も自身の感情すらあまり理解できない。

父が亡くなった時もそうだった。

感情一つ動かず葬式の際は父の遺影をずっと眺めていた。

大層母は気味悪がっただろう。

自身の父親が亡くなって表情に感情の色ひとつ出さない私を。

 

それ以降私と母はあまり会話をしなくなった。

そんな母のことを考え私は中学卒業と同時に東京で一人暮らしを始めた。

 

私が一人暮らしをしたいと言った際も多少驚いていたものの「好きにしい」とただ一言だけ私に言葉を投げかけそれ以降は事務的な話を淡々とした。

 

東京に来てからは学費や家賃などの諸々の生活費を稼ぐためにバイト三昧だ。

もちろん学校の授業もテストも問題なく行えてる。

私にとって授業もテストも生活を圧迫する程のウエイトを占めるものではない。

授業で必要な知識を取り入れテストで必要なだけ出力する簡単な作業。

ただひたすら将来のため生きるために学校に通いそしてバイトをし生活費を稼ぐ。

ただただ同じことの繰り返し。

親元を離れれば何かしらの変化があるかと思えば相変わらず私の感情に起伏は見られない。

これは本当に生きてると言えるのだろうか。

何をしても喜び、悲しみ、怒りを感じない。

死んでいると同じではないか?

きっと私は誰かに「死んでくれ」とでも言われたら何の戸惑いもなく命を断つこともできるだろう。

 

「つまらない人間だなー」

 

なんて言葉が口からこぼれた。

 

「なにがつまらない人間なの?」

 

後ろから少し低めの声の人物が私の独り言を拾って質問してくる。

 

「芦花と真美」

 

「もう〜彩葉ひどいんだから。一緒に帰ろうと思ったら先に一人で帰ろうとしてるし」

 

「ごめん真美」

 

「それで、さっきのつまらないってどういう意味?」

 

芦花が改めて質問してくる。2人の視線が若干私を責めているような気がするが気のせいだろう。

 

「いや私の人生を振り返った総評としてやっぱりつまらない人間だなーって思ったところ」

 

すると2人は左右から手を伸ばし、私の頬を引っ張ってくる。

 

「いひゃい」

 

「彩葉それ禁止ね!次言ったらもっと伸ばすよ」

 

「そうだ、そうだ!」

 

芦花は少し語気を強くし私に注意してくる。真美は本音半分面白さ半分といった感じで芦花の言葉に便乗して追撃してくる。

 

「ごめん、二人とも」

 

この2人は優しいのだろう。その優しさに何も思えない私は未来永劫分かり合える気がしない。私にもこの2人のように誰かに寄り添えられる感情が欠片でもあれば、もう少し、灰色に映る世界の見え方も違ってくるのかもしれない。

 

「じゃあこの話は一旦終わり。じゃあ真美から本題をどうぞ!」

 

「彩葉、今日の帰りカフェ行こうよ!最近SNSでバズってるカフェの情報をキャッチしたんだ」

 

さすがはグルメインフルエンサーだ。流行ってるカフェの情報は逐一欠かしてないようだ。

しかし、せっかくのお誘いだったが、私は申し訳なさそうな表情を作り断りを入れる。

 

「ごめん!今日バイトなんだ」

 

「そっかぁ〜。彩葉がバイトなら別の日にまた3人で行こうか」

 

「そうだね」

 

あぁ、本当に2人は優しいな。だからこそ余計私自身に落胆する。状況に合わせてあたかも感情があるかのように振る舞う私は2人には釣り合わない。

 

「じゃあ、彩葉のバイト先の途中までは一緒に帰ろうか」

 

その後、2人とは学校から帰宅して途中で別れて私はバイトに向かった。

 

◼️◼️◼️

 

カフェでのバイトが終了し、自宅に戻れば23時を超えていた。

この時間になると流石に疲れを感じて夜ご飯を食べたいという食欲よりも早く寝たいという睡眠欲が勝る。

カロリーメイトとゼリーを食べすぐお風呂に入り就寝しようとするが、しかしそこに一つ声がかかった。

 

「彩葉。また無理してるでしょ。」

 

声の聞こえた方向に首を傾けると、PCに電源がつき画面いっぱいに白髪の少女が写っていた。

 

「・・・ヤチヨさん」

 

彼女の名前は月見ヤチヨ。8000年を生き歌って踊って分身もできるAIライバーという設定と同時に仮想空間ツクヨミの管理人をしている。

本当のところは知らないし正直なところどうでもいい。

 

「こら!ヤッチョのことは呼び捨てでいいって言ったのに!」

 

どうやらこのお姫様は私の呼び方がお気に召さなかったようだ。あからさまに怒りマークをつけぷんぷんと怒っている。

 

「・・・はぁ、ヤチヨは何でここに?」

 

「そんなの彩葉の様子を見に来たからだよ!」

 

何を当たり前なという雰囲気を醸し出すあたり、犯罪をしているという自覚はないらしい。あったとしても、現行の法律は自分には適用されないと言い張るのだろうが。

 

「彩葉ちゃんと食べないとダメだよ!じゃないと倒れちゃうよ!」

 

ヤチヨは随分と私を心配してくる。ある時バイトを2つ掛け持ちしようとしたらいきなりPCをハッキングされヤチヨが登場し私の行動を初対面でいきなり咎めてきた。

思考がわずかに停止したものの将来のためにお金が必要だと私も反論したが、『それ以上は死んじゃうから絶対にダメ』と言って大泣きまでする始末。

いきなりのことで戸惑ったものの最終的には私が折れ、掛け持ちバイトは断念した。

それ以降、私はこのヤチヨに監視されている。

 

「ヤチヨは彩葉が簡単に死んじゃわないか心配なのです」

 

これだ。

ヤチヨは私の死に対して異常な程敏感だ。私とヤチヨは会ったことはないはずだ。それにもかかわらず私のことを知っているかのように心配してくる。その理由が気になりはするが、きっと本人は教えてくれないだろう。

 

「・・・ちゃんとご飯食べるから。そんな睨まないでほしいんだけど」

 

「うん!よろしい、よろしい」

 

どうやらご飯をちゃんと食べると宣言したことによりヤチヨも納得してくれたそうだ。全くもって世知辛い。

こうして、私の寝る時間がさらに遅くなっていった。




彩葉が過労でどうしようもない程手遅れな状況を書いてある小説を読んでみたいです。

倒れた時にブルアカの先生みたいにかぐやに対して「あなたのせいじゃないよ◼️◼️◼️」みたいなセリフを残して逝ってほしい。
そのセリフを聞いたかぐやには生きてずっと引きずってほしいです。
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